舞花お姉さまへ その1

ノベルバユーザー173744

舞花お姉さまへ その1

 お誕生日おめでとう。

 あのね。せつなんは、本当に情けないけれど、泣くばかりで甘えっぱなしです。
 でも、お姉様に何か贈れないかなぁと思ったの。
 でもね?
 料理もお菓子作りもお姉様の方が本当に美味しいの。

 せつなんはね?
 ととさん(父)に習った大鍋料理とか、田舎の隣組……近所のおばあちゃん、おばちゃん、お姉ちゃんたちと、ちらし寿司や煮物炒め物、いっぱい作るのは大好き。

 でもね、本当に、甘くて薄味なの。
 まずいんじゃなくて、出汁と、野菜本来の味が美味しいから余分な味がいらないの。
 それに、固い噛み切れないお肉があるなぁと思ったら、イノシシとかシカだったり。

 でも、皆、おばあちゃんたちは笑いながら台所で包丁を使うと、汚れたものは、台所の外に水場があってそこで野菜や器やまな板とか洗ってる。
 お手伝いに行くと最初はできたものを運んだり、器やお箸を運んだり、

「畑のピーマン取ってきて!」
「はーい!きゅうりとトマトも?」
「にいちゃんに頼んで、スイカを冷やしに行きんさい、言うといで」
「はーい!」

従兄弟に頼み、自分は渡されたカゴに野菜を、従兄弟は畑より奥にある小さい滝の湧き水スイカを置きに行く。

 楽しいな……楽しいね。

 せつなんはこんな生き方が楽しかったんだ。
 ととさんも街の生活は辛そうだったから、学校卒業したら大学に進学して、田舎に帰るつもりだった。
 田舎にお嫁に行っても良かった。

 でもそれは夢だったけど。



 お姉様。

 うーん、せつなんは何が描きたいかと言うと、お姉様に昔のととさんの実家にお姉様がいたら、一緒に料理ができてきっと楽しかったと思うの。
 せつなんは母さんと妹は料理が苦手で、お手伝いせずに逃げちゃうから、いつも愚痴を言われてたから……。
 お姉様がいたら、きっとせつなんも笑っておばあちゃんやおばちゃんたちと味見をしたり、おしゃべりできたんじゃないかなぁ。
 そして、

「二人とも、お疲れさんやなぁ」
「本当にようやったね」

って、田舎では丸ドーナツって言っていたサーターアンダギーや、トマトや椎茸とピーマンを軽く焼ききゅうりも切ってくれて、ひしお味噌という地域の甘い麦味噌をつけて食べられるようにしてくれて、

「丸ドーナツは一人一個やけど、頑張ったあんたたちは三つずつ。隠居で食べといで。湯のみとやかんも持って行くんで?」

って、少し離れた隠居の縁側に座って、山や伯父さんが育てている大きい菊やさつき、松の鉢植えを眺めて向かいの山や、空は広くて、綺麗なんだって見てもらうの。
 夜になると満天の星、もう少し季節が早いと、谷になってる下の川の周りは蛍の乱舞だけど、本当に星は綺麗。
 自慢なの。

 あ、料理の手を止めた、いとこのお姉ちゃんが母屋からやってきて、

「お風呂沸かさないかんがな」

って、薪と枯れた木の枝を持って、隠居の横の裏口に入っていったよ。
 そうして、下の川で遊んでいた弟と従兄弟たちが、細い近道を駆け上がってきて、

「姉ちゃん〜カジカ捕まえた〜!」
「ほら、おっきいサワガニ!食べる?」
「そんなんじゃ、食べるところもないがね。たらいうどん(釜揚げうどん)の出汁にするけん、こっちにおいで。炙るけんなぁ」

お風呂を沸かしていたお姉ちゃんの声。

「湧いたら、一番にあんたらお風呂の中入りんさいや」



 暖かい思い出をお姉様に知って欲しくって書きました。

 ちなみに父たち男性陣は、親戚やご近所の法事などの準備の後だったりします。
 父の実家は本家は隣にあるのですが、障子を外すと広い部屋になるので、よく昔は冠婚葬祭が行われていました。
 お酒や出される料理を食べながら、昔話をする……従姉妹の姉ちゃんは、実家で結婚式をしました。



 母屋はあるけれど、隠居はもう古かったので取り壊されました。

 お姉様と会ったら、父にわがまま言って6月のほたる祭りにお姉様と行きたいです。
 その頃までに元気になりますね。
 その時にはお姉様とお姉様の家族のテディベアを、作りますね(*☻-☻*)

 お姉様ありがとう。
 大好きです。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品