草も生えない冒険譚

たかし

4話【絶体絶命】

前書き


新たな仲間 ペティラと共に
3人はG稼ぎに初心者の草原へ…
回復魔法しか使えないペティラには攻撃するすべがない、そう実感した宇宙は
唯一、拳だけで攻撃できる自分が行くしかないと思い、挑み、追い詰めるものの、巨大モンスターと遭遇してしまい…!?



「さぁ!ペティラさん!ちょちょいのちょいで倒してしまってください!俺たちはそこで見てますから」

「え?だから回復魔法しか使えないって…」

いやそれはわかってるのだが
他にもあるだろ?その回復魔法を入手したぐらいだから、経験値もたくさん獲得してきたはずだろ?
それならステータスも上がってるはずだから
通常攻撃ぐらいできるんじゃないのか…?

「魔法なんて使わなくても〜倒せるだろ〜!」

「む、無理言わないで!私、女の子よ!?こんなネトネトのスライム触れるわけないでしょ!?」

あ、そうか
相手がスライムだった…

まぁ初心者の草原にはまだスライム意外にもモンスターいるし、問題ないだろうけど、

「じゃあ、あそこのウルフ倒してこいよ〜」

何から何まで人任せの俺。
仕方が無いだろ、
戦えないというわけではないのだが
ウルフと拳で戦えるはずがない。
早く武器ほしい…

「私、攻撃できないのよ!」

おいおい流石に冗談だろ?
と思ったがペティラの瞳を見ると
嘘をついてないと確信した。

じゃあガチで回復魔法しか使えないのかよ
攻撃面じゃ妹が二人になったも同然。

もはやウルフがこちらを睨んでいるし
あとにも引けそうにないな…
仕方ない、俺の超絶究極壊滅奥義「拳」を出すしかないようだな。

「お前ら下がってろ、俺がなんとかする」

二人が、目を輝かせてこちらを見ている、
やめてください、究極でもなんでもないんです
素手です、ただの拳なんですよこれ。

〘宇宙はウルフを殴った 〙

「キャゥンッ!」

あれ?意外と効いたのか?
なんか結構痛がってるし鳴いてるし…
よし、これは勝てるぞ!!

と思ったのだが
ウルフは俺の拳にビビったのか逃げ出した。
〘ウルフは逃げ出した! 〙

おいおい待ってくれよ
俺らの経験値水の泡にしないでくれ。
俺たちみたいな弱小パーティにはお前の経験値が必要なんだ頼むよ。

そう願いながら
俺たち3人はウルフを追いかけた。
俺ら兄弟二人は足が特別早いのだが
ペティラは別なのだ。

「ねぇ…、ちょっと早くない?二人とも!」

お前が遅いんだ、とでも言えば
あいつの闘志に火でもつくだろうか。
しかし、今優先すべきは逃げるウルフを見失わないこと、

初心者の草原の奥深くの森まで入っていき始めた、
少し危ないか?
とも思ったがあと少しでまともなモンスターの経験値が手に入るんだ、後戻りはできない。
スライムはまともなモンスターじゃないのかって?
あいつはネトネトして気持ち悪いし、
第一、女性しか狙わないし、どこの凶暴じゃない、いや、女性にしか襲いかからないって所が凶暴で魔物っぽいのかもしれないが…

「お兄ちゃん!ウルフが!」

俺は考え事をしていて周りを見ていなかったが
妹に指摘され、ウルフの方に目をやると
行き止まりになっていた。
よし、これで経験値がやっと手に入る、
すまないなウルフ
なるべく苦しまないように倒してやるからな
って言っても拳しかないからそれは無理なのか。

とそんなことを考えながら
ウルフに詰め寄っていく俺。
逃げないように芹那とペティラが包囲している。

すると俺は芹那の異変に気がついた。
なにやら俺の後ろを眺め、体を震わせて、ガクガクしている。
なにかおぞましいものでも見たような、

「どうしたの芹那?後ろになにか…」

そう言いながら後ろを振り返った
ペティラも、芹那と同じ症状を患いだした。

ちょっと待ってくれ…
この展開ってお決まりの…

俺はとんでもないことが起きていると確信した。
こういう弱いモンスターほどバックが危ないというもの、
なんでゲームマスターの俺がこんなこと忘れていたんだ…!
あの時ウルフを逃がしておくべきだった。

そして俺はゆっくりと後ろを振り返ると、
俺が殴ったウルフの5倍、いや10倍以上の大きさにも及ぶ巨体がそこに佇み、俺たちを睨んでいた。

「ギャァァァァァァアア!!!」

俺ら3人は一斉にそう叫び、
初心者の草原の入口めがけて走り出した。
森は迷いやすいが
なんとなく道はわかる。
走って戻るのは容易ではないのだが問題は…

後ろを振り返ると巨大ウルフが追いかけてきている。

そうですよね!
やっぱりそうなりますよね!
ほんとごめんなさい!息子さんをいじめたのは認めます!二度とやりませんから!
もうしませんから許してください!!

そう命乞いをしながら
死にものぐるいでは爆走する3人と巨大ウルフ。

くそ!このままじゃ追いつかれる…!
どうすればいいんだ…!
そして俺は始めて男っぽいことをした。

「お前ら!俺が囮になるからその間にギルドに戻って救援要請をしてきてくれ!」

「え?でもお兄ちゃん…」

「いいから早く!じゃないと追いつかれるぞ!」

そう芹那とペティラを設定して
俺は一気に右折し、巨大ウルフを挑発した。

「おいどうした!息子がいじめられたのが悔しいんじゃないのかぁ!なら俺を倒してみやがれ!」

言葉は通じないと思うが、
今まで生きてきて最高の上から目線っぷりだったと思う。
案の定、巨大ウルフは俺めがけて疾走してきた
よし、ここからが勝負だ!!

俺はその環境が森であることを利用して、
木などを駆使して逃げ続けた。

そして木に登ることに成功した。
その木の根元で巨大ウルフが唸っている。
よかった、これで後は救援要請を待つだけ…
いい仕事したぜ…

ミシミシッッ

えっ?なに?

俺は急いで下を見ると
巨大ウルフが木に突進して倒そうとしている。
まじかよ、こいつ…どんな馬鹿力だ…!
このままじゃまずい、
まじで木が倒れそうになってきた。
おいおいやめてくれ!
絶体絶命、その言葉が一番今の状況によく似合う言葉だった。

こういう時はどこかにツタが生えてるもんだろ…
と思ったが現実は甘くようだ。
どこにもツタなんて生えてない。

「くっそ!どうすればいいんだよ…!」

そう思い悩んでる内に木は倒され、
俺もそのまま転倒した。
落ちた時のダメージはそうとうのものだった。

巨大ウルフが息を荒くして俺を見下している。
もう動ける体力も残ってない…
俺はここで死ぬのか…
異世界にきて、特になにもなかったな…
もう少しこの世界で生きたかったけど…

「リカバリー!!!!」

その聞き覚えのある呪文と声。
そして俺は体が軽くなり痛みが消えていくのを感じた。
そして、声が聞こえた方に視点を向けると
ペティラがいた、
何故ここに?

「なんでいるんだよ!逃げろっていっただろ!」

「救援要請は芹那ちゃんがいってる!!私は心配になって離脱してきたの!」

ほんと馬鹿だ…
こんな男死んでも困らないだろうに…
まぁ、こんな馬鹿だから仲間にしたんだろうけどな!

「仕方ねぇな!俺に付いてこい!」

そう言って俺は足元の砂を手に包み
巨大ウルフの目にふっかけた。
それは意外にも効いて
咆哮をあげ、暴れだした。

「今のうちだペティラ!逃げるぞ!」

俺とペティラは森の出口をめがけて
走り出した。
あの砂攻撃の効果がいつまで続くかわからないが
生きるために精一杯走るだけだ。

そして森の出口がやっと見えてきた、
これで初心者の草原に戻れば奴らは追ってこないはず!!
このまま逃げ切れるぞ!!

とそう思った瞬間、
目の前に巨大ウルフが現れた。
追ってきた、というよりは
突然森の中から現れた…という感じだった。

「もう追いつかれちゃったの!?」

いや、違う…こいつ、木に突進した時の傷がない、
あと、目に砂も残っていない…

そう俺が最悪の自体を想像していると
後方から咆哮が聞こえた。
巨大ウルフの声だ。

ということは…

「二体目がおでましか…!」

最悪中の最悪の自体であった。
まさかこの森、この巨大ウルフがうじゃうじゃいるんじゃないだろうな
想像もしたくないが
この状況どうすればいいんだ…

この場を逃げるにしても前に巨大ウルフ、後にも巨大ウルフだぞ…どうしようもない。

万事休す…か。

そう思われた、次の瞬間

目の前が真っ白になった。

「え!?なになに!?」

ペティラの声が聞こえる。
これは閃光弾…のようなものか?
だとすれば一体誰が…

その白い光が消え去り、視界が戻った時には
巨大ウルフに剣を突き刺し倒している少年の姿があった。

「やぁ、遅れてすまないね。」

優男の人!!!!



後書き


巨大ウルフに殺されそうな所を
またしてもこの少年に助けられてしまった宇宙。
前方の巨大ウルフは閃光弾で不意打ちして倒せたが、本来真正面から戦うとかなり強いらしく…
その状況で後方の巨大ウルフを…少年は…?

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