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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第38話 脅威の予感

 妻を失った悲しみは俺にとっては重く、とても重たいものだった。
 暇があれば部屋に行き、アリアドネーが着ていた服の匂いを嗅ぎ、涙を流していた。
 母親を失ったアステは自分を鍛える為に、若くして兵士に入団した。アステがいる部隊
はアステリオスが隊長を務める部隊だった。
 アステリオスはアリアドネーが死んで少しだけ無口になってしまった。
 あんなに遊ぶのが好きだったのに、今では全然遊んでいない。それどころか前よりも増
して訓練に励んでいる。
 反乱も起きず、他国からの侵略も受けないアテ―ナイは国民にとっては平和そのものだ
ろう。他国からの移民が絶えない。
 ある日、俺の元に一人の老婆が来た。
「お前は誰だ?」
「お忘れですか、テーセウス王。あなた様を試したあの日はわしにとってはつい昨日の出
来事のように思えますぞ」
 あの日?いつの日だ?
 俺は自分の記憶を探った。
「あなた様の頭を踏みつけた無礼をお許しください」
「……そうか。お前はあの時の婆さんか。よくもまあ死なずに長生きしているものだ。そ
の生命力はアステリオス並だな」
「健康が第一ですからの」
「で、俺に何の用で来たのだ?まさか感動の再会だけで終わり、ではないだろう」
「はい、実は……近い将来他国から侵略を受けます」
 なんだと……!?
「何故そう言える?」
「わしは占いをやっていまして、その占いに敵と戦うあなた様とアステリオスが映りまし
た」
 占いか。占いは俺の人生で一度も信用したことがない。
 この婆さんが前に言った、アステリオスを俺が殺すと言うのはでたらめだ。今、こうし
てアステリオスは生きている。
「その敵はどうやら神の為にと次々と近隣の国を征服しているようです。その神の名は確
か……ポセイドンとか」
 ポセイドン。その名前を聞いて俺は目を見開いた。
 そいつは俺の父アイゲウスを狂わせ、怪物となり果てた原因を作った神だ。
 この婆さんが言っていることは嘘ではないかもしれない。
「どこの国の者だ?他国を征服していると言うのだから名前は知られているはずだ」
「流石にそこまではわかりません。ですが、お気を付けください。その戦いでアステリオ
スはあなた様の手によって殺されるでしょう」
「おい、ふざけたことを抜かすな!でたらめなことを言っているとここから叩きだすぞ!」
 兵士の一人が婆さんに近づく。
「待て。追い出さなくてもいい。その老婆はこの宮殿にいさせろ。丁重に扱え」
「しかし……」
「構わん。こいつが言っていることは本当かもしれん。至急、国外の情報を集めろ。他国
が襲ってきたらすぐに行動出来るように」
「はっ!」
 兵士たちに情報を集めさせるように指示し、この部屋には俺と婆さんの二人だけになっ
た。
「婆さん、あんた何者だ?」
「わしはただの年寄りですぞ。ただ占いが得意なだけの」
 またあの時の魔女のような笑い方をして笑っている。
 俺は自分でこの老婆の部屋を案内し、その部屋にいさせた。

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