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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第23話 涙

 アステリオスが止まったのは、自分の額が割れて血が流れて随分経ったころだった。
 地面に倒れ、動かなくなった。
 辺りは血の海だった。誰もがアステリオスがやったと思うほどに。
 俺は砕けた腕を無理矢理元の形に戻し、盗賊たちが持っていた縄で盗賊たちを縛った。
 余った縄でアステリオスの体を結び、俺は引きずって国に帰った。
 国に入ると、国民たちは何が起きたのかわからない様子で俺たちを見る。それもそうだ。ボロボロで、服が血に染まったのだ。それに巨体のアステリオスを縄で縛って引きずっている。何が起きたのか、国民たちの頭には一つしか浮かばないだろう。
『アステリオスが人を殺した』
 俺は兵士に運ぶのを手伝うように言ってアステリオスを自分たちの部屋に運んだ。
 ベッドの上に寝かせ、着ていた服を引き裂き、血に濡れた口を拭いた。
「何があった!?」
 父上が走って部屋まで来た。
「父上……アステリオスは何もしていません。何も……していないんです……!」
 そうとしか言えなかった。正直に言えなかった。
 また、アステリオスが怪物として国を追われることを避けたかった。俺の友人のアステリオスとしていてほしかった。
「……詳しい話はわしのところで話せ。衛兵!アステリオスを見ておけ!」
「アステリオスは何もしていないんです!」
「わかっておる。だが、念の為だ」
 俺は父上の後をついていき、王の間に来た。
 俺はそこでさっきあったことを全て正直に話した。
 薬草を採りに行ったら盗賊に襲われ、怒り狂ったアステリオスが怪物となって人を食ったと。
 父上は難しい顔をしていた。王として、怪物をこの国にいさせるわけにはいかないのだろう。
「そうか……。人の心を持っていたと思っていたのだが、怒りで我を忘れ、怪物となってしまったか……」
「アステリオスは、俺を守る為に怪物になってしまったのです。決して自分から人を食おうと思っていません。その証拠に、正気に戻ったアステリオスは自分がしたことを悔やんで頭を地面に叩きつけて、気を失いました。
「だがな……それでもあやつは怪物になってしまったのだろう。残念だが、あやつはまた牢に入れるしかない。衛兵、アステリオスを丁重に運び、牢に繋げ。いいか、慎重にだぞ」
「待ってください!アステリオスは……!」
「お前はまず、その怪我を治せ。話はそれからだ」
 俺は兵士に捕まれ、無理矢理医者のところに行かせられた。
 俺の診断は全治一か月だと。
 それまでの間、俺はアステリオスに会ってはならないと言われた。
 父上は森で出会った盗賊たちの居場所に兵士を向かわせた。
 部屋に戻り、ベッドの上に座った。
 広くなってしまったこの部屋を、俺はとても寂しく感じた。
 ……アステリオス。お前は本当に怪物になってしまったのか……?
 服の中に入っていたアリアドネーからもらった石は無事だった。でも、俺はこいつよりアステリオスが無事でいてほしかった。
 悔し涙を流し、俺は大声で叫んだ。

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