魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第72陣新たな物語の始まり
一年の月日は私にとって、すごい長いものに感じられた。彼がこの世界からいなくなってから、私の心にポッカリ穴が開いてしまったような日々が、ずっと続いている。それほど私にとって、いや私達にとって彼の存在は大きなものだった。
「ノブナガ様、またこんな所にいたんですか」
ある場所でいつも一人で考え事していると、ヒデヨシさんに声をかけられる。
「少し考え事をしていて……」
「いつもそうじゃないですか。皆心配していますよ?」
「分かっていますよ。私自身がしっかりしないといけない事だって」
たまに私はこうやって一人でどこかへ行ってしまい、ヒデヨシや他の皆を心配させてしまっている。本当は軍を統べる私がしっかりしないといけないのに、何をしているんだろう……。
「ヒッシーなら約束を破ったりしませんよ、絶対」
ヒデヨシさんが言っていることもよく分かる。彼は必ず約束を守ることは知っている。だからこそ、私は不安を覚えてしまう。
「ヒスイ様が信じられないわけじゃありません。ただ……不安なんです」
「不安? 何がですか?」
「……」
「ノブナガ様?」
「あ、えっと、すいません。皆さんが心配しているんですよね。今帰りますから」
「は、はい」
必ず戻ってくると約束したなら、私もそれに応えなければならない。たとえこの先、何が起きたとしても。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一日、一日が過ぎていく内に私の心は靄が増すばかり。だけどそれとは御構いなしに、また一日、二日と時間だけが進む。
だけどそんなある日の事。私の部屋に突然伝令が入ってきた。敵がまた攻めてきたのかと思い、話を聞くとどうやらそうではないらしい。
「女の子、ですか?」
「はい。安土城付近で倒れていたので保護しました」
一人の少女を助けた、それだけなら別におかしくはない話だと思って、最初は聞き流そうとした。日常茶飯事とまではいかないけど、そういう事は何度か起きていた。
「でもそれだけなら、わざわざ伝令で伝えなくてもいいと思うんですけど」
「それだけじゃないんですよ。実は」
だけどそれ以上に何かを伝えようとしている、とりあえず聞いてみることにする。
「その少女なんですが、一年前にいらっしゃったヒスイ様が所持していた服装などと、ほぼ同じ物を着ていらっしゃるんです」
「ヒスイ様と? それじゃあもしかして……」
「その少女も、私達の世界とは別の世界に住んでおられる方の可能性が高いです」
「ヒスイ様と同じくらい異世界から来た少女、ですか」
(もしかしてヒスイ様と何か関係があるのかも)
その子の事が気になった私は、客間の方で寝かしてあると聞いたので、早速向かってみることにした。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
(あれ……ここは?)
ずっと閉じていた目をようやく開くと、見たことのない天井が目の前に広がっていた。
(そういえば勾玉がいきなり光り出して、それから)
現状を掴め切れていない私は、ここまでの事を思い出した。確か勾玉をヒスイに渡したときに突然光り出して、思わず目を閉じたんだっけ。それで目を覚ましたら、
(こんな訳が分からないところに来ちゃった、って事かな)
とりあえす体を起こしてみる。右手にはあの勾玉を持ったままだった。
「あなたが倒れていた方ですか?」
勾玉を眺めていると、一人の和服を着た女性が部屋に入ってきた。彼女が私を助けてくれたのだろうか?
「倒れていたって言われても、私記憶にないんだけど」
とりあえず答える。正直あれから今に至るまでの事はほとんど分からない。だからこっちが聞きたいところなんだけど。
「そうでしたか。あら、その手に持っている物は……」
女性が私の手にある物を見ながら言う。
「その勾玉、どうしてあなたが持っているんですか?」
「どうしてって言われても、幼馴染の部屋に落ちていた物を拾っただけなんだけど」
「その幼馴染は今どこにいますか?」
「知らないわよ。むしろここがどこなのか分からないんだけど、教えてくれない?」
何か私が持っているのが変みたいな言い方されて少し納得がいかない。そもそもこの勾玉があったせいで、こんな知らないところにいるわけだし、彼女は何者なのだろうか?
「ここは私達の城、安土城です。そして私は織田信長です」
「オダ……ノブナガ?」
それってあの戦国武将で有名な? でも女性だったっけ? あれ、この話をどこかで聞いたような……。
「あ」
そういえばこのシチュエーションに遭遇した幼馴染が一人いた。勾玉の事を含めて考えると、もしかしてここって翡翠が言っていた……。
「どうかされましたか?」
「あの、もしかして桜木翡翠っていう人知っている? 私の幼馴染の名前なんだけど」
「え?! ヒスイ様を知っておられるのですか!」
急に織田信長に詰め寄られる私。この反応を見ると、やっぱりこの世界は……。
「今も言ったけど、翡翠は私の幼馴染なんだけど……」
翡翠が二ヶ月近くいたっていう異世界。
「ヒスイ様は今どこにいるんですか? もしかしてあなたと一緒に……」
「わ、分からないわよ。この勾玉が勝手にここに連れてきたんだから」
そして私は今、その世界に翡翠に代わって来てしまったらしい。
「ノブナガ様、またこんな所にいたんですか」
ある場所でいつも一人で考え事していると、ヒデヨシさんに声をかけられる。
「少し考え事をしていて……」
「いつもそうじゃないですか。皆心配していますよ?」
「分かっていますよ。私自身がしっかりしないといけない事だって」
たまに私はこうやって一人でどこかへ行ってしまい、ヒデヨシや他の皆を心配させてしまっている。本当は軍を統べる私がしっかりしないといけないのに、何をしているんだろう……。
「ヒッシーなら約束を破ったりしませんよ、絶対」
ヒデヨシさんが言っていることもよく分かる。彼は必ず約束を守ることは知っている。だからこそ、私は不安を覚えてしまう。
「ヒスイ様が信じられないわけじゃありません。ただ……不安なんです」
「不安? 何がですか?」
「……」
「ノブナガ様?」
「あ、えっと、すいません。皆さんが心配しているんですよね。今帰りますから」
「は、はい」
必ず戻ってくると約束したなら、私もそれに応えなければならない。たとえこの先、何が起きたとしても。
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一日、一日が過ぎていく内に私の心は靄が増すばかり。だけどそれとは御構いなしに、また一日、二日と時間だけが進む。
だけどそんなある日の事。私の部屋に突然伝令が入ってきた。敵がまた攻めてきたのかと思い、話を聞くとどうやらそうではないらしい。
「女の子、ですか?」
「はい。安土城付近で倒れていたので保護しました」
一人の少女を助けた、それだけなら別におかしくはない話だと思って、最初は聞き流そうとした。日常茶飯事とまではいかないけど、そういう事は何度か起きていた。
「でもそれだけなら、わざわざ伝令で伝えなくてもいいと思うんですけど」
「それだけじゃないんですよ。実は」
だけどそれ以上に何かを伝えようとしている、とりあえず聞いてみることにする。
「その少女なんですが、一年前にいらっしゃったヒスイ様が所持していた服装などと、ほぼ同じ物を着ていらっしゃるんです」
「ヒスイ様と? それじゃあもしかして……」
「その少女も、私達の世界とは別の世界に住んでおられる方の可能性が高いです」
「ヒスイ様と同じくらい異世界から来た少女、ですか」
(もしかしてヒスイ様と何か関係があるのかも)
その子の事が気になった私は、客間の方で寝かしてあると聞いたので、早速向かってみることにした。
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(あれ……ここは?)
ずっと閉じていた目をようやく開くと、見たことのない天井が目の前に広がっていた。
(そういえば勾玉がいきなり光り出して、それから)
現状を掴め切れていない私は、ここまでの事を思い出した。確か勾玉をヒスイに渡したときに突然光り出して、思わず目を閉じたんだっけ。それで目を覚ましたら、
(こんな訳が分からないところに来ちゃった、って事かな)
とりあえす体を起こしてみる。右手にはあの勾玉を持ったままだった。
「あなたが倒れていた方ですか?」
勾玉を眺めていると、一人の和服を着た女性が部屋に入ってきた。彼女が私を助けてくれたのだろうか?
「倒れていたって言われても、私記憶にないんだけど」
とりあえず答える。正直あれから今に至るまでの事はほとんど分からない。だからこっちが聞きたいところなんだけど。
「そうでしたか。あら、その手に持っている物は……」
女性が私の手にある物を見ながら言う。
「その勾玉、どうしてあなたが持っているんですか?」
「どうしてって言われても、幼馴染の部屋に落ちていた物を拾っただけなんだけど」
「その幼馴染は今どこにいますか?」
「知らないわよ。むしろここがどこなのか分からないんだけど、教えてくれない?」
何か私が持っているのが変みたいな言い方されて少し納得がいかない。そもそもこの勾玉があったせいで、こんな知らないところにいるわけだし、彼女は何者なのだろうか?
「ここは私達の城、安土城です。そして私は織田信長です」
「オダ……ノブナガ?」
それってあの戦国武将で有名な? でも女性だったっけ? あれ、この話をどこかで聞いたような……。
「あ」
そういえばこのシチュエーションに遭遇した幼馴染が一人いた。勾玉の事を含めて考えると、もしかしてここって翡翠が言っていた……。
「どうかされましたか?」
「あの、もしかして桜木翡翠っていう人知っている? 私の幼馴染の名前なんだけど」
「え?! ヒスイ様を知っておられるのですか!」
急に織田信長に詰め寄られる私。この反応を見ると、やっぱりこの世界は……。
「今も言ったけど、翡翠は私の幼馴染なんだけど……」
翡翠が二ヶ月近くいたっていう異世界。
「ヒスイ様は今どこにいるんですか? もしかしてあなたと一緒に……」
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