最も美しい楽器とは……

ノベルバユーザー173744

再会

 イベントの後、母とともに雅臣まさおみは別のホテルに連れて来られる。

 そのホテルは後で聞くと、日向ひなたが株の大半を所有する高級ホテルで、そのスウィートルームに入って行った雅臣は、

「うぎゃぁーん」

大泣きをする赤ん坊を抱き上げている日向に驚いた。

「……えっ?えぇ?ひなにい。赤ん坊?」
「お前の甥。風早かざはやだ。風早。臣だぞ?お前のおじさんだ」

 おもちゃを握らせ、落ち着いたのか泣き止んだ赤ん坊は、にゃはっと笑う。

「……ひなにいに似てるけど、タレ目が姉ちゃん……残念」
「何ですって〜!臣ちゃん!酷いじゃない!」
「いい加減ちゃんづけやめろよ、姉ちゃん!それに、びっくりした……」
「何が?」

 抱きついてきた姉を抱きしめ、

「姉ちゃんって、こんなに小さかったんだな。5年経って、びっくりした」
「……お、臣ちゃんは大きくなったわね……」
「もう、高校生だからな」
「それに、一条と言うのは……」

息子を抱き直しながら義弟とその後ろの母を見る。

「一条の家に養子にしてもらったんだ。実家は大騒ぎで……姉ちゃん!そういえば、顔だしていいの?実家から、連れ戻すって……」
「大丈夫よ〜だって、もう結婚してるし、成人してる人間にないわ〜それに、財産の管理とかはひなちゃんと弁護士さんもついて貰っているの。それに、国は違うけど、財産は自分たちの生活費以外は全部、寄付と日本の田舎の生活に戻りたい人への支援活動に当てているの。それと、今住んでいる町の害獣被害とか……」
「映画の中でウェインが銃を撃っているシーンがあっただろう?ウェインも俺も、友人の醍醐も祐也も所持している。冬には山に入って猟をしているんだ。猟犬も育ててる。それにスゥは、執筆の合間に祐也の嫁の蛍たちと蛍の飼育のお手伝いとかな」
「ほーちゃんと、風遊ふゆさんにおばあちゃんや近所のおばあちゃん達たちと、手作りのものを置いて販売しているマルシェを開いたり、喫茶店を保育園に隣接した建物に図書館もあるのよ。今度遊びに来る?お母さんも……どうぞ」

 灯里あかりは微笑む。

「すぅちゃん……幸せ?」
「はい!ひなちゃんに風早も、家族もいます。それに、臣ちゃんを本当にありがとうございます」
「臣ちゃんはうちの子になっちゃったのよ。でも日向とすぅちゃんもうちの子だけど……日向は、好きな道を進みなさいね。臣ちゃんもそのつもりだけど……無理に思うことないわ」
「そう言えば母さん……一応、ばあちゃんになったから。次から親父もじいちゃんって呼ぶことにするから」
「やめてー!おばあちゃん!ひどすぎ……」

 日向は自分の腕の中の赤ん坊に、

「風早。ほら、おばあちゃんだぞ」

と言い聞かせ、キョロキョロとした幼子は、灯里を見て、手を伸ばす。

「……バ、バーバ!バーバ?」
「……か、可愛い……バーバ、この歳でショックだけど、可愛いわ」

孫を抱き上げ、頬ずりする。

「風早ちゃんだったわね。おばあちゃんですよ〜?」
「キャハハ!」
「ほら、弟。甥だぞ。抱っこしてみろ。もう1歳だ」
「折れない?」
「折れるか!」

 抱き上げると、暖かい体がピトッとくっついてくる。

「うわぁ……おもっ!でも、可愛い」
「でしょう?」

 すると、扉がノックされ、

「ひなさん、すぅさん失礼します」

扉が開くと、祐也と三原ノエルも可愛いのだが、その上を行きそうな無邪気なタレ目の美少女とが手を繋いで姿を見せる。

「すみません。はじめまして。清水祐也と申します。そして……」
「清水蛍です。よろしくお願いします」

 えへっ。

すっぴんの美少女は、雅臣の学校の女子より美少女である。

「いつもひなさん……先輩たちにお世話になっています。遅くなってすみませんでした」
「いいえ、こちらこそ、祐也さん本当にありがとうございます。今回の試写会のチケットは、あなたが送ってくださったのでしょう?」
「……ひなさんもスゥ先輩も前に進んで欲しいと思ったので……」
「でもびっくりしたわ!俺は!」
「でも嫌でした?」

 祐也の言葉に、日向は答える。

「嬉しいのと気恥ずかしいだけや」
「良かったやないですか。……はじめまして。雅臣くんだったね。俺は祐也です」
「はじめまして。祐也さん。俺のことは臣と呼んでください。よろしくお願いします」

 再会は、雅臣の進路を変えたのだった。

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