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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第27話 予言

 地下から出るとアステリオスは座って太陽を見ていた。
「かくごはきまった?じゃあ……」
 腕を広げて自分の胸を突き出した。
 もういい、大丈夫だと言うとアステリオスはそう、と言った。
 苦労したが、これで薬草の作り方は知った。あとは国に帰るだけだ。
 一日、この街に留まり、翌日にアテ―ナイに帰る用意をしていた。
 宿に入ると、流石にアステリオスの体に合う寸法のベッドはないらしく、アステリオスは床で寝ることになった。
 月が俺たちの部屋に明かりを入れる。アステリオスはいびきをかいて寝ている。
 俺は部屋を出て行く前にあの老婆が最後に言っていたことを思い出していた。
『アステリオスは最期、お前の手によって死ぬ。それは変えられぬ運命だ。怪物は人間の手によって、英雄によって倒される。それはこの世界の摂理だ。誰にも変えられん。その時まで、仲良く一緒に過ごすがいい』
 アステリオスは俺に手にかかって死ぬ。俺が……英雄と呼ばれたばかりに。アステリオスが怪物として産まれてしまったばかりに。
 自分の手を見つめてそう考えていた。
 だが、俺はテーセウス!どんな相手にも負けない英雄だ!たとえそれが怪物ではなく運命が相手だろうと、俺は勝ってみせる!アステリオスを殺しはしない!
 手を強く握り、俺も寝ることにした。
 そして太陽が顔を出した頃に俺たちは街を出て、アテ―ナイに帰った。

 帰るのに一か月近くかかってしまったが、何とかアテ―ナイに帰ることが出来た。
 宮殿に入り、父上に報告をした。
「どうだった?薬草は?」
「薬草は持っていません。ですが作り方を教えてもらいました。これでクレタの国民やミーノース王も回復なさるでしょう」
「で、その作り方とは?」
「それは……」
 俺は作り方を父上に説明した。父上の横に秘書が来て、紙に作り方を丁寧に書き写していた。
 しかし、作り方を知ったところでそう簡単に行かない。
 何故なら、薬草の作り方は普通の医療に使われる怪我用の薬草の種に、魔猪の血を与えることで初めて薬草としての効果を発揮する。
 魔猪など、この国の近辺には存在しない。
 あの街から帰る前に魔猪を捕らえ、持って帰ることが出来ればよかったのだが、相手は普通の猪ではない。魔猪だ。簡単には捕まらない。それにたとえ捕まえたとしても生きたままアテ―ナイに持って帰ってくるのは不可能だった。
 父上はすぐに大規模の捜索隊を出し、魔猪の情報を集めにかかった。
「クレタの状況はどうですか?」
「一向に良くならん。皆、もう死の間際にいるそうだ。たとえ魔猪を捕らえることが出来たとしてもその薬草の数は限られるだろう。残念だが、全員は助けられない」
 覚悟していたことだが、実際に聞くと運命を呪いそうだ。
 捜索隊からの情報を待つことにし、俺は部屋に戻った。
 アステリオスは帰ってきてから今までの疲れが一気に来たのだろうか。寝ている。
 ほとんど休みなしで走って来たのだ。俺一人じゃ間に合わなかっただろう。本当にアステリオスがいたことに感謝する。

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