魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第130陣ヒデヨシとヒスイ 前編
ずっと、ずっとノブナガ様は私にとって憧れだった。だからその憧れの人が死ぬだなんてそんな事考えたくなかった。
失いたくない、絶対に失いたくない。
私の憧れの人を絶対に失いたくない。
「私は絶対に諦めたくない。最後の最後までもがいて見せたいよ」
「ヒデヨシさん……」
「折角マルガーテを倒したのに、どうしてノブナガ様が不幸にならなきゃいけないんですか?!」
「これはマルガーテは関係がありませんし、この病気は自業自得ですから」
「自業自得だなんてそんな……」
自分の病気をそんな風に言わなくていいのに、ノブナガ様はどこか諦めたかのように言う。私はそれがどうしても受け入れられない。
「ヒッシーも何か言ってよ。自分の手でノブナガ様を殺すだなんて嫌でしょ?」
「そんなの当たり前に決まっているだろ! けど、いくら考えても思いつかないんだよ、ノブナガさんを救える方法を」
ヒッシーは本当に辛そうな顔で言う。私以上に彼が苦しんでいるのは私だって分かっている。だから今みたいな言葉が自然と出てくる。
「ヒデヨシさん、私の事をそこまで思ってくれて本当にうれしいです。しかし人間は病には勝てないんですよ」
「そんな、ノブナガ様……」
「だから私はヒスイに織田家の未来を託すことにしたんです。彼とあなたならきっとこの先もやっていけると思いますから」
「私にそんな事できませんよ。ノブナガ様がいないと私……」
自然と私の目からは涙が流れ出していた。皆が幸せになってそれで終わりだと思っていた。だけど、どうしようもできない時だってある。
(こんな未来誰も望んていないのに、どうしてこんなにも残酷なの?)
胸が苦しい。本当はノブナガ様はヒッシーと幸せになってもらいたかったのに、それすらも病が引き裂いてしまう。こんな悲劇、あまりにも悲しすぎる……。
「ヒスイ、ヒデヨシさん、私お二人のような家臣を持てて、誇らしいです。こんな事を言うのもあれだと思いますが、私がいなくなっても二人ならこの場所を守ってくれると信じていますよ」
「そんな事を言わないでくださいよ、ノブナガ様! それだともうお別れみたいじゃないですか」
「余命は三ヶ月と言われましたが、いつこの力が尽きるか分かりませんから、今のうちに言っておきたかったんです」
まるで最後の言葉のように言うノブナガ様。
(私は無力だ……こんなにも無力だなんて)
さっきみたいに諦めないでって言いたい。
ノブナガ様にはずっと生きていてほしい。
せめて死ぬなら戦の中で。
病気なんかに負けないでほしい。
言いたいことは沢山ある。だけどノブナガ様の決意がこもった一言が、それらの言葉を簡単に打ち消していく。
(負けたくない、負けたくないのに……)
どうして私は何もできないの?
■□■□■□
ノブナガ様の強い決意の前に、どうしようもできない事に気づかされてしまった私はとにかく途方に暮れていた。
残された時間は二ヶ月。
早まろうが遅かろうが、ノブナガ様は死ぬ。そしてその後を私とヒッシーで受け継いでいく。この事実は変えようがない。
変えたいと思っていても変えられない。
「私はどうすればいいの?」
折角授けてくれた力でさえもうまく使えなくて、マルガーテとの戦いのときも私はほとんど何もできなかった。その結果、ヒッシーは自分の右腕を犠牲にしてしまった。
全部私のせいだ。
そう考え始めると、夜も眠れなくなる。こうして何もせずに自分の部屋から月を眺めている時でさえその時間は少しずつだけど迫っている。
「ヒデヨシさん、少々お話ししたいのでお部屋には入ってももいいでしょうか?」
ボーっとしていると突然部屋の外から声がする。
「ノブナガ様? は、はい、大丈夫ですよ」
「では失礼します」
そういうと部屋のふすまが開きノブナガ様が入ってくる。
「もしかして寝ていましたか?」
「あ、いえ、違います。ちょっとびっくりしたんです」
「なら、よかったです」
突然の来訪で私は慌ててしまう。もうだいぶ遅い時間なのに、話とは一体なんだろうか。
「それで話とは何でしょうか」
「ヒスイについてお話したいことがありまして」
「ヒッシーですか?」
「はい。ヒデヨシさんは以前も仰っていたように、ヒスイの事が好きなんですよね? 結婚したいくらいに」
「え、あ、えっと、それは……」
そうですとは非常に言いにくくかった。でも隠していたわけではないし、それをヒッシーにも伝えたことだってある。だからノブナガ様に話すこと自体は問題ないのだけれど。
「でもそれはノブナガ様だった一緒じゃないですか?」
「はい。私もヒスイの事が好きでした。ずっと彼と一緒にこの時代を生き抜きたいくらいに。でももうそれも叶えられません」
「そんな……」
「だからヒデヨシさんにはお願いがあるんです。ヒスイを支えるためにも、私のこの想いを引き継いでくれませんか?」
「引き継いでって、それって……」
「ヒデヨシさんが結婚するんですよ、ヒスイと」
予想もしていなかったノブナガ様のお願いに、私は言葉を失った。
失いたくない、絶対に失いたくない。
私の憧れの人を絶対に失いたくない。
「私は絶対に諦めたくない。最後の最後までもがいて見せたいよ」
「ヒデヨシさん……」
「折角マルガーテを倒したのに、どうしてノブナガ様が不幸にならなきゃいけないんですか?!」
「これはマルガーテは関係がありませんし、この病気は自業自得ですから」
「自業自得だなんてそんな……」
自分の病気をそんな風に言わなくていいのに、ノブナガ様はどこか諦めたかのように言う。私はそれがどうしても受け入れられない。
「ヒッシーも何か言ってよ。自分の手でノブナガ様を殺すだなんて嫌でしょ?」
「そんなの当たり前に決まっているだろ! けど、いくら考えても思いつかないんだよ、ノブナガさんを救える方法を」
ヒッシーは本当に辛そうな顔で言う。私以上に彼が苦しんでいるのは私だって分かっている。だから今みたいな言葉が自然と出てくる。
「ヒデヨシさん、私の事をそこまで思ってくれて本当にうれしいです。しかし人間は病には勝てないんですよ」
「そんな、ノブナガ様……」
「だから私はヒスイに織田家の未来を託すことにしたんです。彼とあなたならきっとこの先もやっていけると思いますから」
「私にそんな事できませんよ。ノブナガ様がいないと私……」
自然と私の目からは涙が流れ出していた。皆が幸せになってそれで終わりだと思っていた。だけど、どうしようもできない時だってある。
(こんな未来誰も望んていないのに、どうしてこんなにも残酷なの?)
胸が苦しい。本当はノブナガ様はヒッシーと幸せになってもらいたかったのに、それすらも病が引き裂いてしまう。こんな悲劇、あまりにも悲しすぎる……。
「ヒスイ、ヒデヨシさん、私お二人のような家臣を持てて、誇らしいです。こんな事を言うのもあれだと思いますが、私がいなくなっても二人ならこの場所を守ってくれると信じていますよ」
「そんな事を言わないでくださいよ、ノブナガ様! それだともうお別れみたいじゃないですか」
「余命は三ヶ月と言われましたが、いつこの力が尽きるか分かりませんから、今のうちに言っておきたかったんです」
まるで最後の言葉のように言うノブナガ様。
(私は無力だ……こんなにも無力だなんて)
さっきみたいに諦めないでって言いたい。
ノブナガ様にはずっと生きていてほしい。
せめて死ぬなら戦の中で。
病気なんかに負けないでほしい。
言いたいことは沢山ある。だけどノブナガ様の決意がこもった一言が、それらの言葉を簡単に打ち消していく。
(負けたくない、負けたくないのに……)
どうして私は何もできないの?
■□■□■□
ノブナガ様の強い決意の前に、どうしようもできない事に気づかされてしまった私はとにかく途方に暮れていた。
残された時間は二ヶ月。
早まろうが遅かろうが、ノブナガ様は死ぬ。そしてその後を私とヒッシーで受け継いでいく。この事実は変えようがない。
変えたいと思っていても変えられない。
「私はどうすればいいの?」
折角授けてくれた力でさえもうまく使えなくて、マルガーテとの戦いのときも私はほとんど何もできなかった。その結果、ヒッシーは自分の右腕を犠牲にしてしまった。
全部私のせいだ。
そう考え始めると、夜も眠れなくなる。こうして何もせずに自分の部屋から月を眺めている時でさえその時間は少しずつだけど迫っている。
「ヒデヨシさん、少々お話ししたいのでお部屋には入ってももいいでしょうか?」
ボーっとしていると突然部屋の外から声がする。
「ノブナガ様? は、はい、大丈夫ですよ」
「では失礼します」
そういうと部屋のふすまが開きノブナガ様が入ってくる。
「もしかして寝ていましたか?」
「あ、いえ、違います。ちょっとびっくりしたんです」
「なら、よかったです」
突然の来訪で私は慌ててしまう。もうだいぶ遅い時間なのに、話とは一体なんだろうか。
「それで話とは何でしょうか」
「ヒスイについてお話したいことがありまして」
「ヒッシーですか?」
「はい。ヒデヨシさんは以前も仰っていたように、ヒスイの事が好きなんですよね? 結婚したいくらいに」
「え、あ、えっと、それは……」
そうですとは非常に言いにくくかった。でも隠していたわけではないし、それをヒッシーにも伝えたことだってある。だからノブナガ様に話すこと自体は問題ないのだけれど。
「でもそれはノブナガ様だった一緒じゃないですか?」
「はい。私もヒスイの事が好きでした。ずっと彼と一緒にこの時代を生き抜きたいくらいに。でももうそれも叶えられません」
「そんな……」
「だからヒデヨシさんにはお願いがあるんです。ヒスイを支えるためにも、私のこの想いを引き継いでくれませんか?」
「引き継いでって、それって……」
「ヒデヨシさんが結婚するんですよ、ヒスイと」
予想もしていなかったノブナガ様のお願いに、私は言葉を失った。
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