魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した

りょう

第107陣絶望と希望

「……ヒスイ……様?」

 マルガーテとの対決の後少しの間意識を失っていた私が再び目を覚ました時、丁度ヒスイ様とマルガーテが戦いを繰り広げている最中だった。

「私も……」

 彼一人で戦っているのをずっと見ているのは私自身が許せないので、頑張って体を動かす。

「ノブナガさん、目を覚ましたんですね。でも動かな……」

 ヒスイ様が私に気づいて寄ろうとするものの、マルガーデンに阻まれる。

「眠ってればいいものの。生き急ぐだけなのに、無駄な事をしますねあなたは」

「ヒスイ様が頑張っているのに、私だけ眠っているわけにはいかないんですよ」

「でしたらもう一度眠らしてあげますよ、今度は永遠に」

 マルガーテが私に向けて魔法を打たんとするマルガーデ。私は太刀を構えて、その攻撃を受ける覚悟を決める。

「ノブナガさん! 下です」

「下?」

 だが魔法は正面からではなく地面からやってくる事をヒスイ様が教えてくれる。私はその場から急いで逃げようとするが、何故か身体が動かない。

「逃げようとしても無駄です。あなたには束縛の魔法をかけておきましたから」

 完全に逃げる術を失った私は、彼女が放った業火の魔法をその身に受けてしまう。

「きゃゃあ!」

「ノブナガさん!」

 全身が焼かれる。今までに味わった事のない痛みが私を包み、意識を失いそうになる。

(私は……こんな所で負けられ……)

 だけど私は何とかそれを踏ん張り、何とか耐え抜いた。

「なっ! 生身の人間がこの魔法を耐えるだなんて」

「私は織田軍の総大将、織田信長。こんな所で……倒れるわけにはいかないんです!」

「ならばもう一度」

「そうはさせるか!」

 ヒスイ様がマルガーテへと一撃を加える。それによって唱えようとしていた魔法が中断。私もチャンスと言わんばかりに身体を動かす。どうやら今の攻撃で束縛の魔法は効果が切れたらしい。

「ヒスイ様、今私も」

 だが一歩踏み出したその瞬間、私の身体に鋭い痛みが走る。

「え?」

 一瞬何が起きたのか分からなかった。だけど痛みが走った所から赤い何かが流れている事が分かった。

「魔法は一つとは言ってないですよ私は。あなたが一歩でも動いたらもう一つの魔法が発動するように仕掛けておきました」

「う……そ……」
 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ノブ……ナガさん?」

 ほんの一瞬の出来事だった。俺の援護に向かおうとしたノブナガさんが、マルガーテの罠により身体を槍か何かで貫かれた。身体を貫通したそれは、血に染まったままノブナガさんに刺さり続けている。

「これで一人、次はあなたもですよ魔法使い」

「しまっ……」

 ノブナガさんの事で気を取られた俺は、出来てしまった一瞬の隙をつかれ身体の三箇所ほどに痛みが走る。

「ぐっ……」

 痛みに耐えられない俺は、その場に倒れ伏してしまう。マズイこのままだと……。

「どうやら勝負ありですね。最後に勝つのは私達だと最初から分かっていた事ですけど」

 勝ち誇ったように言うマルガーテ。こんな所で諦めたくないが、全身がもう動く気がしない。ノブナガさんも心配な上、このままだと本当に負けてしまう。

「ここを征服する前に、まずお二人には死んでもらいましょうか。いても邪魔ですし」

 トドメを刺す為なのか俺とノブナガさんは一箇所に集められ、その床には魔法陣が現れる。ノブナガさんは攻撃を受けたショックからか、気を失ってしまっている。俺も意識が朦朧としていて、もうすぐ意識を失う所まで来ている。

(誰か……助けて)

 どうにもできない状態に、俺は来るはずもない助けを求めてしまう。

(桜、ヒデヨシ、皆、ごめん……)

 最後に俺は皆に詫び、ゆっくりと意識を失っていくのであった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 諦めたくなかった。
 長き戦いに渡って続けてきた戦いに終止符を打ちたかった。これ以上命を無駄にしないためにも。
 何よりもこの世界の未来の為にも。

(なのに俺は……)

 力が及ばなかった。今頃俺とノブナガさんの身体は、この世から消えているだろう。そしてマルガーテが安土を征服して、桜やヒデヨシ達も同じように……。

「簡単に諦めるような人間に私は育てた覚えませんよ、ヒスイ」

 師匠の声がする。俺だって最後まで諦めずに戦った。だけどそれでも及ばなかったんですよ、師匠。

「まだ終わってないですよ、ヒスイ」

(え?)

 師匠の声に導かれ、俺はゆっくりと目を開く。本来開くはずはないのにどうして……。

「どうしてあなたが生きているんですか! もう死んでいるはずなのに」

「死にかけはしましたが、この通り私は生きているんですよマルガーテ」

 目を開いた先で待っていたのは、剣を携えマルガーテと対峙する師匠。俺とノブナガさんは安全な所へと移動させられている。

「師匠……?」

「ようやく起きましたかヒスイ。とりあえず治療が終わるまでは動かない方がいいですよ」

「治療?」

 辺りを見回すとリアラが俺とノブナガさんを治療しているリアラの姿がある。

「リアラ、これはどういう」

「私も驚いているんです。まさかノアさんが生きていたなんて」

「俺もまだ驚いているよ」

 かなり驚いているが、今は無理に身体を動かせないので、静かな反応になる。とりあえず師匠のおかげで一命を取り留めることができたらしい。なら、次俺がするべき事は……。

「なあリアラ」

「何ですか?」

「俺の治療はあとどのくらいで終わる?」

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