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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第24話 信用の取り戻し

 盗賊たちが宮殿の牢に入れられ事情を聞くと、どうやらあいつらは他国の元兵士だったそうだ。待遇が気に入らず、兵士を辞め、盗賊になり森に来た人々を襲っていたそうだ。俺が来ることは事前に知っていたらしい。そのことをあの呉服屋の店主に問い詰めたが、あの店主は随分前から店を出しており、父上にも俺にも何の不満も持っていなかったそうだ。
 流れ者なので、他国からの宣戦布告と言う訳にはいかないが、それでもその国に対する信頼が失われてしまった。
 あの盗賊たちは事情を説明した後、アステリオスの行いを思い出し、精神を病んでしまった。
 俺はそれを無心で聞いていた。
 二週間が経ったが、俺の怪我はいい方向に向かっていないそうだ。短剣を刺されたところが化膿してひどくなっている。それに関節を無理矢理戻したせいで関節の大事な部分が損傷していると言う。下手をすれば一生このままだと。
 だが、俺はそれでもよかった。アステリオスが無事でいてくれたらそれでよかった。
 そして約束の一か月が経ち、何とか怪我が回復した俺は真っ先にアステリオスの元に向かった。
 牢の中ではアステリオスは鎖に繋がれておらず、横になったままの状態でいた。
「アステリオス!」
 呼びかけても反応がない。
 兵士にアステリオスの状態を聞くと、ずっとこのままだそうだ。何も食べず、何も飲まない。まるで死んだように眠っているのだと。
 俺は牢の扉を開けてもらい、中にはいってアステリオスの体に手を置いた。
 このまま目が覚めなかったら俺は一体どうしたらいいのだろうか。友を作ったのはいいが、友を失うと言うのはこんなにも辛いものだったのか。
 頭を撫でて、俺は牢から出た。
 それからアステリオスは中々目を覚まさなかったが、二か月後にやっと目を覚ました。
 俺はそれを聞いて走ってアステリオスの元に行った。
「アステリオス!」
「てーせうす……」
 良かった。体の方は何ともないようだ。
「てーせうす、ぼく、ころしちゃった」
 自分の手を見ている。殺した瞬間のことを思い出しているのだろうか。
「それはもういい。お前は正しいことをしたんだ。誰もお前を責めない。誰がお前を責めることが出来ようか。お前を責めるならまず俺がそれを聞く」
「ちがたくさん、ながれて……いたかっただろうに……」
 アステリオスは涙を流していた。大粒の涙が自分の手にポタリ、ポタリと落ちる。
「ぼくは……みんながいうかいぶつになってしまったんだ!もうもどれない!てーせうす、ぼくをころして!」
「馬鹿なことを言うな!お前が死んだら残された俺はどうなる!?お前のあとを追って俺も死ぬぞ!それでもいいのか!」
 俺が死ぬと言った言葉に反応したのか、俺のほうを振り向いた。
 赤い目だった目が今では青くなっている。だが、それもだんだんと元の色に戻って来た。
「てーせうすがしぬのはいやだ……。ぼくは、いきてていいの?」
「ああ、お前は生きていていいんだ!お前は人間だろう!人間なら人間らしく生きろ!何が何でも生きろ!俺の為に!」
 牢の柱を掴み、俺に顔を近づけてくる。
「てーせうすのために……」
「そうだ。俺の為にだ!」
 それを聞いたアステリオスは急に笑い出した。小さな声だったが、その声には何だか喜びも混じっているような気がした。
 その声はだんだんと大きくなり、俺も一緒に笑ってやった。
 アステリオスの手に手を重ねて、俺はアステリオスの目を見て不器用な笑顔を見せてやった。それを見たアステリオスも笑顔になった。
 父上にアステリオスが目を覚まし、自分の行いを悔いていると言うことを伝えると、アステリオスは牢から解放された。
 久しぶりの太陽の下で、アステリオスは背伸びをしている。
「アステリオス、ずっと眠ったままだったんだからまずは体をほぐすことから始めるぞ」
「うん」
 なまった体をほぐす為に俺たちは国民たちが作っている建物の建設を手伝った。
 だが、アステリオスを見る目は変わっていた。怪物を見るような目。最初に来た時と同じ目だった。
 それを無視して大工たちの手伝いをしていたが、誰もアステリオスとは話そうとはしなかった。あの子供たちでさえだ。
 嫌な空気で、大工たちの手伝いを終えた俺たちは宮殿に戻り、飯を食べた。
 腹を空かしていたようなのでアステリオスはすごい勢いで食べる。食べる。食べる。
「やはり、国民たちの信頼は戻らんか……」
「また最初の時のように時間をかければ元に戻ります。アステリオスの頑張り次第ですよ」
「ぼく、がんばるよ」
 宮殿内ではアステリオスを怖がるものはいなくなったが、やはり何日経っても国民たちの目は元に戻らなかった。

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