草も生えない冒険譚

たかし

10話【地下】

前書き

加護の遺跡をなんとか突破し、
そしてある程度の資金と戦う力をつけた宇宙達は
さらに一歩前進するために次の街へと向かう。



俺は今とてつもなく悩んでいる。


そんなことを心の中で一人呟きながら
ギルドの席に俺は佇んでいた。


それは数時間前のこと…



「ねぇ私たちこれからどうする?」

宿屋で暇をしている俺ら全員にぺティラが言う

「なんだよいきなり」

あまりの唐突さに驚きを隠せなかった俺は
 ぺティラに疑問をぶつけた。

するとぺティラはなんだかムスッとした表情で

「だってここ数日全然依頼もこないし!ましてや自分たちでクエストにだって行こうとしないじゃない!」

「正直めんどくさいしな」

資金はモンスター討伐して集めるのが冒険者としての意地みたいな事言ってたやつのセリフじゃねぇよなぁ…
全くだ、俺らは今資金に困ってない。
なんだかんだ言っても流石に餓死しそうになる俺らを見て、あのお人好しのミイレが黙ってるわけがないのだ。

勝手に食料を買ってきたり
勝手に宿屋代出したり。
ここまでやるかとばかりに大富豪っぷりを見せつけてくるのだ。
まぁ、結局俺らはその資金に頼ってるってわけなのでなにか言えた義理じゃないのだけど。

このままこんな生活をしていたら
冒険者として腐ってしまいそうだし、ぼちぼちクエストにでも行くか。

「よしじゃあクエストにでも行くか〜」

芹那はとてつもなくだるそうなのをよそに
ミイレとぺティラはとても嬉しそうだ。
なんでそこまでしてクエストに行きたいんだか…
どこか男気があるっていうか…



そして俺らはギルドにクエストを受注しにきた。

さーてと、楽で稼げそうなものは…

「お待ちしておりました!宇宙様!!」

うわ、出たな妖怪パーティ殺しババア…
こいつが何か言うとろくな事にならないのだ。
そう、シルヴィだ。

「今回もなんか用ですか…?」

「いえ、用はないんですが、一応ギルドの社員として冒険者様に伝えておかないといけないことが…」

なんだ依頼してくるわけじゃないのか…
それはよかっ…

「この前、貴方様方が加護の遺跡を攻略致しましたので、加護の遺跡を越えた先の街に行けるようになったので、気が向いたら行ってみてください!」

おいおい待てよそんなこと言ったらぺティラが…

「宇宙」

「はいぃ!!!」

「支度の準備よ」

はぁ…やっぱりな…
こうなるとは思ってたよ…
ぺティラは大の冒険好きなんだ…
回復魔法しか使えないのに
戦いが好きなんじゃなくて冒険が好きなのかよ…

「待て!出発って言っても急すぎる!まだパーティ皆の意見を聞かないと!」

始めてリーダーっぽい事言ったぜ!
頼むぞミイレと我が妹芹那よ…!
ここはなんとしてもぺティラを食い止めて…

「私は全然いいよ〜」

「え、えっと、わたくしも皆さんがいいと言うなら…」

えええぇ…
ミイレはお人好しとして…
なんで芹那は戦えないくせに冒険に出たがるんだ!
あぁ、このパーティ安定してないぞ…

「さ、あとは宇宙だけだよ」

「少し時間をくれ」



そうして今の状況があるわけだ。

俺がどうしてここまで悩んでいるかと言うと
次の街に行くのは全然構わないのだが
そこのクエストが問題だ。
俺はわかる確信できる胸を張って自信を持って言える。

そこのモンスターは俺らがかなうような相手じゃない。

ゲームの常識からして
こういう異世界は先に進めば進むほど
モンスターは強く難易度が上がっていくもの。

俺らはまだ弱小で力もつけていない。
行くとしてももうちょっとステータスを上げて
様子を見て…

「ほら宇宙〜、もたもたしてると置いていくよ〜」



えええええええぇ……



え、



いや、



……




「最初から行くつもりなら俺の迷った時間返せ!!」



俺らは今、こないだ攻略した加護の遺跡の内部にいる。

すまんが出口がどこにあるのかさっぱりわからん。
俺らは中に入り襲いかかってくるモンスターをしらみつぶしに倒しまくり
俺のテレパシー能力でモンスターの反応がなくなったからこの前は帰っただけ。
出口なんてどこにある、知らない。

まぁそれっぽいものを見つけたらいじくり回しとけばいつかは…

「宇宙〜!ここに怪しげなボタンがあるよ〜!」

うわ、わかりやすい罠だな。
ってことはこの遺跡は人間によって作られたものなのか?いや、それとも知性能力が高いモンスターが…

「おいお前、それ絶対押すなよ」

そう言った時にはもう遅かった。

ポチッ…

おおおおおいいいいいいいいい

その瞬間、ぺティラの立っていた地面が大きく割れ

「きゃあぁぁあぁぁぁあああ〜!」

ぺティラは落とし穴にひっかかったのだ。
ただの阿呆だ。
筋金入りの阿呆だ。

俺のあとに気づいたのはミイレだった。

「ぺティラさん!?大丈夫です…かぁぁぁぁあ!?」

なんかミイレも落ちていった。

阿呆だ。
筋金入りの阿呆だ。

そしてミイレの声できづいた芹那が
俺の方へかけよってきて事情を聞いてきたので

「なんかな…阿呆二人がな…落ちてったんだよ」

そう言った…。



「おーーい!大丈夫か〜!!」

落とし穴から俺が下を覗き込み、
そう叫ぶが反応はない。
どうしたものか…
ここで詰んでいても仕方あるまい、二人は二人でなんとかするだろう。
テレパシー能力を使ったが、何故だか機能しない…
下に魔法結界でも張ってあるのか…?
俺らは先へ進もう。
神に誓って言おう、見捨てたわけじゃない。
そうだ、仕方の無いことなのだ。

そして俺と芹那は遺跡の奥へ進むのだが…

「まさか…こんなに深いとは…」

こないだ攻略した加護の遺跡の中が
こんなにも内部が深いなんて…
もはや迷宮レベルだぞ…

というか、まだ遺跡の中にモンスターが残ってても不思議じゃないぐらい広い。
ここからは警戒していかないと…

「芹那!なにか音や匂い、モンスターの気配なんかがしたら教えてくれ!決して1人で深追いするなよ!」

「むぅ〜!お兄ちゃん!芹那だって戦えるってば!」

平手打ちしか戦いの手段がないくせによくそんな事言えるな…

「ダメだ、すぐに俺に報告するんだ。」

そう芹那に言うと
まだ少し不服そうに小さく頷いた。



その頃……

「ミイレ〜、ちゃんといるんでしょうね〜」

「い、います!ちゃんといますってば!」

二人は落とし穴にひっかかり
遺跡の奥深くに落ちていき、
なんとか上に上がる方法を試行錯誤しながら
前へ前へ進んでいっていたものの、

「暗すぎて何も見えない〜〜!!」

そう、そこは暗闇の世界、
射す光なんて一線も見えてこない。

「微妙に気温も下がってきましたね…」

「そうだ!ミイレ!あんたの光属性魔法で照らしてくれない?」

「む、無茶言わないでください!私、光属性魔法は攻撃用しか、持ってませんし…、大幅に魔力を使うし、照らせるのも数秒ですよ!?」

二人はそれこそまさに詰んでいた。
前に進んでいるのか後に進んでいるのか
何があるのかもわからない。
どこにいるのかもわからない。
お互いの位置を確認し合うすべもなく、

とその時、ミイレがなにかを思い出したように…

「ぺティラさん、もしかしたら私出来るかもしれません。」

「ほんと!?照らせるの!?それならお願い!」

「まだ出来ると確信したわけではありませんが、昔、祖母から聞いたことがありまして、魔法はやみくもに打つだけじゃダメ…、その出力の量、どれだけ魔力を操れるか、それを維持できるかで魔法の強さは変わってくる、と」

そう淡々と語り出すミイレ、
それを真面目に聞いていたぺティラが

「それが、どうしたの?」

「つまり、光属性魔法は出力を落として、掌に光を纏わせるように維持できれば……」

その瞬間、ミイレの掌を光の魔力が包んだ、
そして、その周りが光り輝き、
二人は暗闇の世界から解放された。

「ありがとうミイレ!これで先に進めるよ!」

「お易い御用ですよ〜」

と二人は顔を見合わせ安心に浸っていたのだが…

「ぺティラさん…あれ、」

ミイレが驚愕の表情でぺティラの後ろを指さしている。
なんだ?と思いぺティラも後ろを振り向くと…

そこには可憐な巨大な女神の像があった。



後書き


一度攻略したかに見えた加護の遺跡で
落とし穴にかかり地下へと沈んだ二人は、
そこでこの遺跡の歴史を目の当たりにすることになる。


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