Traveる
2-9 金色の暗殺者
「恨みはありませんが消えてもらいます」
水族館のショーの会場へと歩いていた享介は、道中に腰まで伸びた長い金髪の少女に出会い、殺されかけていた。
「……次は外しません」
少女が大きく武器を振りかぶる。しかしその攻撃が享介に当たることは無かった。当たる瞬間、先に行っていたはずのヒナが、氷の刃で攻撃を受け止めてくれていた。
「やっぱりなんかいたのね。やけに視線を感じたから怪しいとは思ってたけどってうわ!!」
そこで不可解な現象が起きる。あのホムラの必殺技でさえ軽く斬り裂いたヒナが鍔迫り合いに負けたのだった。
「何こいつ……強い」
「ヒナ!大丈夫か!?」
「ええ、なんとかね。」
ヒナも少し戸惑いを隠せないらしい。
「殺せ、と言われているのは異世界人だけなのですが……邪魔です」
「へー。ちょっと強いからって調子に乗らないでもらいたいね。氷のダイア!!」
ヒナがそう言い放つと瞬間。両腕に二対の氷の刃が現れる。双剣のようなイメージであってる。
「せいやっ!」
ヒナの怒涛の連続攻撃を繰り出す。流石の襲撃者も防御の姿勢になる。
「……ひーちゃん。二つに分かれて片方は刀。もう片方は盾に」
すると刹那。襲撃者の持っていた太刀のような武器が言葉のままに変化し、ヒナの攻撃を受け止めた。
「ちっ」
「なんだ……あの武器」
「……霊装……かも」
攻撃を受け止められながらもヒナが答える。
「な……なんだそれ……!?」
「普通の魔法以外でも魔法力さえ生み出せれば武器固有の魔法を自在に操れる優れものよ。大体こういう武器は特殊な魔法を使えるのがほとんどだから余計にやっかいね。それで、この霊装は変身機能がついてるって理由か」
襲撃者も攻撃を受け止めながら答える。
「通称ヒヒイロカネ。どんな物にでも言葉のままに形を変えることの出来る伝説の非金属。……よく知っていますね。と、言いたいところですが、あなたよく見ると薔薇の盗賊団のヒナですか。こんなところに大罪人がいるとは……」
「……っ」
薔薇の盗賊団?どこかで聞いたことがある名前のような。
「確か二年前に王国の王様を殺し、世を混沌に染め上げたのがリーダーのサアヤでしたよね?」
その瞬間世界が凍りつく。
「あんたも……そんなこと言うんだ……サアヤはそんな人じゃない。私を……私を……救ってくれた親友はそんな事しない!!」
「……まぁこの場において関係の無い話でしたね……」
そう話を切るとまた凄まじい戦いが始まる。享介にはただ見ていることしか出来なかった。
「ひーちゃん。一つにまとまり一本の槍に。長さは3m。攻撃力は一撃で十二分」
呟いた瞬間、刀と盾は言葉のままに変化する。
「はっ!」
「……っ!!」
先程より目に見えて攻撃が早くなる。まるでさっきの攻撃は手を抜いていたかのように。ヒナはこれを咄嗟に受け止める。
「なんて強さ……っ」
「あなたには要はありません。ここで大人しくしてください。ひーちゃん……」
瞬間、槍の真ん中からもうひとつの槍が出てくる。その槍は物凄い勢いで伸び折曲がりこちらを貫こうと向かってくる。
「まさか……」
鍔迫り合いの中でも命令ひとつで追撃ができるらしい。しかし……
「享介!狙いはあんたよ!避けてっ」
ヒナの助言を受け、咄嗟に右に転がりなんとか回避する。
「……ちっ」
「まずいわね……」
ヒナが呟く。
「どうしたんだ?」
「あいつ、享介を殺すことにしか関心がない。真っ向から向かってきてくれればあんたが逃げれるスキぐらい作れるもんだけど」
相手側からすると構ってる暇はない、という事だろうか。
「とりあえず、あいつと戦っててもいつかやられるだけね。ちょっと待ってて」
言うと、ヒナは暗殺者のもとへ近づく。するとその少女もヒナへ、全力で向かってくる。
「やぁっ!」
壮絶な戦いが繰り広げられる。猛烈な槍の連続攻撃。ヒナは体を上手く使い、攻撃を全てスレスレの所で避ける。しばらくしてから襲撃者の少女が一歩下がり、助走を付け思いっきり突っ込んでくる。攻撃方法は縦のなぎ払い。体を回転させ、遠心力でパワーを底上げしている。
「はぁぁっ!」
しかし、その攻撃はヒナには当たらなかった。いや、当てなかったという方が正しいか。襲撃者はヒナの真隣の地面を撃ち、そのまま槍をしならせ享介に向かって飛び上がる。
「そう来ると思った……!」
そこで襲撃者が丁度ヒナを通り過ぎようとしたときにヒナの回し蹴りが少女の腹部を直撃する。
「っ……!!」
襲撃者の少女は虚をつきかえされ、モロにダメージを受けてしまう。そのまま壁まで転がっていった。
「う……」
「ねぇあんたさぁ。さっきから享介の方しか見てないよね。あー私も舐められたものね」
ヒナが煽る。襲撃者側もヒナを倒さなければ先には進めないと悟ったのか、深いため息を吐き、覚悟を決めてヒナへと向かっていく。そしてまた二人の壮絶な戦いが始まった。
(享介を守りながらじゃ無理だったけどこれならっ……!)
お互いに物凄い身のこなしで攻撃回避を繰り返している。言うことを言っているだけにやはりヒナは強い。超高速な戦いの中でも明らかにヒナの方が手数が多い。そしてヒナは必要以上に敵に詰める。そうすることによって相手の思考を防御に寄せて武器の変化を考える余裕を作らないようにしていた。
(でも決め手に欠ける……。せめて戦える人がもう一人いればっ……)
しかし無いものを強請っても仕方がない。この状況を打破出来る何かを作り出さねば勝機はない。
「このままではいたちごっこですね。拉致が飽きません」
「……そうね。それじゃあこれを上げたらどうかな?ダイアの花!!」
「……っ?」
そう言うと、ヒナが攻撃できた一瞬のスキを攻撃以外の動作に使った。はたから見たら、地面に向かって何かを投げるような動作だったが……
(……手榴弾?いやそれにしては小さすぎる。まさか!?)
刹那、そこで戦場に大きな変化が現れる。戦っていた二人の間にほぼ光の速さと言っても過言ではない速さで、巨大な美しい薔薇が生まれたのだ。色はヒナの武器として使っていた氷と同じ。大きさは丁度道を塞ぐほど。
(危なかった……反応がもう少し遅れていたら吹っ飛ばされていた……)
襲撃者はこの即座に咲くダイアの発芽から逃れていた。
(……っ!?あいつらは?)
気づいた瞬間、少女は薔薇を真っ二つにし、向こう側を見る。
「……逃げられた、か」
襲撃者の少女はほんの少しその場に立ち尽くし、どこかへ走り去っていった。
「はぁぁあっぶねぇぇぇぇ」
その頃、謎の襲撃者の少女からなんとか逃げ切れたヒナと享介は、水族館を逃げ回っていた。
「何よあいつ。めちゃくちゃ強いじゃん!あんな奴がまだこの世にいるなんてわたずワクワクするっぺ」
興奮しているのか訛りが凄い。
「それより、さっきの花は何だったんだ?」
「あーあれ?あれは私の必殺技のダイアの花よ。衝撃を与えると即座に発芽して目の前の敵を強引に押しのけることができる技よ。綺麗なら綺麗なほど威力が上がるんだけど。まぁ大抵のやつは押しのけるパワーだけでなんとかなるけど、あいつクラスなら時間稼ぎにしかならないでしょうね」
ヒナは自傷気味に言うが、相当な反射神経がなければ避けるという発想にも当たらないはずだ。
「今回は何とかなったけど」
「次はこの手は効かないって訳か」
「タイミング次第だけどね。とりあえず団長たちと合流しましょう。団長だけだと確実に穂乃香を守れないだろうしね」
確かに。やばい。早く向かわなければ
水族館のショーの会場へと歩いていた享介は、道中に腰まで伸びた長い金髪の少女に出会い、殺されかけていた。
「……次は外しません」
少女が大きく武器を振りかぶる。しかしその攻撃が享介に当たることは無かった。当たる瞬間、先に行っていたはずのヒナが、氷の刃で攻撃を受け止めてくれていた。
「やっぱりなんかいたのね。やけに視線を感じたから怪しいとは思ってたけどってうわ!!」
そこで不可解な現象が起きる。あのホムラの必殺技でさえ軽く斬り裂いたヒナが鍔迫り合いに負けたのだった。
「何こいつ……強い」
「ヒナ!大丈夫か!?」
「ええ、なんとかね。」
ヒナも少し戸惑いを隠せないらしい。
「殺せ、と言われているのは異世界人だけなのですが……邪魔です」
「へー。ちょっと強いからって調子に乗らないでもらいたいね。氷のダイア!!」
ヒナがそう言い放つと瞬間。両腕に二対の氷の刃が現れる。双剣のようなイメージであってる。
「せいやっ!」
ヒナの怒涛の連続攻撃を繰り出す。流石の襲撃者も防御の姿勢になる。
「……ひーちゃん。二つに分かれて片方は刀。もう片方は盾に」
すると刹那。襲撃者の持っていた太刀のような武器が言葉のままに変化し、ヒナの攻撃を受け止めた。
「ちっ」
「なんだ……あの武器」
「……霊装……かも」
攻撃を受け止められながらもヒナが答える。
「な……なんだそれ……!?」
「普通の魔法以外でも魔法力さえ生み出せれば武器固有の魔法を自在に操れる優れものよ。大体こういう武器は特殊な魔法を使えるのがほとんどだから余計にやっかいね。それで、この霊装は変身機能がついてるって理由か」
襲撃者も攻撃を受け止めながら答える。
「通称ヒヒイロカネ。どんな物にでも言葉のままに形を変えることの出来る伝説の非金属。……よく知っていますね。と、言いたいところですが、あなたよく見ると薔薇の盗賊団のヒナですか。こんなところに大罪人がいるとは……」
「……っ」
薔薇の盗賊団?どこかで聞いたことがある名前のような。
「確か二年前に王国の王様を殺し、世を混沌に染め上げたのがリーダーのサアヤでしたよね?」
その瞬間世界が凍りつく。
「あんたも……そんなこと言うんだ……サアヤはそんな人じゃない。私を……私を……救ってくれた親友はそんな事しない!!」
「……まぁこの場において関係の無い話でしたね……」
そう話を切るとまた凄まじい戦いが始まる。享介にはただ見ていることしか出来なかった。
「ひーちゃん。一つにまとまり一本の槍に。長さは3m。攻撃力は一撃で十二分」
呟いた瞬間、刀と盾は言葉のままに変化する。
「はっ!」
「……っ!!」
先程より目に見えて攻撃が早くなる。まるでさっきの攻撃は手を抜いていたかのように。ヒナはこれを咄嗟に受け止める。
「なんて強さ……っ」
「あなたには要はありません。ここで大人しくしてください。ひーちゃん……」
瞬間、槍の真ん中からもうひとつの槍が出てくる。その槍は物凄い勢いで伸び折曲がりこちらを貫こうと向かってくる。
「まさか……」
鍔迫り合いの中でも命令ひとつで追撃ができるらしい。しかし……
「享介!狙いはあんたよ!避けてっ」
ヒナの助言を受け、咄嗟に右に転がりなんとか回避する。
「……ちっ」
「まずいわね……」
ヒナが呟く。
「どうしたんだ?」
「あいつ、享介を殺すことにしか関心がない。真っ向から向かってきてくれればあんたが逃げれるスキぐらい作れるもんだけど」
相手側からすると構ってる暇はない、という事だろうか。
「とりあえず、あいつと戦っててもいつかやられるだけね。ちょっと待ってて」
言うと、ヒナは暗殺者のもとへ近づく。するとその少女もヒナへ、全力で向かってくる。
「やぁっ!」
壮絶な戦いが繰り広げられる。猛烈な槍の連続攻撃。ヒナは体を上手く使い、攻撃を全てスレスレの所で避ける。しばらくしてから襲撃者の少女が一歩下がり、助走を付け思いっきり突っ込んでくる。攻撃方法は縦のなぎ払い。体を回転させ、遠心力でパワーを底上げしている。
「はぁぁっ!」
しかし、その攻撃はヒナには当たらなかった。いや、当てなかったという方が正しいか。襲撃者はヒナの真隣の地面を撃ち、そのまま槍をしならせ享介に向かって飛び上がる。
「そう来ると思った……!」
そこで襲撃者が丁度ヒナを通り過ぎようとしたときにヒナの回し蹴りが少女の腹部を直撃する。
「っ……!!」
襲撃者の少女は虚をつきかえされ、モロにダメージを受けてしまう。そのまま壁まで転がっていった。
「う……」
「ねぇあんたさぁ。さっきから享介の方しか見てないよね。あー私も舐められたものね」
ヒナが煽る。襲撃者側もヒナを倒さなければ先には進めないと悟ったのか、深いため息を吐き、覚悟を決めてヒナへと向かっていく。そしてまた二人の壮絶な戦いが始まった。
(享介を守りながらじゃ無理だったけどこれならっ……!)
お互いに物凄い身のこなしで攻撃回避を繰り返している。言うことを言っているだけにやはりヒナは強い。超高速な戦いの中でも明らかにヒナの方が手数が多い。そしてヒナは必要以上に敵に詰める。そうすることによって相手の思考を防御に寄せて武器の変化を考える余裕を作らないようにしていた。
(でも決め手に欠ける……。せめて戦える人がもう一人いればっ……)
しかし無いものを強請っても仕方がない。この状況を打破出来る何かを作り出さねば勝機はない。
「このままではいたちごっこですね。拉致が飽きません」
「……そうね。それじゃあこれを上げたらどうかな?ダイアの花!!」
「……っ?」
そう言うと、ヒナが攻撃できた一瞬のスキを攻撃以外の動作に使った。はたから見たら、地面に向かって何かを投げるような動作だったが……
(……手榴弾?いやそれにしては小さすぎる。まさか!?)
刹那、そこで戦場に大きな変化が現れる。戦っていた二人の間にほぼ光の速さと言っても過言ではない速さで、巨大な美しい薔薇が生まれたのだ。色はヒナの武器として使っていた氷と同じ。大きさは丁度道を塞ぐほど。
(危なかった……反応がもう少し遅れていたら吹っ飛ばされていた……)
襲撃者はこの即座に咲くダイアの発芽から逃れていた。
(……っ!?あいつらは?)
気づいた瞬間、少女は薔薇を真っ二つにし、向こう側を見る。
「……逃げられた、か」
襲撃者の少女はほんの少しその場に立ち尽くし、どこかへ走り去っていった。
「はぁぁあっぶねぇぇぇぇ」
その頃、謎の襲撃者の少女からなんとか逃げ切れたヒナと享介は、水族館を逃げ回っていた。
「何よあいつ。めちゃくちゃ強いじゃん!あんな奴がまだこの世にいるなんてわたずワクワクするっぺ」
興奮しているのか訛りが凄い。
「それより、さっきの花は何だったんだ?」
「あーあれ?あれは私の必殺技のダイアの花よ。衝撃を与えると即座に発芽して目の前の敵を強引に押しのけることができる技よ。綺麗なら綺麗なほど威力が上がるんだけど。まぁ大抵のやつは押しのけるパワーだけでなんとかなるけど、あいつクラスなら時間稼ぎにしかならないでしょうね」
ヒナは自傷気味に言うが、相当な反射神経がなければ避けるという発想にも当たらないはずだ。
「今回は何とかなったけど」
「次はこの手は効かないって訳か」
「タイミング次第だけどね。とりあえず団長たちと合流しましょう。団長だけだと確実に穂乃香を守れないだろうしね」
確かに。やばい。早く向かわなければ
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