魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した
第113陣交わす約束
とりあえず安静をとって部屋で寝かせているという事で、俺は桜と一緒にノブナガさんの部屋へ。
「すいません、心配かけて」
「いいんですよノブナガさん。あれからだいぶ無理をしているのは、俺知っていますから」
「そういう翡翠だって無理してるくせに」
ノブナガさんによると何日か休めば回復するらしい。だがやはり俺は、彼女の体調の事が気がかりだった。
「え? じゃあサクラさんもヒスイ様の身体の事を?」
「はい、だから私、ヒスイが戦うのを止めたいんですけど駄目ですか? リアラちゃんが死んでしまった以上、治療法もないみたいですし、このまま死んでいくのを見過ごす事はできないんです」
だがそれは桜も同じで、先程俺に訴えかけた事を同じようにノブナガさんに談判していた。ノブナガさんも桜の話を最初からちゃんと聞いて、そしてしばらくした後に口を開いた。
「確かにサクラさんの言う通り、このままだとヒスイ様の命は、リアラさんがいない以上危険です。しかし先の戦の通り、マルガーデンの手はもうそこまで迫っているのも事実です」
「それでも私は翡翠に戦ってほしくないんです。だって、このまま戦ったら死に急ぐようなものじゃないですか! そんなの私……見てられません」
先程の涙が残っている為か、涙声でノブナガさんにも訴えかける。俺もその悲痛な叫びに心が痛んだ。
「ではサクラさん、ヒスイ様と元の世界へ帰られますか?」
「私はそうしたいんです。戦わなくたっていい、翡翠が無事ならそれで」
「ではもし、元の世界に帰られても結果は変わらなければどういたしますか?」
「結果が変わらないって、どういう事ですか?」
「このまま治療もせずに逃げたら、ヒスイ様の未来は変わらないという事です」
それは紛れもない事実だった。今ここで皆から逃げてしまえば、俺は治療する機会がない。先程師匠と話をしたのだが、リアラが居なくなってしまってもまだ治せる可能性は少しだけあるらしい。
「で、でもこのまま残っても翡翠は……」
「実はまだ可能性があるらしいんだよ、桜」
その旨を桜に話す。
僅かに残された可能性だとしても、俺はそれを信じるべきだと思う。でもそれをするのは全ての戦いが終わってからと、師匠と約束した。だから俺は、今この場で逃げる事はできない。
「僅かな確率かもしれないけどさ、何もしないよりはマシだと思うんだよ。どうせ元の世界に戻ったって治療なんてできやしないし」
「翡翠は怖くないの?」
「ああ。どっちの世界にもお世話になっているから、そろそろ恩返ししないといけないと思えば、何も怖くない」
「私はその言葉を信じてもいいの?」
「信じてくれ」
俺から彼女にかける言葉は、これしかなかった。ただ信じてほしい、それが俺から桜へ、いや他の皆への願いだった。
(それで全てが終われば……)
もう誰かが居なくなるような未来はなくなる。
「そこまで言うなら、私翡翠を信じる。ただし絶対に約束だよ」
「約束だ」
「私も約束させてください」
三人で約束を交わす。これからの最後の戦いに向けて、そして未来へ向けて。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一度個別でノブナガさんと話がしたかった俺は、桜には先に出てもらいノブナガさんと二人きりになった。
「やはり気づいていたんですね、ヒスイ様」
「いつからだったんですか、それ」
「もうどの位になるか分からないくらいです」
ノブナガさんは何度も戦場に出ていた。勿論マルガーテとの戦いの時だって。だからもっと早く気付くべきだったのかもしれない。
彼女が誰よりも最初に闇触の被害者になっていた事を。
「闇触はヒデヨシのように早めに治療すれば何とかなりますが、ノブナガさんのように長く潜在していると治療すらも困難になるんですよ。どうして早く教えてくれなかったんですか。ましてやあの時、黙っていてほしいだなんて」
「どうせ散るなら戦場の方が私には似合うんですよ。だからずっと黙っていたんです」
「だからって、こんなギリギリまで……」
ショックだった。ノブナガさんがこんな重症になるまで黙っていた事が。それに気付けなかった俺も情けない。
(でもそれが、ノブナガさんの本望なら)
「ヒスイ様、私はまだ戦人として戦い続けるつもりです。それはヒスイ様も理解できますよね?」
「分かります。分かりますけど……」
このままだと俺より先にノブナガさんが……。
「俺、ノブナガさんに結婚でも何でもするって言ったのに、まだ何もできていないじゃないですか。そんなの悔しいですよ」
「私もしたいですね。ヒスイ様と結婚。でもそこまで身体がもつどうか」
「もってくださいよ。そうでないと、俺の告白が勿体無いですよ」
「そこまで言われると、なんか恥ずかしいです」
必ず叶えたい願い。けどそれは今すぐではない。マルガーテとの戦いが終わって、この世界が平和になってから。それまでは、我慢。
「じゃあ俺達二人でも約束しましょう。お互い無事で全てを終わらせる事を」
「分かりました。ヒスイ様もしっかり守ってくださいよ」
「はい」
近づく決戦。今日だけで交わされた二つの約束は果たせるのか。それはまだ誰にも分からない未来だけど、きっと叶うと俺は願うしかないのであった。
「すいません、心配かけて」
「いいんですよノブナガさん。あれからだいぶ無理をしているのは、俺知っていますから」
「そういう翡翠だって無理してるくせに」
ノブナガさんによると何日か休めば回復するらしい。だがやはり俺は、彼女の体調の事が気がかりだった。
「え? じゃあサクラさんもヒスイ様の身体の事を?」
「はい、だから私、ヒスイが戦うのを止めたいんですけど駄目ですか? リアラちゃんが死んでしまった以上、治療法もないみたいですし、このまま死んでいくのを見過ごす事はできないんです」
だがそれは桜も同じで、先程俺に訴えかけた事を同じようにノブナガさんに談判していた。ノブナガさんも桜の話を最初からちゃんと聞いて、そしてしばらくした後に口を開いた。
「確かにサクラさんの言う通り、このままだとヒスイ様の命は、リアラさんがいない以上危険です。しかし先の戦の通り、マルガーデンの手はもうそこまで迫っているのも事実です」
「それでも私は翡翠に戦ってほしくないんです。だって、このまま戦ったら死に急ぐようなものじゃないですか! そんなの私……見てられません」
先程の涙が残っている為か、涙声でノブナガさんにも訴えかける。俺もその悲痛な叫びに心が痛んだ。
「ではサクラさん、ヒスイ様と元の世界へ帰られますか?」
「私はそうしたいんです。戦わなくたっていい、翡翠が無事ならそれで」
「ではもし、元の世界に帰られても結果は変わらなければどういたしますか?」
「結果が変わらないって、どういう事ですか?」
「このまま治療もせずに逃げたら、ヒスイ様の未来は変わらないという事です」
それは紛れもない事実だった。今ここで皆から逃げてしまえば、俺は治療する機会がない。先程師匠と話をしたのだが、リアラが居なくなってしまってもまだ治せる可能性は少しだけあるらしい。
「で、でもこのまま残っても翡翠は……」
「実はまだ可能性があるらしいんだよ、桜」
その旨を桜に話す。
僅かに残された可能性だとしても、俺はそれを信じるべきだと思う。でもそれをするのは全ての戦いが終わってからと、師匠と約束した。だから俺は、今この場で逃げる事はできない。
「僅かな確率かもしれないけどさ、何もしないよりはマシだと思うんだよ。どうせ元の世界に戻ったって治療なんてできやしないし」
「翡翠は怖くないの?」
「ああ。どっちの世界にもお世話になっているから、そろそろ恩返ししないといけないと思えば、何も怖くない」
「私はその言葉を信じてもいいの?」
「信じてくれ」
俺から彼女にかける言葉は、これしかなかった。ただ信じてほしい、それが俺から桜へ、いや他の皆への願いだった。
(それで全てが終われば……)
もう誰かが居なくなるような未来はなくなる。
「そこまで言うなら、私翡翠を信じる。ただし絶対に約束だよ」
「約束だ」
「私も約束させてください」
三人で約束を交わす。これからの最後の戦いに向けて、そして未来へ向けて。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一度個別でノブナガさんと話がしたかった俺は、桜には先に出てもらいノブナガさんと二人きりになった。
「やはり気づいていたんですね、ヒスイ様」
「いつからだったんですか、それ」
「もうどの位になるか分からないくらいです」
ノブナガさんは何度も戦場に出ていた。勿論マルガーテとの戦いの時だって。だからもっと早く気付くべきだったのかもしれない。
彼女が誰よりも最初に闇触の被害者になっていた事を。
「闇触はヒデヨシのように早めに治療すれば何とかなりますが、ノブナガさんのように長く潜在していると治療すらも困難になるんですよ。どうして早く教えてくれなかったんですか。ましてやあの時、黙っていてほしいだなんて」
「どうせ散るなら戦場の方が私には似合うんですよ。だからずっと黙っていたんです」
「だからって、こんなギリギリまで……」
ショックだった。ノブナガさんがこんな重症になるまで黙っていた事が。それに気付けなかった俺も情けない。
(でもそれが、ノブナガさんの本望なら)
「ヒスイ様、私はまだ戦人として戦い続けるつもりです。それはヒスイ様も理解できますよね?」
「分かります。分かりますけど……」
このままだと俺より先にノブナガさんが……。
「俺、ノブナガさんに結婚でも何でもするって言ったのに、まだ何もできていないじゃないですか。そんなの悔しいですよ」
「私もしたいですね。ヒスイ様と結婚。でもそこまで身体がもつどうか」
「もってくださいよ。そうでないと、俺の告白が勿体無いですよ」
「そこまで言われると、なんか恥ずかしいです」
必ず叶えたい願い。けどそれは今すぐではない。マルガーテとの戦いが終わって、この世界が平和になってから。それまでは、我慢。
「じゃあ俺達二人でも約束しましょう。お互い無事で全てを終わらせる事を」
「分かりました。ヒスイ様もしっかり守ってくださいよ」
「はい」
近づく決戦。今日だけで交わされた二つの約束は果たせるのか。それはまだ誰にも分からない未来だけど、きっと叶うと俺は願うしかないのであった。
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