魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第69陣ヒスイとノブナガ 前編
「あーあ、折角の決勝戦は中止かぁ」
「いやぁ、俺もまさかそうなるとは思わなかったよ」
あれから数時間後。俺はヒデヨシや師匠、そしてノブナガさんと共にリキュウさんの離れにいた。
ちなみに準決勝戦はどうなったかというと、両者ともダウンするというなんとも驚きの決着となってしまった。
(でも正直、師匠が勝ってもおかしくなかったんだけどなぁ)
お互い一撃を放ったのだが、自分の攻撃は当たっていなかったような気がした。だけど師匠の一撃を受けた俺は、気を失い気がつけばここに寝かされていた。
「私感心しましたよ。ヒスイも強くなりましたね」
「そういう師匠だって、あれから全く衰えていないじゃないですか。俺なんかまだまだですよ」
分かってはいたが師匠の腕は全く衰えていなかった。年は聞いたことはないけど、そこそこの年齢はいっていると俺は(勝手に)思っている。それだというのにあの実力。師匠はやはり師匠のままだった。
「私本当はノブナガ様と二人の内どちらかが、戦っているところを見てみたいんですけどねぇ」
お茶を出しながらリキュウさんが言う。先程まで大会に出ていたのに、疲れた素振りすら見せていない事に俺は少し驚く。
「あ、それ私も。一応流れ的にはノブナガ様が優勝って事になってるけど、折角だから二人の内のどちらかに戦ってもらいたいかも」
「そんな無茶な事言うなよヒデヨシ。ノブナガさんだって疲れているんだから、もう終わりでいいだろ」
ヒデヨシの意見に俺はそう答える。ノブナガさんだって、無理に優勝者を決めなくてもいいと思っているに違いない。
「できれば私、ヒスイ様ともう一度お手合わせをしたいんですけど、駄目ですかね」
「ノブナガさん?」
だがその考えとは違う答えがノブナガさんから出てきたので、少し俺は驚く。だけど少しして、俺はその言葉の意を感じ取った。
(明日にはこの世界を離れるんだよな、俺)
大会が盛り上がったせいで忘れてしまっていたが、今日がこの世界で過ごす最後の夜。明日の昼頃にはここを出るとの事らしいので、もう時間は残されていない。
次いつまた彼女とこうして会えるか分からない。だったら最後くらい、彼女と……。
「分かりましたノブナガさん。俺その勝負引き受けますよ」
「本当ですか?」
「はい。ただ、その代わり」
「その代わり?」
「皆には申し訳ないけど、ノブナガさんと二人きりで戦わせてください」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
思えばノブナガさんと手を合わせることになるのはこれで三度目になる。最初は敵襲で中断、二度目は俺の勝ち。
ただしどちらとも本気での戦いはした事がなかった。決して手を抜いたとかそういうのではない。二人ともあくまで手合わせという形だけの戦いで、今回の大会みたいな本気で相手と対峙はしていなかったのだ。
「夜風が気持ち良いですね、ヒスイ様」
「はい」
夜も深まり始めた頃、俺とノブナガさんは二度目に手合わせしたあの場所へと来ていた。ここならお互い遠慮せずに全力でできると思ったからだ。
「ヒスイ様は明日ここをお離れになるんですよね?」
「明日の昼頃にはここを離れると師匠から聞いています」
「じゃあ本当にこれが、二人きりでいられる最後の時間ですね」
「そう……ですね」
ノブナガさんの言葉を聞いて改めて痛感する。ノブナガさんとこうして話すことができるのも残り僅か。
そしてこうして手合わせできるのもこれが最後。次いつ来るか分からないその日まで、もうこうしてノブナガさんに向いて刀を向けることもできない。それは俺だけでなく、この世界にいる皆がそうだった。
「その刀、ずっと使っていただきありがとうございました」
「ノブナガさんからもらったものですから、そう簡単に無くすなんてできませんよ」
「そう言ってもらえると、その刀も喜びますよ」
そういえばこの太刀もノブナガさんにもらってからずっと使い続けていた。それだというのに刃こぼれもしないし、切れ味もほとんど落ちていない。一体どんな代物なのか、元の世界に戻ったら調べてみたいものだ。
「じゃあヒスイ様、そろそろ」
「はい」
お互いに向き合って、太刀を抜く。動き出すのはどちらが先かは分からない。ただ、一瞬でも気を抜いたら負ける。だからこの最初の一手は譲れない。
(今回は魔法は使わない。俺自身の力だけで戦う)
微かに吹いていた風が止む。そして……。
「はぁ!」
コンマ数秒差で先手を取ったのは、
「まさか私より先に動けるなんて、やはり強いですねヒスイ様」
意外な事に俺だった。
「こんなんじゃまだまだですよ、ノブナガさん」
確実に入ったと思われたその一撃は、見事に受け止められている。しばらくつばぜり合った後距離が一度開く。
「その様子だと魔法使う気がないみたいですね」
「はい。魔法なしで、ノブナガさんと本気で戦いたいので」
「怪我してもしりませんよ」
そう言いながらノブナガさんは俺の元へ走っていき、そのまま斬りかかってくると思いきや、俺の目の前で踏み切って……。
飛んだ。
「え?」
まさかの動きに驚く俺の頭上を飛び越えたノブナガさんは俺の背後に着地。
「実は私も、本気のヒスイ様と戦いたいので、いつもより何倍も力を出すつもりですから」
そして彼女は、いつもとは違う口調で俺にそう告げた。
「いやぁ、俺もまさかそうなるとは思わなかったよ」
あれから数時間後。俺はヒデヨシや師匠、そしてノブナガさんと共にリキュウさんの離れにいた。
ちなみに準決勝戦はどうなったかというと、両者ともダウンするというなんとも驚きの決着となってしまった。
(でも正直、師匠が勝ってもおかしくなかったんだけどなぁ)
お互い一撃を放ったのだが、自分の攻撃は当たっていなかったような気がした。だけど師匠の一撃を受けた俺は、気を失い気がつけばここに寝かされていた。
「私感心しましたよ。ヒスイも強くなりましたね」
「そういう師匠だって、あれから全く衰えていないじゃないですか。俺なんかまだまだですよ」
分かってはいたが師匠の腕は全く衰えていなかった。年は聞いたことはないけど、そこそこの年齢はいっていると俺は(勝手に)思っている。それだというのにあの実力。師匠はやはり師匠のままだった。
「私本当はノブナガ様と二人の内どちらかが、戦っているところを見てみたいんですけどねぇ」
お茶を出しながらリキュウさんが言う。先程まで大会に出ていたのに、疲れた素振りすら見せていない事に俺は少し驚く。
「あ、それ私も。一応流れ的にはノブナガ様が優勝って事になってるけど、折角だから二人の内のどちらかに戦ってもらいたいかも」
「そんな無茶な事言うなよヒデヨシ。ノブナガさんだって疲れているんだから、もう終わりでいいだろ」
ヒデヨシの意見に俺はそう答える。ノブナガさんだって、無理に優勝者を決めなくてもいいと思っているに違いない。
「できれば私、ヒスイ様ともう一度お手合わせをしたいんですけど、駄目ですかね」
「ノブナガさん?」
だがその考えとは違う答えがノブナガさんから出てきたので、少し俺は驚く。だけど少しして、俺はその言葉の意を感じ取った。
(明日にはこの世界を離れるんだよな、俺)
大会が盛り上がったせいで忘れてしまっていたが、今日がこの世界で過ごす最後の夜。明日の昼頃にはここを出るとの事らしいので、もう時間は残されていない。
次いつまた彼女とこうして会えるか分からない。だったら最後くらい、彼女と……。
「分かりましたノブナガさん。俺その勝負引き受けますよ」
「本当ですか?」
「はい。ただ、その代わり」
「その代わり?」
「皆には申し訳ないけど、ノブナガさんと二人きりで戦わせてください」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
思えばノブナガさんと手を合わせることになるのはこれで三度目になる。最初は敵襲で中断、二度目は俺の勝ち。
ただしどちらとも本気での戦いはした事がなかった。決して手を抜いたとかそういうのではない。二人ともあくまで手合わせという形だけの戦いで、今回の大会みたいな本気で相手と対峙はしていなかったのだ。
「夜風が気持ち良いですね、ヒスイ様」
「はい」
夜も深まり始めた頃、俺とノブナガさんは二度目に手合わせしたあの場所へと来ていた。ここならお互い遠慮せずに全力でできると思ったからだ。
「ヒスイ様は明日ここをお離れになるんですよね?」
「明日の昼頃にはここを離れると師匠から聞いています」
「じゃあ本当にこれが、二人きりでいられる最後の時間ですね」
「そう……ですね」
ノブナガさんの言葉を聞いて改めて痛感する。ノブナガさんとこうして話すことができるのも残り僅か。
そしてこうして手合わせできるのもこれが最後。次いつ来るか分からないその日まで、もうこうしてノブナガさんに向いて刀を向けることもできない。それは俺だけでなく、この世界にいる皆がそうだった。
「その刀、ずっと使っていただきありがとうございました」
「ノブナガさんからもらったものですから、そう簡単に無くすなんてできませんよ」
「そう言ってもらえると、その刀も喜びますよ」
そういえばこの太刀もノブナガさんにもらってからずっと使い続けていた。それだというのに刃こぼれもしないし、切れ味もほとんど落ちていない。一体どんな代物なのか、元の世界に戻ったら調べてみたいものだ。
「じゃあヒスイ様、そろそろ」
「はい」
お互いに向き合って、太刀を抜く。動き出すのはどちらが先かは分からない。ただ、一瞬でも気を抜いたら負ける。だからこの最初の一手は譲れない。
(今回は魔法は使わない。俺自身の力だけで戦う)
微かに吹いていた風が止む。そして……。
「はぁ!」
コンマ数秒差で先手を取ったのは、
「まさか私より先に動けるなんて、やはり強いですねヒスイ様」
意外な事に俺だった。
「こんなんじゃまだまだですよ、ノブナガさん」
確実に入ったと思われたその一撃は、見事に受け止められている。しばらくつばぜり合った後距離が一度開く。
「その様子だと魔法使う気がないみたいですね」
「はい。魔法なしで、ノブナガさんと本気で戦いたいので」
「怪我してもしりませんよ」
そう言いながらノブナガさんは俺の元へ走っていき、そのまま斬りかかってくると思いきや、俺の目の前で踏み切って……。
飛んだ。
「え?」
まさかの動きに驚く俺の頭上を飛び越えたノブナガさんは俺の背後に着地。
「実は私も、本気のヒスイ様と戦いたいので、いつもより何倍も力を出すつもりですから」
そして彼女は、いつもとは違う口調で俺にそう告げた。
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