魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第104陣目指すは天守閣
目の前で私達の城が爆発したのは、ヒスイ様と別れてから少しした後だった。まさに城の中に入ろうとした瞬間だった。
「嘘……」
爆発したのは城の天守閣の方と思われる。誰の仕業なのかは察したけど、あまりの非情さに私は冷静さが欠けていた
。
「よくも私達の城を……」
心の底から湧き上がる憎しみ。ヒデヨシさん達の安否も気になるところだけど、それ以上に私はマルガーテという人物への憎しみが増していた。
(ミツヒデさんの所までは何とか抑えられた。けどこれだけは……これだけは……)
迷う事なく城へと突入する。もし奴がいる場所を予想するなら、あの天守閣に違いない。せめて城の全焼を避けるためにも、早く倒さないと……。
「ノブナガ様! 大変です」
向かう途中でヒデヨシさんと遭遇する。どうやら桜さん達も無事で、城の離れにあるリキュウさんの家に避難済みらしい。
「皆無事ならいいです。ヒデヨシさんも早く避難してください」
「ノブナガ様はどうするつもりですか?」
「勿論爆発元だと考えられる天守閣へ向かいます。そこでマルガーテを倒します」
「一人では危険ですよ。せめてヒッシーを待ってからじゃないと」
「いえ、ヒスイ様が到着するまで私一人で戦います。そうでないとここまでの借りを返せなくなりますから」
「だったら私も」
「ヒデヨシさんは平民や桜さん達の安全の確保をお願いします。それを任せられるのはあなたしかいません」
「あ、ノブナガ様!」
これ以上会話の時間を取る暇はなかったので、ヒデヨシさんの答えを待つ前に走り出していた。早く……早く……。
「きゃっ」
だけどその急ぐ気持ちが裏目に出て、途中で私は火災でボロくなった床に足を踏み外してしまう。
「痛い……ですけど、こんなので私は……」
すぐに立て直して走り出そうとする。しかし更なる災難が私へと降りかかった。
「ノブナガ様、危ないです!」
追ってきていたのかヒデヨシさんが私を突き飛ばす。そしてヒデヨシさんの頭上には崩れ落ちた屋根が……。
「ヒデヨシさん!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
遅れて俺達が安土城へと到着したのは、それから五分後。この時点でかなり体力を消耗しているが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「ヒスイ、大丈夫ですか? だいぶ息が上がっていますけど」
「このくらい何ともない。それより俺達も急ぐぞ」
爆発した場所が天守閣なだけあって、城の下層の方はまだ燃えていなかった。そのため途中までは移動は楽で、少しだけ体力の回復もできた。
だが上に上がるにつれて火の強さは増していき、魔法で火を消しながら進んでいった。その途中、涙を流しながら瓦礫をどかしているノブナガさんと遭遇。
「ノブナガさん、どうしたんですか?」
「ヒデヨシさんが……ヒデヨシさんが……」
「ヒデヨシが?」
急いで瓦礫をどかすと、全身傷だらけで倒れているヒデヨシの姿が。呼吸確認をしたところ、まだ息はあるので、とりあえず一命はとりとめた。あとはここからはリアラにヒデヨシの治療を任せればいい。
「よかった、ヒデヨシさん……」
「でもまだ安全とはいえません。なのでリアラにヒデヨシの治療を頼みましょう」
「全く人使いが荒いですね、ヒスイは。勿論絶対に助けますけど、ヒスイ達もこの先に何があるか分かりませんから、気をつけてくださいね」
「大丈夫。ノブナガさんもいるから」
「えらく信用しているんですね。でも気をつけてくださいね、相手は魔族のトップに近いですから」
「そんなの身をもって知ってるよ」
時間は残されていないので、ヒデヨシをリアラに任せてノブナガさんの手を取る。
「動けますかノブナガさん」
「先程少々足を痛めましたけど、大丈夫です」
先程のヒデヨシを助けている時とは打って変わって、いつも通りの凛々しい顔に戻るノブナガさん。この表情を見て俺は一安心して、ノブナガさんと共に天守閣へと向けて走り出した。
決戦の時は近い。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一方その頃、
「大変ですイエヤス様」
「どうしたのじゃ。ボクっ娘」
「伝令によりますと、安土城が何者かによって爆破されたとの知らせが」
イエヤスの元にも安土城の爆破事件の知らせが入ってきていた。
「安土城が、じゃと」
「ボクは助けに向かうべきかと思います。織田には借りもありますし、ヒスイにも一度会わないといけないんで」
「待つのじゃボクっ娘。お主一人で動いても、間に合うかどうか分からぬぞ」
「分かっています。それでもボクは」
「確かに織田のヒスイには借りがある。じゃが、妾達は敵同士じゃ。個人的な感情で動くわけにはいかぬ」
「その敵味方関係なしに、ヒスイはイエヤス様を助けてくれたじゃないですか。今度はボク達が」
「だから落ち着けと言うておる。まずは妾達が置かれている状況を把握するのじゃ」
「ボク達が置かれている状況?」
「お主は気がついおらぬかもしれぬが、妾達も今その魔物とやらに見張られておる。動き出したら確実にやられる」
「え?」
イエヤスは一人気づいていた。自分が闇触というものにかかる前から、既にマルガーテに目をつけられていた事を。いや、それは自分達だけに限った話ではない。この世界は既に奴の手に収められていたのかもしれないという事を。
「ノブナガよ、生き残るのじゃぞ絶対に。そうでなければお主への借りを返せぬからな」
「嘘……」
爆発したのは城の天守閣の方と思われる。誰の仕業なのかは察したけど、あまりの非情さに私は冷静さが欠けていた
。
「よくも私達の城を……」
心の底から湧き上がる憎しみ。ヒデヨシさん達の安否も気になるところだけど、それ以上に私はマルガーテという人物への憎しみが増していた。
(ミツヒデさんの所までは何とか抑えられた。けどこれだけは……これだけは……)
迷う事なく城へと突入する。もし奴がいる場所を予想するなら、あの天守閣に違いない。せめて城の全焼を避けるためにも、早く倒さないと……。
「ノブナガ様! 大変です」
向かう途中でヒデヨシさんと遭遇する。どうやら桜さん達も無事で、城の離れにあるリキュウさんの家に避難済みらしい。
「皆無事ならいいです。ヒデヨシさんも早く避難してください」
「ノブナガ様はどうするつもりですか?」
「勿論爆発元だと考えられる天守閣へ向かいます。そこでマルガーテを倒します」
「一人では危険ですよ。せめてヒッシーを待ってからじゃないと」
「いえ、ヒスイ様が到着するまで私一人で戦います。そうでないとここまでの借りを返せなくなりますから」
「だったら私も」
「ヒデヨシさんは平民や桜さん達の安全の確保をお願いします。それを任せられるのはあなたしかいません」
「あ、ノブナガ様!」
これ以上会話の時間を取る暇はなかったので、ヒデヨシさんの答えを待つ前に走り出していた。早く……早く……。
「きゃっ」
だけどその急ぐ気持ちが裏目に出て、途中で私は火災でボロくなった床に足を踏み外してしまう。
「痛い……ですけど、こんなので私は……」
すぐに立て直して走り出そうとする。しかし更なる災難が私へと降りかかった。
「ノブナガ様、危ないです!」
追ってきていたのかヒデヨシさんが私を突き飛ばす。そしてヒデヨシさんの頭上には崩れ落ちた屋根が……。
「ヒデヨシさん!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
遅れて俺達が安土城へと到着したのは、それから五分後。この時点でかなり体力を消耗しているが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「ヒスイ、大丈夫ですか? だいぶ息が上がっていますけど」
「このくらい何ともない。それより俺達も急ぐぞ」
爆発した場所が天守閣なだけあって、城の下層の方はまだ燃えていなかった。そのため途中までは移動は楽で、少しだけ体力の回復もできた。
だが上に上がるにつれて火の強さは増していき、魔法で火を消しながら進んでいった。その途中、涙を流しながら瓦礫をどかしているノブナガさんと遭遇。
「ノブナガさん、どうしたんですか?」
「ヒデヨシさんが……ヒデヨシさんが……」
「ヒデヨシが?」
急いで瓦礫をどかすと、全身傷だらけで倒れているヒデヨシの姿が。呼吸確認をしたところ、まだ息はあるので、とりあえず一命はとりとめた。あとはここからはリアラにヒデヨシの治療を任せればいい。
「よかった、ヒデヨシさん……」
「でもまだ安全とはいえません。なのでリアラにヒデヨシの治療を頼みましょう」
「全く人使いが荒いですね、ヒスイは。勿論絶対に助けますけど、ヒスイ達もこの先に何があるか分かりませんから、気をつけてくださいね」
「大丈夫。ノブナガさんもいるから」
「えらく信用しているんですね。でも気をつけてくださいね、相手は魔族のトップに近いですから」
「そんなの身をもって知ってるよ」
時間は残されていないので、ヒデヨシをリアラに任せてノブナガさんの手を取る。
「動けますかノブナガさん」
「先程少々足を痛めましたけど、大丈夫です」
先程のヒデヨシを助けている時とは打って変わって、いつも通りの凛々しい顔に戻るノブナガさん。この表情を見て俺は一安心して、ノブナガさんと共に天守閣へと向けて走り出した。
決戦の時は近い。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一方その頃、
「大変ですイエヤス様」
「どうしたのじゃ。ボクっ娘」
「伝令によりますと、安土城が何者かによって爆破されたとの知らせが」
イエヤスの元にも安土城の爆破事件の知らせが入ってきていた。
「安土城が、じゃと」
「ボクは助けに向かうべきかと思います。織田には借りもありますし、ヒスイにも一度会わないといけないんで」
「待つのじゃボクっ娘。お主一人で動いても、間に合うかどうか分からぬぞ」
「分かっています。それでもボクは」
「確かに織田のヒスイには借りがある。じゃが、妾達は敵同士じゃ。個人的な感情で動くわけにはいかぬ」
「その敵味方関係なしに、ヒスイはイエヤス様を助けてくれたじゃないですか。今度はボク達が」
「だから落ち着けと言うておる。まずは妾達が置かれている状況を把握するのじゃ」
「ボク達が置かれている状況?」
「お主は気がついおらぬかもしれぬが、妾達も今その魔物とやらに見張られておる。動き出したら確実にやられる」
「え?」
イエヤスは一人気づいていた。自分が闇触というものにかかる前から、既にマルガーテに目をつけられていた事を。いや、それは自分達だけに限った話ではない。この世界は既に奴の手に収められていたのかもしれないという事を。
「ノブナガよ、生き残るのじゃぞ絶対に。そうでなければお主への借りを返せぬからな」
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