最強の魔術師とヘタレ主人公の波乱の日常

白馬優

第五章 主人公の成長と明かされる過去の記憶 

第一話 闘技大会のオンパレードと颯真の覚悟

ルミアはこの異世界マールシアの国にある。
愛すべき故郷であるイグニアの町を色々と案内してくれた。
この町では皆それぞれの人種に分かれており、特別日本人と同じ種族もいれば、
動物の顔をした亜人やハーフエルフなどもいる。
だがそれぞれが違う人種だからこそ。やはり人種差別というものは異なり、
対立し啀み合うもの同士もいる。

だがこのイグニアという町では争いごとなど滅多に起こることはない。
何故ならばこの町には日本でいう法律。決まり手があるからだ。それを
破ったものに関しては思い罰則が与えられる。

けれど処刑というものはなく。ただ貧しい農村で暮らしている村々を回って
ボランティア活動または馬車の運転手の手伝いや。飲食店や建設作業の力仕事
の手伝いをさせられ。思い罪を背負ったものに関しては重くきつい強制労働
が課せられることとなっている。

そして今現在。イグニアの長閑な町で働きたくない若者共達は
日々争いごとを起こさず。楽しくわいわい過ごしている。そして
ここでは市場マーケットがあり、安い値や高い値で沢山の物。例えば果物。
服。そして魔道具。雑貨類などもある。

魔道具に関しては厳密に言えば処罰対象に含まれるものもあるのが、それは
人に害した異物であるものと判断され。その判断基準は国によっても様々だ。
なので、憲兵に見つからないように。魔道具を扱う魔女は。
町から離れた農村や村に住んでいて、商売している。ルミアもよくそこに
買い物に行っているそうだ。

「ここはいい町だろ色々な物が沢山売り買いされている。それに貧しい村人達すら
この町を愛してやまない。それが生活の助けになっているものもいるからだ」

「こういったマーケットとかって毎日行われているわけではないのか」

「えぇそうなの一ヶ月に何回か開かれることがあるわ」

「そうなのか。村から来ている人もいれば。その他の国の地域の人もいるわね
 多種多様な種族がいるから混乱を避けるように憲兵が付きっきりで警護見回り
 を見回りを行っているわ」

「それからこの町にはね闘技場という場所も設けられているの。イベント会場の
 一つとしてね。月に何回からあるマーケットが開かれている時は闘技場で模擬
 試合が行われているわ」

「そうなのか」

「見に行ってみる?男の選手の中では皆厳つい体格をした。レスラー並みの格闘家
 もいるけど、騎士学校に通っている。剣士も腕を競いにやってくるわ。まぁちょうど
 いいし今から寄っていかない」

「別にいいけど」

「じゃあ決まりね。急いで向かうわよ。ついて来て」

闘技場という場所では日々鍛錬を積み重ねた武闘家や剣豪達が腕を競う。
勿論それ以外にも魔法少女による戦闘も行われ。あとパペットマスターと
呼ばれる人形使いも戦闘に交わることもあるらしい。

闘技大会であるが、迫力のある戦闘と見るものを圧倒する。パーフォーマンスを
見せる者共が多く。多種多様な人種がランダムでの戦闘を行い。
数時間単位で人が代わる代わる選手交代していき。最後の最後。
決勝戦まで生き残った強者こそが勝者となる。

但しペナルティーを受けた場合。罰則として退場が余儀なくされ。
二度と闘技場に踏み入ることが出来ないとされている。
闘技場を脅かす存在を監督役であるものが常に監視しているために
厳重な警戒態勢が取られている。

そんな中で戦闘が一ヶ月に何度か行われているが罰則を受け。退場したものは
ほとんどいないとされていて、安全は保証されている。だから観客も大勢いて、
いつも満員御礼だ。働き手のバニーガール達はせっせとビール瓶と
ポテトフライを持ちながら。代金を貰う代わりにサービスを提供している。
僕もポテトフライとビールは未成年だから飲めないので、代わりに
ウォーターボトルを受け取り。代金を払い。ルミアとともに闘技場の模擬試合
を観戦することにするのだった。

会場の熱気は試合開始のゴングが鳴ると同時に歓声のどよめきが上がり、
テンションMAX状態のムードが客席に流れ込む。
そんな中僕は蒸し蒸しとした空気に晒されて、汗だくに汗をかきながらも
真剣な表情でその試合を見届けるのだった。

中でも印象に残った試合は二つあった。巨椀の腕輪。
ジャイアントグローブを身にまとった。巨躯な体つきの武闘家と、
聖騎士ゆかりの銀色の鎧を身に纏う。白銀の剣士が立ちはだかった。
持つのは長い二刀流の双剣。その長く太い尖った鋼鉄の刃が巨椀の腕輪
と相まみえることとなった。お互いに一歩も引かない譲れない戦いが始まり、
凄まじいほどの衝突の影響で地面に大きな亀裂が入るも。
お互いにぶつかりあい相手と僅差で並ぶ。だがお互いボルテージがMAX状態と
なり。ここで二人の必殺技が繰り出されるのであった。

「秘技皆伝。覇王滅殺独流奥義。メテオストライク!ゴールデンアッパー!」

だがその攻撃範囲は避けられずも。騎士は倒れることもなく。
鋼鉄の守りで防ぎ切り。必殺技で返り討ちにするのだった。

「秘技皆伝。轟け。雷鳴の剣。ライジングフルカウンター!オーバキル!」

素早い動きで痺れるような電撃が地面を通し。流れ巨椀の腕輪が真っ二つに折れ。
本人目掛けて、最後の電撃の一撃が浴びせられる。その俊敏さもだが、光の速さと
言うべきか目には見えないほどの閃光の速さで相手を攻めまくった聖騎士は。まさに
強者といえた。

自分もあんなにまではなれないかもしれないだが、あれだけの力を
大技を見せつけられた後に出せるなんて想像を絶するもので、息を付く暇もない戦闘
に思わず手に汗を握る自分がいた。

そしてもう一つ見所となる戦闘があった。それが魔法使い同士の戦い。しかも。
姉妹双子揃っての出場。もう一方の相手はただ一人だが、背中には使い魔を宿して
いるようだった。邪悪なオーラ漂う使い魔の魔法使いと、お洒落な衣装を身に纏う。
瓜二つの双子の姉妹の魔法使い。その両者の戦いが幕を開けた。

最初はやはり大技は繰り出さずお互いに攻めるも甲乙付け難い勝負が繰り広げられる。
仕掛け魔術や使い魔だけを操りながらの近術戦闘。そして遠距離戦闘。両者の戦闘は
ほぼ互角の戦いを見据え。最終局番に入ったときに必殺技のオンパレードが繰り出される
のであった。まずは姉妹魔法使いが大いなる力を解放し。必殺技が放たれた

「大いなる願いをもって破滅の力を解放す」

「アルテマ・ライトニング・エンドカタストロフィ」

「はぁああああ!」

「クロスジャッジメント!」

その攻撃範囲は戦闘場所を覆い尽くすほどで、様子が衝撃派の煙でよく見えない状態だった。
だがその立ち込める煙の中に使い魔の魔法使いである彼女の姿は黒い円筒形のバリアみたい
なものに覆われていた。恐らく彼女は突然の大魔術発動直後に。

使い魔を自分の大いなる盾としたのだろう。邪悪な使い魔は妖魔であり、
あらゆるものに形を変化させることができるのだ。
黒いバリアは数分後。まるで溶解するように溶けていき。やがて本来の
使い魔の姿に変化した。そして彼女は無傷のまま。マナの使いすぎで消耗している彼女
らに追い打ちをかけるように反撃の狼煙を上げる。

「番狂わせといこうか。妖魔よ。私を喰らえ」

妖魔との融合の力により力は覚醒する。そして暗黒の黒魔術により、次次と地面が
溢れ出してくる。亡者の軍勢達。襲いかかるの危機を姉妹二人は最大の防御魔法で防ぎ
と回避運動とともにカウンター魔法で微塵にも亡者達を撃滅しながら。

反撃のタイミングを見計らう。けれどその数の多さに圧倒され。
マナの保有量は減少傾向に至り、それから体力すらも奪われてしまう。
そこで彼女達はポケットにしまいこんでいた。活力の実を口にして、
亡者の達の軍勢がある程度撃滅すると、残る軍勢とその本体を倒す
ために大技を繰り出す。

「大技いくよ。シャイニングフォームフルバーストリンク起動」
全てを燃やし尽くせ。エクスプロージョンメテオダイナマイト!」

「なんだ。この神々しいほどの光は」

「喰らって破滅しろおらぁあああ!」

「妖魔の力をもってしても勝てぬか・・・はははっ。ぐっふふはははっ
 ぐわぁあああ!苦しい。苦しいよ。誰か助けてくれー」

圧倒的な力と交差する戦闘風景。そのどれも誰もが予想できない展開。
その瞬間。瞬間に勝つか負けるかの差があり、両者とも本当にどちらが
勝っていたとしてもおかしくはないほどに全力でぶつかりあっていた。
そして勝敗が決した時。僕はただ圧巻の表情を浮かべいた。ルミアも真剣
な眼差しでどこか虚ろに戦闘風景を眺めていた。

しかしこれほどまでの使い手が存在するとは世界というものが広い中で、
まだ見ぬ強者が僕達の前に立ちはだかっていると考えると、僕に今何が
出来るのか、強くなるには。そしてルミアの支えになるにはどうしたら
いいのか。思考が膠着してしまう。そんな影を落とす僕をルミアは微笑し
背中を叩いてくれた。

「どうした今ので、完全に怖気づいたか。自分では手も足もでないというほどの
 恐ろしさに」

「あぁ本当に恐ろしいよ。あんなに強い奴らが居るなんて。まるでゲームやアニメの
世界の話だとしか感じていなかったから」

「だが現実にある。今のお前自身を変えるのはお前しかいない。雑魚でも這い上がれば
強者にだって登りつめることだって可能だ。今の未来を変えるためにはどうすればいいと
お前は思う」

俺が自分自身を変えるために今出来ることそれはただ修行の鍛錬に励むことなのだろうか。
だがそれだけで得られるものは少ないのに。一体どうすれば・・・・

「小さな積み重ねだけでこの運命をも変えられるというのか?」

「あぁ変えられるさ。どんなに努力が無駄だと言われようが変わってしまえば自分のものだ」

「つまり何が言いたんだ」

「お前はまだ覚醒の時を迎えていない。だから成長してみせろ。
 私の目の前でその身を持ってな」

「そうか・・・」

狂おしいほど強い者に憧れを抱く感情はまだ自分の中にある。運命を変えられるのは自分。
そうかそうだよな。だけど俺なんかが自分のちっぽけな野望のためだけに変えられるのだろうか
この運命そのものを・・・だが今こそ試すしかないそう自分で固く決意するのだった。

「ルミア俺やるよ。そしていつかお前。成長した姿見せるから」

「あぁ見せてみろ。お前の本気というやつをな」

この世界は不条理で自分の良いようには成り立ってはいない。誰しもが格差を抱き。
壁にぶつかってはまた這い上がろうと頑張る。それだけで自分の中に残るものは
ちょっとしたことかもしれない。でも少しだけでもいい希望があるのなら。ただ
我武者羅に努力を積み上げることしかないのだから・・・それだけ今は救われる気が
していた。今だけは・・・この先に大きな試練が待ち受けようとも知らずに・・・・

第2話 主人公の修練での成長と発現する剣術(ソード)スキル


圧倒的な力と技のぶつかり合いの光景を直に見た。
あの時の感触は俺にとって忘れられぬ出来事となった。
けれどこのまま僕も手を拱いているわけにもいかない。

近づきたいけど近づけない強大な力に歯向かうには自分で
自分自身を変えてやるしかない。そうあの時俺は決意を新たにした。
けれども漠然としてやれることなんて、ひたすら我武者羅に修練の日々に
明け暮れるしかないのだろうかと、溜息をつき思いを馳せるような
気持ちになっていた。そこでルミアのある提案が示された。

「アルフレッド悪いがこいつの修練の面倒を
 見てやってはくれないか?」

「老弱な儂が彼を鍛えろと体が訛っておらんか
 心配なんじゃが」

「何を戯けたことを言っている。確かに老体で体が多少は
 訛っているかもしれないが、
 私の義理である弟を聖騎士にまで育て上げた男だろう」

「それはそうですがルミア様。私にあの若造を成長させられるでしょうか?」
 
「真価が問われるのはあいつ次第だ。それにもう私では手に負えないからな」

「しかしお嬢様」
 
「後のことは頼んだぞアルフレッド」

「私はコレットと付き合いがあるからな」

「しかしお嬢様ももう可愛い義理の妹とはいえ頬ってはいられない。そんな年頃でしたか」

「しかしまぁ儂もまたこの老体に鞭を打つことになるとは世間も狭いものですな」
 
「だが儂が指導役に回されたということは
 尚更手を抜くわけにはいきませんな」

ルミアは俺の指導役に執事であるアルフレッドを修練の指導者として選んだ。
適任であると考えたからだろう。だがその修練も生半可ではないことくらい
容易に想像すら出来ただろうに俺はまた地面に倒れることが何回か続いた。
何回も先を読まれて、相手は隙すら作らず。自分を攻め立てようと猛追してくる。
僕は必死にガードの構えをとり、反逆の機会を狙うもあっさりと砕かれてしまう。
弱い自分だった。こんな俺でも変われるという未来を漠然と目の前に見据えていた。
けれど、僕は変わることに踏み出すことさえ躊躇い続けていただけであった。

「どうやら完敗のようじゃな。お前はすぐに次に打つ手がすぐに読めてしまう。
 それ故に何のために強くなろうとしている」

「俺が強くなる理由」

「守りたいものがあるか、誇れるものがあるか、恐らく。お前にはないじゃろうて。お前は
 まだ何一つ踏み出してもおらん。ただの奢れる餓鬼だ。自分には剣術の才能だけがある
 と思い込んでおるだがお前には何の才能もなければ誇れるものさえない。ただ高くくって
 身構えているだけの脆弱なヒーローだ。それをまだお前は分かっていない。分かろうとも
 していない」

「じゃあ僕は、俺はどうすれば・・・どうすれば強く気高くなれると言うのか教えてくれ」

「ただ無我夢中に剣に振り回されているだけではものにできないのだよ」

「えっ?」

「才覚というのはお前にはない」

「俺には才覚がない」

「だがお前には無能であっても諦めない心意気がある」

「ならイメージするのだ。弱い自分でも誰かを守れるくらい強くなる自分を」
 
「弱い自分でも誰かを守れるくらい強い自分そうすれば強くなれるのか」

「あぁそうすれば道は開けるであろう。必ず近いうちにな」
 
「儂が言えるのは。ここまでじゃが、後はお前次第だ」

俺に足りないもの。イメージする力。努力とかじゃなくて、
手に出来る力がまだあるのか。でもどうしたら。誰かを守る。
諦めない心。ただ剣に振り回されるのではなく。理解できない。
そこにどんなものがあるのか分からない。

でもなんだろう確かに僕はただ今の今まで、自分の剣に意識だけを
奪われていたのかもしれない。
でも目の前の敵と相対した時。勝敗は決裂してしまう。

剣に意識だけを持って行かれては駄目ということか、見るべきものは目の前の相手だけ。
振り回されることなく剣を我がものとするには。とにかく集中して、
俺にしかイメージできないもの。それを手にするために。見るべきは相手だ。

剣に意識を惑わされるな。相手に惑わされるな。考えるのだ。
頭の中で思い描け。盤上に例えば敵がいたとして、
その相手がどのような戦法でどのような形で攻めて来るのか、
だが攻めてくる前にこちらも迎え打たなければならない。

なら相手を凌駕するにはその相手の速度さえも上回り、
尚且つ強力な打撃を与えるにはどうすればいいのか、
ただその一点に問題の打開する解決法を模索し始めるのだった。

一方ルミアとコレットはというと、同じように二人で稽古の真最中だった。
コレットは魔法学校の卒業試験間近で、自分の実力がついてきて、成績も上がり
トップクラスの成績を誇っていたが、最近はスランプ状態にはまり上手く魔法が扱えない
状態にまで落ち込んでいった。なので、義理のお姉さまであるルミアに稽古の手助けを頼もうと
したのだった。

「コレット今更稽古をつけてくれだなんて、珍しいな何かあったか」

「私は姉様みたいに強くはないけど、でも諦めたくないです。
 私はちゃんとした魔法使いになってこの町や村の人々の手助けになりたいから」

「それは故郷の村人や家族を救えなかったからか。だとしても現実は違うかもしれない」

「どうした?コレット」

「時々姉さまの言っていることは理解不能です」

「それにあの男の人とはどういう関係なんですか、何で黙っているのですか?

「どうして相談もしないで一人で決めてしまわれるのです」

「コレットこの世界は広い。お前はまだ知らないことが多すぎる

「えっ?」

「あの男もそうだお前と同じだよ」

「私と同じ」

「魔法が使えないが、剣術を磨いて私を支えになりたいと思っている」

「はぁ」 

「まだ這い上がれない若造が私にそういう覚悟を私に見せてくれる」

「それにわからず屋のあいつも歯痒い思いをしていてな」

「私はその手助けになりたいだけさ」

「お姉さま」
 
「そして私には友人すら数少ない。あいつは私の暇潰しの用心棒いや友達に過ぎんよ」

「お姉さまがそこまで・・・・ならいいのですが」

「じゃあ手加減しませんよ。ルミア姉様。本気で行きますから」

「あぁそうでないと私が困る。そうでないとな!」

こうしてルミアとコレットの稽古は始まりを告げるのだった。
そして颯真はというと、まだアルフレッドの稽古に苦難を
強いられている様子だった。
まだ手も足も出ないアルフレッドとの攻防の連続に心は乱れ。

自分自身さえ追い込んで
しまっていた。知恵も体も全て絞り尽くすだけ絞って、
ただ立ち向かってはそれを破られ
るまるで全てを読み取られるかのように。ループしていった。

けれど颯真は変わっていった。剣にすら振り回されていた颯真が、
自分で剣を振るうということを初めて成し遂げていたのだ。
そして新たなる技を覚えていて、アルフレッドでさえ。
防ぐのがやっとというくらいに。だがそれでも詰めが甘く。

隙を突かれて颯真は倒れこむだけ。倒れこみ。服は引きちぎられ、
ボロボロになり体すら傷だらけの日々が10日間続いた。
そして最後。ついに目覚めの時が来たのだった。

「これが最後だぞ。若造。もうお前とも相対することはないだろう」

「あぁそうだな!ジジイけど。なんか分かってきたぜ俺の本当の強さってやつが」

「どうやらもう掴んだみたいだな。ならお前の本気というやつを儂に見せてみな」

「あぁそうだな。見せてやるよ。これが今の俺の本気だ」

こうして二人の決戦の火蓋は切って落とされるのだった。

一方その頃。ルミアとコレットも最後の稽古の真最中だった。
まさに凄まじい目には負えないほどの攻防が加熱するなか。お互いマナが尽き果てる
まで、奮闘し戦い抜いた。

両者とも互角の戦い。防御魔法を展開しながらの攻撃魔法。そして不意打ちからの
カウンター魔法など、様々な戦法を用いて戦いは繰り広げられていたのだが、
ルミアがコレットの最大火力の魔法を受け。撃沈して倒れ込んでしまった。
本来のルミアが展開する防御魔法の障壁なら防ぎ切れたのかもしれないが、マナも
体力すらすり減らしたようで、限界を迎えていたのだった。

「ルミア姉さま大丈夫ですか?今治癒術を施しますので」

「いやこれくらいなら平気さ」

「それよりも」

「なんですかお姉さま」

「コレット魔術前よりも上達したな」

「そんな私なんてまだ」

「いいやこれならきっとお前もこの町や村を守れるさ」

「お姉様一つ伺いたいことがあるのですがいいですか?」

「なんだコレット」

「どうして・・・どうして私なんかに手加減を手加減さえ無ければ勝てたでしょうに」

「可愛い妹のためなら手加減すらしたくなるのさ

「そうですか。でも今の私じゃ上手くやっていけるか正直なところ分かりません」

「いやお前ならきっとやれる私はそう信じているからな」

「どうしてですの」

「それは例え義理の妹であってもお前のお姉さんだかさ」

「お姉さま。私も頑張ります」

ルミアは愛する妹の為に鞭を打って稽古に付き合うようにしていたのだ。
体に大きな負荷がかかろうともマナが尽き果てようとも構わず。全てを背負い込んで。

だがそれはルミアにとっては宿命づけられたもののようで、考えはそこにしか至らなかった
ようだ。それからはっとルミアもコレットも颯真とアルフレッドのことを思い出したように。
すぐに屋敷へと帰還するのだった。

そして颯真は前言通りのことをやってのけるのだった。序盤は前と動揺で相手の行動に沿った
行動をして、一進一退の攻防を見せていたが、その行動パターンも全てアルフレッドに完全に
読まれていて、隙を突かれるのも時間の問題だった。とそんな時だった間を指すようにコレット
とルミアが現れるのは。そして勝負はそこで決するのだった。アルフレッドがコレットとルミアに一点を見据えたミスによって形勢は大きく翻った。

「コレット。ルミア。来てくれたのじゃな」

「アルフレッドよそ見をするな」

刹那。目の前にいた颯真はいなくなっていて、静かな空気が辺りを包み込んだ。そして
颯真の大きな一撃がアルフレッドの背後から浴びせられることとなったのだった。

「喰うがいい瞬刃月光斬!」

「ぐっはぁあああああ!ぎゃぁああああ!」

「ぐへっ。危うく死ぬところじゃったわい」

「小僧いつの間にこんな剣術を覚えたのじゃ」

「爺さんとの修行で分かったことがあって色々と。だからなんていうか
 ありがとうございます」

「全く言うようになったわい。この若造が」

こうしてアルフレッドと俺との修練は幕を閉じたわけだが、アルフレッドは
さっきの不意打ちで納得できない素振りを見せているようでもあった。
だけど成長できた気がしてなによりも技を覚えることがこんなに苦労を強いる
ことだとは漠然としていて最初は手に取るようには分からないでいた。

けれど修練を積んでいくとそれがはっきりとイメージとして湧いてきていて、爺さんの
言っていたことは本当だということに改めて気付かされることなったわけだが、
よからぬ凶報が僕達を待ち受けていたのだった。

「ルミア姉さま。ルミア姉さま。しっかりして下さい。しっかりして下さい」

「アルフレッド私がルミアに治癒魔法を施しておきますので、その間にベッドに
 移す準備を整えておいて」

「はい分かりましたお嬢様。ルミア様をどうか頼みます。」

「颯真君悪いが君も手伝ってくれたまえ」

「はい分かりました」

僕が今彼女のためにしてあげられることはしてあげたいと心から思う。
けれど彼女の傷を癒せないことは自分で理解していたと知っていても。
心の底から煮えたぎるような。虚しい気持ちが心の内から溢れ出るかの
ように涙がぽつり、ぽつりと零れおちていくのだった。

そしてその思いが通じたのか。ルミアは一晩横になると、
お前に灯台を見せてあげたいと行って
僕を外に連れ出すのだった。

第3話 過去の真実と謎の美女の出現

その翌朝のことだった。僕は夜な夜な眠りにつけず。
日光が窓ガラスに差し込み。僕はベッドから起き上がろうとした
その時だった。

まだ朝だというのに騒がしい。足音が迫ってきていて、
何事かとドアの方に振り返るとそこにはパジャマを着たまま
横たわっていたルミアの姿があった。

もう大丈夫なのだろうかと怪訝そうに僕はルミアの眼光を見つめる。
けれどその心配をよそに彼女は僕に問いかける。

「どうして私は倒れたのだろうかお前は分かるか」

「えっ?それはだって」

「私は分からないのだ。どうして私があの場にいて倒れなければならなかったのか」

「きっと無理したからだよ。コレットの回復魔術がなければルミアは今頃」

「そんなことはどうでもいい。それよりも一緒に灯台まで来てくれないか。お前に
 実は話しておかなくてはならないことがあってだな」

「ルミア急にどうしたの」

「いいから早く来い。でなければ屋敷の主に見つかってしまう」

「分かったよ。今すぐ行くから」

こうして僕はルミアの言いなりになりながらも。
後をついて行くことを決めた。けれど何故今なのだろうと疑問点が残る。
彼女がどうしても僕に話しておきたいことって。
それはルミアにとって話していいことなのだろうか。

それから僕が適任でいいのだろうかという点だ。もっとも信頼をおける
相手は他にいるだろうに。けれどある引っかかりがそこにはあった。
そもそもなぜ彼女は僕と契約を結ばなくてはならなくなってしまったのか。
彼女の意図思惑はなんなのか知りたくはなっていた。
だが、そこから先に踏み込んでしまったらきっと尚更
彼女との契約を放棄できなくなる
はずだった。

灯台は歩いて2.30分のところにあった。暗がりの灯台なので、
外の景色は日光の光が当たっているといえど遠くの景色はぼやけて
見える程度だ。ここの灯台が彼女にとっては邪魔にならない空間で
あることは認知できる。けれどなんだろうこの違和感。
今すぐにここから帰りたくなるほどに嫌に感じてしまう。

「ルミアどうしてここなの。ここは確かに人目につきにくいけど」
「そうね。ここは人目につきにくい場所で人は立ち寄らないだろうけど、
私には魔女の血が流れているから」
「きっと誰か寄ってきそうね。でも安心してここに魔除けとなる魔術結界を
の魔法陣を展開させておくから」

ルミアはそういうと全体に魔法陣らしき青白く光る。
紋章というものを張り巡らせ魔法結界を展開した。

これで敵が寄ってこないという絶対的な保証は万が一よっぽど
のことがない限りはないかもしれないが、危険が0ということでもない。

僕は不安と恐怖心が右往左往する中で、ルミアに視線を戻して、
もう一度帰ろうと言った。
けれど彼女は大丈夫とはにかんだ笑顔を浮かべながらも。
辛辣そうな真剣な眼差しで僕の方を
見て過去話を始めるのだった。

「では話すとしようか。話す前に忠告するが
「うん」
「このことは絶対に君と僕だけの間だけのことにしておいてくれ
「他言するなということだ。分かるな」
「あぁ分かった」

僕は今にも不安による恐怖心が増幅するようで、
まるで怖い悪夢の悲劇を見る直前のような
表情を浮かべながら。
足や背中がぶるぶると震えていた。けれど彼女はそんな僕をよそに話を
淡々と進めようとするのだった。

話によると、ルミアの生まれ故郷はここではなく。
貧しい村で家族や周りにいる村人の子供達や大人に囲まれながら
すくすくと育っていたらしい。だが、あるとき両親やその村人たちは次次と
いなくなり残されたのは。ルミアとその家族だけになってしまった。

家族だけが私をずぅと見守って育ててくれると思っていたが、
不幸なことに幼い頃のルミアは家族に育児放棄され。
そのまま捨て子となって村に取り残されてしまった。

そして幾度の日々が過ぎていった。残飯などの食料も尽き果てる中。
幼い頃の彼女は知恵もなく。そのまま餓死を迎えようとしていた矢先だった。
彼女の元にある貴族の裕福な服を身に纏った。綺麗な貴婦人が現れた。
その人がルミアの引き取ることになり。貧しい村から大きな大通りを挟んだ。
貴族町にある立派な豪邸に住まうことになった。

ルミアの母の名前はロゼリア。正式名称はロゼリア・バークレス・グレイス。
貴族町随一を誇る聖魔導師であり、その強さは3本のうちに入るとまで
言われている強者だった。

「鎮圧完了。聖騎士及び聖魔導師は速やかに帰還せよ」
「ふぅーこれでやっと家に帰れるな」

幼い頃のルミアにはそのお母さんがどう映っていたかというと、
いつも貴族街の民衆達から大きな歓声が上がり、応援団のファンも
いるくらいで、周りからも愛される人に見えたであろう。

だがルミアにとってお母さんは頼りになる人であり優しくて、
何でも好きなものを買ってくれたり、相手したりしてくれる。
友達のような存在でもあった。

だがそんな幸せで順風満帆な生活はそう長くは続かなくなってしまった。
聖魔道師であるお母さんは娘ルミアを置いてどこか遠くへと旅立ってしまったのだった。
所謂遠征というやつだ。ロゼリアは聖魔導師でありながら、
いくつもの国と地域の紛争地帯の鎮圧部隊に大きく関わっていた。
そこには領土拡大を目論む。権力者達によって組織された平民軍と貴族軍が衝突しあって、
貧しい村や町の領土権を奪おうとしていたのだった。

その鎮圧を任せられたのだったが、戦況状況はいつも悪い一方だった。
聖騎士や正魔導師であれ、この紛争を止めるには相当な時間と労力を奪われるものだった。
けれど領土争いによる紛争は聖騎士と聖魔導師による制圧によって、
争いは収束の一途を辿るのだった。

そして紛争地帯から帰還したロザリアは長く会っていないルミアのもとへと
帰還した。そして感動の再会とともに幸せな暮らしが待っていると思っていたが
ロザリアはあるときまた一人でいなくなってしまうのだった。

それから何ヶ月という歳月が過ぎていくなかで、母であるロザリアは聖騎士団
からの伝令を受け。赤い満月の夜に外に出て、調査のため立ち入り禁止区域を破り、
異教徒が襲った村の集落を訪れるのだった。

「辺り一帯をくまなく調査しろ。異教徒を見つけたらすぐに知らせるように
 単独行動はするな」
「了解した」
「全く腐れきっている。この全てが異教徒の仕業だっていうのか」
「あぁこれはもはや人ではない化物だな」

余りにも惨すぎる現状に思わず本音が溢れる。それもそのはずだ
人間を贄とする異教徒は村人の命など贖罪に過ぎないのだろう
問題はなぜこの村を襲撃する必要があったのかそれが疑問点の一つとして
浮上しているところだ。恐らくだが異教徒である連中は根城となる。

住処を探していたのだろう。ここは人も近寄らなければ魔獣の正気すら漂わない
異教徒にとって安住の地というわけだろう。四方八方を見渡す限り人々の死に絶え
た死体が転がりこんでいる。

恐らくここは襲撃されて間もないと判断していいのだろう。
生存者はいない。
全員逃げ延びることもなく死んでいったのか。
燃え盛る炎にまみえて無残な死体だけが散らばっている。

異教徒がこの場所の確保だけに襲撃したのではない。
恐らくは拠点とするには理由が必要に
なる例えばここを実験場にするのかとかそういう。
死体を放置しているのはそのせいだろう。

死体を触媒として使う法に触れるだろう実験は
異教徒の人々にとっては一つの快楽に等しく。

その快楽を得る又は新たな実験体として扱い。
手駒にすることだって出来る。
だがそれも禁忌に触れる行為であり、
法では許されるはずもない。

辺りにはターゲットである異教徒の類である
人間すらいなかった。

だが何か手がかりの一つ。
目的を掴むためのものならどこかにあるはずと私達は考え。
散開して目的の物的証拠となるものを見つけるための
機密捜査を開始したのだった。

これは軍事機密に基づくもので、決して秘密を漏らしてはならず。
又報告は絶対が義務づけられている。

もし無断で判断して物的証拠であるものをひた隠しにしたまま。
それが発覚した場合。聖魔導師としての権限を剥奪されることとなり、
有罪となり法で裁かれることとなる。

だがその時のロゼリアは探究心で満ち溢れていて、その謎の組織である異教徒が残した。
唯一絶対の鍵となる物的証拠を見つけ出そうと躍起になって探し回った。そして一つの物的証拠
となるある資料が見つかりそこには驚くべきことが書かれてあった。

「これはまさかありえない。あり得るはずがない。この大いなる力って膨大なマナのエネルギーを消耗して使うし。だけどそれを代償にすれば。私は誰よりも強くなれる」

「いや早まるな。今独断でこの物的証拠となるものを軍の報告もなしに無断で管理していたら。
 重い罪に問われ。死刑有罪ということにもなり得る行為かもしれない。
 それにこれを持っていたら異教徒の連中に見つかるぞ」

「おいそこに誰かにいるのか」

「はい私です。ロゼリアです。何か手がかりとなるものはないか探っていたのですが、
 残念ながらありませんでした」

「そうかこちらも手がかりはなしだ。今日はひとまず報告しに帰還するぞ。
 遅れるなよ。後について来い」

「はい上官殿分かりました。すぐに後を追います」

物的証拠となるものを持っていると疑いの目をどうにか逸らすことはできた。けれど
やはりこれを証拠として報告するのは少し惜しい気がする。何故ならばこれさえあれば
どの聖魔導師いや聖騎士にも及ぶほどの力を手に入れることが出来る。

だが問題になるのは異教徒の存在。まぁそれもこの大いなる力が手に入れば全て解決する
だろう。邪魔な奴らは私がこの手で抹殺するまでだ。
 
「それで母はその後どうなったの」
 
「あぁその後母は大いなる力を手に入れた。呪いを代償にしてな」
 
「呪いって」
 
「母は毎日血を吐くようになっていた。そんな母親を私は影で見ているしかなくて
 
「だがいつかこの手で異教徒を殺してやるそしたら全て解決すると思い込んで一人
 奮闘していたよ」
 
「それで最後は母親の最後はどうなった。ルミアはそれを見ていたのか」

「あぁ幼い頃の私は何が起こっているのか現状すら分からない光景だったが、それは酷くて
 残酷なまるで悲劇のような有様だったよ」

「だけど母は最後まで私を守り通してくれた。その覚悟だけはずっと
 持っていたのだよ」

ルミアの母親であるロザリアは大いなる力を手に入れるための実験を
家に帰るたびに夜な夜なしていたそうだ。
けれど実験が成立するのは失敗を何度も繰り返し。精神すらすり減らした後の
ことだった。
そして母は変わった。変貌してしまったまるで悪魔にでも
取り憑かれたかのように。そして時は来た。

異教徒達は母のもとにたどり着いたのだ。
母はそれを待っていたかのように真っ向勝負を挑もうとした。

勝目があると思ったからだ。それはあたっていた悪魔に変貌した母の力は
凄まじいほどに異教徒の連中すら手も足も出ないほどだった。

そしていつの日か異教徒すら聖魔導師。聖騎士すら恐れるほどの
逸材となっていた。沢山の反逆者共を蹴散らしていった。
異教徒もまとめて全て。廃家となった家や寺院もあった。
全ては残虐な者共をこの世から消し去るためだった。

ルミアは泣いていた。そんな母親の姿を見て絶望を感じずにはいられなかった。
何度も縋って止めようともした。

けれどそんな声も母親には届かなかった。だがある時を境に運命は逆転した。
その日の夜は真っ暗な夜空に赤い満月が空に満ちていて不吉な予感を感じさせた夜だった。

玄関のドアを開けるとルミアには見たことのない光景が広がっていて大勢の市民。
村人達に囲まれて、死刑台にぶら下がったままの母ロゼリアの姿があったのだった。

目には大粒の涙を流し。どうか娘だけは見逃してと言わんばかりだった。
自分のことよりも娘のことを大切だと思ったのだろう。
そんな思いに動かされたのかルミアも子供ながらに死刑台の前に立って
説得を仰いだけれど誰も口を聞いてはくれなかった。

母ロザリアもこれは神が下した天罰。いやこれは自分への天罰だと思ったのだろう。
あの本にさえ手を出さなければこんなになることさえなかったのだろうにと悔やんで
も遅く。罰せられて当然だと重苦しく受け止め。死刑が来るのを待つように母親は
市民への抗議をせず。その人生に幕を落とすように死んでいったのだった。

「母親の人柄は市民からも村人からも愛される人だった。けれど残虐にも罪のない人々を
殺めてしまっていた。それで市民や村人は騎士団に訴え彼女を反逆罪となり、処刑が
執行されてしまったのだ」

「止める方法すらなかったのか」

「私は涙を流しながら説得を試みただが誰ひとりとして聞く耳を持つものなどいなかった」

「そうなのか・・・それは皮肉なものだな」

「母親はひとりの罪のない人を殺したその罪は重いものだ。だから命に代えるしかなかった。
 だが私の母は最後に私にだけ大切な贈り物を授けた。それがこのペンダントだった」

「それで受け取ったのか」

「あぁ。母からの初めてのプレゼントだった。それと伝言があってこれは呪いだと言っていた」

「呪いってもしかして」

「あぁ私が母から受け取ったものそれは異教徒が持っていた資料にある大いなる力そのものだった」

「大いなる力そのものを手にするには触媒となる成熟した聖なる贄が必要とあった」

「母親はだから罪のない一般人を殺めてそれを触媒として大いなる力を手に入れ。最後にこのペンダントに大いなる力を封印した」

「それを私にくれた何のためなのか運命なのか必然なのかすら時は経った頃に私はそれに気づいて、
 呪いが私自身にかけられていることを知ったのだよ」

現実はこんなにも皮肉なのか。
呪いは今ルミアの中にあってそれがペンダントを持つことの代償
だったなんて、だが解決策としてはルミアが大切に持っている
そのペンダントを捨てることだ。

そうすれば全て解決する。これは推測だが試さなきゃなにも解決しない。
俺は彼女のためなら支えになると決めた。
彼女からの過去での事情も知り得たならこれ以上。
彼女が苦しまなくてもいいように過去の呪縛から解放してあげなきゃいけない。

「ルミア過去のことはもう忘れよう。それとそのペンダントを貸してくれないか」

「嫌だこのペンダントは私にとっては母の形見で」

「形見であろうとなんであろうとそれがあるからルミアは不幸になるんだろう。なら
 そんなもん捨てればいいじゃないか」

その時ルミアが心の底から泣き叫ぶ光景を目にした。
今までは平然を下世話な話しかしてこなかったけど淡々と日々を過ごした。
けれどそんな中でも彼女はこのことを今までひた隠しにしていた
俺は苦しんでも構わない。けれど彼女は誰にも言わずに長い間。
自分の因縁を隠し続けていた。
 
誰にも話そうとはせずに。呪いのせいで苦しんで苦しみ続けて、
自分のことは後回しで、他人のことばかり気にして、
お節介で優しくてでも厳しくて、誰よりも故郷や妹のことを愛していて、
なのにどうして・・・苛立ちがこみ上げていた
煮え切らないほどの嫌悪感と武者震いが僕を襲う
だけど僕は彼女をただ解放してあげたかった。

だから僕は彼女の胸元にあるペンダントに手を伸ばそうと必死だった。
けれどそれは直前のところで終わってしまった。
ルミアが起き上がりどこかへ逃げ去ろうとしたからだ。
涙は止まっていたけれど
何処に行く宛すらも分からないままルミアを放っておけるはずもない。
僕はその後を追いかけるように走った。
だがその先にあったのものは希望ではなく。
待っていたのは絶望だった。

「あらルミアそんなに慌ててどうしたの。久しぶりね元気だった」

「母を返して。母を殺したんでしょあんたが、どうして、どうして帰してくれないのよ」

「私が殺したとでもいうの。それは違うでしょルミア。母は罪を犯したから殺されたの
 私は関係ないわ。それといい加減そのペンダントを私に返してくれないかしら。私には
 それが必要なのよ」

「そんなの返せるわけがないでしょ奪いたいなら力づくでも奪いなさいよ。

「このペンダントが欲しいならね」

「言うようになったじゃないけど、この呪いがあれば逆らえないのよ。貴方は私の
 人形にしか過ぎないのだから」

ルミアはその後呪いの影響で死んだように動かなくなってしまった。
まるで本物の人形のように。僕は応急処置を施そうとした。
けれど効果なんてあるはずもなかった。だから
無茶苦茶だが勝目のない戦いでも挑もうと覚悟を決めた。

この先にまた希望のない絶望が待っていたとしても俺は諦めない。なぜなら僕が
願って強くなれたのは。ルミアのために強くなろうと決意したからだ。
だから何も恐れることはないとただひたすらにか弱い女の子を手にかける謎の美女
相手に剣を抜くのだった。

第4話 襲いかかる不運と決死の覚悟

膠着した二人はどうしようもない悪運に飲み込まれるように。ただ目の前の絶望を感じ
喪失していた。そして今僕が出来ることそれはただ一点のみ目の前にいる。邪悪なオーラ
漂う妖艶で怪しげな謎の美女との戦いに挑むこととなった。

ここからは恐らく敵の足止めを食らって逃れられる術すらないと考えるべきだ。
だがなんで足がこんなにもガタガタと震えてしまうのだろう。
修練の時にはあんなに張り切って最後には勝利を勝ち取ることができたのに。今は
その行方さえ。目の前の敵の圧倒的な実力差を前にして敗北に喫してしまうのではないかと想像
が膨らむばかりでその恐怖心が僕の心をまるで掌握するかのようだった。

けれどもしそれが本当でない嘘の結末になるのなら本望だと思い込み。ただ眼前の敵目掛けて鞘に収まりし剣を引き抜いて勝負を挑むのだった。その行く末はこうである。

「俺はあいつを支えるって決めた。だから剣を振るうそしてお前を倒す」

「そうかだがお前に私は倒せない何故ならばここでお前は死ぬのだから」

「ふざけるな!行くぞ。月の光よ。我に強大なる力をよこせ。月華宝来
 雷鳴斬!月光走破烈空斬撃!光円刃丸八喰らえっ!

「面白くユニークな技だがお前の攻撃は私には届かぬ。この最大級の魔法障壁
 グラン・デスアーク・シールドの前にはどんな衝撃でさえも弾かれてしまう」

「なにっ何だと!そんな攻撃が一つも当たっていないなんて」

「だから言っただろうお前では私を倒せないと、さて茶番はおしまいだ
 小僧。地獄の底で後悔するがいい。」

「運が悪かったな。あの娘に関わったのがお前の不幸だ。でもこれでやっとお前は
 解放される。喜べ小僧ではまた地獄で会おうぞ」

「グラビティホールド!」

突如少年の体は邪悪の輪に阻まれてしまい。
身動きすら取れなくなり、次第にその輪にかかる
重圧がのしかかり少年の正気すら吸い取り。
意識を失いかけていた。誰の声も届かない
この場所で僕はこのまま死んでしまうのかと思っていた。
そんな矢先だった。
突如光の矢が僕の真上から飛んでくるのだった。

「少年大丈夫か怪我は。怪我はないか」

「あぁはいけどもう駄目です。僕はこのままもう」

「しっかりしろ。私がこの呪縛を解いてみせる。
 少年は強く意識を保つことだけに集中しろ」

「あぁはい」

やっと誰かに助けを求めることができた。
現実は覆らないことを少年は改めて知った。
だが少なくとも僕はルミアのために奮闘できただろうか。
けどそんなに都合よく物事が解決することすらなかった。
でも今は意識を保つことだけに集中する。集中すれば
きっとまた。また会えるよな。ルミア。
僕はそのまま混濁した意識の中で眠りについて
しまった。

「おやもう少年は眠りについたようだね。このままだと命に関わるかもしれないね」

「楽しそうに言うな。異教徒が、少年がどれだけその娘のために体を張っていたか
 分かっているのか」

「なぁ聖魔導師様。貴方はこの子達が可愛そうだと言いたいのかい。それは立派なこと
 だけど現実は今更私を倒したところで変わりはしない。この子達はもう死ぬ運命なの
 だから」

「そんなこと・・・そんなことない。私がこの運命を変えてみせる。そのために
 私がこの子達の敵を討ってやる。くたばれ。異教徒」

「まぁそう焦るなお前とはまた出会う運命かもしれない。ではまた会おうぞ。聖魔導師
 殿。勇敢であったぞ」

「そんな今のが、時間稼ぎだなんて、異教徒。待て、この逃げるな。こんなこと
 こんなこと。私が絶対に。絶対こんな運命を変えてやる。異教徒を殺してやる」

そんな残酷な運命がまたもやルミアと颯真を襲った。けれど聖魔導師のおかげもあり、
謎の美女は姿を忽然と消した。そしてそこには倒れこむ二人の姿があった。救助が最優先
だった。けれど彼女ひとりの治癒魔法では治せない部分もあった。

それが意識だ。傷などの出血を止めるならまだしも意識を回復させるには。
相当な力を要することとなる。そんな困り果てた時だった。
聖魔導師のもとに妖精エルフが現れたのは。

「どうやら困っているようだね。助けてあげようか」

「君は一体」

「僕の名前はエルフ。このとおり妖精さ。君は」

「私は聖騎士団の聖魔導師である。アリシア・エーデル・フォーグレン巡査だ」

「そうですか今は巡回の途中というわけでしたか。これは不幸な出来事に巻き込まれ
 ましたな」

「はい。妖精様もお気づきでしょうが、この子達の意識はまだ失われてはいませんが、
 完全に意識が失われるまで猶予もない状態です。このままの状態が続けば死に至る
 危険性もあるかと」

「うんそうだね。それで僕の出番というわけだ。任せて」

「神聖なるマナよ。彼らに健やかな元気な活力を与え給え。そして目覚めさせ給え」

どう精霊がまるで小言のように目を瞑りながら呪文呟くと。その声が森全体に木霊する
かのように反響し。光のように湧き出たマナが彼らの体に吸い込まれていく。やがて
我に返るように目を覚ますのであった。

それはまるで御伽噺のようで不思議な出来事で見たことのない光景に思わず。
アリシアも目を疑うほどの光景だった。妖精は呟くように呪文を呟いたあと
そのまま眠りについてしまった。どうやら力を使い果たしてしまった。
ようだ。

妖精の体重は軽く。アリシアはそっと妖精の体を持ち上げて
茂みで雑草が沢山生えていて柔らかい絨毯のようになっている寝床のような
場所に妖精をエルフをそっと横に寝かせるのであった。

そして再び二人のもとに戻ると、彼らはさっきまでの出来事が嘘のように元気な姿を
取り戻しているのであった。

「ようやく元気を取り戻してくれたみたいね」

「貴方は。私は聖魔導師のアリシアというものです。

「ここには巡回しに回ってたところなんですけどたまたま貴方達が
 危険な目に遭っているところを目撃したので、対処しよう
 としたのですが」

「そうですか。それはすまないことをしたな」

「そんなルミアは」

「いや私が全て悪いんだ。全てを打ち明けるといって颯真とそして貴方まで巻き添えにして
しまった。

「私は呪われているのだ。だから異教徒に付け狙われることがある。だから全て
 私が全て悪い。全て私の責任だ」

「いえルミアさん。貴方が悪いなんてことはありません。そして颯真さんも誰もこの件に関して
 悪いのではありません。悪いのは全てあの者達が起こしているのです」

「そうなのか」

「えぇだからそんなに思いつめることはありません。貴方もよく頑張りました。

「それに二人共お疲れでしょうし。朝食をここで食べましょう。非常食を私はいつも
 持ちきれないぐらい持ち歩いているので余っているのですよ

「ですので、良かったらどうぞ気に入るといいのですけど」

「それじゃあお言葉に甘えて」

その後僕達は聖魔導師である。アリシアさんが持ち歩いていた。非常食の美味しい焼きたての
パンをバターとマーガリンをつけて食べることにした。それが絶品であることは間違いないなく
あっという間にお腹の中は空腹感を忘れ。満腹感に満たされるのだった。

そして3人とも朝食を食べ終えたところで、お別れということになった。
助けられた言葉にならないほどの感謝の言葉を伝えると、
アリシアは顔に涙を浮かべて、満面の笑顔で僕達に別れを告げて帰ろうとしていた
僕達のもとに妖精が僕達の前に姿を現し。あるサプライズプレゼントをくれるのだった。

「体が無事でよかったです。僕の名前はエルフ。君達を助けたのは本当は僕なんだ

「彼女は僕に助けを求めたんだけどね。彼女にも感謝するといいよ僕がいなければ今頃」

「まぁそんな辛辣な話はなしとして僕からの
 サプライズプレゼント友情の証にこれをあげるよ」

「これは」

「活性の実もし万が一何かあった時に使って。それがあればどんな時でも復活できる。

「そして何かあればこの笛を使って僕を呼んでどこまでも飛んでいくから」

「妖精なんて生まれて初めてだわ」

「あぁ僕も」

「それと本当に助けてくれてありがとう」

「僕からも本当にありがとうございます。貴方がいなければ僕達は」

「そんな照れるな。でも君たちを助けることができて、僕も良かった

「じゃあまた元気で僕はもう帰らなくちゃいけないから」

「あぁお元気で」

「また会おう助けてくれて本当にありがとう」

妖精は僕達にとってとても大切な人となった。救われた気がした。けど現実は何も
変わらないいつ何時。不幸な災厄が起こるか分からない。だがそれがルミアの呪い
のせいなのなのだろうかと不安に思う。

どうにかあのペンダントの呪いさえ解く方法
があればいいのだが、そして僕もまた鍛錬に励んで
もっと強くならないといけないの
だと思い知ったのだった。

屋敷へと戻るとそこには涙を流しながら。
何かあったのかと心配そうに待ってくれていたコレットとアルフレッドの姿があった。
泣き止まないコレットをルミアは抱き抱えまるで赤子を手懐けるように優しく頭を撫でてやった。

アルフレッドはそんな帰ってきて無事な姿を見てほっとしている様子だった。
こうしてまた僕達はもとの居場所に戻ることが出来た。
けれどもこの異界にはそう長くはいられないと焦る思いを胸に。
また転移門をくぐり。家族と別れを告げた後日本へと帰還するのだった。









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