草も生えない冒険譚

たかし

7話【決意】

前書き

大富豪の女性から仲間にしてほしいと頼まれた頼璋。
しかし、突然の事に戸惑いを隠せない。
そんな時、大富豪は…



「ちょ、ちょっと!」

俺はギルド内の全員から視線を浴びせられ
なんともいいようがない空気を作り出され。
ひとまずギルドの外に大富豪を連れて出てきた。

「いきなりなんだよ!?人目を気にしろっての!」

「あ、申し訳ございません…」

悪気があったわけでもなさそうだし、そのことはいいのだが…

「あと、なんの冗談だ、さっきのは」

「え?いや私は本気ですよ?」

なんだこいつ…
理由もなしに俺らと仲間になろうなんて…
しかもこいつは大富豪だぞ!
こいつに仲間になってもらって毎日生活には困らないと思うけど今まで俺らが頑張ってきた意味がなくなる気がするし…モンスター討伐も不要になっちゃうじゃないか!!

「ひ、ひとまず行くぞ…」

俺はこいつと話をするため
俺の、芹那、ぺティラ、大富豪の4人で
宿屋に泊まった。
ここで話をつけとかないと…

「まず聞くがな、いきなりなんで俺らの仲間になりたいと思ったんだ?」

「理由としましては、見ず知らずの私のためにあんなに真剣に調査をしていただいて、人に対して真剣に向き合うことのできるお方だと思ったので…」

「なんでそう思ったら仲間になりたいっていうことになるんだ!?」

こいつの理由はわかったが…
俺が優しいと思われているのか…
ただ金目当てに頑張ってただけなんだけどな…

「だから…一緒に戦いたいと…」

大富豪がそう言い終わる前に俺はその言葉を遮るように机を叩いた。

「やめだやめだ!俺は絶対にお前を仲間にしないからな!わかったら出ていってくれ!」

「お兄ちゃん!そこまで言わなくても…」

そう言う芹那を俺は、口を出すな、と言わんばかりに睨みつけ、黙らせた。

そう言うと大富豪の女性は悲しそうな顔をして
その部屋を出ていった。

その日以来、彼女とは会わなくなった。



「あのさー宇宙〜、あの人の申請断っちゃってよかったの?」

なんだいきなり…
もう随分前のことだし…
会わなくなったんだからそれでいいじゃないか、
きっとあの人も今頃はほかのパーティで楽しくモンスター討伐しに行ってるに違いない。

それ達は大富豪の報酬のおかげで
なんとか生活していた。
でもそのせいか体が怠けてきて
モンスター討伐へのやる気が起きないのだ。
このままでは生活がきつい…

「とりあえず、モンスター討伐に行こうぜ」

そういった瞬間、芹那とペティラは
休日が終わったあとの月曜日の朝みたいな表情をして、行きたくないアピールをしてきた。

ほら、このざまだ。どうしようもない。

「あー、もういいよ!俺だけでいってくるから!」

正直な所、俺1人でも大丈夫だ。
スライムは女性しか狙わないし
ウルフは殴ったら怯えるから
回復はなくてもいけるからぺティラも不要。

芹那はもとからなにもしていないしな。



よーし、じゃあ始めますか〜!
まぁ、スライムを何百体倒しても得られる経験値はそこまで高くないから
今はウルフを倒すのを優先すべきか…

〘宇宙はウルフを殴った。 〙

あ、一撃死か…
前セルフィルから貰ったギガントウルフの魔石のおかげでステータスも上がってたもんな…

っていうか拳だけで死ぬモンスターって…
そこらへんで剣降ってる冒険者たちに教えてあげたいぐらいだぜ…

そのまま俺は討伐を続けた。

一定数倒して、気が付いたら日が暮れそうだ。
収穫は多くはないが少しは生活の足しになるだろう。
さぁ、宿屋に泊まって飯でも…

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

なんだ!?女性の叫び声…?
この声どこかで聞いたことが…
いや、今はそんな事考えてる暇はない!

そして、俺はその声の方面目掛けて走り出した。
おそらくだが、あの声は救援要請かなにかのスキルだ。
あの声を探してテレパシーを飛ばしてみて、誰が発しているかはわからなかったが、森の中ということがわかった。

くそ、無事でいてくれよ…
誰かわかんないけど!!



そして俺は森の中に入った、
日が暮れて辺りが真っ暗だ。
くそ、こんなんじゃ探しようが…

まてよ?
森の中に入ったってことは
さっきの女性の人もテレパシーで探せる!
このスキルはその人の好意によって探せる範囲が異なるが…
これだけ近ければ!!

〘宇宙はテレパシーを使った。 〙

どこだ…?
どこにいる…!
見つけろ、見つけるんだ俺!!
しかし、どこにも気配を感じない。
なんてことだ…
もう少し俺が早くきていれば助けられたかもしれないのに…
そう俺が絶望していた時だった。

微かに物音が聞こえた。
俺は急いでその物音のほうに意識を集中させると

いた!!
テレパシー能力は相手の姿までは見れない、
ただ、脳に語りかければ声は聞こえる。

{おい!あんた!助けに来たぞ!今どこにいる!}

するとその女性は、震え声で

{く、空洞の中…も、猛獣が…きたの…、大きな…おぞましい姿の…}

猛獣…?
まさか…

{とりあえずそこにいくから!動かずに待っとけよな!}

テレパシー能力の効果で相手がどこにいるのかを
察知できる。
この能力は非常に便利だ。

俺は全速力で意識の届いた方へ走り抜けた。
息が苦しくなっても、転んでも…

なんで俺は…こんな知らない人のためにこんなことやっているんだろう…
相手は他人だぞ?会ったこともないんだぞ?
それなのになんで…

そうだ、頼璋宇宙はもう人に死んで欲しくないのだ。
自分の大切な人に限らず、人が死ぬかもしれない状況で、それを黙ってみているわけにはいけない、助けられる命は助ける。両親の死が、その極意を頼璋宇宙の心に刻み込んでいるのだった。

そして、女性の意識が近くなっていく、
もうすぐだ…もうすぐ…

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

悲鳴…!さっきの女性か…
くそ!間に合え俺!

そう言って空洞に辿り着いた俺が見たもの、
それは、恐ろしいものだった。

空洞の中にうずくまっている女性と
それを睨みつけ、今にも飛びかかろうとしている猛獣の姿だった。



「おうおう!久しぶりじゃねぇかよ!」

俺は猛獣を見て確信する。
そうだよな、この森にいる猛獣っていったれ
お前のことしかねぇよなギガントウルフ…!

「お前、前に俺から目に砂かけられたやつじゃねぇかよ!あれは傑作だったぜぇ!」

そうだ、前に俺はこの森でギガントウルフと戦った。
ぺティラと俺は絶体絶命の状況で
逃げるためにギガントウルフの目に砂をかけた。
その痕跡がまだ目に残っている。

「おい!そこのあんた!俺がおとりになるから…早く逃げ…」

その時、女性の顔を見た俺は驚いた。
なんで大富豪がここにいるんだ…?
どこかで聞いたことある声だとは思ったが

「あ、あなたは…」

そう言いかけた瞬間、ギガントウルフは大富豪めがけて飛びかかった。

まずい…!

俺はその場しのぎでなんでも言うし、なんでもやる男だ。

その時、俺は木の太い枝を持ち、
ギガントウルフめがけて飛び、足に突き刺した。

グゥォガァァァァァア!!

足が硬すぎる…!
切れ口は浅いが確かに効いている…

「おい!あんた!」

「あっ…」

俺は大富豪の手をとり、走り出した。
俺はテレパシーで救援要請は出さなかった。
ここで出したら、またこのギガントウルフから逃げ出すことになる…

俺は大富豪に

「先に逃げてろ!俺は少し囮になる!」

「で、でもあなたは…」

「いいから早くいけ!!」

そう俺は強く怒鳴った、
そして彼女はそのことを了承して行ってくれた。

そうだ、何故俺がここにいるかようやくわかったぜ。
俺の目の前に現れる猛獣。
お前をぶっ飛ばすためにいるんだよギガントウルフ…!



「宣戦布告しておくぜ、俺は絶対お前をぶっ飛ばす!」

その言葉に、ギガントウルフは激しく唸る。
息が荒くなり、俺への憎悪が増していくのを感じる。
ほんとに勝てるのか…?こんな猛獣に…
いや、最初から勝つ気なんてなかったのかもしれない。

あの大富豪には酷いことを言ってしまったし、
借りを返さないといけないと思っていたが…
まさかその代償が命になるなんてな…

そう考えてる俺をよそに
ギガントウルフは飛びかかってきた。

俺は自分でもすごいくらいの身のこなしで
ギガントウルフの足元に滑り込んで
下から腹を思いっきり殴った。

グゥォガッ!

あまり聞いてはいないな…
皮膚が硬すぎる…
俺の拳が効かないとなるともう終わり…

いや…まだある…
この策は上手くいく確率が20%も無いに等しい。
だが、生き残れる命は生かすのが俺のモットーだ!!

そう心に刻み、俺は走り出した。
猛獣は俺が先程足を負傷させたからなのか
追ってくる速度が激的に遅くなっていた。

そして俺はある程度猛獣との位置に差をつけ、
足を止めた。

「来てみろ…ギガントウルフ!」

俺はテレパシー能力を使った。
森の呼吸、鳥の鳴き声、川の流れる音、空気、虫、細胞、全てを感知した。
そして猛獣が追って来るのを感じる。
全てを感知し、猛獣がいつ俺のところに来るのかを読み当て、

「ここだ!!」

そう言い放ち、
木を思い切り殴った。
そうすると、木は大きく傾き、
倒れる。その先にいたのはギガントウルフだった。

グゥォガァァァァァアァァァァー!!!!



後書き


無事、ギガントウルフを討伐した宇宙。
そして、ギルドへ戻る。
そして大富豪の本心を聞かされ、宇宙は…

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