記憶

ゆっきー( ˙꒳​˙ )

1章. 始り

この日の僕は珍しくイライラしていた。




工業高校の機械科を卒業してから、同じ会社でずっと働いている会社員。いわゆるサラリーマンだ。
今年で5年目になる。橘敦史(たちばな あつし)。ありきたりな名だ。

たまに、職業を聞かれるけど、サラリーマンって聞こえがなんとなくかっこ悪くて、設計って言ってしまう。
(変なこだわりが強いのかもしれない。)
確かに設計だけど、検証、実験の繰り返ししかしていない。研究者みたいな感じだ。
仕事は考えてやっていく事が好きな僕には向いているのだろう。毎日喋りながら実験してる。

合コンにもよく誘われる。お調子者でもある僕は、
「黙ってりゃモテるよな」と、よく仲間内で言われる。
酒が入っていないのに言われるんだから、直したいと思う性格である。
ちなみに下戸である。

今年で23歳になる独身で毎日気ままに生活してる。
時には嫌になる事もあるけど、スポーツやってきたからか、悔やむより先に解決策を考える程ポジティブな事もあり悩んだりしない。

実家では毎日のように、親から「彼女連れてこい」なんて言われる。
ポソッと「いたら紹介してるよ。」
会話になってないが、最近ずっとこんな調子。

考える事が多くなったのはいつからだろう。
モテ期か、もう来ないかなぁ。




自分で思ってしまうのは、重症だと思うけど学生の頃はモテた。
1日2人に告白されたりした。
そんな光景を友達に見られてか、何人彼女いるの?
なんて、良くない噂もたった。
一途だった僕は、「彼女は〇〇だよ!」と、
結構大きな声で言ってたな。
今思うと彼女同じクラスにいたじゃん。

考え方が変だったからかな、その初恋相手しか見向きもしなかった。これは事実。(これは別のお話)

中学卒業式の時はびっくりした。
式の後に記念写真撮る為に担任や、友達、後輩達と
学生服脱いで騒いでたら女の子達の塊が…通り過ぎた。
僕の学生服が消えたんだ。さすがに笑ったね。
(今は思い出の品だから、返して欲しいかな)




「学生は夏休みか」
暑さを感じ始めた7月のある日。
職場の先輩、川村さんが家業を継ぐと
退社する事になった。
とても信頼し合った仲間だと思ってたのに、
少し裏切られたと感じていた。
その日のうちに送別会が開かれた。
僕は飲めない酒を無理して飲み、1人で静かに飲んでいた。
宴も終盤の頃、川村さんが僕の隣に座った。
お互い何も話せず、送別会は終了した。

僕は飲みすぎたせいもあり、記憶があまりなかった。
気付くと朝、自分の家のベットだった。
母曰く号泣して帰宅し、そのまま寝たらしい。

今日は仕事休みという事もあり、朝はゆっくりだった。
…頭痛い。
着替える為、スーツの上着を脱いだ時だった。
ポケットから紙。会社で使ってる再生紙だ。

何か印刷して持ち帰ったのかな。

紙を広げると川村さんからの手紙だった。
ものすごくあっさりとした、川村さんらしい文章で、

「後輩であり、仲間であり、
                                親友の橘へ

結婚も考えて、実家の漁師を継ぐ…」

最後に、「かっこ悪くて言葉にできず、手紙ですまんな。」

と締めくくられていた。
裏切られたんじゃない。
信頼されてるからこそじゃないか。

こんな大事な人を信じる事を忘れていたのか
と、自分に腹がたった。
その事を忘れまいと、ブログを開設した。




結婚…か。
ブログ開設し終えた頃、頭の片隅に浮かんだ二文字だった。



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