魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第45陣徳川包囲網突破作戦③
前回の戦の時、俺は家康に傷一つつけること出来ずに負けてしまった。だが負けっぱなしも性に合わない。今回こそ彼女を倒してみせる。
「はぁぁ!」
鞘から太刀を抜くと、一気に家康との距離を詰める。よし、この距離なら。
「なかなか素早い動きをしよるのう。じゃが、まだまだ甘い」
「なっ」
家康に切りかかろうとしたその一瞬、僅かにできた体の隙間を狙って、重い一撃が入る。
「がっ、は」
何とかその場で踏みとどまるが、次なる一撃が俺に迫ってきた。
「くそ」
俺は次の一撃がくるほんの一瞬のタイミングで、敵の動きを遅くする魔法を唱えた。
「何じゃ、これは。体が」
「今度こそ」
遅くなった家康の拳を避けるなり、俺は家康の背後へと回り、ガラ空きの背中に向かって刃を振りかざす。
「その不思議な力は、噂通りの力じゃな。じゃが戦人ととしての闘い方がまだなってはおらぬ」
「え?」
完全にもらったと思っていたが、剣は弾かれてしまった。予期せぬ人物の登場によって。
「ぼ、ボクっ娘?」
「少し久しぶりだね。師匠」
その人物とはボクっ娘忍者だった。確か彼女は徳川の忍なので、ここにいても不自然ではない。だけど俺は、驚きを隠せなかった。
「まだまだお主は甘いのう。常にこれくらいの事が起きることを予想しておかなければならぬ。残念ながら今回もお主の負けのようじゃのう」
ボクっ娘によって太刀はどこかに飛ばされてしまった為、今の俺には武器がない。確かに普通なら負けだ。だが、俺はその普通を超えている。
(残りの魔力少ないから、保ってくれるか分からないけど)
弱音なんて言ってられない。
「まだ終わってないぞ家康」
「この状況からどう逆転をするのじゃ。もう勝ち目などないと言うのに」
「そうだよ師匠。ここは大人しく引いた方が身の為だと思うよ」
「身を引く前に妾に殺されるがのう」
敵からも散々言われるが、それがどうした。この微かな魔力を使って、俺は今までの自分を乗り越える!
(力を貸してくれ、サクラ)
お前を守ることが出来なかった分の力を、今の俺に貸してくれ。
「素早さ強化、筋力増強。今の魔力ではこれが限界だけど、充分」
体を強化する魔法を自分にかけ、そして一歩踏み出した。
「え?」
「なっ」
その一歩は、普通の目では決して追えないスピード。そしてその間に俺は、二人に強大な一撃を拳で与える。そう二人には気づけない、ほんの僅か一秒の間に、俺は一度限りの勝負に出た。
「あれ? 師匠は?」
「まさかの敵前逃亡とは、情けな……」
そして全てが終わった後、俺がいない事に気がつく。だがそれと同時に、それはやって来る。
「ごっふ」
「い、家康様?いかがなされて……きゃふっ」
時間差でやって来たその痛みは、二人に大きなダメージを与え、そしてその場に倒れ伏した。
(や、やった……のか?)
(チャンスは一度しかなかった。だからここで倒せないなら……)
ヘトヘトになりながら飛ばされた太刀を拾いながら、倒れた二人を見る。体の疲れもあったせいで、確実に倒せるような一撃とはならなかったが、動く様子が見えない様子からすると、気絶させることはできたらしい。
「か、勝った……」
だが途端に体に力が入らなくなり、俺もその場に倒れそうになるが……。
「よく頑張りましたね、ヒスイ様」
「ノブナガ……さん」
いつの間にか兵の掃討を終えたノブナガさんに、受け止められる。
「俺……何とか勝てましたよ?」
「お疲れ様です、ヒスイ様」
ノブナガさんのその声を聞いて安心した俺は、そのまま眠りについた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「やっぱり一番疲れてたのは、ヒスイ様だったんですね」
眠ってしまったヒスイを一度安全な場所に避難させたノブナガは、今一度家康がいる所に戻った。
「起きているんですよね家康」
そして彼女は、本来なら気絶したはずの家康に声をかけた。
「やはりお主にはお見通しじゃったか、信長」
「あの程度で簡単に倒れる人ではないと分かっていましたので」
声をかけられた家康はむくっと起き上がる。
「しかし随分と優秀な兵を得たのう信長」
「得たというよりは、拾ったと言った方が近いんですけどね」
「兵を拾うとはまあ、面白い言葉を使うようになったのう」
しばしの談笑。その様子は、到底敵同士とは思えぬやり取りだった。
「まあ、今回はお主達の勝ちじゃ。目標に逃げられてしまっては、戦う意味がないからのう」
「だったらどうして、二人が逃げることに成功した時点で、撤退をしなかったんですか?」
「最近つまらん戦が多くて、飽き飽きしておったのじゃ。だから少しばかりちょっかいを出させてもらった」
「随分と余計な真似をしてくれますね、あなたは……」
やれやれと首を振る信長。だがそれに対して家康は、
「じゃがこれで一つハッキリしたことがある」
「ハッキリした事?」
「あのヒスイとやらを妾はほしくなった。じゃから今度会った時は、倒すのではなく奪わさせてもらう」
宣戦布告をしてきた。ヒスイを奪い取るという、宣戦布告を。そして彼女は、目を覚まさないボクっ娘を担ぎ、その場を去ろうとする。
「そんな事は、絶対させません。ヒスイ様は私達が守ります」
「よい、それでこそ我がライバルにふさわしい」
家康は最後にそう言い残し、今度こそ去って行った。
「ヒスイ様は、何があっても渡しません。絶対に。この命に代えてでも、守り通して見せます」
「はぁぁ!」
鞘から太刀を抜くと、一気に家康との距離を詰める。よし、この距離なら。
「なかなか素早い動きをしよるのう。じゃが、まだまだ甘い」
「なっ」
家康に切りかかろうとしたその一瞬、僅かにできた体の隙間を狙って、重い一撃が入る。
「がっ、は」
何とかその場で踏みとどまるが、次なる一撃が俺に迫ってきた。
「くそ」
俺は次の一撃がくるほんの一瞬のタイミングで、敵の動きを遅くする魔法を唱えた。
「何じゃ、これは。体が」
「今度こそ」
遅くなった家康の拳を避けるなり、俺は家康の背後へと回り、ガラ空きの背中に向かって刃を振りかざす。
「その不思議な力は、噂通りの力じゃな。じゃが戦人ととしての闘い方がまだなってはおらぬ」
「え?」
完全にもらったと思っていたが、剣は弾かれてしまった。予期せぬ人物の登場によって。
「ぼ、ボクっ娘?」
「少し久しぶりだね。師匠」
その人物とはボクっ娘忍者だった。確か彼女は徳川の忍なので、ここにいても不自然ではない。だけど俺は、驚きを隠せなかった。
「まだまだお主は甘いのう。常にこれくらいの事が起きることを予想しておかなければならぬ。残念ながら今回もお主の負けのようじゃのう」
ボクっ娘によって太刀はどこかに飛ばされてしまった為、今の俺には武器がない。確かに普通なら負けだ。だが、俺はその普通を超えている。
(残りの魔力少ないから、保ってくれるか分からないけど)
弱音なんて言ってられない。
「まだ終わってないぞ家康」
「この状況からどう逆転をするのじゃ。もう勝ち目などないと言うのに」
「そうだよ師匠。ここは大人しく引いた方が身の為だと思うよ」
「身を引く前に妾に殺されるがのう」
敵からも散々言われるが、それがどうした。この微かな魔力を使って、俺は今までの自分を乗り越える!
(力を貸してくれ、サクラ)
お前を守ることが出来なかった分の力を、今の俺に貸してくれ。
「素早さ強化、筋力増強。今の魔力ではこれが限界だけど、充分」
体を強化する魔法を自分にかけ、そして一歩踏み出した。
「え?」
「なっ」
その一歩は、普通の目では決して追えないスピード。そしてその間に俺は、二人に強大な一撃を拳で与える。そう二人には気づけない、ほんの僅か一秒の間に、俺は一度限りの勝負に出た。
「あれ? 師匠は?」
「まさかの敵前逃亡とは、情けな……」
そして全てが終わった後、俺がいない事に気がつく。だがそれと同時に、それはやって来る。
「ごっふ」
「い、家康様?いかがなされて……きゃふっ」
時間差でやって来たその痛みは、二人に大きなダメージを与え、そしてその場に倒れ伏した。
(や、やった……のか?)
(チャンスは一度しかなかった。だからここで倒せないなら……)
ヘトヘトになりながら飛ばされた太刀を拾いながら、倒れた二人を見る。体の疲れもあったせいで、確実に倒せるような一撃とはならなかったが、動く様子が見えない様子からすると、気絶させることはできたらしい。
「か、勝った……」
だが途端に体に力が入らなくなり、俺もその場に倒れそうになるが……。
「よく頑張りましたね、ヒスイ様」
「ノブナガ……さん」
いつの間にか兵の掃討を終えたノブナガさんに、受け止められる。
「俺……何とか勝てましたよ?」
「お疲れ様です、ヒスイ様」
ノブナガさんのその声を聞いて安心した俺は、そのまま眠りについた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「やっぱり一番疲れてたのは、ヒスイ様だったんですね」
眠ってしまったヒスイを一度安全な場所に避難させたノブナガは、今一度家康がいる所に戻った。
「起きているんですよね家康」
そして彼女は、本来なら気絶したはずの家康に声をかけた。
「やはりお主にはお見通しじゃったか、信長」
「あの程度で簡単に倒れる人ではないと分かっていましたので」
声をかけられた家康はむくっと起き上がる。
「しかし随分と優秀な兵を得たのう信長」
「得たというよりは、拾ったと言った方が近いんですけどね」
「兵を拾うとはまあ、面白い言葉を使うようになったのう」
しばしの談笑。その様子は、到底敵同士とは思えぬやり取りだった。
「まあ、今回はお主達の勝ちじゃ。目標に逃げられてしまっては、戦う意味がないからのう」
「だったらどうして、二人が逃げることに成功した時点で、撤退をしなかったんですか?」
「最近つまらん戦が多くて、飽き飽きしておったのじゃ。だから少しばかりちょっかいを出させてもらった」
「随分と余計な真似をしてくれますね、あなたは……」
やれやれと首を振る信長。だがそれに対して家康は、
「じゃがこれで一つハッキリしたことがある」
「ハッキリした事?」
「あのヒスイとやらを妾はほしくなった。じゃから今度会った時は、倒すのではなく奪わさせてもらう」
宣戦布告をしてきた。ヒスイを奪い取るという、宣戦布告を。そして彼女は、目を覚まさないボクっ娘を担ぎ、その場を去ろうとする。
「そんな事は、絶対させません。ヒスイ様は私達が守ります」
「よい、それでこそ我がライバルにふさわしい」
家康は最後にそう言い残し、今度こそ去って行った。
「ヒスイ様は、何があっても渡しません。絶対に。この命に代えてでも、守り通して見せます」
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