世界の裏側で愛を叫ぶ!

まひる

序章01

雲ひとつ無い晴天の下。
神崎寛人の覚醒は右手からだった。
髪に靡く心地のいい風と、どこか懐かしい牧場の独特の匂いが充満している。
目の前に映るのは太陽の輝きを分散し、葉と葉の間からスポットライトの様にこちらを輝かせているおおきな木。
まさに幻覚的な世界が広がっていた。
「ここは?」
寛人はやっと自分のいる場所に疑問を持った。「確かさっきまで学校の帰り道だった様な」つい数秒の記憶がもの凄い遠い記憶のように思い出しずらい。
手に伝わる草の感覚。周りを見間渡せば家も、車も、学校もない360度"ただの草原"。あるのは傘の様に陽の光を際切ってくれる木だけ。
寛人はゆっくり立ち上がりその光景を眺めていた。何も無いからこそ気持ちよく感じると思うのは、昔から田舎暮らしだったからだろう。
何だか、言葉も場所も分からない街に放り出されたような孤独感に襲われる。
しかし寛人はただ立ち尽くすしか出来なかった。この景色に、「綺麗」と言う言葉で片ずける訳にはいかなかった。
まさに絵の中の主人公の様な気分だ。
この不思議な世界に居ること30分余り、俺は大体分かってきた。
今ここに居るのは俺、木、空、草の4種族?だけ。そして、その喋りもしなく動くこともない"こいつらを"俺はもう友達になってしまいそうになる。
「はぁ、ここは・・・今頃あいつと、んっ?」
言いかけた瞬間、鬘が飛んでいきそうなくらいの風が吹き体が2歩、3歩後に下がった。
そして・・・。


バサッ!
突如大きな音を立てこの絶景と言わんばかりの空に、1匹の大きな鳥が一直線に向かってくる。
この空一面を真っ赤に染める様に。
「・・・・何だあれ?」
鳥。は確かだが、余しにも大き過ぎている。太陽のせいで直視出来ないが、横幅だけで20メートルは超えている"何か"が向かってくる。
「あ、あれってまさか・・・」
嫌な予感がする。寛人は自分を狙う暗殺者と張ったり会ってしまったかのような、この世とは思えない緊張感と全身から伝わる震えが顔面にきていた。
何も無い草原だからこそ、そいつは大きく感じ、この距離からも伝わってくる殺気。
過呼吸になりそうなくらい細胞をすり減らした寛人から出た言葉。
「ド、ド、ドラゴン!?」
寛人は非現実的な世界を、嫌、現実を間の渡りにする。

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