魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第137陣明日へ生きる糧
あれからネネは本当にその場から動こうとはしなかった。彼女は何度か私に話しかけてきたものの、それを全部私は無視。何もしない時間だけがただ無駄に過ぎるだけだった。
「ねえ、いつまでそこにいるつもりなの? 私は帰らないって言っているでしょ」
「お姉様が戻ると決めるまで動くつもりはありません」
「そろそろいい加減にしてよ! 一人にしてほしいって言っているじゃん」
「それはお姉様の本当の言葉ですか? 本当は帰りたいんじゃないんですか?」
「そんなわけ」
「なら、どうしてずっと安土城の近くにいるんですか?」
「え?」
ネネが何を言っているか一瞬分からなかった。だけどすぐにその言葉の意味が分かる。
(私遠くに行ったつもりだったけど、まだ離れられていなかったんだ……)
「それは別にたまたまだよ。別に意識なんてしていなかったし」
「それがお姉様の本当の気持ちって事じゃないんですか? だからそれが行動に出たんですよ」
「だから違うって言っているじゃん! もう放っておいて!」
ネネの言葉にイライラする事しかできない私が情けなってくる。でも。今の私に誰かの言葉を必要としていないし、誰かの助けも必要としない。ヒッシーだってこんな私を見捨てているだろうし、私にはもう頼れる人もいないし頼る必要もない。
これから私は一人で生きる。
そう決めたのだから、ネネが何を言おうと私は……。
「ヒデヨシ」
「もういい加減に」
「いい加減にするのはお前の方だよヒデヨシ」
「……え?」
ネネではない声に、私はずっと俯いていた顔を上げる。そこにはネネとは代わって、ヒッシーの姿がそこにはあった。
「ヒッシー…?」
「今すぐに帰るぞヒデヨシ」
突然の事に驚いている私の腕をヒッシーは掴む。雨の中やって来たからなのか、その手はすごく冷たい。
「私は帰らないよ、ヒッシー」
「何を言っているんだよ、今すぐ帰るんだよ」
「嫌だよ、だって私」
「ノブナガさんが目を覚ましたんだよ、もう残されている時間が少ないからお前も顔を見せろ」
「ノブナガ様が? でも私やっぱり行けない。行きたくないよ」
「馬鹿野郎! 一生後悔することになるぞ。それでもお前はいいのか? お前はノブナガさんの一番の重臣じゃないのか?」
「それは私よりヒッシーの方が向いているよ」
自暴自棄になってやさぐれる私。そんな私に対して、ヒッシーは……。
「しっかりしろよ、ヒデヨシ!」
私の頬を叩いた。
「お前、そんなにノブナガさんの事が嫌いになったのか?」
「違うよ、そんな事は絶対にない! ただ私は、好きな人が亡くなるのが嫌なの! ノブナガ様もヒッシーも……。もう会えなくなるなんて考えたくない!」
「お前のその気持ちは理解できる。だけどそのまま逃げて、別れの言葉すらいえないまま一生会えなくなるんだぞ。それでもお前はいいのか?」
「っ!? それは……」
「いいかヒデヨシ、人はいつかは死ぬんだ。俺も何度も大切な人がいなくなる瞬間を見てきた。その度に辛くなったし、立ち直れなくなることだってあった。でもそれは明日へ生きる糧になるんだよ」
「私はヒッシーみたいに強くない。もう、私は耐えられないよ……」
「だったら強くなれ。お前はこの先ノブナガさんの意思を継いで生きていくんだから」
ヒッシーのその言葉に私は我に返る。
(私がノブナガ様の意思を継ぐ?)
こんなにも弱い私が?
「私にできるの? そんな大きなこと」
「ああ、できるさ。ノブナガさんもそう言っていた」
「ノブナガ様が?」
「さっき言っていたよ、お前なら意思を継げるって」
■□■□■□
「最後の言葉なんてどうしてそんな事を言うんですかノブナガさん!」
三日ぶりに聞いたノブナガさんの声。それはとても弱くて、今すぐに消えてしまいそうだった。
「残念ですが……もう私には時間が残っていないんです……。少しだけ無理して……生きていましたから……」
無理をして生きた。
それはきっと余命を過ぎても戦場に出て、戦い続けてきたことを言っているのだとすぐに分かった。その代償が今この時に来てしまったのだと考えると、気づけなかった自分が本当に情けなく感じてしまう。
「どうしてノブナガさんは嘘をついたんですか? 本当は残された時間がもっと短かったことを」
「皆さんに心配させたくなかったんです……。私がもう長くない事を知ったらきっと…気を遣わせてしまうと思いましたから……」
その言葉を聞いて胸が痛くなる。病の事で逆にノブナガさんに気を遣わせてしまっていただなんて考えると、本当に情けない。でももし仮に、この話を早めに知れたとして俺に何かできたのだろうか。マルガーテの件もあって、もしかしたら気を止める事も出来なかったのかもしれない。結果によっては、その事すら知れないまま俺はノブナガさんを殺してしまっていた可能性だってある。
(でも知らなかった方が本当は)
皆が幸せだったのかもしれないとすら思えてきてしまう。
「本当はヒデヨシさんにも私自身の言葉で伝えたかったのですが……、それも叶いませんね。あの子には私の意思を託したかったのですが……」
「ヒデヨシにノブナガさんの意思を?」
「……ヒスイも居なくなってしまうとなると最終的に……ヒデヨシさんが私の意思を継ぐことになりますから……」
「だったら俺今からヒデヨシを探して、必ずノブナガさんの元に連れてきます! ですから、それまでは生きてください。そうでないと、ヒデヨシも絶対に後悔しますので」
「ヒスイ……」
「いいですか、絶対に頑張ってください! このまま別れるなんて、俺も絶対に嫌ですから」
俺はノブナガさんの想いに応えるために、急いでヒデヨシを探しに向かった。外はいつにもまして大雨だったけれど、そんな事は気にしない。ノブナガさんのため、ヒデヨシの為に俺は雨の中を走り出していた。
そして探す事一時間。ようやくヒデヨシの姿を見つけたのだった。
「私が本当にノブナガ様みたいな人間になれるの? 私が意思を継げるの?」
「ああ、俺もできると信じているよ」
俺はここまでの経緯を全てヒデヨシに話し、いかにノブナガさんがヒデヨシの事を考えているかを伝えた。それでもヒデヨシは、すぐに動こうとしない。
(ヒデヨシの気持ちは分からなくはないけど……)
ここまでぐずられると、俺もいら立ちを隠せない。
「ねえヒッシー、一つだけ約束してほしい事があるの」
「約束?」
「ノブナガ様が居なくなった後、すぐにヒッシーも居なくなったりしないでね。私耐えられないから」
「……ああ」
その約束を俺が絶対に守れるかは分からないが、俺もそんな簡単に倒れるつもりはないのは確かだ。それはヒデヨシのためとかそういうのではなく、まだここに居たいという俺の意思があるからだ。ノブナガさんが俺達に残してくれたこの場所に、もう少しだけ俺はいたい。
「ノブナガ様はまだ生きてくれているんだよね?」
「一時間は経っているけど、必ずお前を連れてくるって約束したから心配するな」
「分かった」
ようやく立ち上がるヒデヨシ。彼女は自分の乗って来た馬にまたがり、俺の方を見る。
「どうした?」
「ありがとうヒッシー、私の事考えてくれて」
「当然だろう。お前は大事な仲間なんだから」
「仲間……そうだよね」
そういうとヒデヨシは馬を安土城へと向けて走らせた。俺もその後を追おうと、自分の馬にまたがる。
「私がいくら言っても動かなかったのに、流石ですね」
ヒデヨシと話をしている間立ったままだったネネがそんな言葉をもらす。
「真っ先に動いたお前の方がすごいと思うぞ、ネネ」
「私は何にもすごくない……。お姉様を傷つけてばかりで」
「そう思っているのは、意外とお前だけかもしれないぞ」
「え?」
最後に俺はネネにそう言い残すと、ヒデヨシを追って安土城へと馬を走らせた。
「ねえ、いつまでそこにいるつもりなの? 私は帰らないって言っているでしょ」
「お姉様が戻ると決めるまで動くつもりはありません」
「そろそろいい加減にしてよ! 一人にしてほしいって言っているじゃん」
「それはお姉様の本当の言葉ですか? 本当は帰りたいんじゃないんですか?」
「そんなわけ」
「なら、どうしてずっと安土城の近くにいるんですか?」
「え?」
ネネが何を言っているか一瞬分からなかった。だけどすぐにその言葉の意味が分かる。
(私遠くに行ったつもりだったけど、まだ離れられていなかったんだ……)
「それは別にたまたまだよ。別に意識なんてしていなかったし」
「それがお姉様の本当の気持ちって事じゃないんですか? だからそれが行動に出たんですよ」
「だから違うって言っているじゃん! もう放っておいて!」
ネネの言葉にイライラする事しかできない私が情けなってくる。でも。今の私に誰かの言葉を必要としていないし、誰かの助けも必要としない。ヒッシーだってこんな私を見捨てているだろうし、私にはもう頼れる人もいないし頼る必要もない。
これから私は一人で生きる。
そう決めたのだから、ネネが何を言おうと私は……。
「ヒデヨシ」
「もういい加減に」
「いい加減にするのはお前の方だよヒデヨシ」
「……え?」
ネネではない声に、私はずっと俯いていた顔を上げる。そこにはネネとは代わって、ヒッシーの姿がそこにはあった。
「ヒッシー…?」
「今すぐに帰るぞヒデヨシ」
突然の事に驚いている私の腕をヒッシーは掴む。雨の中やって来たからなのか、その手はすごく冷たい。
「私は帰らないよ、ヒッシー」
「何を言っているんだよ、今すぐ帰るんだよ」
「嫌だよ、だって私」
「ノブナガさんが目を覚ましたんだよ、もう残されている時間が少ないからお前も顔を見せろ」
「ノブナガ様が? でも私やっぱり行けない。行きたくないよ」
「馬鹿野郎! 一生後悔することになるぞ。それでもお前はいいのか? お前はノブナガさんの一番の重臣じゃないのか?」
「それは私よりヒッシーの方が向いているよ」
自暴自棄になってやさぐれる私。そんな私に対して、ヒッシーは……。
「しっかりしろよ、ヒデヨシ!」
私の頬を叩いた。
「お前、そんなにノブナガさんの事が嫌いになったのか?」
「違うよ、そんな事は絶対にない! ただ私は、好きな人が亡くなるのが嫌なの! ノブナガ様もヒッシーも……。もう会えなくなるなんて考えたくない!」
「お前のその気持ちは理解できる。だけどそのまま逃げて、別れの言葉すらいえないまま一生会えなくなるんだぞ。それでもお前はいいのか?」
「っ!? それは……」
「いいかヒデヨシ、人はいつかは死ぬんだ。俺も何度も大切な人がいなくなる瞬間を見てきた。その度に辛くなったし、立ち直れなくなることだってあった。でもそれは明日へ生きる糧になるんだよ」
「私はヒッシーみたいに強くない。もう、私は耐えられないよ……」
「だったら強くなれ。お前はこの先ノブナガさんの意思を継いで生きていくんだから」
ヒッシーのその言葉に私は我に返る。
(私がノブナガ様の意思を継ぐ?)
こんなにも弱い私が?
「私にできるの? そんな大きなこと」
「ああ、できるさ。ノブナガさんもそう言っていた」
「ノブナガ様が?」
「さっき言っていたよ、お前なら意思を継げるって」
■□■□■□
「最後の言葉なんてどうしてそんな事を言うんですかノブナガさん!」
三日ぶりに聞いたノブナガさんの声。それはとても弱くて、今すぐに消えてしまいそうだった。
「残念ですが……もう私には時間が残っていないんです……。少しだけ無理して……生きていましたから……」
無理をして生きた。
それはきっと余命を過ぎても戦場に出て、戦い続けてきたことを言っているのだとすぐに分かった。その代償が今この時に来てしまったのだと考えると、気づけなかった自分が本当に情けなく感じてしまう。
「どうしてノブナガさんは嘘をついたんですか? 本当は残された時間がもっと短かったことを」
「皆さんに心配させたくなかったんです……。私がもう長くない事を知ったらきっと…気を遣わせてしまうと思いましたから……」
その言葉を聞いて胸が痛くなる。病の事で逆にノブナガさんに気を遣わせてしまっていただなんて考えると、本当に情けない。でももし仮に、この話を早めに知れたとして俺に何かできたのだろうか。マルガーテの件もあって、もしかしたら気を止める事も出来なかったのかもしれない。結果によっては、その事すら知れないまま俺はノブナガさんを殺してしまっていた可能性だってある。
(でも知らなかった方が本当は)
皆が幸せだったのかもしれないとすら思えてきてしまう。
「本当はヒデヨシさんにも私自身の言葉で伝えたかったのですが……、それも叶いませんね。あの子には私の意思を託したかったのですが……」
「ヒデヨシにノブナガさんの意思を?」
「……ヒスイも居なくなってしまうとなると最終的に……ヒデヨシさんが私の意思を継ぐことになりますから……」
「だったら俺今からヒデヨシを探して、必ずノブナガさんの元に連れてきます! ですから、それまでは生きてください。そうでないと、ヒデヨシも絶対に後悔しますので」
「ヒスイ……」
「いいですか、絶対に頑張ってください! このまま別れるなんて、俺も絶対に嫌ですから」
俺はノブナガさんの想いに応えるために、急いでヒデヨシを探しに向かった。外はいつにもまして大雨だったけれど、そんな事は気にしない。ノブナガさんのため、ヒデヨシの為に俺は雨の中を走り出していた。
そして探す事一時間。ようやくヒデヨシの姿を見つけたのだった。
「私が本当にノブナガ様みたいな人間になれるの? 私が意思を継げるの?」
「ああ、俺もできると信じているよ」
俺はここまでの経緯を全てヒデヨシに話し、いかにノブナガさんがヒデヨシの事を考えているかを伝えた。それでもヒデヨシは、すぐに動こうとしない。
(ヒデヨシの気持ちは分からなくはないけど……)
ここまでぐずられると、俺もいら立ちを隠せない。
「ねえヒッシー、一つだけ約束してほしい事があるの」
「約束?」
「ノブナガ様が居なくなった後、すぐにヒッシーも居なくなったりしないでね。私耐えられないから」
「……ああ」
その約束を俺が絶対に守れるかは分からないが、俺もそんな簡単に倒れるつもりはないのは確かだ。それはヒデヨシのためとかそういうのではなく、まだここに居たいという俺の意思があるからだ。ノブナガさんが俺達に残してくれたこの場所に、もう少しだけ俺はいたい。
「ノブナガ様はまだ生きてくれているんだよね?」
「一時間は経っているけど、必ずお前を連れてくるって約束したから心配するな」
「分かった」
ようやく立ち上がるヒデヨシ。彼女は自分の乗って来た馬にまたがり、俺の方を見る。
「どうした?」
「ありがとうヒッシー、私の事考えてくれて」
「当然だろう。お前は大事な仲間なんだから」
「仲間……そうだよね」
そういうとヒデヨシは馬を安土城へと向けて走らせた。俺もその後を追おうと、自分の馬にまたがる。
「私がいくら言っても動かなかったのに、流石ですね」
ヒデヨシと話をしている間立ったままだったネネがそんな言葉をもらす。
「真っ先に動いたお前の方がすごいと思うぞ、ネネ」
「私は何にもすごくない……。お姉様を傷つけてばかりで」
「そう思っているのは、意外とお前だけかもしれないぞ」
「え?」
最後に俺はネネにそう言い残すと、ヒデヨシを追って安土城へと馬を走らせた。
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