転生召喚士の成り上がり~初めては神獣でした~

雪桜 尚

魔力かしてくんない?

俺は、限界の近い体を引きずって最前線に赴いた。
そこでは、エリィ、アーサー、キシリカが満身創痍でオークの大進行を食い止めていた

「エリィ、アーサー、キシリカ!!大丈夫か?」
「む?マスターか!!このままではじり貧だ!!」
「主よ !エリィを下がらせてくれ!!」
「わかった!!エリィ下がれ!!」
「でもっ!」
「いいから」

俺はエリィを休ませる。

「エリィ、俺は今から武器を一つ召喚する。それでお前が抜けた穴を埋めるから、お前は大規模殲滅魔法の詠唱を頼む。発射は俺の合図な」
「分かりました」

俺は、召喚魔法を準備する。

召喚サモン大秘宝アーティファクト!!」

すると、俺の脳内に一つのウィンドウが開いた。

この召喚にはMPではなくHPを消費しますがよろしいですか?

「問題ない!!こい、MGPへカートⅡ」

俺は何となく、ソシャゲで使っていたアンチマテリアルライフルの名前を叫んだ。
直後、魔方陣が浮かび上がり、その輝きが増すと同時に俺の体から大量の血が流れ出た。

「ご主人様!!!」

エリィが俺に向かって駆け寄ってくるのが見える。
その瞬間、目を覆うほどの光が魔方陣から発せられ、俺の手には、先ほど叫んだMGPへカートⅡが握られていた。

「おお、ほんとに来た」

俺はすぐに地面に付せ、スコープを覗き込む。
へカートⅡに魔力を流し込む。
使い方は本能的にわかっていた。

「エリィ、詠唱を始めてくれ」
「了解しました」

俺は狙いを定め、トリガーを引いた。

ドギャァァン!!!

放たれた魔力弾は滑らかに進んでいき、オークの眉間に吸い込まれた。
そのままの流れで、周りのオークの眉間も打ち抜いていく。

「今の攻撃はマスターか?」
「おお、その通りだ。危ないから当たらないようにな」
「当たり前だ。そんなものが当たれば私とてただではすまん」

「エリィ、詠唱完了まであとどれくらいかかる」
「残り三十秒」
「キシリカ、アーサー!!三十秒後の俺の砲撃で離脱、エリィの魔法を打ち込む」

俺は三十秒後の砲撃に備えてへカートⅡ魔力を流し込む。
俺の残り魔力から考えて、これがラストの砲撃になるだろう。

「ご主人様、出来ました」
「分かった」

詠唱が終わり、再度狙いを定める。
俺はトリガーを引く。

ドギャァァン!!!

あたりにへカートⅡの砲撃音が響き渡った。

「キシリカ殿!!離脱だ!」
「分かっておるわ」

ドンっと力強く地面を蹴り、俺の隣まで大ジャンプする。

「いけぇ、エリィ」
「はい!! 轟け迅雷 駆けろ旋風 舞い散れ命の灯よ 風神爆雷シャイドボルテクス!!!」

戦場に突如竜巻が現れ、オークを巻き上げた。そして雷が地に降り注ぎ、巻き込まれなかったオークの命を散らしていく。

「おお、すげぇ、な」

俺はそこまで行って気が抜けたのか、完全に意識を失てしまう。

「ご主人様!!」
「マスター!!」
「主!!」

三者三様の叫び声をあげ俺にかけやってくるのを最後に少しだけ見ることが出来た。

俺は、頭の下にある天国のような感触で目を覚ました。
そこには俺の顔を心配そうに見つめこんでくる三人の姿があった。

「ご主人様!!体は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「良かった……ほん、とに良かった」

俺の頬に三粒のしずくが落ちる。
それは三人の流した安堵の涙だった。

「お、おい。泣くなよな」
「だ、だってぇ~」

日ときは大泣きしているのがエリィである。
やはりほかの二人はこの戦いので生み出したが、エリィはそれよりも長い間過ごしていたからだろう。
それにしても、なぜこの二人まで泣いているんだろうか?

「なくなって。そんな顔されると俺も悲しくなるだろ、だから笑え」

俺はそういってエリィの頭をなでる。ぷにぷにした耳が手にあたって気持ちよかった。

「分かりました、ご主人様がそういうなら笑います」

エリィはパッと花のような笑顔を咲かせるのだった。

「ほら、避難させたあいつらを迎えに行こうぜ」
「「「はい」」」

俺はそういったもののはにかんでこういった。

「その前に、魔力貸してくんない?」
「「「はぁ」」」

今度は盛大にため息をつかれたのだった。


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