魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第25陣いつだってそこに

 それから数十分後、日付が変わると共にネネの救出へと向かう事になり、俺とヒデヨシは準備をしていた

「でもヒッシー、救出するといってもどこへ行けばいいの?」

「あっちはもしかしたら、ネネを盾に俺達をおびき寄せようとしている可能性があるから、遠い所にはいないかもしれない」

「うーん、そうかな」

「確証はないけど、多分間違っていないと思う」

「そう言って昨日は思いっきり作戦が読まれていたよ?」

「そ、それは……」

「もうヒッシーが頼りなんだから、しっかりしてよ」

 確かに先の戦いは、完全に俺のミスだ。けど二度も間違いを繰り返すようなことはないと思っている。
けど俺のその考えは、思わぬ方向で外れることになる。

「え? 徳川軍が攻めてきた?」

「はい。でもどうやら敵軍は戦う意志はないようです」

「戦う意志がない?」

 準備も完了し、いざ出陣という時に思わぬ伝令が入ってきた。どうやら敵軍自ら出向いてくれたらしいが、戦う意志がないらしい。一体あちらは何が狙いのだろうか?

「どうするヒッシー」

「ちょっと慎重に行動したほうがいいかもしれないな。何か狙いがあるかもしれないし」

「でも慎重すぎるとネネが……」

「分かっている。分かっているから慎重に行かなきゃだめだ」

「分かった……」

 ネネの事が心配なのか、元気がない返事がヒデヨシから返ってくる。

(何だかんだで、やっぱり心配なんだな)

 あんなに嫌がっているくせに、心配するときは心配する。つまりツンデレみたいなやつだろうか? という事はつまり、ヒデヨシもそっち系の人間ということなのだろうか?

「何かヒッシーが余計なことを考えている気がするんだけど」

「気のせいだヒデヨシ。俺はお前が百合女子なんて思っているわけないだろ?」

「やっぱり余計なことを考えてた!」

 ヒデヨシの百合疑惑は今は置いておくとして、それよりも重要なのはネネだ。もし仮に徳川軍がネネを連れ去ったとしたら、恐らく徳川軍はネネを連れてこちらに攻めて来るに違いない。だが今はその動きが見られないという事は、何かあちら側に不都合なことが起きたのだろうか?

(それに、どうしてネネを連れ去ったのか、だよな)

 ただ囮に使うために連れ去ったのだとしたら、昨晩みたいな大胆な作戦を使わないはずだ。だとしたら何故彼女を……。

「そういえばヒデヨシ、一つ聞いていいか?」

「どうしたのヒッシー」

「昨晩の作戦の時、ネネはあえて城の中にいさせたけど、あれって何か理由があるのか?」

「そういえばまだ、ヒッシーに教えていなかったっけ。ネネの事」

「ああ。俺はただの百合系女子だとしか思っていなかったけど、何かあるのか?」

「うん。実はネネはああ見えて……」

 ドーン

 ヒデヨシがネネの事を話そうとした瞬間、大きな音が城の外から聞こえた。一体何が起きたというのだろうか?

「大変ですヒスイ様、ヒデヨシ様。敵襲です!」

 それとほぼ同タイミングで伝令が部屋に入ってくる。

「敵襲って、徳川軍が攻めてきたじゃなくて?」

「それが違うんです。徳川軍とは反対の方角から、新たに上杉軍が攻めてきました」

「何だと!」

 これはあまりに想定外だ。まさか同じタイミングで、二つの軍に狙われる羽目になるなんて。しかもノブナガさんがいない上に一人戦力が欠けているこの状況。しかも相手側としたら攻め落とせる絶好のチャンスという、今の俺達にとっては最悪極まりない。

(徳川軍が動かなかったのは、上杉軍が動きを見せたのを知っていたからか)

「ど、どうするのヒッシー」

「どうするもなにも、俺たちで相手するしかないだろ」

「でも、戦力が……」

「それでも何とかする! 絶対に守ってみせるって約束したんだノブナガさんと」

「ヒッシー……」

 恐らく先程のでかい音は徳川軍と上杉軍が何かしらの動きを見せ、両軍が激突した音。だとしたらすぐにはこちらを攻めて来ることはない。そのぶつかり合っている隙間を俺達が上手く介入することができれば、もしかしたら両軍を同時に叩くことができる。そうすれば敵が城にせめて来る前にこの戦いを終わらすことができる。

「僅かな可能性を今は信じるしかない。同時にネネも救出して、何としても今日の戦いを乗り越えるぞヒデヨシ」

「分かった。私ヒッシーを信じる」

「ありがとう。何としてもこの城を守るぞ!」

「うん!」

 戦の準備は既に終えているので、あとは出陣するのみ。難しい状況ではあるけど、きっと乗り越えられる、何故なら俺には頼もしい仲間がいるのだから。

(それに俺にはこの魔法がある。師匠から授かった大切な力が)

 自分の力に不安はあるけど、きっと大丈夫だ。俺はあの世界で決して諦めてはいけない心を学んだ。沢山の戦いの中で、辛くなることも経験してきたけど、いつだって仲間がいた。だから大丈夫だ。なにも恐れる必要なんてない。

「あ、ちょっと待ってヒッシー」

「ん? どうかしたか?」

「あのさ、この戦いが終わったら、私ヒッシーに一つ頼みたいことがあるの」

「頼みたいこと? 何だ」

「それは帰ってきてからの秘密。だから必ず勝とうね」

「ああ。絶対にネネを救出するぞ! 俺たちの手で」

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