魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第51陣嘘と誤解の夜
ノブナガさんの大胆発言の日の晩、俺は体ななまらないように、この日から一人で少しずつリハビリに励んでいた。
(魔法だけじゃ駄目だ。もっと強くならないと)
本当は魔法も強くしたいところではあるのだが、それは現時点では不可能な話。だったら、もっとこの太刀を使いこなせるようにして、上を目指さなければ。
こんな怪我くらいへっちゃらに感じるくらいに。
「本来存在してはならないもの。あなたはいつしか、痛い目に合いますよサクラギヒスイ」
突然暗闇から声がする。俺は冷静に太刀を構えた。
「誰だっ! と聞くのも野暮か。なあ義元」
その声にら聞き覚えがあった。だから冷静に対処する。どうやら義元の方も、それは分かっていたらしく、あっさり姿を現した。
「思ったより怪我の治りが早かったですね。てっきりまだ寝込んでいるかと思いましたけど」
「残念だけど俺はそこまで弱くない。それよりお前に聞きたいことがある」
「あなたが聞こうとしているのは、先日の事でしょうか? それなら私からはお答えできませんね」
「あそこまでの事をしといて、よくそんな呑気なことが言えるな。答えてもらわないとこっちが困る」
「そんな事知ったことありません。私はあなたにただ、ひと時の夢を見せてあげただけじゃないですか」
「何がひと時の夢だ。俺どころかサクラの気持ちも踏みにじって。お前は何者だ」
俺は徐々に怒りを抑えられなくなり始める。あんな事されて、こんな態度をとられたら怒りを抑えられなくなるのも当然。ただそれでも義元は至って冷静に受け答えた。
「私が何者か。それは今のあなたに答えることはできません。いつかその時が来れば、教えてあげます。その時が来れば、ですけど」
「何を偉そうに言ってるんだ!」
我慢しきれなくなった俺は、ついに彼女に切りかかった。その刃先は彼女を捉え……。
「魔法という力は、こういう使い方ができるのを知っておいた方がいいですよ。今後の為にも」
られず、いつの間にか背後を取られていた。そして何かをかけられたのか、俺はその場に脱力して倒れる。
(ち、力が入らない)
体を動かせずにいると、義元は俺を見下ろして何かを唱えた。今の魔法と、この魔法を唱える声、まさか……。
「天を裂きし雷よ」
「そんな、まさか……」
「この者に裁きを与えたまえ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイ様、起きてください、ヒスイ様」
遠くからノブナガさんの声がする。いつの間にか瞼を閉じていたのか、俺はゆっくりと目を開く。開いた先にいたのは、ノブナガさん。その奥には夜空がある。どうやら俺は、さっきの場所から全く動いていないらしい。
「ノブナガさん、どうしてここに?」
「突然雷が落ちたから、何かあったのかと来たんですが、どうしてヒスイ様は倒れているんですか?」
「どうしてって、俺はさっきまで義元と……」
そこまで言ったところで俺は体を起こす。
「そういえば義元は!」
「私が来た時にはもういませんでしたけど、義元と何かあったんですか?」
「何かも何も、あいつは……」
「あいつは?」
「あ、いや、何でも……ないです」
「何もないなら、部屋に戻りましょ? もう夜遅いですし」
「……はい」
言えなかった。何がったのかを。あの瞬間に何があって、俺が気づいてしまったある事にも。
(こればかりは本当に予想外だよ、本当)
それは決してあり得ないことだった。だから俺もそれを受け入れられていない。嘘だとさえ思っている。
だから俺は、何も言わなかった。
「どうかしましたか? 黙っちゃって」
「あ、えっと。その、すいません。考え事してて」
そんな俺を心配そうに見つめるノブナガさん。
(この人には心配させてばかりだな)
「またですか? どれだけヒスイ様は悩み事を抱えているんですか」
「そ、そんなには抱えてないんで気にしないでください」
いつまでも心配してもらってばかりなのはどうかも思った俺は、少しでも解消できないかと思いある提案をして見た。
「そ、それよりノブナガさん」
「何でしょうか?」
「明日もし時間があるならわ一つ頼みたいことがあります」
「頼みたい事ですか?」
「俺と付き合ってください」
ほんの少しだけ二人で城下町巡りでもしようかと思ったその言葉は、俺の考えとは全く違う方向へと転がってしまう。
「え、え? ど、どうしたんですかそんないきなり。あ、明日じゃなくて今からでも是非……」
途端に顔を赤らめ動揺するノブナガさん。あ、やば。変な誤解生んじゃったかも。
「の、ノブナガさん、俺が言いたいのはそういうことではなくて……」
「是非よろしくお願いします、ヒスイ様」
「だからそういうことじゃ……」
(どうしよう、困ったことになった)
ちょっとした勘違いから生まれた誤解は、翌日になるとそれは手に負えないレベルになってしまっていた。
「ヒッシー、どういう事か説明してよ」
「どうも何も、あれはノブナガさんが誤解して……」
「突然結婚だなんて、私聞いてないよ。というか、二人はいつから付き合ってたの?」
「け、結婚? 付き合うも何も、全部ノブナガさんが……」
それはまさに女子高生の噂話の領域に達していて、ありもしない事まで盛られて行き、この時点で結婚するまでになっていた。
(恐るべし、女子の噂話)
って、感心している場合じゃないよな。
(魔法だけじゃ駄目だ。もっと強くならないと)
本当は魔法も強くしたいところではあるのだが、それは現時点では不可能な話。だったら、もっとこの太刀を使いこなせるようにして、上を目指さなければ。
こんな怪我くらいへっちゃらに感じるくらいに。
「本来存在してはならないもの。あなたはいつしか、痛い目に合いますよサクラギヒスイ」
突然暗闇から声がする。俺は冷静に太刀を構えた。
「誰だっ! と聞くのも野暮か。なあ義元」
その声にら聞き覚えがあった。だから冷静に対処する。どうやら義元の方も、それは分かっていたらしく、あっさり姿を現した。
「思ったより怪我の治りが早かったですね。てっきりまだ寝込んでいるかと思いましたけど」
「残念だけど俺はそこまで弱くない。それよりお前に聞きたいことがある」
「あなたが聞こうとしているのは、先日の事でしょうか? それなら私からはお答えできませんね」
「あそこまでの事をしといて、よくそんな呑気なことが言えるな。答えてもらわないとこっちが困る」
「そんな事知ったことありません。私はあなたにただ、ひと時の夢を見せてあげただけじゃないですか」
「何がひと時の夢だ。俺どころかサクラの気持ちも踏みにじって。お前は何者だ」
俺は徐々に怒りを抑えられなくなり始める。あんな事されて、こんな態度をとられたら怒りを抑えられなくなるのも当然。ただそれでも義元は至って冷静に受け答えた。
「私が何者か。それは今のあなたに答えることはできません。いつかその時が来れば、教えてあげます。その時が来れば、ですけど」
「何を偉そうに言ってるんだ!」
我慢しきれなくなった俺は、ついに彼女に切りかかった。その刃先は彼女を捉え……。
「魔法という力は、こういう使い方ができるのを知っておいた方がいいですよ。今後の為にも」
られず、いつの間にか背後を取られていた。そして何かをかけられたのか、俺はその場に脱力して倒れる。
(ち、力が入らない)
体を動かせずにいると、義元は俺を見下ろして何かを唱えた。今の魔法と、この魔法を唱える声、まさか……。
「天を裂きし雷よ」
「そんな、まさか……」
「この者に裁きを与えたまえ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイ様、起きてください、ヒスイ様」
遠くからノブナガさんの声がする。いつの間にか瞼を閉じていたのか、俺はゆっくりと目を開く。開いた先にいたのは、ノブナガさん。その奥には夜空がある。どうやら俺は、さっきの場所から全く動いていないらしい。
「ノブナガさん、どうしてここに?」
「突然雷が落ちたから、何かあったのかと来たんですが、どうしてヒスイ様は倒れているんですか?」
「どうしてって、俺はさっきまで義元と……」
そこまで言ったところで俺は体を起こす。
「そういえば義元は!」
「私が来た時にはもういませんでしたけど、義元と何かあったんですか?」
「何かも何も、あいつは……」
「あいつは?」
「あ、いや、何でも……ないです」
「何もないなら、部屋に戻りましょ? もう夜遅いですし」
「……はい」
言えなかった。何がったのかを。あの瞬間に何があって、俺が気づいてしまったある事にも。
(こればかりは本当に予想外だよ、本当)
それは決してあり得ないことだった。だから俺もそれを受け入れられていない。嘘だとさえ思っている。
だから俺は、何も言わなかった。
「どうかしましたか? 黙っちゃって」
「あ、えっと。その、すいません。考え事してて」
そんな俺を心配そうに見つめるノブナガさん。
(この人には心配させてばかりだな)
「またですか? どれだけヒスイ様は悩み事を抱えているんですか」
「そ、そんなには抱えてないんで気にしないでください」
いつまでも心配してもらってばかりなのはどうかも思った俺は、少しでも解消できないかと思いある提案をして見た。
「そ、それよりノブナガさん」
「何でしょうか?」
「明日もし時間があるならわ一つ頼みたいことがあります」
「頼みたい事ですか?」
「俺と付き合ってください」
ほんの少しだけ二人で城下町巡りでもしようかと思ったその言葉は、俺の考えとは全く違う方向へと転がってしまう。
「え、え? ど、どうしたんですかそんないきなり。あ、明日じゃなくて今からでも是非……」
途端に顔を赤らめ動揺するノブナガさん。あ、やば。変な誤解生んじゃったかも。
「の、ノブナガさん、俺が言いたいのはそういうことではなくて……」
「是非よろしくお願いします、ヒスイ様」
「だからそういうことじゃ……」
(どうしよう、困ったことになった)
ちょっとした勘違いから生まれた誤解は、翌日になるとそれは手に負えないレベルになってしまっていた。
「ヒッシー、どういう事か説明してよ」
「どうも何も、あれはノブナガさんが誤解して……」
「突然結婚だなんて、私聞いてないよ。というか、二人はいつから付き合ってたの?」
「け、結婚? 付き合うも何も、全部ノブナガさんが……」
それはまさに女子高生の噂話の領域に達していて、ありもしない事まで盛られて行き、この時点で結婚するまでになっていた。
(恐るべし、女子の噂話)
って、感心している場合じゃないよな。
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