魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第16陣いつ何が起きるか分からないこの時代で

 あまりに突然過ぎる申し出に、俺はかなり戸惑いながらも断れなく、ノブナガさんとデートへ。まず彼女とデートすること自体が異例だというのに、こんな人がいるところを歩いたら、今日の事を秘密に使用にもできないと思う。

「あ、あのノブナガさん。そんなにくっつかなくても……」

「これはヒスイ様が迷子にならないための保険です」

 しかもノブナガさんは俺の手を取ってくっついた状態で歩くものだから、すごく目立つ。確かにまだ完全に城下町の地形を理解できていなくて、迷子になるかもしれないがこんなにくっついて歩くと、カップルと間違われてもおかしくない。ノブナガさん自体は何とも思ってないかもしれないが、男の俺としてはなんというかすごく恥ずかしい。

「というかデートってどこに行くんですか?」

「特に目的地は決まっていないです。何だったらお菓子屋さん巡りしますか? 昨日のヒデヨシさんみたいに」

「それはマジで勘弁してください」

 昨日の今日の話だというのに、もうバレているのか。昨日のこと。

「私からしてみれば皆さんの行動は筒抜けですから。隠し事はよくないです」

「そういう本人が、黙って出かけている件に関してはどうですか」

「それは私だけが許されることなんです。一々文句言わないでくださいよ」

「おっと、まさかの職権乱用ですか」

 優しいように見えて実は黒いのかこの人も。

「それにこういった時間が、いつまでもあるとは限らないですから」

「え?」


「私達は常に戦っているんです。いつ誰が命を落とすか分からない中で、一日一日を誰かと過ごすことはとても大切なことだとわたしは思います。特に私達みたいに常に戦にでている人達は」

「ノブナガさん……」

 何故だかノブナガさんのその言葉には重みを感じた。彼女もまた戦人なのは間違いないし、いつ何が起きるか分からない世界で戦っている。それは彼女だけでなく、ここで戦をしている人全員がそうだ。勿論俺だって……。そんな世界の中で、今日みたいな日をいかに過ごすか、それは人それぞれだ。だから昨日のヒデヨシだってきっと……。

「もうバレて怒られても知りませんからね」

「その時はヒスイ様に全て任せます」

「まさかの全部人任せですか!」

 だから俺も、こんな美人と休日を過ごすのもいいのかもしれない。

■□■□■□
 それからどれくら彼女に付き合わされたのかさっぱり覚えていない。ひたすら歩き回ったせいで、部屋に戻った頃には足が筋肉痛で立ち上がれなくなってしまった。

(これは完全に運動不足だ)

 二日連続で歩き続けた結果でもあるかもしれないけど、最近全く運動していなかったというのもある。異世界にいたころはかなり体を使っていたから、二年くらい運動しなくてもいいって思っていたのが失敗だった。運動を俺は甘く見すぎていたようだ。

「ヒッシー、起きている?」

 今日は疲れてしまったので、早めに寝ようとした時、襖の外からヒデヨシの声が聞こえた。

「もう疲れたから、寝るけど何か用?」

 俺は立ち上がらず(というか立ち上がれない)布団にうもれたまま適当に答える。

「えー、まだ夜なのに」

「夜だから眠いんだよ」

 でなければいつ眠いのだろうか?

「私はそんなのお構いなしだよ!」

「自分勝手だ……ぐはっ」

 目を瞑っていた為彼女が勝手に入ってきた事に気がつかず、背中に重たい一撃を喰らってしまう。

「どうだヒッシー、これで目が覚めたでしょ」

「殺す気か!」

 布団から起き上がると、そこには何が面白いのか爆笑しているヒデヨシがそこにいた。

「もう本当にヒッシーはひ弱だね」

「お前が容赦なさすぎるんだよ。おかげで目が覚めたじゃないか」

「それならよかった。実はヒッシーについてきてほしいところがあるの」

「ついてきてほしいところ? こんな時間から?」

「この時間だからこそなの。昨日付き合ってくれたお礼だから行こう!」

「こんな時間に外に出て怒られないか?」

「大丈夫。皆も一緒だから」

「何だ皆も一緒なのか」

 それなら問題はないかもしれないけど、皆してどこへ行こうとしているのだろうか?

「それでどこに行くんだ?」

「この前戦った山だよ。あそこで今日流星群が見れるの」

「流星群?」

 へえ、この時代でも見れるんだ流星群。

「そういう事だから早く行こうヒッシー。皆待たせているから」

「あ、おい引っ張るなよ」

 そんな事考えている間に無理やりヒデヨシに引っ張られ連れて行かれる。まだこの時代にやってきて一週間も経たない俺に対して、ここまで積極的に接してくれるのはすごくありがたいけれど、何か色々と強引すぎるような気がするのは俺だけだろうか。何というかこういうイベントって、様々な前提があった上で成り立つもので、こう最初から好感度が高いチートみたいな感じではない。そいういのは小説とかゲームの中でしかないものだと思っていたけど、自分自身がこうして体感するとすごく恥ずかしい。

(でもまあ、悪くはないか)

周りの日本男児から見ると、すごく羨ましい状態ではあるけど、まだまだな気がする。

「痛い痛い、引っ張りすぎだ」

「ヒッシーがボーッとしているのが悪い!」

 形が色々間違っている気もするけど。

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