私【悪役令嬢】の婚約者【王子】を目の敵にしているのは私の親友【ヒロイン】です!?
【彼の人に出会う】 王子said
母上主催の王子のためのお茶会。このお茶会で僕は将来の伴侶を決めなければならない。
この国に一人しかいない王子である僕は、近い将来父上に代わり王となることが約束されている。そんな私に、両親がせめてもと「婚約者は自分で選んでよい。むしろ、選びなさい」とこの場をもうけた。
集められていた令嬢たち、大人たちは、僕に話しかけるたびに世辞を口にする。皆、同じことしか言わない。
「銀糸の髪が風になびいて、殿下をより一層輝かせております」
「透き通るようなヒスイの瞳が光を浴び、美しく光っており、素敵ですわ」
「国王陛下に似て、聡明であり、剣の腕も素晴らしいと聞きました」
などなど、自身の目で見たことから風の噂までと幅広くある。もう、聞き飽きた。僕自身を見ているわけではなく、その後ろにいる父上と母上を見ているのだから、嬉しくない。
今日も母上のお茶会に招待した令嬢たちから、挨拶は二の次のようにし、同じことを言われる。そんな中、1人だけ本当に挨拶だけをした令嬢がいた。ティアーナ・ウォーカー侯爵令嬢。彼女だけが世辞を言わなかった。
「お初にお目にかかります。王妃様、王子。ウォーカー侯爵が娘、ティアーナ・ウォーカーと申します。以後、お見知りおきを」
この場にいる令嬢たちの中で、一番礼儀作法が完璧で。ブロンドの髪が、サファイアの瞳が、蒼を基調としたドレスが、彼女のすべてを引き立たせる。そんな優雅な彼女に、僕は目を奪われていた。
「まぁ!貴女がティアーナね。私、貴女に会えるのを楽しみにしていたの。今日は、楽しんで行ってちょうだいね」
母上が彼女に挨拶を返した。そして小声で、
「固まっていないで、声を出しなさい。淑女をジロジロ見るものじゃないわ。たしかに、見惚れるほど可憐だけれどね」
言われて慌てる。淑女である彼女をジロジロ見るのは、紳士として品を疑われる行為だ。母上に言われて気づいた。見惚れていたのか、自分は。時も場所も考えずに。
「こちらこそよろしく頼む、ティアーナ嬢」
そう一言だけを返して、彼女は踵を返した。その後もしばらく、挨拶が続く。挨拶が終わり、母上にティアーナ嬢について聞いてみた。
「母上、ティアーナ嬢を知っているのですか?」
「あら、リード。彼女のこと、気になるのかしら?もちろん知っているわ。彼女、けっこう有名なのよ。文筆家としても、一人の令嬢としてもね。それに、彼女の母親とは学生時代に良くしてもらっていたから、今もよくお茶会に招待して、話をするのよ」
「そうなのですか。ただ、彼女だけが世辞を言わなかったもので」
一番はそれが理由だった。だから、気になった。母上は
「たしかにそうね。でも、お茶会はまだこれからだもの。気になるのなら、自分から声をかけてみるなり、様子をうかがったりしてみたら?」
言われたものの、声をかけることは出来そうにない。僕の周りには常に令嬢たちがいる。それに、彼女はひとりでベンチに座っている。それでも、彼女を見ることはできるので、横目に眺めていた。母上の言っていた、『文筆家』というのは本当なのだろう。近くにいた侍女から紙とペンを受け取り、何かを書いているのを見ることができた。
すると、小さな悲鳴が聞こえた。気づいたのは僕だけだろうと思った。しかし、そんなことは無かった。
「王妃様主催である素敵なお茶会の席で、微かに悲鳴が聞こえたのだけれど。何があったのかしら?エルザ様」
ティアーナ嬢が悲鳴が聞こえたところまで行き、一人の令嬢に声をかけた。たぶん、数人いる令嬢の中で一番身分が上なのだろう。エルザと呼ばれた令嬢が勢いよく振り返り、ティアーナ嬢は驚いたのかすぐさま後ろに一歩下がった。
その後、ティアーナ嬢はエルザ嬢に「私も例外なく、命を落としかけております」と言ったのを最後に、悲鳴をあげた令嬢を心配そうに見ていた令嬢たちのもとへと誘導し、またベンチに戻っていった。
この一連のやりとりを見ていた者も、彼女がベンチに戻ったところで会話を再開したりし始めた。また、僕に令嬢たちが声をかけ始める。それでも僕は、彼女を眺め続けていた。再開していた会話も、僕がティアーナ嬢から視線をはずさずにいたからか、またなくなる。
ふと、ティアーナ嬢がベンチを立ち、花壇の近くへ。すっとしゃがみこむと、小さな花を撫で、なにかを呟き、微笑んだ。皆が息を飲んだのがわかった。それ程までに、美しかった。
視線に気づいたのだろう彼女は、顔を上げ、慌てて淑女の礼をした。恥ずかしくなったのだろうか。庭園を出ていこうといた。
一歩、庭園から踏み出したと同時に、ティアーナ嬢はドレスのスカートをたくし上げた。淑女が何をしているんだと思ったのもつかの間、両の手で(彼女用の特注なのだろう)レイピアを持ち、片方を投げ、片方で彼女めがけて飛んできたものを弾いた。飛んできたのは短剣だった。
「まさかこんな大勢の目がある場所で、こんなことが起こるなんて」
投げたレイピアは突き刺さり、弾いた短剣は床に転がった。令嬢たちは騒ぎ始め、すぐに侍女が来て、彼女に声をかけた。そして、床に転がっていた短剣を侍女から受け取ったティアーナ嬢は、そのままの足で、先程やりとりをしたエルザ嬢の元へ向かった。
「エルザ様。こちらの短剣、ラーリアム家のものですよね?お返ししますわ」
短剣を渡し、くるっと振り返り、もう一度淑女の礼をした。
「お騒がせいたしました、皆様。それでは、私はこれで失礼いたします」
侍女からレイピアと紙を受け取り、城をあとにして行った。彼女はこのお茶会で、誰もの目を引いた。声を上げることも、助けにはいることもしなかった僕とは大違いだ。
心なしか、僕は「欲しい…」と、呟いていた。
彼女に心奪われていた。
最後、なんか違う気がするけど大丈夫だと信じてる。
王子がちょっとヘタレ感。今後、グイグイ来るようになります。
ティアは自分でフラグ立ててたね。気づいてないだけで。
この国に一人しかいない王子である僕は、近い将来父上に代わり王となることが約束されている。そんな私に、両親がせめてもと「婚約者は自分で選んでよい。むしろ、選びなさい」とこの場をもうけた。
集められていた令嬢たち、大人たちは、僕に話しかけるたびに世辞を口にする。皆、同じことしか言わない。
「銀糸の髪が風になびいて、殿下をより一層輝かせております」
「透き通るようなヒスイの瞳が光を浴び、美しく光っており、素敵ですわ」
「国王陛下に似て、聡明であり、剣の腕も素晴らしいと聞きました」
などなど、自身の目で見たことから風の噂までと幅広くある。もう、聞き飽きた。僕自身を見ているわけではなく、その後ろにいる父上と母上を見ているのだから、嬉しくない。
今日も母上のお茶会に招待した令嬢たちから、挨拶は二の次のようにし、同じことを言われる。そんな中、1人だけ本当に挨拶だけをした令嬢がいた。ティアーナ・ウォーカー侯爵令嬢。彼女だけが世辞を言わなかった。
「お初にお目にかかります。王妃様、王子。ウォーカー侯爵が娘、ティアーナ・ウォーカーと申します。以後、お見知りおきを」
この場にいる令嬢たちの中で、一番礼儀作法が完璧で。ブロンドの髪が、サファイアの瞳が、蒼を基調としたドレスが、彼女のすべてを引き立たせる。そんな優雅な彼女に、僕は目を奪われていた。
「まぁ!貴女がティアーナね。私、貴女に会えるのを楽しみにしていたの。今日は、楽しんで行ってちょうだいね」
母上が彼女に挨拶を返した。そして小声で、
「固まっていないで、声を出しなさい。淑女をジロジロ見るものじゃないわ。たしかに、見惚れるほど可憐だけれどね」
言われて慌てる。淑女である彼女をジロジロ見るのは、紳士として品を疑われる行為だ。母上に言われて気づいた。見惚れていたのか、自分は。時も場所も考えずに。
「こちらこそよろしく頼む、ティアーナ嬢」
そう一言だけを返して、彼女は踵を返した。その後もしばらく、挨拶が続く。挨拶が終わり、母上にティアーナ嬢について聞いてみた。
「母上、ティアーナ嬢を知っているのですか?」
「あら、リード。彼女のこと、気になるのかしら?もちろん知っているわ。彼女、けっこう有名なのよ。文筆家としても、一人の令嬢としてもね。それに、彼女の母親とは学生時代に良くしてもらっていたから、今もよくお茶会に招待して、話をするのよ」
「そうなのですか。ただ、彼女だけが世辞を言わなかったもので」
一番はそれが理由だった。だから、気になった。母上は
「たしかにそうね。でも、お茶会はまだこれからだもの。気になるのなら、自分から声をかけてみるなり、様子をうかがったりしてみたら?」
言われたものの、声をかけることは出来そうにない。僕の周りには常に令嬢たちがいる。それに、彼女はひとりでベンチに座っている。それでも、彼女を見ることはできるので、横目に眺めていた。母上の言っていた、『文筆家』というのは本当なのだろう。近くにいた侍女から紙とペンを受け取り、何かを書いているのを見ることができた。
すると、小さな悲鳴が聞こえた。気づいたのは僕だけだろうと思った。しかし、そんなことは無かった。
「王妃様主催である素敵なお茶会の席で、微かに悲鳴が聞こえたのだけれど。何があったのかしら?エルザ様」
ティアーナ嬢が悲鳴が聞こえたところまで行き、一人の令嬢に声をかけた。たぶん、数人いる令嬢の中で一番身分が上なのだろう。エルザと呼ばれた令嬢が勢いよく振り返り、ティアーナ嬢は驚いたのかすぐさま後ろに一歩下がった。
その後、ティアーナ嬢はエルザ嬢に「私も例外なく、命を落としかけております」と言ったのを最後に、悲鳴をあげた令嬢を心配そうに見ていた令嬢たちのもとへと誘導し、またベンチに戻っていった。
この一連のやりとりを見ていた者も、彼女がベンチに戻ったところで会話を再開したりし始めた。また、僕に令嬢たちが声をかけ始める。それでも僕は、彼女を眺め続けていた。再開していた会話も、僕がティアーナ嬢から視線をはずさずにいたからか、またなくなる。
ふと、ティアーナ嬢がベンチを立ち、花壇の近くへ。すっとしゃがみこむと、小さな花を撫で、なにかを呟き、微笑んだ。皆が息を飲んだのがわかった。それ程までに、美しかった。
視線に気づいたのだろう彼女は、顔を上げ、慌てて淑女の礼をした。恥ずかしくなったのだろうか。庭園を出ていこうといた。
一歩、庭園から踏み出したと同時に、ティアーナ嬢はドレスのスカートをたくし上げた。淑女が何をしているんだと思ったのもつかの間、両の手で(彼女用の特注なのだろう)レイピアを持ち、片方を投げ、片方で彼女めがけて飛んできたものを弾いた。飛んできたのは短剣だった。
「まさかこんな大勢の目がある場所で、こんなことが起こるなんて」
投げたレイピアは突き刺さり、弾いた短剣は床に転がった。令嬢たちは騒ぎ始め、すぐに侍女が来て、彼女に声をかけた。そして、床に転がっていた短剣を侍女から受け取ったティアーナ嬢は、そのままの足で、先程やりとりをしたエルザ嬢の元へ向かった。
「エルザ様。こちらの短剣、ラーリアム家のものですよね?お返ししますわ」
短剣を渡し、くるっと振り返り、もう一度淑女の礼をした。
「お騒がせいたしました、皆様。それでは、私はこれで失礼いたします」
侍女からレイピアと紙を受け取り、城をあとにして行った。彼女はこのお茶会で、誰もの目を引いた。声を上げることも、助けにはいることもしなかった僕とは大違いだ。
心なしか、僕は「欲しい…」と、呟いていた。
彼女に心奪われていた。
最後、なんか違う気がするけど大丈夫だと信じてる。
王子がちょっとヘタレ感。今後、グイグイ来るようになります。
ティアは自分でフラグ立ててたね。気づいてないだけで。
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