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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第16話 遊びたい

 アステリオスが目を覚ましたのは二日後だった。
 太陽が顔を出してしばらくしたところだ。
「ふわ~……」
 起き上がって欠伸をしている。
「おう、おはよう」
「おはよう、てーせうす」
「お前、丸二日もよく寝ていられるな。それだけ寝られるなんて羨ましいぜ。俺なんてすぐに目が覚めるものだからさ」
 丸二日、アステリオスは死んだように眠っていた。起こすのは可哀そうだと思ってそのままにしていたら二日も経っていたなんて驚きだ。
 目やにが付いた目を擦ってベッドから足を下ろす。
「よくねれた。こんなにねたのひさしぶり」
「体がデカいと睡眠もそれなりに必要になるのか?まあ、そこはどうでもいい。起きたなら父上がお前に謝りたいと言っているから父上を呼んでくるぞ」
 うん、と言って俺は父上を呼びに行った。
 父上はこの時間になっても寝ているようだ。普段はあまり睡眠を必要としない人がこんなに寝るなんて珍しい。何か病気か怪我でもしたのだろうか。
 俺は父上が起きるまで父上の寝室の前で待っていた。
 起きたのは俺が待つのに飽きてきた頃だった。
「テーセウス。こんなところで何をしている?」
「アステリオスが目を覚ましました。俺と一緒に来てあいつに直接謝罪の言葉を言ってください。あいつは気にしないと思いますが、形だけでも」
「そうだな。では行こうか」
 父上を後ろに連れて部屋に戻った。
 部屋に戻るとアステリオスは固まった体をほぐしていた。その間に父上を部屋に入れた。
「……アステリオス」
 その声を聞くとアステリオスはこっちを向いた。
「此度の非道な行い、すまなかった。王として、息子の友人として謝罪する。本当にすまなかった……!」
 床に手をついて土下座をした。額を思いっきり床に叩きつけてゴン、と言う音がした。それほどまでにアステリオスにしたことを悔やんでいるのだろう。俺はそれを止めなかった。
 アステリオスは父上に大きい足音を立てながらゆっくり近づいてくる。
 そして、父上の顔を指で上げると、笑顔にで、きにしてないよ、と言った。
「本当に……本当にすまなかった……!」
 父上の謝罪の言葉は止まらない。段々泣き声に聞こえてくる。だが、アステリオスはそれに対して丁寧に返事をする。
「きにしてない。てーせうすがぶじならそれでいいよ」
 アステリオスが父上を慰めるような形で謝罪は終わった。
 一国の王がここまでして謝ったのだ。それは最大級の謝罪だ。このことは誰にも知られてはいけない。俺と父上と、アステリオスの三人だけの秘密だ。
 朝食に誘われて、俺たちは食堂に行った。
 食堂の席に座るが、アステリオスの重い体重を支え切れずに椅子が壊れてしまった。急いで代わりになる石を持って来させて座った。
 運ばれてきた料理はまた豪華なものだった。朝からこんなにいらないのだが、アステリオスがいるから大丈夫だろう。
 アステリオスから腹の虫の音が聞こえる。俺と父上はそれに笑い、当の本人は何がおかしいのか理解出来ていないみたいだ。
 俺は自分の分を食べると残りはアステリオスにやることにした。
「いいの?」
「流石に朝からこんなにいらん。腹いっぱいだ。お前は丸二日寝ていたから腹が空いているだろう?気にしなくて思う存分食べろ」
 今度は嘘ではないと思ったのか、俺の言う事を素直に聞いて俺の分を受け取り、口の中に突っ込んだ。
 それにしてもよく食う。次々と運ばれてくる料理をほとんど一口で食べきるほどだ。見ているだけでさっき食べた飯が口から出てきそうだ。
 父上は自分の分を食べ終わった後、アステリオスの食べっぷりを関心するように見ている。
「アステリオス、食べ終わったらまたわしのところに来てくれ。大事な話がある」
 そう言い残し、父上は食堂から出て行った。
「なんのはなしだろ?」
 口をもごもごさせて喋る。
「さあな。お前を国民にでも紹介するんじゃないのか?盛大な祭りとしてな」
 いっぱいあそべたらいいね、と食事を再開した。
 食べ終わった頃にはこの宮殿の食糧庫の三割は食べたのではないかと言うぐらい、沢山の飯を食べて、腹が少し出ている。
 せっかくの威厳も台無しだな、と笑ってアステリオスの腹を叩いた。
 少し休憩して、俺たちは父上がいる王の間に行った。
「アステリオス、満足したか?」
「うん。おいしかったよ」
「それは何より。で、早速本題に入るが……」
 後ろの扉が開かれ、兵士たちが次々と入って来る。まさか、またアステリオスを捕まえる気じゃないだろうか!?
 身を構えて兵士たちを見る。
「待て待て。そんなことはもうせん。話と言うのは……アステリオスをこの国の兵士たちの将軍になってもらいたいのだ」
 急な話を言われて俺は固まった。アステリオスは将軍と言う単語が理解出来ていないようで頭を傾けている。
 アステリオスをこの国の将軍になってもらう。それは実質この国の争いごとは全てアステリオスが自由にしていいと言うことだ。そんな大事なことを何故急に?
 将軍と言う単語を説明してアステリオスは考える。
「ぼくは……あのくにでうまれたからどうせならあのくにのしょうぐんになりたいな」
「そうか。いい話だと思ったのだが、本人が拒否するのなら仕方がない。諦めるとしよう」
「でも父上!何故そんな話をアステリオスに!?」
「お前の友人として、そしてその強靭な肉体を持ったアステリオスにこの国を任せたいと思ったのだ。だが、アステリオスはミーノース王の元にいたいらしい。わしは、この国はミーノース王には逆らえん。仕方がない」
 話はそれだけですか、と父上に言うとそれだけだと言われたので俺たちは王の間から出て行った。
 部屋に戻り、何をしようかと悩んでいるとアステリオスはソワソワした様子で落ち着かない。
「ぼく、あそびたい」
 どうやらアステリオスはクレタ島にいた時と同じように子供たちと遊びたいらしい。純粋な心を持ったこいつにはそうさせてやりたいが。
「お前はまだこの国では怪物扱いされている。出来れば遊ばせてやりたいが、それはもう少し日が経ってからでないとな」
 残念そうに下を向いた。
 ……ここで時間を潰すのも飽きたところだ。
「アステリオス、街に行くぞ。お前の遊び相手が見つかるかもしれん」
 それを聞くと、さっきの表情とは変わって笑顔になった。よっぽど遊びたかったらしい。
 街に出る許可を貰いに父上に言いに行った。
 父上はアステリオスが街に行くことを許可してくれた。それを伝えて、俺たちは宮殿を出て街に行った。

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