Traveる
4-7 敗者
壮絶な戦いが始まった。音速を超える速さで魔人が襲いかかってくる。しかし
「遅いわね」
その魔人を剣の一振で真っ二つに切り裂いた。
「ほう?流石だな。だが残り二十九体……この調子で戦っていけるかな」
「くっ……」
サアヤが音速の速さの敵を斬れる理由は体の全ての信号を魔法で命令しているからだ。これにより脊髄反射の何倍ものスピードと判断力を得ていた。しかしそれは常に自分の体を電気が蝕んでいるということになる。体は持って十分くらいだろう。
その後も得意の速さで魔人を切り裂いていくが、十五体目で異変が起こる。
「……っ!?」
真っ二つに切り裂こうとした剣が魔人の体の途中で止まってしまったのだ。
「くっ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
しかしそれでも力ずくで魔人の体を引き裂く。
「はぁはぁ……」
徐々に力の無くなっていくサアヤを見て、ハヤトは高機嫌になる。
「どうした、もう終わりか?お前の力はそんなものだったのか?」
余裕の表情で煽る。
「何よ……もう半分も残ってないじゃない……よく言うわね」
サアヤも負けじと意地を張る。しかし体力が尽きかけていることは誰が見てもすぐに分かるだろう。
「やれお前ら……」
極めて冷徹に告げる。そしてまた戦いが始まった。
そして……
「はっはっはっ……やるじゃねーか。ほれ、魔人はもう残り五体しかいねぇぞ?こんなに倒されるとは意外だったな。褒めてやろう」
完全に精魂尽き果てたサアヤにハヤトは笑って話しかける。
「これが魔人の力……こんな化け物にも……勝てるなんてな……。まだ実感が湧かねぇ」
しかし、魔人の生き残った五体も五体満足という訳では無い。腕は引きちぎられ、足はもげている者もいる。
「新しい魔人が大量にいるな……どこかで使えねぇ兵士をかき集めるか。と、その前に」
ハヤトは倒れているサアヤの胸ぐらを掴む。
「お前には俺の元で働いてもらう。その災厄という肩書きを利用してやる……」
その翌日、ヒナは石のゴツゴツしたような所で目を覚ます。
「あ……痛た……」
二日酔いのような頭痛がヒナを襲う。
「やっと起きたみたいねヒナ」
そう話しかけてくれたのはリカだった。ヒナは安心して抱きつこうとしたが、何故か腕の自由が効かない。
「後ろ、縄で拘束されてるわ。私の風魔法じゃどうしようもないからお願い」
それで全てを察し、ヒナは縄を氷のダイアで切り裂く。そして周りをよく見てみる。
「ここ……は?」
「恐らく、王国の地下牢ね」
明かりのある方には柵があり、閉じ込められていた。
「な……なんで、私たちが……?」
「まぁ、過去に悪いことばっかしてたから当然っちゃ当然なんだけど……」
リカは自称気味に話すが本心ではとても困惑しているだろう。
「とりあえず、こんな所からはさっさと抜け出そう!」
その意見についてリカは考え込む。
(昨日のサアヤが戦ったナニカと私たちが捕まった理由に何か繋がりがあるはず……今王国で一体何が……っ!?)
そこまで考えたところでリカの思考が止まり、冷や汗がどくどくと出てくる。
何かが近づいてきている。ものすごく強大でおぞましい魔力が。隣を見ると、どうやらヒナも同じ悪寒を感じているように見える。そのことを確認し、すぐさま柵の方へ手を伸ばす。
「……リカっ!!」
「もう遅いよ、ヒナ」
と、リカはそう告げる。
「駄目っ!私が……私がやるっ!!」
この時、リカは得意の風魔法でおぞましい魔力をもつ生物を撹乱していた。なるべく刺激しないように、気を逸らし逃げる時間を確保するため。
「ほ……ほらヒナ。さっさと逃げなさい」
リカは至ってあっけらかんと、そう言う。
「嫌だよっ!!リカを置いていくなんて……私に出来るわけ……私が何故パーティの防御役になりたいって言ったか……覚えてる?もう……みんな失いたくないからっ!!それくらいなら死んだ方がマシだって本気で思ってたから……っ」
しかしヒナの訴え掛けは全く通じない。
「なによ……仕方がないじゃない……私が先に動いたんだからっ……。あなたより私の方が貴方を思っているってことよ。……観念なさい」
もはやリカはヒナの方を見ない。完全におぞましい魔力を持つものを惑わすために全神経を集中している。……それに、一切迷うことなく、ヒナが安全に逃げてくれると信じきっている。
「っ……でも!!っそれなら私も一緒に戦う!それなら二人でも生き残れるよ!!絶対に!!」
「何よ……私じゃこいつに勝てないとでも思っているの?」
「っ……それは……」
「私を信じなさい。それとも何?伝説の薔薇の盗賊団のメンバーであるこの私が負けるとでも思っているの?それに私も騙しきったらあなたのあとを追うし」
自身を奮いたたせることも含め、リカが全力でそう言う。
「絶対だよ……必ず生きてまた会えるよね……?」
サアヤから貰った薔薇を握りしめながらヒナが問う。
「当たり前じゃない。誰に行ってんのよ」
もう一度念を押して聞き返し、ヒナはようやく決心がついたのかルートを見定め、走り去っていった。
「はぁ。やっと行ってくれた……最初に会った時はなんでサアヤはあんなに気に入ってたんだろうとか思ってたけど……まさかこんなに情が出来ていたなんてね……」
そして、ヒナの安全を完全に理解し、リカの目の色が変わる。
「さぁ。誰かわからないけど、私と勝負よ……」
「遅いわね」
その魔人を剣の一振で真っ二つに切り裂いた。
「ほう?流石だな。だが残り二十九体……この調子で戦っていけるかな」
「くっ……」
サアヤが音速の速さの敵を斬れる理由は体の全ての信号を魔法で命令しているからだ。これにより脊髄反射の何倍ものスピードと判断力を得ていた。しかしそれは常に自分の体を電気が蝕んでいるということになる。体は持って十分くらいだろう。
その後も得意の速さで魔人を切り裂いていくが、十五体目で異変が起こる。
「……っ!?」
真っ二つに切り裂こうとした剣が魔人の体の途中で止まってしまったのだ。
「くっ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
しかしそれでも力ずくで魔人の体を引き裂く。
「はぁはぁ……」
徐々に力の無くなっていくサアヤを見て、ハヤトは高機嫌になる。
「どうした、もう終わりか?お前の力はそんなものだったのか?」
余裕の表情で煽る。
「何よ……もう半分も残ってないじゃない……よく言うわね」
サアヤも負けじと意地を張る。しかし体力が尽きかけていることは誰が見てもすぐに分かるだろう。
「やれお前ら……」
極めて冷徹に告げる。そしてまた戦いが始まった。
そして……
「はっはっはっ……やるじゃねーか。ほれ、魔人はもう残り五体しかいねぇぞ?こんなに倒されるとは意外だったな。褒めてやろう」
完全に精魂尽き果てたサアヤにハヤトは笑って話しかける。
「これが魔人の力……こんな化け物にも……勝てるなんてな……。まだ実感が湧かねぇ」
しかし、魔人の生き残った五体も五体満足という訳では無い。腕は引きちぎられ、足はもげている者もいる。
「新しい魔人が大量にいるな……どこかで使えねぇ兵士をかき集めるか。と、その前に」
ハヤトは倒れているサアヤの胸ぐらを掴む。
「お前には俺の元で働いてもらう。その災厄という肩書きを利用してやる……」
その翌日、ヒナは石のゴツゴツしたような所で目を覚ます。
「あ……痛た……」
二日酔いのような頭痛がヒナを襲う。
「やっと起きたみたいねヒナ」
そう話しかけてくれたのはリカだった。ヒナは安心して抱きつこうとしたが、何故か腕の自由が効かない。
「後ろ、縄で拘束されてるわ。私の風魔法じゃどうしようもないからお願い」
それで全てを察し、ヒナは縄を氷のダイアで切り裂く。そして周りをよく見てみる。
「ここ……は?」
「恐らく、王国の地下牢ね」
明かりのある方には柵があり、閉じ込められていた。
「な……なんで、私たちが……?」
「まぁ、過去に悪いことばっかしてたから当然っちゃ当然なんだけど……」
リカは自称気味に話すが本心ではとても困惑しているだろう。
「とりあえず、こんな所からはさっさと抜け出そう!」
その意見についてリカは考え込む。
(昨日のサアヤが戦ったナニカと私たちが捕まった理由に何か繋がりがあるはず……今王国で一体何が……っ!?)
そこまで考えたところでリカの思考が止まり、冷や汗がどくどくと出てくる。
何かが近づいてきている。ものすごく強大でおぞましい魔力が。隣を見ると、どうやらヒナも同じ悪寒を感じているように見える。そのことを確認し、すぐさま柵の方へ手を伸ばす。
「……リカっ!!」
「もう遅いよ、ヒナ」
と、リカはそう告げる。
「駄目っ!私が……私がやるっ!!」
この時、リカは得意の風魔法でおぞましい魔力をもつ生物を撹乱していた。なるべく刺激しないように、気を逸らし逃げる時間を確保するため。
「ほ……ほらヒナ。さっさと逃げなさい」
リカは至ってあっけらかんと、そう言う。
「嫌だよっ!!リカを置いていくなんて……私に出来るわけ……私が何故パーティの防御役になりたいって言ったか……覚えてる?もう……みんな失いたくないからっ!!それくらいなら死んだ方がマシだって本気で思ってたから……っ」
しかしヒナの訴え掛けは全く通じない。
「なによ……仕方がないじゃない……私が先に動いたんだからっ……。あなたより私の方が貴方を思っているってことよ。……観念なさい」
もはやリカはヒナの方を見ない。完全におぞましい魔力を持つものを惑わすために全神経を集中している。……それに、一切迷うことなく、ヒナが安全に逃げてくれると信じきっている。
「っ……でも!!っそれなら私も一緒に戦う!それなら二人でも生き残れるよ!!絶対に!!」
「何よ……私じゃこいつに勝てないとでも思っているの?」
「っ……それは……」
「私を信じなさい。それとも何?伝説の薔薇の盗賊団のメンバーであるこの私が負けるとでも思っているの?それに私も騙しきったらあなたのあとを追うし」
自身を奮いたたせることも含め、リカが全力でそう言う。
「絶対だよ……必ず生きてまた会えるよね……?」
サアヤから貰った薔薇を握りしめながらヒナが問う。
「当たり前じゃない。誰に行ってんのよ」
もう一度念を押して聞き返し、ヒナはようやく決心がついたのかルートを見定め、走り去っていった。
「はぁ。やっと行ってくれた……最初に会った時はなんでサアヤはあんなに気に入ってたんだろうとか思ってたけど……まさかこんなに情が出来ていたなんてね……」
そして、ヒナの安全を完全に理解し、リカの目の色が変わる。
「さぁ。誰かわからないけど、私と勝負よ……」
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