Traveる
4-2 ハヤトと二十の巨大生物
友恵に後ろを守ってもらっている享介、ハルカ、ヒナは城の王室までの長い廊下を走っていた。
「ずっと一本道……」
どこまでも続く道に享介が呟く。
「昔本で読んだことがあるわ。こういう一本道な宮廷を作る理由は二つある。一つは自分の城の美しさを誇るためのルートを決め込んでいる。もう一つは……万が一、敵が侵入して来た場合直進しかできないようにして、挟み撃ちにするため……」
その言葉に享介はゾクッと悪寒が走る感覚に襲われる。
「大丈夫よ。それを回避するために友恵が後ろで頑張って貰っているんだから」
「……そうだな」
その言葉による享介の安心も次の一言で消え去る。
「……挟むということは前にも強大な敵がいるってことだよな」
突如聞こえた声に、三人は足を止める。いや、止めざるを得なかった。圧倒的なオーラに三人が気圧されたからだ。
「団長!上!」
ヒナの言葉で享介とハルカが上を見上げる。
「ハヤト……っ!!」
そこにはハルカの妹でもあるハヤトが空に浮かんでいた。
「やっと来たな……お前を……お前さえ倒せれば完全に僕の敵はいなくなる。この王国は僕だけの理想郷となるのだ……」
完全にイカれている。力に支配されてしまっている。
「ハヤト!あんた何を考えているの!?こんなことをして……本当に許されると思っているの!?」
しかしそのハルカの言葉をかき消すかのような怒鳴り声でハヤトが遮る。
「うるせえっ!!もう僕は姉の背中を見て妬んでるような奴じゃない!!今の僕は最強なんだ……この力さえあればお前らなんか」
言葉にすると、ハヤトの体の周りがドス黒いオーラで満ちる。発生源は腰につけている剣からだ。恐らくどこかしらの経路であの剣を入手し力を得たのだろう。
「見せてやる……僕の真の下僕っ!!」
ハヤトが何かしらの魔法を唱える。するとハヤトの後ろの空間に裂け目ができ、そこからとんでもないエネルギーが溢れる。そして、ハヤトの詠唱と共に黒い巨大生物が現れた。凄まじいオーラを放っており、見ているだけでも足がすくんで動けなくなりそうだ。
「まさか……あの時……王国の反乱の前に現れた黒い巨大生物を召喚したのも……あんただって言うの……!?」
「そうだよ!なんだよまだ気づいてなかったのかよ!!冥土の土産に教えておいてやる。こいつは魔人。魔素の災薬を過剰に取らせた人間の成れの果て。僕の命令しか受け付けない僕に忠実な最高の兵士だっ!!」
聞きなれない単語に溢れていて、三人は全く理解できない。だが絶望はそれだけでは終わらなかった。
「……えっ」
そこでハルカの思考が止まる。あの黒い巨大生物が一体と言わず二体三体と出てくるのだ。そして最終的にその数は二十を超えていく。
「そんな超強い魔人が二十五体。そこの二人は論外だが、ハルカ。今なら、お前だけは助けてやってもいいぞ?」
正直勝てる相手ではない。恐らくだがヒナでも相手の攻撃を受け止めきれずに瞬殺だろう。しかしハルカはここにきてハヤトに笑ってみせた。
「……別にそんな情けはいらないわ。倒れるのはあんたなんだから」
そんな根拠も何も無い言葉にハヤトが盛大に笑う。
「は……はははははっ。何言ってんだオマエ。状況がよく分かってないのか?」
「分かってねぇのはおめぇだ」
そこで新たなる声が聞こえた。享介でもないヒナでもない、もちろんハルカでもない。その人物は享介たちの遥か後ろにいた。黒い巨大生物……ハヤトが魔人と呼んだ存在のどす黒いオーラすら跳ね返すほどの暖かな光が背中の方から感じる。
「お前の相手は俺だ」
圧倒的なパワーを携えてこちらへと向かってくる人物がいる。
「……アツシ」
三人が呟く。髪は逆立ち、体の筋肉がはち切れんばかりに大きく膨れ上がっている。いつものグータラした雰囲気は全くなく、まるで別人のようだ。
「アオイ……頼む」
そうアツシが呟くとどこからかアオイの声が聞こえてくる。
「分かってるよ。俺様に任せとけ」
その言葉が聞こえた次の瞬間……アツシと魔人の姿が消えた。
「……っ!?お前ら、何をした」
そのハヤトの言葉にアオイが答える。
「空間転移。上を見てみな。俺様の魔法で俺様特性の戦いの場に転移してやったぜ。あのフィールドではどちらかの陣営が全滅するまでは壊れない。そんなフィールドでアツシと魔人共だけで戦ってもらう」
ハヤトは呆気に取られた顔をしたがすぐに笑い出す。
「はっはははははははははははははは。無駄なことを!あいつは前に一体を倒すのにあれだけ苦労したじゃないか!!二十五体もの魔人に勝てるわけがない!!おいお前ら!!やっちまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
魔人が目にも止まらぬ早さでアツシを攻撃しようとする。しかし、その攻撃は当たらない。
「っ……!?」
「まさか……あんた、アツシの能力を知らないの」
気がついたようにハルカが教える。
「アツシの魔法は寝る子は育つ。寝ている間に体力を回復するが、その回復に上限がない。前回はざっと一年未満。それに対して今回は二年分、しかも昼間でもずっと寝ていた。パワーはあの時と比較にならない」
そのハルカの説明にハヤトは舌打ちをする。
「まぁいい。やつを抑えているだけでも充分だ。お前らをここで倒せば誰もあいつを助ける奴はいなくなる!!」
そういってハヤトは一番戦力外の享介を狙う。腰につけていた、禍々しい剣を鞘から抜いて切りかかる。しかし
「そうはさせないわ」
その攻撃をヒナが氷の刃で受け止める。
「団長!!享介!!今のうちに穂乃香ちゃんを!!ってうわっ」
ハヤトの闇の力が予想以上に強かったのかヒナが押される。
「ヒナ!大丈夫!!待ってて、今助ける」
ハルカがそう言うと背後からハヤトを切りつけようと振りかぶる。
「お前の攻撃などくらうわけねぇだろ」
「残念。あなたの手は私の侵食する氷で動けないのです」
ヒナの冷徹な声がハヤトに届く。そしてハルカの攻撃がクリティカルヒットする。
「ぐわっ!?」
そして二人は一旦距離をとる。
「享介。ごめん。私はついていけそうにないわ。あなた一人で穂乃香を探して!絶対にこの奥にいるはずだから!!」
そういってハルカは一つの瓶を享介に投げる。
「それは新開発の力のポーションよ。効果時間は一分しかないけど、何かあったらそれを使って」
それだけいって二人はハヤトとの戦いを再開する。もう進むしか道は残っていない。
「待っててくれ、穂乃香ちゃん……俺が絶対に助ける」
「ずっと一本道……」
どこまでも続く道に享介が呟く。
「昔本で読んだことがあるわ。こういう一本道な宮廷を作る理由は二つある。一つは自分の城の美しさを誇るためのルートを決め込んでいる。もう一つは……万が一、敵が侵入して来た場合直進しかできないようにして、挟み撃ちにするため……」
その言葉に享介はゾクッと悪寒が走る感覚に襲われる。
「大丈夫よ。それを回避するために友恵が後ろで頑張って貰っているんだから」
「……そうだな」
その言葉による享介の安心も次の一言で消え去る。
「……挟むということは前にも強大な敵がいるってことだよな」
突如聞こえた声に、三人は足を止める。いや、止めざるを得なかった。圧倒的なオーラに三人が気圧されたからだ。
「団長!上!」
ヒナの言葉で享介とハルカが上を見上げる。
「ハヤト……っ!!」
そこにはハルカの妹でもあるハヤトが空に浮かんでいた。
「やっと来たな……お前を……お前さえ倒せれば完全に僕の敵はいなくなる。この王国は僕だけの理想郷となるのだ……」
完全にイカれている。力に支配されてしまっている。
「ハヤト!あんた何を考えているの!?こんなことをして……本当に許されると思っているの!?」
しかしそのハルカの言葉をかき消すかのような怒鳴り声でハヤトが遮る。
「うるせえっ!!もう僕は姉の背中を見て妬んでるような奴じゃない!!今の僕は最強なんだ……この力さえあればお前らなんか」
言葉にすると、ハヤトの体の周りがドス黒いオーラで満ちる。発生源は腰につけている剣からだ。恐らくどこかしらの経路であの剣を入手し力を得たのだろう。
「見せてやる……僕の真の下僕っ!!」
ハヤトが何かしらの魔法を唱える。するとハヤトの後ろの空間に裂け目ができ、そこからとんでもないエネルギーが溢れる。そして、ハヤトの詠唱と共に黒い巨大生物が現れた。凄まじいオーラを放っており、見ているだけでも足がすくんで動けなくなりそうだ。
「まさか……あの時……王国の反乱の前に現れた黒い巨大生物を召喚したのも……あんただって言うの……!?」
「そうだよ!なんだよまだ気づいてなかったのかよ!!冥土の土産に教えておいてやる。こいつは魔人。魔素の災薬を過剰に取らせた人間の成れの果て。僕の命令しか受け付けない僕に忠実な最高の兵士だっ!!」
聞きなれない単語に溢れていて、三人は全く理解できない。だが絶望はそれだけでは終わらなかった。
「……えっ」
そこでハルカの思考が止まる。あの黒い巨大生物が一体と言わず二体三体と出てくるのだ。そして最終的にその数は二十を超えていく。
「そんな超強い魔人が二十五体。そこの二人は論外だが、ハルカ。今なら、お前だけは助けてやってもいいぞ?」
正直勝てる相手ではない。恐らくだがヒナでも相手の攻撃を受け止めきれずに瞬殺だろう。しかしハルカはここにきてハヤトに笑ってみせた。
「……別にそんな情けはいらないわ。倒れるのはあんたなんだから」
そんな根拠も何も無い言葉にハヤトが盛大に笑う。
「は……はははははっ。何言ってんだオマエ。状況がよく分かってないのか?」
「分かってねぇのはおめぇだ」
そこで新たなる声が聞こえた。享介でもないヒナでもない、もちろんハルカでもない。その人物は享介たちの遥か後ろにいた。黒い巨大生物……ハヤトが魔人と呼んだ存在のどす黒いオーラすら跳ね返すほどの暖かな光が背中の方から感じる。
「お前の相手は俺だ」
圧倒的なパワーを携えてこちらへと向かってくる人物がいる。
「……アツシ」
三人が呟く。髪は逆立ち、体の筋肉がはち切れんばかりに大きく膨れ上がっている。いつものグータラした雰囲気は全くなく、まるで別人のようだ。
「アオイ……頼む」
そうアツシが呟くとどこからかアオイの声が聞こえてくる。
「分かってるよ。俺様に任せとけ」
その言葉が聞こえた次の瞬間……アツシと魔人の姿が消えた。
「……っ!?お前ら、何をした」
そのハヤトの言葉にアオイが答える。
「空間転移。上を見てみな。俺様の魔法で俺様特性の戦いの場に転移してやったぜ。あのフィールドではどちらかの陣営が全滅するまでは壊れない。そんなフィールドでアツシと魔人共だけで戦ってもらう」
ハヤトは呆気に取られた顔をしたがすぐに笑い出す。
「はっはははははははははははははは。無駄なことを!あいつは前に一体を倒すのにあれだけ苦労したじゃないか!!二十五体もの魔人に勝てるわけがない!!おいお前ら!!やっちまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
魔人が目にも止まらぬ早さでアツシを攻撃しようとする。しかし、その攻撃は当たらない。
「っ……!?」
「まさか……あんた、アツシの能力を知らないの」
気がついたようにハルカが教える。
「アツシの魔法は寝る子は育つ。寝ている間に体力を回復するが、その回復に上限がない。前回はざっと一年未満。それに対して今回は二年分、しかも昼間でもずっと寝ていた。パワーはあの時と比較にならない」
そのハルカの説明にハヤトは舌打ちをする。
「まぁいい。やつを抑えているだけでも充分だ。お前らをここで倒せば誰もあいつを助ける奴はいなくなる!!」
そういってハヤトは一番戦力外の享介を狙う。腰につけていた、禍々しい剣を鞘から抜いて切りかかる。しかし
「そうはさせないわ」
その攻撃をヒナが氷の刃で受け止める。
「団長!!享介!!今のうちに穂乃香ちゃんを!!ってうわっ」
ハヤトの闇の力が予想以上に強かったのかヒナが押される。
「ヒナ!大丈夫!!待ってて、今助ける」
ハルカがそう言うと背後からハヤトを切りつけようと振りかぶる。
「お前の攻撃などくらうわけねぇだろ」
「残念。あなたの手は私の侵食する氷で動けないのです」
ヒナの冷徹な声がハヤトに届く。そしてハルカの攻撃がクリティカルヒットする。
「ぐわっ!?」
そして二人は一旦距離をとる。
「享介。ごめん。私はついていけそうにないわ。あなた一人で穂乃香を探して!絶対にこの奥にいるはずだから!!」
そういってハルカは一つの瓶を享介に投げる。
「それは新開発の力のポーションよ。効果時間は一分しかないけど、何かあったらそれを使って」
それだけいって二人はハヤトとの戦いを再開する。もう進むしか道は残っていない。
「待っててくれ、穂乃香ちゃん……俺が絶対に助ける」
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