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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第19話 怒り、そして仲直り

「――以上が俺の武勇伝だ。ここまで来るのには随分苦労したが、今はそれのお蔭で強くなれたと思っているよ」
 ふーん、とあまり興味がなさそうに返事をする。
「そのひとたちにもじんせいがあったんだよね。それなのにころしちゃうなんてかわいそうだね」
「どれも人々を恐怖に陥れた奴らばかりだ。殺されても文句は言えん」
「でも、てーせうすがころさなくておせっきょうしてこころをいれかえたらまたちがうじんせいをあゆんでいたかもしれないよ?いのちってとてもはかないものなんだよ?そのいのちをうばうってことはぼくにはりかいできない」
 俺はその言葉にカチンときた。
「ッ!仕方がないだろ!俺を殺そうとしていたんだ!それと同じ目に遭わせてやったんだ!それは奴らにとって自業自得なんだ!何も知らない奴が知ったような口を利くな!」
「でも……」
「黙れ!」
 俺の怒鳴り声は大きなのアステリオスをビビらせていた。俺の体は小さいのにこんな巨人を怯えさせるほどの力を持っていたことに驚きだt。
 息を切らせながら俺はアステリオスに向かって怒鳴った。怒鳴った。怒鳴りまくった。
 しばらく怒鳴り続けて俺は我に返った。俺は一体何をしているんだ……。
 友人であるアステリオスに向かって怒鳴り、怯えさせている。あの大きな体を折りたたんで耳を塞ぐようにしている。
「て、てーせうす……。こわいよ……いつものてーせうすはどこにいったの……?」
 その声は震えていた。
 俺は自分自身がしたことを後悔して壁を思いっきり殴った。殴ったところが少しだけ凹んでいる。
「……すまない。お前は先に食堂に行っててくれ。俺は少し頭を冷やしてくる」
 部屋から出て行き、宮殿の外に出た。
 夜風が俺を撫でる。気持ち悪いほどに。
 俺は座って、アステリオスに言った言葉を思い出していた。
『何も知らない奴が知ったような口を利くな。黙れ』
 本当に何も知らない奴に向かって俺はなんてことを言っているんだ。あいつは本当に何も知らないんだ。世界も、人も、常識も。何もかも知らない。それを教えるのが俺の役目じゃないのか。
 ……どうやって謝ろうか。父上のように土下座でもするか。でも、その時あいつはそれでも俺を友として見てくれるのだろうか。
 しばらく座って頭を抱えていると頭の上を何かが触った。
 驚いて横を見るとアステリオスが立っていた。
「てーせうす。いっしょにごはんたべよう?」
「アステリオス……」
 俺は何て言ったらいいのかわからなかった。いつも通りに言えばいいのか、それとも……
 目線を下に戻して再び頭を抱える。
「ひとりでたべるごはん、おいしくない。てーせうすといっしょにたべるごはんがいちばんおいしいんだ。だから、ね?いっしょにたべよう?」
「俺は……もうお前と一緒に飯を食べる資格なんてない……。お前にひどいことを言ってしまった。友達を辞めてもらっても文句は言えないほどだ。俺は……自分の武勇伝を馬鹿にされたぐらいで友にひどいことをしてしまった……」
「ともだちにしかくなんているの?そんなしかくなんてぼくはもってないよ?」
 横にアステリオスが座った。
 それからしばらく無言の時間が流れた。お互い何も言わない。何も言えない。
 風の音が、俺たちの間を通り抜けていく。
「……てーせうす。ぼくは……あのくににかえったほうがいいのかな?」
「……止めてくれ。ここに、俺の横にいてくれ」
「だったらかおをあげてぼくをみて」
 俺はゆっくり顔を上げてアステリオスの目を見た。その目は赤く、そしてとてもまっすぐで……
 満面の笑みを俺に向ける。
「ぼくはてーせうすのよこにいるよ。ずっと。いつまでも。だからなかなおりのしるしとしていっしょにごはんたべようよ」
 俺の腹の虫が鳴る。
 こんな俺を見捨てないでくれるのか……。お前は本当に何も知らない、馬鹿だ。大馬鹿野郎だ。
 俺は口元が吊り上がって笑っている表情になったが、その頬には涙が流れた。その涙をアステリオスは指で拭ってくれた。
「そうだな。お前の言う通り仲直りの印として一緒に飯を食べよう。お前に悲しい思いはもうさせたくない。俺の最期はお前に看取ってもらうつもりだからな」
「てーせうすがしぬところなんてみたくないよ。ぼくのさいごはてーせうすにみてもらうんだから」
「なんだよそれ……」
 自然に笑いが出てきた。それにつられてアステリオスも笑った。その声は大きく、とても大きく、宮殿に響き渡り、見回りの兵士が様子を見に来るほどだった。
 散々笑った俺はアステリオスの手を握って、一緒に立ち上がった。そして一緒に食堂へと向かった。
「遅かったな。何をしていたのだ?」
 食堂では父上が待ちくたびれた顔をして頬を手に乗せていた。
「アステリオスと友情の確認をしていました」
「だろうな。笑い声がここまで聞こえていたわ」
 俺たちは席に着いて、運ばれてくる料理を待っていた。
 豪華ではないが一通り料理が並ぶと、俺たちはお互いの顔を見て、同時に飯に噛り付いた。
 やはり友と一緒に食べる飯は最高に美味い。この幸せが味わえるなんてアステリオスには感謝してもしたりない。
 アステリオスは口に運んで飯をゆっくり味わうように食べていた。俺と同じ気持ちだったのだろう。
 それを父上は微笑ましく見ていた。
 食事が終わり、俺たちは部屋に戻った。
「アステリオス、ありがとうな」
 俺は聞こえないように小さく感謝の言葉を言った。だが、それが聞こえていたのかアステリオスはうん、と言った。
 ベッドの上で横になり、目を閉じた。

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