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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第17話 語ろうか

 街ではアステリオスが注目の的になっている。
 珍しいものを見る目、怪物を見る目、色々な目でアステリオスを見てくる。でも、そんな目をされてもアステリオスは見てくる人たちに向かって手を振っていた。
「これからどこにいくの?」
「そうだな……。お前の恰好をどうにかしないといけないから、まずは呉服屋にでも行くか」
 今のアステリオスは腰布一枚だけだ。ほとんど裸と言ってもいい。それを何とかしないと。もうすぐ冬がやってくる。
 俺たちを避けて通る道に間が出来る。やっぱり、クレタ島のようにうまくいかないか。
 近くの呉服屋に行き、中に入った。
「いらっしゃい。今日は何の用だい?」
「こいつに似合う服を探しているんだが、作れるか?」
 アステリオスを招いて中に入れると、店の主人はまるで世界が終わったかのような顔をして驚いている。
 こいつは無害、誰も襲わないと言ったが、俺一人の言葉では信用出来ないようだ。手をガクガクと震えて接客してくる。
「こ、ここここちらででで、か、からだのすんんぽおおうをはかかかりまますのでで……おててつだいいできます……か?」
「そんなに怯えなくても……。だが、確かに一人では出来ないな。喜んで手伝ってやる」
 アステリオスの体の寸法を測る間、主人は手が震えてまともに出来なかった。代わりに俺とアステリオス自身で寸法を測った。
 寸法を測り終えて、金はいくらかかってもいいと伝えると出来るまでの日数を聞いて店から出た。
 店から出ると、周りは国民たちで囲まれていた。
 自然にため息が出てしまった。やれやれ、また信頼を得る為に活動しないといけないのか。
 俺が難しい顔をしている横でアステリオスは誰構わず、あそぼうと言った。
 皆、怯えて前に出てくるものはいなかった。好奇心旺盛な子供でさえ。この国ではミノタウロスと言う怪物が恐怖の象徴でしかなかった為、こうなるのは自然だろう。
 誰も遊んでくれる人がいないので、アステリオスはがっかりしていた。
 こいつをがっかりさせたくない、そう思い、俺はある行動に移った。
 周りいた子供たちの中の一人を無理矢理引きずってアステリオスの頭の上に乗せたのだ。多少強引だが引っ張る間、子供は泣きじゃくっていたが頭の上に乗った瞬間、安心したのか角を持って喜んでいる。
 それを見た子供たちは自分もしてほしいと言って少しずつ近づいて来た。
 いつの間にか俺たちの周りは子供でいっぱいだった。それを見たアステリオスは大きな手で子供たちを掴み、自分の肩に乗せた。
 遊ぶことが出来てこいつは本当に嬉しそうだ。よろこんでくれてうれしい、と言っている。
 子供たちの遊ぶ姿とアステリオスの笑顔を見た国民たちは一人、また一人とアステリオスの体を触って来た。強靭な筋肉の塊を触って、おお、と言っている。
 俺は人々に押されてアステリオスから離れてしまった。だが、今ならこいつ一人でも大丈夫だろう。民家の横にあった木材の上に座ってその光景を眺めていた。
 その光景はずっと見ていても飽きないものだった。人々が笑顔で、楽しく過ごす。これが、俺が求めていた光景だ。
 俺が今まで怪物と呼ばれるものを退治してきたのは人々の幸福を願ったものだからだ。だが、怪物にも喜びの顔をされると何だか今まで退治してきた怪物たちに申し訳ない気がする。でも、もう遅い。やってしまったものはしょうがない。怪物たちの為にもこいつには沢山の幸せを与えてやろう。
 遊びは日が暮れるまで続いた。
 太陽が隠れ、月が出てきて人々が自分の家に帰り、俺たちも宮殿に帰ることにした。
部屋でのんびりしていると父上がやってきた。
「国民たちと仲良くやっていたようだな」
「うん。とってもたのしかった」
「それはよかった。テーセウス、お前はまだこの国にいるのだろう?わしの手伝いをしてくれんか?」
「そう言うのは専門外です。あと数年したら手伝いますよ。それまではどうかご辛抱を」
 それを聞いて父上は出て行った。
「そういえば、てーせうすはおかあさんはいないの?」
「俺の母上はトロイゼーンと言うところにいるんだ。父上は母上とは別の女を妻にしたが、その女は俺を殺そうとした。それを逃れて父上に言って、俺はやっと父上に息子と認められたんだ。まあ、色々苦労はしたが、お前ほどじゃない」
 ふんふん、と興味ありそうに言ってくる。
 ちょうどいい。食事の時間までこいつに俺の昔話でもしてやるか。
「俺の話をしてやろう。これの武勇伝をな」

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