草も生えない冒険譚
3話【仲間】
前書き
スライム討伐を果たした頼璋達だったが
獲得したGも経験値もほとんどなし!
それでもなんとか冒険者登録サービスで貰った1.000Gを使い、宿屋に泊まる事を決意する二人。
切羽詰まる二人。そんな時、とんでもないことが!
今ほどこの世界にきてくつろげる時はなかっただろう。
異世界に来て、走ったりギルド探したりスライムと戦ったり…
と休む暇が全然なかったのである。
今の俺たちが宿屋に泊まれるのは一回きり、
その分のお金しか持っていない。
ここで充分休んで明日またモンスター討伐に…
「芹那〜、また明日もモンスター倒しに行かないといけないからなー!しっかり休めよ〜」
俺がそう言うと
妹は疲れ果てた表情で、
「えぇ!?また行くの〜!?そりゃないよお兄ちゃん〜」
「仕方ないだろー!お金がないと寝る場所すらないんだからさー」
すると妹が頬を膨れさせて言った、
「お兄ちゃん、なにか忘れてない?」
なにか忘れてない?って言われてもな…
別にギルドの場所もギルドで言われたことも優男のお兄さんの事もスライムの倒し方も全然忘れてないのだが、芹那は何のことを言っているんだ?
そう俺が考え込んでいると、
「もー!お兄ちゃん!仲間探しをするの忘れちゃったの!?」
おっと忘れていた。
その事がすっぽり抜けていた。
兄としてなんという不覚…
「あぁ、ごめん!忘れてた!」
そうだ、俺たちがモンスターを毎日倒し続けて
数少ないお金で生活するのは困難を極める、
ていうか今のところ倒せるのはスライムぐらいだ。
ってことは俺たちスライム何万体倒せばいいんだよ…いや、何百万体か?
効率よく生活に慣れるためには
仲間を見つける必要があったのだ。
その為にギルドに言ったというのにほんとに忘れてしまっていた。
しかし仲間探しを再開したところで
現状は変わらないのだ。
どうやって仲間を見つければいい?
それを何度も試行錯誤したはずなのに
未だに答えが見つからない。
あぁ、このゲームマスターともあろうものが
いつからこんな貧相な脳みそになってしまったんだ…
「まさか、お兄ちゃん何も考えがないとか言わないよね…?」
図星は免れたが、ほとんどそれに近い
この前、ギルドを探している時にずっと考えていたのだ。
「え?ぁ、いいや!そんなわけないだろう!あの優男くんから紹介してもらうとかさ!あとー、初心者の草原にいけば、俺らと同じ初心者の人達がたくさんいるだろ?そこの人に声をかければ、同じ初心者として親密感が湧いて仲間になってくれるかもしれないだろ?」
どちらの案も悪くは無いと思うのだが
優男くんにこれ以上迷惑はかけたくない。
初心者の草原で仲間探すっていうのも、1人でスライム討伐に来てる馬鹿はいないと思うのだ。
誰かしらとパーティを組んでそれで戦ってると思う。そうじゃないとスライムは倒せない。
なんせ裏技を知ってないとな…ふふっ…
「お兄ちゃん、しっかりしてよー!」
「そ、そんな事言って!お前は異世界に来て、なにもしてないじゃないか!」
おっと、兄弟喧嘩が始まるなこれは
言っとくが俺は自称世界一頑固な男だからな
自分からは決して謝らない。
ガチャッ
「失礼しまーす」
……………ん?
『え、誰?』
俺と妹が口を揃えて言った。
すると俺らの宿部屋に入ってきた少女は
挙動不審レベルで動揺して
「あ!えっと、あの…その!ギルドのシルヴィさんから聞いて来ました!」
シルヴィ?
あぁ、あのギルドのカウンターの人か。
スライムの裏技を教えてくれた心優しい方だ。
「言われて来たって…どういうことだ?」
「ぁ、えっと!シルヴィさんが、最近この国に来た初心者さんがこの宿屋にいると言われまして!興味があってきました!」
興味があってってなんだよ!!
しかもあのシルヴィって人…
俺らがこの宿屋にいることなにさらっと他人にバラしてんだよ…全く、
「えっと〜、それであなたは何のようなんですか?」
妹が俺の肩上から顔をひょこっと出して言った。
「あ、あの!!突然なんですけど!!わ、私…わた、私を!!!」
なんだこの動揺具合…
なんかめんどくさい事に巻き込まれないといいが…
「仲間に入れてください!!!」
その瞬間世界が2秒ほど止まったような気がした。
仲間に入れてほしい?この人が?
なんだこの奇跡、やばいな
俺の普段の運の良さがこんな所で活躍するとは!
天の神の仕業じゃないことを祈っておこう…
「ほんとですか!!是非是非!私たちもお仲間さんが見つからなくて途方に暮れてたんですよ〜!!ね!お兄…ちゃん!!」
考え事をしてぼーっとしていた俺に
妹の平手打ちが決まってしまった。
痛い、いつの間にこんなテクニックを…
こりゃ借金取りなんて目じゃねぇだろ。
「あ、あぁ!ほんと助かる!俺は頼璋宇宙!それでこっちは俺の妹の頼璋芹那!よろしくな!」
「ちょっと!勝手に紹介しないでよ〜!」
ふくれっ面になった妹が俺を小さく叱る、
そしてその表情が緩み、ゆっくりと新仲間さんに目をやり、ニッコリ笑うと
「よろしくね!」
と言った。
そして、
その人は始めて人の心の温もりに触れた
とでも言いたげな顔をして
なんか泣き出した。
「あり、ありがとうございます…!私みたいな人…どのパーティにも入れてもらえなくて…!ほんと私雑魚だし…!ろくに戦えないから…ぐすっ…」
おいおい泣くのはやめてくれ
宿主に聞かれてたら俺があとからなんか言われる。
「大丈夫だよ、俺らも雑魚だからさ」
「もう!お兄ちゃんと一緒にしない…で!」
だから痛いってその平手打ち、
なに?お前の中で流行ってんの?それ
「ほんとにありがとうございます!私はペティラと言います!これから何卒、よろしくお願いします!」
なんだ、普通にいい人じゃないか
これだと、これから先も上手くやっていけそうだな。
でも敬語はあまり慣れてはいない
なんか変な感じがする。
「堅苦しいのとか嫌だからさ、タメ語でいいよ!あと名前も呼び捨てで結構だからね!」
そう俺が言うと、
彼女はさらに泣き出した。
おいおい、モンスターはもっと怖いと思うぞ?
そんなんで大丈夫なのかよ…
そんなことを思いながらも
俺は心の中で笑っていた、
面白くて笑っていたのではない
この状況が幸せだと言うことを実感した
微笑みだ。
「で、ペティラはこの宿屋に泊まるのか?」
そう俺が聞くと、ペティラは目を泳がせ、
「あー、いや…その…私、泊まるところないんだよね…お金持ってないし…」
まじですか。
おいおい、助けてあげたいのは山々だが
この宿屋で3人分泊まらせる料金なんて俺には…
ギリギリ足りた…
はぁ、全く運がいいのか悪いのか…
ということで今日はこの宿屋で
3人で一泊することになった。
ベッドは1つしかないのにさ、なんだこれ。
翌日、
床が硬い…
ベッドには妹が寝てる…
ズルすぎだろ、あいつ
ここは私のベッドだから入ってきた奴は平手打ちをくらわせるー!とか言って…
兄弟なんだから一緒に寝てもいいじゃねぇかよ…
とも思うが、
あの平手打ちをくらうのはもう二度と御免だ。
せめてもの嫌がらせに、と
「おーい起きろ…よ!!」
その勢いと同時に妹の体に巻きついていた
毛布を一斉に取り上げた。
あいにく今日はとてつもなく寒い日!!
さぁ、凍えてお兄ちゃんに詫びるがいい!
お兄ちゃん、布団返して?となぁ!
ふっははっははっは!!
「ぁ?」
平手打ちを20発ほどくらってきた。
体全体が痛い、
一番凶悪な魔物って妹なのかもしれない。
「お、おまへ…あとすこひ、ひたら、もんふはぁーほうはふ、いふからな。」
まともに喋れない、重症だ。
そしてペティラが起きた。
ペティラは何故かしらないけどトイレで寝てた。
過去になにかあったのかもしれない…
そこには触れないでおこう…
ペティラはトイレから出てくるなり
俺の顔を見て
「わ!だ、大丈夫!?魔物から襲撃されたの?!?それとも寝違えた!?」
いやここは街の真ん中だぞ、魔物なんて来るはずないだろ、あと、寝違えただけでこんな有様になるってどんな所で寝てんだよ俺。
「待ってて!今すぐ治すから!」
彼女はそう言うなり、呪文を唱えた。
「リカバリー!!!!」
そう彼女が呪文を唱えると
青い光が俺の体全体を包み込み、
そこに寝てる魔物からの攻撃で傷んでいた傷が回復していった。
やばい…
こいつ只者じゃないな…
凄い奴を仲間にしてしまったかもしれない…!
俺はペティラに興味が湧いて聞いてみた。
「な、なぁ!お前って他にどんな魔法使えるんだ?」
「え、今のリカバリーだけだよ?」
えっ?お前まじか?
なるほど…回復魔法だけか…
悪くは無い…悪くは無いぞ。
役割分担をして戦うことは大事なことだからな
こいつの場合回復を重視しているってだけのこと。
ただな…
俺のパーティは今の現状で言うと
攻撃出来るやつがほしいんですよね!!
今のところ僕のパーティ
・見てるだけ
・素手
なんですから!!
そこに回復が備わっても
負けはしないでしょうが
攻撃通じないんだから勝てもしないでしょうが!!
まぁ、そこのところは俺がなんとか攻略して
裏をついて小細工して
倒していくしかないか……
「それじゃあ、パーティ申請書を書きに行ってくれないか?」
「うん!じゃあ宇宙も一緒に…」
ん?この女は何を言っているんだ?
俺はまだ寝ていたいんだ1人でいってきてくれ。
「えっと…何故俺まで?」
「だって、パーティ申請書を書いて提出する時にはそのパーティのリーダーの承諾の証がないとダメなんだよね」
なんだそのめんどくさい設定…
この際、そこにいる魔獣セリナスベイゼバブルを叩き起して、
こいつをリーダーって事にして連れていきたいところだが…
兄の威厳ってもんを見せてやるぜ!!
そして
「寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い」
凍死しそう、やばい、
何度だこれ、完全に-10℃以下あるだろ…!
現実世界から転生されて服装もそのまま…
現状世界は7月の真夏だったから
半袖半ズボンなんだよ俺さぁ…!!
「ええ?そんなに寒い?あたしはそうでもないなぁ!」
お前はコートとか来てるし!
マフラーしてるし!!
手袋してるしさぁ!!
ていうかこいつこの国にきて
金全部それに使ったんじゃないだろうな…
もしそうだったら魔獣セリナスベイゼバブルの平手…
「ほら、ギルド着いたよ〜、中はあったかいだろうから、安心してねー」
そして俺は足をギルドへと踏み込んだ。
ガチャッ
あ、やばい、天国だわここ、
なんかめっちゃ人がいる。
みんながここに来たがる理由めちゃくちゃわかるわ。
タンスの角に小指ぶつけた時の痛みぐらい
共感出来るものがある!!
一生ここにいたい…あぁー
「ほら!!宇宙!いくよ!!」
「あ?あ、ぁあ…わかってるよ」
無理やり引っ張られてカウンターへと連れていかれた。
「昨日ぶりですねシルヴィさん!私!この人達のパーティに入ることにしました!パーティ申請書書きます!!」
そこにはシルヴィさんがいた
俺にとっては「スライムの裏技の人」というイメージしかない人物だ。
「ぉお!それはよかったです!では、こちらのパーティ申請書に記入をお願いします!」
そう言って申請書を渡すシルヴィ
そしてその紙に鼻歌を優雅に歌いながら記入するペティラ。
そして俺はここにきた意味を忘れないうちに聞いた。
「あの、シルヴィさん、リーダーの承諾って何すればいいんですか?」
「あ!はい!リーダーの承諾は髪の毛となっておれます!!」
……は?
この人は頭がおかしいんだろうか
それともギルドがおかしいんだろうか
それともこの世界がおかしいんだろうか。
なんだよ髪の毛って
DMA診断でもすんの?
意味が全くわからないんですがね。
「じゃ、一本お借りします」
ブチッ
「いってぇ!!!」
おいお前完全に今の一本じゃなかったぞ
10本ぐらい言ったよなおい、
あとお借りしますって言ったからには返せよ
俺の髪の毛返せよなお前、
「よし!書けた!はい、シルヴィさん」
「ありがとうございます!リーダー様の承諾も得られましたのであなたは、これからこのパーティの仲間となります!」
はぁ、なんかどっと疲れた…
「やったー!!改めてよろしくね宇宙!」
なんだこれ…
忠告したいけど
リーダーの承諾、髪の毛はやめといた方がいい。
髪の毛ない人もいるからさ、
髪の毛ない人は仲間もできないってか?
笑えない…
後書き
ついにペティラという仲間を持った頼璋。
使えるのは回復魔法だけ。
というかリカバリーだけ。
次は攻撃魔法が使える仲間に出会いたいと願う宇宙であったが、
ペティラの実力の試しに「G稼ぎに」再びモンスター討伐へ向かう。
そんな時、超巨大モンスターによって、3人の身にとんでもないことが起きる!
スライム討伐を果たした頼璋達だったが
獲得したGも経験値もほとんどなし!
それでもなんとか冒険者登録サービスで貰った1.000Gを使い、宿屋に泊まる事を決意する二人。
切羽詰まる二人。そんな時、とんでもないことが!
今ほどこの世界にきてくつろげる時はなかっただろう。
異世界に来て、走ったりギルド探したりスライムと戦ったり…
と休む暇が全然なかったのである。
今の俺たちが宿屋に泊まれるのは一回きり、
その分のお金しか持っていない。
ここで充分休んで明日またモンスター討伐に…
「芹那〜、また明日もモンスター倒しに行かないといけないからなー!しっかり休めよ〜」
俺がそう言うと
妹は疲れ果てた表情で、
「えぇ!?また行くの〜!?そりゃないよお兄ちゃん〜」
「仕方ないだろー!お金がないと寝る場所すらないんだからさー」
すると妹が頬を膨れさせて言った、
「お兄ちゃん、なにか忘れてない?」
なにか忘れてない?って言われてもな…
別にギルドの場所もギルドで言われたことも優男のお兄さんの事もスライムの倒し方も全然忘れてないのだが、芹那は何のことを言っているんだ?
そう俺が考え込んでいると、
「もー!お兄ちゃん!仲間探しをするの忘れちゃったの!?」
おっと忘れていた。
その事がすっぽり抜けていた。
兄としてなんという不覚…
「あぁ、ごめん!忘れてた!」
そうだ、俺たちがモンスターを毎日倒し続けて
数少ないお金で生活するのは困難を極める、
ていうか今のところ倒せるのはスライムぐらいだ。
ってことは俺たちスライム何万体倒せばいいんだよ…いや、何百万体か?
効率よく生活に慣れるためには
仲間を見つける必要があったのだ。
その為にギルドに言ったというのにほんとに忘れてしまっていた。
しかし仲間探しを再開したところで
現状は変わらないのだ。
どうやって仲間を見つければいい?
それを何度も試行錯誤したはずなのに
未だに答えが見つからない。
あぁ、このゲームマスターともあろうものが
いつからこんな貧相な脳みそになってしまったんだ…
「まさか、お兄ちゃん何も考えがないとか言わないよね…?」
図星は免れたが、ほとんどそれに近い
この前、ギルドを探している時にずっと考えていたのだ。
「え?ぁ、いいや!そんなわけないだろう!あの優男くんから紹介してもらうとかさ!あとー、初心者の草原にいけば、俺らと同じ初心者の人達がたくさんいるだろ?そこの人に声をかければ、同じ初心者として親密感が湧いて仲間になってくれるかもしれないだろ?」
どちらの案も悪くは無いと思うのだが
優男くんにこれ以上迷惑はかけたくない。
初心者の草原で仲間探すっていうのも、1人でスライム討伐に来てる馬鹿はいないと思うのだ。
誰かしらとパーティを組んでそれで戦ってると思う。そうじゃないとスライムは倒せない。
なんせ裏技を知ってないとな…ふふっ…
「お兄ちゃん、しっかりしてよー!」
「そ、そんな事言って!お前は異世界に来て、なにもしてないじゃないか!」
おっと、兄弟喧嘩が始まるなこれは
言っとくが俺は自称世界一頑固な男だからな
自分からは決して謝らない。
ガチャッ
「失礼しまーす」
……………ん?
『え、誰?』
俺と妹が口を揃えて言った。
すると俺らの宿部屋に入ってきた少女は
挙動不審レベルで動揺して
「あ!えっと、あの…その!ギルドのシルヴィさんから聞いて来ました!」
シルヴィ?
あぁ、あのギルドのカウンターの人か。
スライムの裏技を教えてくれた心優しい方だ。
「言われて来たって…どういうことだ?」
「ぁ、えっと!シルヴィさんが、最近この国に来た初心者さんがこの宿屋にいると言われまして!興味があってきました!」
興味があってってなんだよ!!
しかもあのシルヴィって人…
俺らがこの宿屋にいることなにさらっと他人にバラしてんだよ…全く、
「えっと〜、それであなたは何のようなんですか?」
妹が俺の肩上から顔をひょこっと出して言った。
「あ、あの!!突然なんですけど!!わ、私…わた、私を!!!」
なんだこの動揺具合…
なんかめんどくさい事に巻き込まれないといいが…
「仲間に入れてください!!!」
その瞬間世界が2秒ほど止まったような気がした。
仲間に入れてほしい?この人が?
なんだこの奇跡、やばいな
俺の普段の運の良さがこんな所で活躍するとは!
天の神の仕業じゃないことを祈っておこう…
「ほんとですか!!是非是非!私たちもお仲間さんが見つからなくて途方に暮れてたんですよ〜!!ね!お兄…ちゃん!!」
考え事をしてぼーっとしていた俺に
妹の平手打ちが決まってしまった。
痛い、いつの間にこんなテクニックを…
こりゃ借金取りなんて目じゃねぇだろ。
「あ、あぁ!ほんと助かる!俺は頼璋宇宙!それでこっちは俺の妹の頼璋芹那!よろしくな!」
「ちょっと!勝手に紹介しないでよ〜!」
ふくれっ面になった妹が俺を小さく叱る、
そしてその表情が緩み、ゆっくりと新仲間さんに目をやり、ニッコリ笑うと
「よろしくね!」
と言った。
そして、
その人は始めて人の心の温もりに触れた
とでも言いたげな顔をして
なんか泣き出した。
「あり、ありがとうございます…!私みたいな人…どのパーティにも入れてもらえなくて…!ほんと私雑魚だし…!ろくに戦えないから…ぐすっ…」
おいおい泣くのはやめてくれ
宿主に聞かれてたら俺があとからなんか言われる。
「大丈夫だよ、俺らも雑魚だからさ」
「もう!お兄ちゃんと一緒にしない…で!」
だから痛いってその平手打ち、
なに?お前の中で流行ってんの?それ
「ほんとにありがとうございます!私はペティラと言います!これから何卒、よろしくお願いします!」
なんだ、普通にいい人じゃないか
これだと、これから先も上手くやっていけそうだな。
でも敬語はあまり慣れてはいない
なんか変な感じがする。
「堅苦しいのとか嫌だからさ、タメ語でいいよ!あと名前も呼び捨てで結構だからね!」
そう俺が言うと、
彼女はさらに泣き出した。
おいおい、モンスターはもっと怖いと思うぞ?
そんなんで大丈夫なのかよ…
そんなことを思いながらも
俺は心の中で笑っていた、
面白くて笑っていたのではない
この状況が幸せだと言うことを実感した
微笑みだ。
「で、ペティラはこの宿屋に泊まるのか?」
そう俺が聞くと、ペティラは目を泳がせ、
「あー、いや…その…私、泊まるところないんだよね…お金持ってないし…」
まじですか。
おいおい、助けてあげたいのは山々だが
この宿屋で3人分泊まらせる料金なんて俺には…
ギリギリ足りた…
はぁ、全く運がいいのか悪いのか…
ということで今日はこの宿屋で
3人で一泊することになった。
ベッドは1つしかないのにさ、なんだこれ。
翌日、
床が硬い…
ベッドには妹が寝てる…
ズルすぎだろ、あいつ
ここは私のベッドだから入ってきた奴は平手打ちをくらわせるー!とか言って…
兄弟なんだから一緒に寝てもいいじゃねぇかよ…
とも思うが、
あの平手打ちをくらうのはもう二度と御免だ。
せめてもの嫌がらせに、と
「おーい起きろ…よ!!」
その勢いと同時に妹の体に巻きついていた
毛布を一斉に取り上げた。
あいにく今日はとてつもなく寒い日!!
さぁ、凍えてお兄ちゃんに詫びるがいい!
お兄ちゃん、布団返して?となぁ!
ふっははっははっは!!
「ぁ?」
平手打ちを20発ほどくらってきた。
体全体が痛い、
一番凶悪な魔物って妹なのかもしれない。
「お、おまへ…あとすこひ、ひたら、もんふはぁーほうはふ、いふからな。」
まともに喋れない、重症だ。
そしてペティラが起きた。
ペティラは何故かしらないけどトイレで寝てた。
過去になにかあったのかもしれない…
そこには触れないでおこう…
ペティラはトイレから出てくるなり
俺の顔を見て
「わ!だ、大丈夫!?魔物から襲撃されたの?!?それとも寝違えた!?」
いやここは街の真ん中だぞ、魔物なんて来るはずないだろ、あと、寝違えただけでこんな有様になるってどんな所で寝てんだよ俺。
「待ってて!今すぐ治すから!」
彼女はそう言うなり、呪文を唱えた。
「リカバリー!!!!」
そう彼女が呪文を唱えると
青い光が俺の体全体を包み込み、
そこに寝てる魔物からの攻撃で傷んでいた傷が回復していった。
やばい…
こいつ只者じゃないな…
凄い奴を仲間にしてしまったかもしれない…!
俺はペティラに興味が湧いて聞いてみた。
「な、なぁ!お前って他にどんな魔法使えるんだ?」
「え、今のリカバリーだけだよ?」
えっ?お前まじか?
なるほど…回復魔法だけか…
悪くは無い…悪くは無いぞ。
役割分担をして戦うことは大事なことだからな
こいつの場合回復を重視しているってだけのこと。
ただな…
俺のパーティは今の現状で言うと
攻撃出来るやつがほしいんですよね!!
今のところ僕のパーティ
・見てるだけ
・素手
なんですから!!
そこに回復が備わっても
負けはしないでしょうが
攻撃通じないんだから勝てもしないでしょうが!!
まぁ、そこのところは俺がなんとか攻略して
裏をついて小細工して
倒していくしかないか……
「それじゃあ、パーティ申請書を書きに行ってくれないか?」
「うん!じゃあ宇宙も一緒に…」
ん?この女は何を言っているんだ?
俺はまだ寝ていたいんだ1人でいってきてくれ。
「えっと…何故俺まで?」
「だって、パーティ申請書を書いて提出する時にはそのパーティのリーダーの承諾の証がないとダメなんだよね」
なんだそのめんどくさい設定…
この際、そこにいる魔獣セリナスベイゼバブルを叩き起して、
こいつをリーダーって事にして連れていきたいところだが…
兄の威厳ってもんを見せてやるぜ!!
そして
「寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い」
凍死しそう、やばい、
何度だこれ、完全に-10℃以下あるだろ…!
現実世界から転生されて服装もそのまま…
現状世界は7月の真夏だったから
半袖半ズボンなんだよ俺さぁ…!!
「ええ?そんなに寒い?あたしはそうでもないなぁ!」
お前はコートとか来てるし!
マフラーしてるし!!
手袋してるしさぁ!!
ていうかこいつこの国にきて
金全部それに使ったんじゃないだろうな…
もしそうだったら魔獣セリナスベイゼバブルの平手…
「ほら、ギルド着いたよ〜、中はあったかいだろうから、安心してねー」
そして俺は足をギルドへと踏み込んだ。
ガチャッ
あ、やばい、天国だわここ、
なんかめっちゃ人がいる。
みんながここに来たがる理由めちゃくちゃわかるわ。
タンスの角に小指ぶつけた時の痛みぐらい
共感出来るものがある!!
一生ここにいたい…あぁー
「ほら!!宇宙!いくよ!!」
「あ?あ、ぁあ…わかってるよ」
無理やり引っ張られてカウンターへと連れていかれた。
「昨日ぶりですねシルヴィさん!私!この人達のパーティに入ることにしました!パーティ申請書書きます!!」
そこにはシルヴィさんがいた
俺にとっては「スライムの裏技の人」というイメージしかない人物だ。
「ぉお!それはよかったです!では、こちらのパーティ申請書に記入をお願いします!」
そう言って申請書を渡すシルヴィ
そしてその紙に鼻歌を優雅に歌いながら記入するペティラ。
そして俺はここにきた意味を忘れないうちに聞いた。
「あの、シルヴィさん、リーダーの承諾って何すればいいんですか?」
「あ!はい!リーダーの承諾は髪の毛となっておれます!!」
……は?
この人は頭がおかしいんだろうか
それともギルドがおかしいんだろうか
それともこの世界がおかしいんだろうか。
なんだよ髪の毛って
DMA診断でもすんの?
意味が全くわからないんですがね。
「じゃ、一本お借りします」
ブチッ
「いってぇ!!!」
おいお前完全に今の一本じゃなかったぞ
10本ぐらい言ったよなおい、
あとお借りしますって言ったからには返せよ
俺の髪の毛返せよなお前、
「よし!書けた!はい、シルヴィさん」
「ありがとうございます!リーダー様の承諾も得られましたのであなたは、これからこのパーティの仲間となります!」
はぁ、なんかどっと疲れた…
「やったー!!改めてよろしくね宇宙!」
なんだこれ…
忠告したいけど
リーダーの承諾、髪の毛はやめといた方がいい。
髪の毛ない人もいるからさ、
髪の毛ない人は仲間もできないってか?
笑えない…
後書き
ついにペティラという仲間を持った頼璋。
使えるのは回復魔法だけ。
というかリカバリーだけ。
次は攻撃魔法が使える仲間に出会いたいと願う宇宙であったが、
ペティラの実力の試しに「G稼ぎに」再びモンスター討伐へ向かう。
そんな時、超巨大モンスターによって、3人の身にとんでもないことが起きる!
「コメディー」の人気作品
書籍化作品
-
-
24251
-
-
157
-
-
3395
-
-
310
-
-
238
-
-
267
-
-
516
-
-
0
-
-
2
コメント