能力執事大陽輝の非日常

ポカタキ

1人目のお客様 他side視点

「大陽輝。殺人未遂で逮捕する。署まで来てもらおうか」

輝「………はい?」


 逮捕までの経緯

  休日の昼下がり。夏も抜けきっていない、残暑と呼ばれるこの時期は、とにかく日差しが痛い。正確には紫外線が、と言うべきだろうか。否、今はそのようなことは考えなくてもよい。なぜなら今日は、新夏の楽しみにしていた新作のチョコパフェが新登場する日なのだ。新夏の行きつけの喫茶店には、開店前にも関わらず新作を待つ人達が行列を作っていた。列の中間あたりに、もちろん新夏にもいる。1人じゃ心細いと横に輝を置いて。

輝「……なぁ、俺ついてくる必要あるか?」

新夏「あるに決まってるじゃん!1人でパフェ食べても美味しくないもん」

輝「あのな、、?俺の金で好き放題しすぎるなって言ってんだろ、しかもパフェごときに……そろそろ働けこのニート!」

輝はついに言ってしまった。実の妹である新夏に、前話で隠していた「ニートと呼ぶべきか否か」ということを。決して輝は新夏に本気で言いたかった訳では無い。いや、そう言うと嘘になってしまうが。今回ばかりは痛いと感じる日差し、照り返す地面の熱気、生暖かい風、そして2時間という長い待ち時間が相まって思考を鈍らせ、口に出してしまったのだ。

新夏「…はぁ…??」

片方の眉をあげ新夏は反応する。その顔を見て輝はまずいことを言ってしまったとハッと我に返る。

輝「あ、いや、これは違うんだ新夏、」

まるで漫画の展開のように否定する輝。日差しにやられ思考が鈍ってしまったとはいえ実の妹に言うべきではなかった。

新夏「パフェごときってなにさポカ兄の馬鹿!私の楽しみにしてるパフェを食べるなっていうの?!」

輝「いやだから、、」

新夏「何よ!もういいもん、私パフェ食べないっ、ポカ兄なんて知らないんだから!」

輝に弁解させる時間を与えず新夏は怒ってしまい、スタスタと列から外れ街の人混みの中へ消えてしまった。

輝「…もう……」

あとを追いかけようと輝も列をはずれる。まぁ周りの視線が冷たすぎるため居心地が悪いということが1番大きい。周りから見れば完全に輝は悪いことになる。歩きだそうと足を前へと運ぶと、突然腕をぐいと掴まれた。

輝「はい?」

振り返り、掴んだ相手を確認する。青い帽子、青い制服、そして黒いチョッキ。

輝「は……警察の方ですか?」

数人の警察官に囲まれてしまった。うち1人の警官が口をひらく。

「大陽輝。殺人未遂で逮捕する。署まで来てもらおうか」

輝「はい?」

突然の容疑宣告。輝は思考が停止した。すぐに頭をはたらかせ状況を理解しようとするも、警官に腕を引っ張られ考えるまもなくパトカーに乗せられてしまったのだ。

コメント

コメントを書く

「推理」の人気作品

書籍化作品