転生召喚士の成り上がり~初めては神獣でした~

雪桜 尚

何かほしいものでもあるか?

「んぁあ、良く寝た」

俺は朝起きたばかりで動かない体を伸ばし血を行き渡らせる。
そこである一つの違和感に気が付く。

「ここ、どこだ?」

そこには見みなれない光景が広がっていた。
俺が住んでいたはずの六畳一間のぼろアパートは見る影もなく、最高級ホテルのスウィートルームのような空間が広がっている。
体もなら親しんだおっさんのそれではなく十五~十七くらいの青年のそれになっていたからだ。

「お?」

突如として目の前の空間が歪んで見える。
そして、俺の意識がどこかに飛んで行った。

「はろー」

そこは、高級ホテルのスウィートルームから懐かしい田舎のおばあちゃんがいそうな空間だった。
そして、そこには白いひげを蓄えたおじいちゃんがお茶をすすっていた。

「な、な、な、なんだぁあ!!?」
「そ、そんなに驚かなくてもよかろう、わしはこの世界の転生神、ゼウスじゃよ」
「は、はぁ……俺は、深山海人です」

俺は、しどろもどろになりながらも、自己紹介をする。

「すまんのぉ、深山君」
「何がですか?」
「あれ?君気づいてないの?君、転移したんだよ?」

『転移』と聞いて少し興奮してしまう。東京でさえないサラリーマンしていた俺だが、ライトノベルなどをたしなんでいたため、『転生』『転移』などと聞くと少しそそられてしまう。

「マジですか?」
「マジです」
「てことは、祝福ギフトがもらえる的な?」
「そうじゃ、そうじゃ」

うっし!転移特典キター!!

「何かほしいものでもあるか?」
「召喚魔法」

即答だった。それはもう早かった。

「ほう、召喚魔法か……珍しいのう」
「そうですか?」

異世界転移で召喚魔法とかテンプレな気がするが……

「ここに来た奴は超強力な魔法とか、神剣とか頼んでいくんじゃがな」
「そうなんですか」

どうやら、ほかにも転移者が俺の他にもいるらしいな。

「よし、準備が出来た。今から君に召喚魔法を授ける。あと、祝福ギフトを授ける前に転生させちゃったからそのお詫びも含めて、召喚魔法を使えるくらいの魔力を授けておこう」

ゼウスが俺に指を向けるとその先から光の玉が現れ、俺の体に吸い込まれていった。

「それでは、君の人生に栄光あらんことを」

また、目の前の空間が歪み意識がどこかへ飛んで行った。
俺が飛んで行ったあと、ゼウスは一人呟く。

「あの少年がどんな人生を送るのかみものじゃのう、わしを楽しまれてくれるといいんじゃが」

この時、深山海人があれ程までに面白い人生を送るとは露ほどにも思っていなかった。

「お?帰ってきたな」

俺はおばあちゃんの部屋からスウィートルームに帰ってきていた。

「そいえば、ここがどこなのか聞くのを忘れたな……」

俺はここにきてゼウスにこっちのことを何も聞かなかったのを激しく後悔したのだった。

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