4話 成人の儀④

成人の儀を終えて、村に戻ってきたイドラは母であるキシャラや村人に結果を報告していた。

「基本能力はこんな感じで、総合評価はDでした。」

すると、大人の村人から感嘆の声が上がる。

「そして、『波形操作』という能力を授かりました。」

というと、村人たちは首を傾げた。

「何ですかい、その『ハケイソウサ』ってのは？」
「波形操作は波の形を操作すると書いて波形操作です。」
「はぁ...?つまり、それはどういうことで？」

村人のこの反応は、この世界に物理学の考え方が存在しないと言っているわけではなく、単純に「必要ないから知られていないだけ」である。
帰りの馬車の中でずっと参考文献を読んでいたイドラは何となくどういうものなのか把握しつつあった。

「まず、波というのは物質の振動のことを指すそうです。」
「はぁ...」

分かっているのか分かっていないのか微妙なところだが話を続ける。

「つまり、波形操作とは物質の振動を自由に操れる能力なのだそうです。」
「それって何かに使えるんですかい？」

これについてはイドラもまだハッキリとした答えは見つかっていないが、今考えているのは

「今思いついているものとしては、波の一種である音で押し返したりなど攻撃手段で使ったり、あるいは爆音で相手を怯ませる、と言ったところでしょうか。」
「おぉ！それならちょっとは役に立ちそうですな。」
「ただ、父上みたいに戦いにおいて特別有利になるようなものではなさそうですね...」
「まぁ、それは仕方ないんじゃないですかい？イルト様の能力はちと桁外れですからなぁ。」
「とりあえず、今のところは色々試してみることにします。報告は以上です。」

すると村人たちは話しながら散っていった。
しかし、その会話の中には

「イルト様があれだけ強い能力を持っていらっしゃるのだからイドラ様も、と思ったが少し拍子抜けだったな。」
「それはあるな。ただ、能力は遺伝するわけじゃないから仕方ないけどな。」
「それでも、イルト様はあの能力もあってあれだけ強くて領地を守っておられるのだから少し不安でもあるな。」

やはり、父と比べてパッとしない能力が故に村人にも不安がありそうだ。

「どうにかして使いこなせるようにならねば...!」

帰って早速イドラは能力の確認と練習に入る事とした。