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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第41話 アステリオス

 敵の軍勢の終わり、端に来た。
 ここまで来るのに俺はかなりの体力を消耗した。
「ハァ……ハァ……」
 息が荒くなる。
 体は兵士の血を浴びているせいなのか、体が重い。
 それはアステリオスも同じだった。今まで以上に疲れているようだ。
 随分相手を斬り、前に進んできたが敵の勢いは落ちない。
 生きて帰るのはもう無理かもしれない。
 だが、アステさえ生き残ってくれれば心残りはない。いずれあいつは侵略されたアテ―
ナイを復活させる為に王となり、帰って来るだろう。
 もうすぐだ、アリアドネー。もうすぐでお前の元に行く。だからもう少しだけ待ってい
てくれ。
 俺は地面に剣を突き刺し、相手の軍勢を見た。
「なあ、アステリオス。しつこいようだがお前だけでも生きてくれないか?」
「なにいっているの?しつこくいってるけどぼくはてーせうすといっしょにいたいんだ。
でも、そのことば。こんかいだけはちがういいかたにするよ。てーせうす、きみだけいき
ていて。ぼくは……」
 アステリオスは俺の首に肘を振り下ろし、俺を地面に倒れさせ、動けなくさせた。
「な……!?」
「てーせうす、きみといっしょにいてたのしかった。かいぶつとしてうまれたぼくをにん
げんとしてせっしてくれて、そしてともだちになってくれた。それにくわえてぼくににん
げんとしてのじんせいをくれた。ぼくはそれがとてもうれしかったんだよ。ぼくはあたま
がわるいからどうやってことばにしたらいいのかわからないけど、このことばをきみにお
くるよ。ありがとう。そしていきて、てーせうす」
 アステリオスはそう言うと一人、敵陣に向かって走って行った。
 俺が止めようと大声を上げてアステリオスの名前を叫ぶが、アステリオスは走る速度を
落とさず、二本の斧で敵陣の中に消えた。
 その姿を最後に俺は意識を失った。

 ぼくににんげんとしてのじんせいをくれたてーせうす。かいぶつとしてではなくにんげ
んとしてあつかってくれたてーせうす。だいすきだったよ。
 おとうさんとありあどねーにあわせてくれたこともかんしゃしている。ふたりともしん
じゃったけど、ぼくはどうしてかかなしくなかった。たぶん、じっかんがわかなかったん
だろうね。
 でも、てーせうす。きみがしぬとおもうとぼくはとてもかなしくなるんだ。きみだけは
とくべつなんだ。ぼくのゆいいつのともであり、さいこうのともだち。
 ほんとうはこのきもちをぜんぶいいたかったけど、はなしているじかんがなかったから
いまこころのなかでいっている。きこえていたらいいんだけど。
 てーせうすをたすけるためにぼくはてきをなぎはらう。ふきとばす。
 せなかをけんできられたり、あしやうでをきられる。
 でも、ぼくはとまるわけにはいかない。
 はしって、てきをふきとばしてはしってふきとばして。
 ころすつもりはないんだけど、てきのからだからちがふきだしてくる。そのちがぼくの
からだをぬらす。
 じめんにながれたちのせいであしがすべってぼくはこける。
 そのすきにてきはぼくのからだにけんをさす。
 いたいけど、いたくない。てーせうすのためとおもえばこんなきず、いたくない。
「うおおおおおおおおおお!」
 てきをなぎはらう。
てきがぼくのまわりをかこむ。
 みてわかる。ぼくはこのたたかいでいのちをおとす。これだけおおぜいのてきをあいて
にしてぼくはけっしてぶじじゃすまない。いままでみたいにいきてかえることはできない
だろう。
 てーせうすをなかせちゃうな。ぼくがしんだらきっとてーせうすはおおつぶのなみだを
ながしてかなしむだろうな。
 でも、てーせうすがしぬよりよっぽどいい。
 ぼくはかいぶつだからおとうさんやありあどねーとおなじところにいけないからてーせ
うすがしんでも、ぼくたちはにどとあえないだろう。
 てきがおそってくる。
 てきのよろいやけんをはかいしてふきとばす。
 かんがえごとすらさせてくれない。かんがえるひますらあたえてくれない。
 じめんにてきがつぎつぎとたおれる。
 やりがとんできてぼくのからだにささる。
 やがとんできてぼくのからだにささる。
 こんなこうげきでぼくをたおせるとおもうな!
 ぼくはかいぶつ、みのたうろす!ひとからうまれたかいぶつ。ひとをこえたちからをも
ったかいぶつ。そのかいぶつをたおすのはえいゆうだけだ。きみたちじゃない。
 てきにむかってはしり、てきをなぎたおす。
 けんがささる。けんがささる。
 そして、ぼくのみぎあしがきられ、とれた。
 それでもぼくはかたあしだけでまえにすすむ。
 うでもきられる。ひだりうでがとれそうだ。
 ひだりうでにもっていたおのをくちでくわえてたたかう。
 あたまにはえていたつののいっぽんがおれる。
 みぎめにやがささってしかいがわるくなる。
 たたかう、たたかう、たたかう、たたかう、たたかう、たたかう。
 いつまでたってもてきはへらない。だいぶかずをへらしたとおもったのに。
 またちですべってたおれる。
 もうおきあがるうでもあしもない。
 すわったままぼくはあばれる。かいぶつのように。
「いまこのときだけ……このときだけでいいんだ……!おとうさん、ありあどねー!てー
せうすをたすけるためにちからをかして!」
 ぼくのおねがいがつうじたのか、さっきよりからだがかるい。いたみもない。
 これならまだたたかえる。
 ありがとう、ふたりとも……

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