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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第21話 戦闘

「いたっ」
途中で鋭い葉と尖った枝によって顔や腕に傷が出来る。アステリオスはこれぐらいの傷なんてわけないと言う顔で進んでいる。
少し歩いて薬草が生えている場所を見つけた。この薬草を持って来たカゴにいっぱいに摘めれば目的は達成だ。
しかし、ここだけではカゴにいっぱいどころかまだ二割もいっていない。引き続き、薬草を探した。
「スン、スン」
 アステリオスが急に何かの匂いを嗅ぎ始めた。
「どうした、アステリオス?」
「なんだか、いやなにおいがするよ。きをつけて」
 嫌な臭い?ここの植物から流れ出た樹液の匂いだろうか。いや、それなら最初に森に入った時にすでに言っている。だとしたら……
 俺は今までの勘を働かせて、身を構えた。
「ガサッ、ガサッ!」
 植物の間を何かが通ってくる音がする。
一つではない。五、六……いや、もっとか。
 アステリオスの近くまで下がり、何かが来るのを待った。
「ワンッ!ワンッ!」
 現れたのは野犬だった。涎を垂らしている。飢えているのだ。
 野犬どもは俺たちの周りを囲んで、攻撃態勢に入った。
 犬ごときに後れを取る俺ではないが、数が多い。七、八……九匹か。それに武器もない。
この数でこの森に入って来た人々を食い殺してきたのだろう。
「アステリオス!こいつらは殺しても構わん!殺される前に殺せ!」
「でも……みんなじぶんたちがいきるためにうごいているんだよ。ころすなんてぼくにはできないよ」
「だったら襲われないように守りに入ってろ!お前のその体ならこいつらの牙は突き刺さらないだろう!」
 アステリオスは役に立たない。俺が何とかするしかないか。
 さっきから吠えるだけで近づいてこない。隙を窺っているのか?
 俺は攻撃される前に先に攻撃した。
 まず、最初に一番近い奴の顔に目がけて拳を叩き込む。拳は犬の顔にめり込み、一匹は後ろに大きく飛んで木にぶつかった。
 それを合図に犬どもが一斉に襲い掛かってきた。
 腕で牙や爪から身を守り、回し蹴りを食らわせた。蹴りを食らった犬が横にいた他の犬にぶつかり一緒に吹っ飛ぶ。
 残るは六匹。
 三匹は俺の目の前にいるが、他の三匹はアステリオスに向かって突進していった。
「こないで!あっちにいって!」
 太い腕を振り回して犬を近づけさせていない。これなら放っておいても大丈夫だろう。
 俺は目の前の三匹に集中した。
 手負いの獣は手ごわいと言うが、さっきの三匹の様子を見ていたこいつらは簡単に近づいてこない。様子を窺っている。
 吹き飛ばした三匹が回復し始めている。時間はかけていられない。
 左にいた一匹に向かって渾身の裏拳を食らわす。だが、それは外れた。
 その隙を狙って他の二匹が俺の足に牙を突き立てる。
「いってえな!ちくしょうが!」
 二匹の首を捕まえ、二つの頭をぶつける。気を失った二匹が俺の足の近くに倒れる。
 これで残りは四匹。
 残った一匹は俺をにらんだまま動かない。
 時間はかけていられないんだ!
 足を掴もうと前に出たが、簡単にかわされ、俺の首元に噛みつく。その力はすさまじく、気を抜くと頭を持っていかれそうだった。
 でも、これで捉えることが出来た。
 前足を掴み、思いっきり振り回し、投げた。木に直撃し、口から血を吐いた。
 残ったのはアステリオスに向かって行った三匹。
 アステリオスは腕を振り回しているお蔭で犬どもは近づけず、まだ傷を負っていないようだ。
「アステリオス!あとは任せろ!」
「てーせうす!」
 怯え、座り込んだアステリオスの目の前に立ち、三匹を相手にした。
「グルルルル……」
 獣のうなり声を上げて距離をとっている。
 前に出した足に力を込めて一気に距離を詰める。
 その速度に反応できなかったのか、一匹は俺の拳をかわすことが出来ず、木に当たることなく遠くに吹っ飛んだ。
 残った二匹は覚悟を決めたのか、俺の腕に噛みついた。
 血が流れる。だが、こんなもの痛くもない!
 腕に噛みついた二匹に膝蹴りを食わらして勝負はついた。
「ハァ……ハァ……」
「てーせうす……だいじょうぶ?」
「ああ、大丈夫だ。お前は大丈夫だな?」
「うん」
 アステリオスは立ち上がり、辺りを見回した。
 しかし、こいつらの動き……これは野生で身についたものではなかった。まるでそうするように訓練されていたかのようだった。
 不審に思った俺は足元に沈んでいる犬の顔を持ち上げた。
 見てみると首輪がしてある。他の犬どもの首を見てみると皆同じ首輪をしていた。
「てーせうす、まだいやなにおいはのこってるよ。ちかい、すごくちかいよ」
「どうやらこいつらの飼い主がいるみたいだな。そこにいる奴、出てこい!」
 俺は草むらの一つに指を刺した。
「さすがはアテ―ナイの王子、テーセウス様だな。こいつらじゃ相手にならないか」
 草むらから一人の大男が出てきた。
 それに続いて木の影や、地面から同じような体型をした男が数人現れた。盗賊たちだ。
 気が付くと俺たちは囲まれていた。その数は犬どもより多い。
「俺をテーセウスだと知ってなお挑んでくるか。その勇気は無謀と言うんだぜ」
「お前を殺せばこの国で腕の立つ奴はいなくなる。そのデカい奴は役に立たない。そうすれば宮殿は俺たちのものだ。悪く思うな。恨むならこの国に来たことを恨むんだな。」
 気持ち悪い笑い声を出して俺たちに近づいてくる。その手には短剣、こん棒、縄を持っていた。
 さっき倒した三匹の犬が回復し、飼い主の元に近づいた。だが。
「このクソ犬どもが!何で教えた通りに動かねえ!役立たずどもが!」
 犬たちに蹴りを食らわせて地面に倒れさせた。
「……お前ら」
 俺は頭にきた。何故ならこの犬たちは飼い主たちの教えを守って俺たちに襲い掛かって来た。飼い主の為に動いたのだ。それを……
 それを、役立たずと言い捨てるこいつらが気に食わなかった。
 歯を強く噛んで奥歯がギリギリと鳴る。
 俺は人道離れた行いが大っ嫌いだった。自分が生きる為に生き物を殺すのはいい。それは自然の摂理だ。だが、己の欲の為に人を殺し、その欲を満たすその行為が大っ嫌いだった。
 だからこいつらをただではすまさない。苦しんで、苦しんで、そして殺してやる。
 俺の殺気を感じとったのか、盗賊たちは一歩、後ろに下がった。
「へ、流石は英雄テーセウス。殺気も一味違うぜ」
「許さんぞ、貴様ら……。絶対に生かしては帰さん!」
 アステリオスはさっきから何も言わない。こいつには戦う意思が無いのでむしろそれは有難かった。この手でこいつらを殺すことが出来るのだから。
 一人が短剣を俺に向かって投げる。俺はそれを右手で掴み、自分の武器にした。
 さっきと同じように一歩足を踏み出し、それに力を込めて距離を詰める。
 右手で短剣を突き刺すように構え、そして突き刺した。はずだった。
 男はそれを紙一重でかわすと短剣を持った俺の腕を掴み、腕に膝蹴りを食らわせた。
「ぐおっ!」
 肘に逆方向の力を加えられたので関節が砕ける音がする。こいつら、ただの盗賊じゃない……!
 腕を掴まれたままの俺は腹に二回蹴りを食らった。怯んだ隙に、盗賊たちが俺の背中にこん棒を振り下ろす。一撃、二撃、三撃、四撃、五撃。
 流石の俺でも何回もこん棒を叩きつけられるとどうしようもない。俺は地面に倒れた。
 倒れた俺の右手の手のひらに短剣が突き刺された。
「があ!」
「ヒヒヒ……そこを動くなよ。お前の始末はこのデカ物を始末してからだ」
 俺から離れ、アステリオスに近づいていく。
 左手に刺さった短剣を抜こうとしたが、深く刺さっていたので簡単には抜けない。
「アステリオス、逃げろ!」
 俺の言う事が聞こえていないのか、アステリオスは動かない。
 その間に盗賊たちは近づき、アステリオスの背中や腹に短剣を突き刺した。
「アステリオス!」
 固まったまま動かない。もしかして死んでしまったのだろうか。
 流れる血が着ている服を赤く染める。
 固まったアステリオスの体にこん棒を叩きつける。蹴りを与える。拳を叩き込む。
 それからどれだけ殴られたのだろうか。一秒一秒がとても長く感じた。
 その時、アステリオスが動いた。
「うおおおおおおおおおお!!」
 すさまじい雄たけびを上げる。その声は周りにいた盗賊たちを吹き飛ばし、木がしなるほどだった。

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