草も生えない冒険譚

たかし

2話【冒険】

前書き


優男に力を借りて、この世界のことを少しだけ学ぶ、金を入手し、寝床を確保するためにモンスター討伐をしなければならないが戦う力がない頼璋達はギルドへと向かう。



「なぁ…芹那、これからどうする?」

「どうするって…ここはお兄ちゃんが妹をリードしてあげるもんでしょ?」

「お前なぁ…デートじゃないんだから…」

そんな陽気な会話をしている暇はない事はわかっていた。
時間は刻一刻と迫っている。
俺らは何としても今日中に金を入手し
宿に止まるなどして、寝床を確保しなければならないのだ。
しかし俺らはモンスターとも戦えない。
ならば心強い仲間を持てばこれから先なんとかなりそうだ。

「よし、仲間を探しに行くぞ妹よ」

「でも、どうやって?」

そうだ、仲間探しに行くと言っても
どうやって仲間を見つけるのかわからない。
募集の貼り紙?いや、見た限りそんなことをしてる人はいないから不審がられるな、逆効果だ。

「もしかしたら、そういう初心者にも優しい案内所みたいな所があるかもしれない、探してみよう。」

そんなものがあるという確信はないが
多分、ある、そう信じてる。
異世界すらにも見捨てられたら俺は生きていけない。

実はこの時のために
あのイケメン優男くんから地図を貰っていたのだ。
ほんとに感謝してもしきれない思いだ。

とりあえずこれを頼りに進んでいけばいいのか、
この大きな建物に行けばいいのか…?
よくわからないが虱潰しにそれっぽいところを、進んでいけばいいのかな?
そんな時間がないことはわかっているが
これしか方法がない。

「よし、芹那!ひとまずこの地図のここに書いてある大きな建物に行こうぜ」

「了解でーす」

そんなこんなでやっと進み始めた俺たちの冒険。
こんなグダグダな様子でほんとに大丈夫なのだろうか?
まだまだこの世界ではわからない事だらけだ
まだ俺の異世界での力はなにも解放してない
足が早いだけの高校生だ。
そんな奴に仲間になってくれる人なんているのだろうか?
考えても仕方ないか…

そして俺たちは地図の通りに大きな建物に辿り着いた。

「お兄ちゃん!着いたよ!」

看板に大きく「ギルド」と書かれている。
おそらくここだろう。
それにしてもほんとに大きいな…
まぁこの街の全冒険者がここでなんだかんだやってる場所だもんな、そりゃそうか。

今でも中に大勢の冒険者がいるだろうが
俺は入ることを決心した。

「よし、行くぞ。」

そして俺はドアに手をかけた。

ガチャッ…

中には防具武装した人やゴッツイ斧を持った人、
杖を持った人などさまざまな人がいる。
俺らは丸腰の上、ただの私服だ。
この中の場違い感に打ち勝って
案内所のカウンターに行き、

「あの、僕達、ここ始めてくるんですけど、ここは何をするところなんでしょうか?」

「そうでしたか、では簡単に説明させていただきます。」

俺はその人の説明を一言一句聞き逃さないように
それこそ耳をかっぽじって聞いた。

そしてひとまず説明は終わった。
まとめると、

魔石=モンスターを倒すと入手できる、モンスターの強さによって大きさも異なる、魔石もカウンターに持っていけば経験値が貰え、ランクを上げることができる。大きければ大きいほど経験値も多い。

パーティ=最大何人まででも可能、パーティに入れたい人がパーティ申請書を書いてカウンターに提出すれば、正式にパーティの仲間になることができる。

モンスター=人間離れした見た目、力を持つ、冒険者を見つけると問答無用で襲いかかってくる性格の悪い魔物。

ギルド=今俺らがいる場所のこと、冒険者達のサポートをしてくれる((ry

ほかにも
防具屋、生産屋、鍛冶屋、道具屋、武器屋、などがあるらしい。

ランク=FからSまであるらしい。

ざっとまとめるとこんな感じ。
妹は横で頭がパンクしそうとでも言いたげな表情をしている。

「え、え?ちょっとなにがなんだかわからないよお兄ちゃん…」

しかし、俺は大丈夫だ。
なんて言ったってゲームマスターだからな
この手のゲームを想像すればなにもおかしくはない。

「冒険者登録しときますね。」

よし、俺らもようやく冒険者か
冒険者じゃなくても生活できればよかったんだが
せっかくこの世界に来たんだから
エンジョイしときたいよなぁ

と考えてると、カウンターの人から冒険者登録サービス名とやらで1.000G貰った。
なんて親切な施設だ。
ひとまず今日の寝床はなんとかなりそうだな。
飯もギリギリなんとかなりそうだ。
今日一日宿屋にいてもいいのだが、仲間探しをしてることを忘れてはいけない。

ギルドにいる冒険者に声をかけるという案も浮かんだが、流石にこのみっともない姿でそんなおこがましい事は言ってられない、
言い方は悪いが、もうちょっと弱そうな人を…

「ちょっとお兄ちゃん!!なんで私まで冒険者登録しちゃってんの!」

「えっ?お前冒険者になりたくなかったのか?」

これは予想外だった。
まぁ妹の意志だ、仕方がない。
芹那の冒険者登録を解除してくるか。

「…あっ…」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「冒険者登録解除するのに2.000G必要って…」

サービス精神どこいったんだよギルド…

「ぇー!まぁ仕方ないよ!今は冒険者のままでいてあげる!」

結局は金がものを言うのか…
その世界の常識に肩を落とす。

これからどうするかは決まっていないが
とりあえず戦闘に慣れておきたいと思う。
仲間になった人にも同じ戦闘で俺の役立たずっぷりに愛想つかされてしまわないように…

「芹那!少しモンスターを討伐しに行くが、どうする?」

できれば妹には危険な事はさせたくはないが
妹も冒険者である以上、強くなってもらわなければ、俺だけでは守れない。

「ん?まぁ弱いモンスターならいいよ!!」

もちろん雑魚中の雑魚と戦いにいくつもりだ。

先程カウンターの人に密かに聞かされていたことがある。
初心者でも討伐できるモンスター「スライム」の話を。
まぁ確かにゲームでも定番の雑魚モンスターだが、今俺は武器も防具もしてない、魔法も使えない、ステータスも弱い。
こんな状態でほんとに討伐できるのか?
まぁ秘策はあるんだけど…

今から行く場所は「初心者の草原」。
なんだこの名前、そのまんまの意味だ。
もうちょっと考えて名前つけてほしい…

初心者の草原はその名の通り、
弱いモンスターが出現していて
初心者に優しい所となっている。
初心者の草原はギルドからそう遠くない場所にあるため、誰でも歩いて行くことができる。

「ねぇ、お兄ちゃん、ほんとに勝てるの?」

妹が不安な表情を浮かべて俺に言った

「ぁあ!きっと大丈夫!」

なんの確信もないのに
この自身はどこから湧いてくるんだろう…



そして初心者の草原についた。
清々しいそよ風が吹いている。
木の根元で一眠りしたくなるぐらい優雅だ。
よく見ると冒険者達がモンスターと戦ってる様子が見える。
一見、見た感じだと
確かに弱そうなモンスターしかいないようだ。
これならなんとかなりそう!

「よし!戦闘開始だ!」

スライムを発見した。
どうしようか、緑色の液の塊みたいなのがうねうね動いている。
気持ち悪いな。
とりあえず殴ってみるか。

〘宇宙はスライムを殴った。〙

柔らかいな
多分こいつ打撃技効かないんじゃないか
まだピンピンしてるし
攻撃が吸われていってるような気がする。
こういったゲームの主人公は基本的に最初に武器を貰う、その武器でスライムを討伐していく。
俺らには拳しかない。
酷くないかこの扱い。

芹那の方に目をやると
めちゃくちゃ震えたような目と表情で
がくがく震えている

「芹那〜?どうしたんだ〜?」

「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…」

まぁ気持ちも分からなくはないが
やはり女性にはきつかったか。

仕方ない、奥の手を使うか。
この手は少し俺でも気持ち悪いからやりたいなかったんだが…
カウンターの人にスライムの情報をもらった時に討伐方法を教えて貰った。
その討伐方法とは
スライムの体の中に手を入れ、スライムの心臓部に当たる「コア」のような物を取り出し破壊する。
そうすればスライムの生命循環が機能しなくなり倒すことができるようだ。
カウンターの人は説明してる時嘔吐しそうな顔してた。

ひとまずスライムの中に手を…

うぇ、ほんと気持ち悪いなこいつ
ぬるぬるして死にたくなる。

「お、お兄ちゃん!?なにしてるの!?」

まぁ妹が驚くのも無理はないか、

「こいつを倒すにはこうするしかないんだー」

それで、心臓部は…っと
お、あったあったこれか
思ったより硬いな…「コア」って名前の由来がわかったような気がする。
よし、取り出せたな
それでこれをこうやって

バリィッッ!!

俺はスライムのコアを踏み砕いた。

〘スライムを倒しました。 〙

スライムを倒しただけなのにめちゃくちゃ嬉しいんだが、病気かな?

「やったねお兄ちゃん〜!!」

妹が奥の方から走ってきた
いやそんなにスライムのこと嫌だったのかよ!!

そして倒したスライムの方を見ると
魔石が落ちてる、小さい。
なんだこの蟻レベルよ小ささ
経験値1も貰えなさそうなんだが…

まぁいいか、目的は戦闘に慣れることだし

っていうかさっきのスライム襲ってこなかったな…
どうしてだ?


そしてギルドに戻った。

「初討伐おめでとうございます!」

「ありがとう、それで聞きたいんだが、俺スライムに襲いかかられなかったんだけどなんでだ?」

「あー、スライムは女性しか襲わないんですよ。」

スライム性格わりぃ!!
あやうく妹が危ないところだった…
俺はもう二度とあのモンスターとは関わりたくないと思った。気持ち悪い。



後書き


ついに初討伐を果たした頼璋。
疲れきった頼璋は宿屋に泊まることに、
そしてくつろぎを得ていたが
そこに衝撃の展開が…!!

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