Bloody Rose 第一幕 その1

Shran Andria

Bloody Rose 第一幕 その2

《Shranの小説》
Bloody Rose 第一幕 その2

瑠美は、身じたくをしたあと、オフィスに今日は終日出張と連絡した後、青山のカフェに向かった。
そこには、ソワソワした様子が誰の目にも分かる1人の男が座っていた。
岡井脇和おかいわきかずは、ワールドウェブの第一グループ編集長補佐の職についていた。
瑠美はあたりを見まわしたあと、ゆっくりと椅子に座った。
『岡井さん、お一人?』
岡井は、緊張した面もちで、
『はい。ごめんね~。』
瑠美は、キッと岡井を睨みつけ、
『貴方に会いに来た訳じゃないのよ。わかるわね?』
『あっ、あ~。メールは見たけど、急に社長呼べっても無理だよ~。あの人忙しいし、僕が申し伝えるからさ~。』
瑠美の顔から表情は消え、凍った月のようにこう言った。
『岡井、私だって忙しいのよ、あんたに会うためだけに来るわけないでしょ。今すぐ電話して。』
岡井は、虚勢を張ってのけぞるように
『あのね~わが社は、Web出版2位の会社だよ、正式なアポなしに、馬鹿げたこと言うなよ。』
しかし、岡井の声は明らかに震えていた。
瑠美は、一瞬下を向き、大声でこう言った。
『岡井、なんの取り柄もないあなたが、何故その会社で、編集長補佐やってるの?なんならみんなに教えてあげましょうか!』
岡井は崩れるように椅子から転げ落ち、ひざまずいた格好で、
『瑠美さん、すみません。それだけは...』
半泣きにうったえる岡井にたたみかけるように、
『今すぐ電話しなさい。』
まわりの客は、一瞬こおりついたが、まるで酔っ払いが道で暴れているのを無視するかのように、我がごとに戻る。
岡井は、慌てて携帯を秘書に繋ぐと、隠しきれないパニック状態で、『あっあ~の、笹井さんですか。岡井です。緊急案件です。桜木社長をお願いします。』
桜木飛克。3年前に傾いた、リアル書籍一筋のカタイ出版社を買収し、全書籍を電子化して、1年で立て直し、さらにWeb新書で一挙に業界2位に躍進させた出版プリンスと呼ばれる若手経営者である。
その推進力となったのが、今や外食のバイブルとされる
・外食ログ
・Are you ready(for dinner)
・グルメランナー
・もっと胡椒
などのwebサービスを比較する週刊Web雑誌の有料配信をはじめてからであった。
もともと、外食産業向け調理道具や、店舗の取り組みを紹介していたカタイ出版の外食産業読者はもとより、グルメライターや、一般読者を取り込み、グルメweb配信の会社さえ、一目置かざるをえなくなるビジネスモデルを構築していた。
そのアイデア出しをしたとされる、岡井は、全て瑠美の指示に従っていたのだ。
数分後、桜木は、岡井の電話に何事かと慌てた声で出てきた。岡井がしどろもどろ説明し始めるやいなや、瑠美はその携帯をとりあげ、
『ベストロン製薬の里花 瑠美と申します。岡井様から、ここ数ヶ月の伸び悩みの相談を受け、お電話差しあげました。』
プリンス(態度が大きく、何事にも動じない)桜木も、製薬会社の女性が、何故と、さすがに驚いたが、瑠美の美声に何やら聞くべき話と直感し、会話を続けた。
岡井は、床にひざまづいたまま、瑠美と桜木の会話を聞き取ろうとするが、うまく聞き取れなかった。
数分後、通話を終えた瑠美は、優しく携帯電話を岡井に渡し。リズミカルに岡井に告げた。
『これで、岡井君とはオワリ♪』
岡井は、地獄から拝み倒すように
『瑠美さん、瑠美さんがいないと僕は・・・・。』
瑠美は、嬉しそうに微笑みリズミカルにこう言った。
『あなたが私を好きなのはわかるの。いくら好きになってもいいのよ♪でも、私にあなたは不要♪貴方は不要♪』
瑠美は、まるで踊るかの様に店を出た。
1人残された岡井は立ち上がることもできず。ただ腑抜けた姿で、床に座りこんでいた。

その日の昼どき、表参道のイタリアンレストランに、瑠美と桜木は向かいあい座っていた。

第一幕、その2完 続く。

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