魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第99陣安土城帰還作戦
リアラさんのおかげで、あっという間に体調が回復した私は、彼女と共に安土城へと戻る事にした。
「そこにヒスイもいるのですか?」
「あの後無事帰れていたら、間違いなくいると思いますよ」
「そっかぁ。久々にヒスイに会えるんですね」
喜びを隠せないのか、それが思わず顔に出てしまっているリアラさん。確か二年から三年近く会っていないとは聞いていたけど、ここまでウキウキしているのを見ると、よほど楽しみなのだろうか?
「ヒスイは一年前に一度私達の世界に来ていたのに、挨拶もなかったんですよ? それって酷くないですか?」
「その時って確かヒスイ様、ノアさんとも一緒でしたよ」
「そうなんですよ。二人して秘密にしていて、帰ってきていたなら挨拶くらして欲しかったです」
「まあまあ、これから会えるんですから」
だけどその次に、嬉しのか怒っているのか分からない反応を見せるリアラさん。
これは私個人の考えなのだけれど、こうしてどちらとも取れない反応を見せるのは、ヒスイ様の命が残り少ないというのを知っているからこそなのかもしれない。
(昨日の話だって、きっとそういう意味も込められているのかな)
私は少しだけ昨日彼女と話した事を思い返した。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイがノアさんと同じように、残りの命が少ないというのは本当ですか?」
その話を突然切り出された時は、私も動揺を隠せなかった。彼女がもし何も知らないで聞いてきたなら、本当の事を話す訳にもいかないし、かといってこのまま黙っていることもできなかった。
「大丈夫ですよ、その話は既に他から情報を得ているので、それの確認をしたかったんです」
「どうしてそれを私に?  ヒスイ様に聞けばいいじゃないですか」
「本人に聞いたって答えてくれませんよ。そういうの話したがらない人ですから」
「確かにそうですけど」
以前にもある事を隠していて、それを私達には話していなかった事は何度もあった。
それは今回の件もそうで、彼はこの大切な話を、幼馴染のサクラさんに話していない。何故か私にだけ教えてくれたけど、このままでいいのかと思ってしまう。
「その様子ですと、ヒスイは恐らくあなたにしか話してないんですね」
「はい。幼馴染もいるというのに、それを隠し通そうとしています」
「本当そういう所は不器用なんですから。じゃあヒスイのその事は、本当なんですね?」
「はい。本人が話してくれたので」
「本当困りますよ。ノアさんといい、ヒスイといいこの師弟ときたら……」
ため息を吐きながら困ったように言うリアラさん。
「まあそれが確認できただけ充分です。これで私のやる事が一つ増えましたから」
「やる事?」
「それは勿論、ヒスイをその呪縛から助け出すことですよ」
「できるんですか?」
「その為の治癒術師ですから」
誇らしげにそうリアラさんが話したところでこの話は終わった。
そして話は再び現在に戻る。
「さてそろそろ出ますか? ノブナガ様」
荷物をまとめ終え、リアラさんがそう私に言った。
「そんな様付けなんてしなくていいですよ」
「そうですか?」
ヒデヨシさんとかは様付けして呼んでいるけど、こうして出会って間もない人に様付けされて呼ばれるとちょっと照れてしまう。
「ヒスイ様を呼び捨てにしているような感じで構いませんよ」
「考えておきます」
「それにですね、あなたと私はこれからは共に戦う仲間になるんですから、そんな硬くなる必要はないんですよ」
「そんな仲間だなんて」
「だってそうじゃないですか。リアラさんは私にとって命の恩人でもありますし、今から城に戻るまでもあなたの力が必要です」
「え? でも戻るだけですよ?」
「残念ですけど、そうもいかないみたいなんです」
今日の朝から私は、明らかな殺意を感じていた。その数は相当なもので、いつ何が起きてもおかしくない状況だった。
ただ何故か私達が出るまで、攻めてこようという気配はなかったので、いささか疑問に残ることがある。でも一つ言えることは、ここから城に戻るまでかなり苦労する、ただそれだけだった。
「もしかして私達、囲まれていますか?」
私に言われて、何かを感じ取ったのかリアラさんが言った。
「数はかなりなものになりますけど、一点突破でできるだけ戦闘を避けたいんですけど、リアラさんは何か治癒以外に使えるものはありますか?」
「ノブナガ様を救出する際に、一応転送魔法を使わせてもらいました。ただし、範囲は限られているので、一度でその城に向かうのは難しいと思います」
「それがあるだけでも助かるので充分です。この包囲網から少し離れたところまでならできますか?」
「はい。そのくらいなら」
「ではその方法で、まずはここから出ますよ」
私が考えた作戦は、まずこの包囲網らしきもの(実際にあるのか分からないけど)を突破する為に転送魔法を使う。それで敵との距離がある程度空いたところに出れたら、そこからは見つからないように城まで駆け出す。何度も転送魔法を使うとリアラさんの負担も大きいので、使うのは最初の一度のみ。
流石に距離はそこそこあるので、休憩は何度か入れながらになるけど、その方が確実だと私は思った。
「極力戦闘は避けますけど、相手の数は未知数なので避けられなければ戦います。私が敵を食い止める間、リアラさんは安全な場所を確保しておいてください」
「分かりました」
「じゃあリアラさん、出発しますのでお願いします」
足元に何かが出てきて、光り出すわ、そしてほんの一瞬の間に、私とリアラさんは森の中へと移動していた。辺りを見回す限り、敵はいなさそうなので、作戦は成功したらしい。
「ここからが本番です。さあ走りますよリアラさん」
「はい!」
こうして私達の安土城帰還作戦は幕を開けた。
「そこにヒスイもいるのですか?」
「あの後無事帰れていたら、間違いなくいると思いますよ」
「そっかぁ。久々にヒスイに会えるんですね」
喜びを隠せないのか、それが思わず顔に出てしまっているリアラさん。確か二年から三年近く会っていないとは聞いていたけど、ここまでウキウキしているのを見ると、よほど楽しみなのだろうか?
「ヒスイは一年前に一度私達の世界に来ていたのに、挨拶もなかったんですよ? それって酷くないですか?」
「その時って確かヒスイ様、ノアさんとも一緒でしたよ」
「そうなんですよ。二人して秘密にしていて、帰ってきていたなら挨拶くらして欲しかったです」
「まあまあ、これから会えるんですから」
だけどその次に、嬉しのか怒っているのか分からない反応を見せるリアラさん。
これは私個人の考えなのだけれど、こうしてどちらとも取れない反応を見せるのは、ヒスイ様の命が残り少ないというのを知っているからこそなのかもしれない。
(昨日の話だって、きっとそういう意味も込められているのかな)
私は少しだけ昨日彼女と話した事を思い返した。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ヒスイがノアさんと同じように、残りの命が少ないというのは本当ですか?」
その話を突然切り出された時は、私も動揺を隠せなかった。彼女がもし何も知らないで聞いてきたなら、本当の事を話す訳にもいかないし、かといってこのまま黙っていることもできなかった。
「大丈夫ですよ、その話は既に他から情報を得ているので、それの確認をしたかったんです」
「どうしてそれを私に?  ヒスイ様に聞けばいいじゃないですか」
「本人に聞いたって答えてくれませんよ。そういうの話したがらない人ですから」
「確かにそうですけど」
以前にもある事を隠していて、それを私達には話していなかった事は何度もあった。
それは今回の件もそうで、彼はこの大切な話を、幼馴染のサクラさんに話していない。何故か私にだけ教えてくれたけど、このままでいいのかと思ってしまう。
「その様子ですと、ヒスイは恐らくあなたにしか話してないんですね」
「はい。幼馴染もいるというのに、それを隠し通そうとしています」
「本当そういう所は不器用なんですから。じゃあヒスイのその事は、本当なんですね?」
「はい。本人が話してくれたので」
「本当困りますよ。ノアさんといい、ヒスイといいこの師弟ときたら……」
ため息を吐きながら困ったように言うリアラさん。
「まあそれが確認できただけ充分です。これで私のやる事が一つ増えましたから」
「やる事?」
「それは勿論、ヒスイをその呪縛から助け出すことですよ」
「できるんですか?」
「その為の治癒術師ですから」
誇らしげにそうリアラさんが話したところでこの話は終わった。
そして話は再び現在に戻る。
「さてそろそろ出ますか? ノブナガ様」
荷物をまとめ終え、リアラさんがそう私に言った。
「そんな様付けなんてしなくていいですよ」
「そうですか?」
ヒデヨシさんとかは様付けして呼んでいるけど、こうして出会って間もない人に様付けされて呼ばれるとちょっと照れてしまう。
「ヒスイ様を呼び捨てにしているような感じで構いませんよ」
「考えておきます」
「それにですね、あなたと私はこれからは共に戦う仲間になるんですから、そんな硬くなる必要はないんですよ」
「そんな仲間だなんて」
「だってそうじゃないですか。リアラさんは私にとって命の恩人でもありますし、今から城に戻るまでもあなたの力が必要です」
「え? でも戻るだけですよ?」
「残念ですけど、そうもいかないみたいなんです」
今日の朝から私は、明らかな殺意を感じていた。その数は相当なもので、いつ何が起きてもおかしくない状況だった。
ただ何故か私達が出るまで、攻めてこようという気配はなかったので、いささか疑問に残ることがある。でも一つ言えることは、ここから城に戻るまでかなり苦労する、ただそれだけだった。
「もしかして私達、囲まれていますか?」
私に言われて、何かを感じ取ったのかリアラさんが言った。
「数はかなりなものになりますけど、一点突破でできるだけ戦闘を避けたいんですけど、リアラさんは何か治癒以外に使えるものはありますか?」
「ノブナガ様を救出する際に、一応転送魔法を使わせてもらいました。ただし、範囲は限られているので、一度でその城に向かうのは難しいと思います」
「それがあるだけでも助かるので充分です。この包囲網から少し離れたところまでならできますか?」
「はい。そのくらいなら」
「ではその方法で、まずはここから出ますよ」
私が考えた作戦は、まずこの包囲網らしきもの(実際にあるのか分からないけど)を突破する為に転送魔法を使う。それで敵との距離がある程度空いたところに出れたら、そこからは見つからないように城まで駆け出す。何度も転送魔法を使うとリアラさんの負担も大きいので、使うのは最初の一度のみ。
流石に距離はそこそこあるので、休憩は何度か入れながらになるけど、その方が確実だと私は思った。
「極力戦闘は避けますけど、相手の数は未知数なので避けられなければ戦います。私が敵を食い止める間、リアラさんは安全な場所を確保しておいてください」
「分かりました」
「じゃあリアラさん、出発しますのでお願いします」
足元に何かが出てきて、光り出すわ、そしてほんの一瞬の間に、私とリアラさんは森の中へと移動していた。辺りを見回す限り、敵はいなさそうなので、作戦は成功したらしい。
「ここからが本番です。さあ走りますよリアラさん」
「はい!」
こうして私達の安土城帰還作戦は幕を開けた。
コメント