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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第13話 試練

 それからどれだけの日が経ったのだろうか。太陽と月が見えないから時間の感覚が輪からない。
 兵が持ってくる食事の時間はバラバラだ。食事の量も少なかったり多かったりと。
 そろそろ食事の時間かを¥と思ったら、兵ではなく父上が食事を持って来た。
「……頭は冷えたか?」
「……」
「……食え。怪物に騙されているとは言えお前はわしの息子、この国の王子だ。死なれては困る」
「……」
「……そこまであのミノタウロスのことが心配か。ならばお前たちの友情とやらを見せてもらおう。衛兵」
 父上の後ろから来た二人の兵士が俺の拘束を解く。
 言われるがまま後を付いて行った。
 着いた場所は闘技場だった。会場は国民たちで賑わっている。片方の門から俺は中に入れられた。
 もう片方の門が開くと、その向こうからアステリオスが歩いて来た。
「アステリオス!」
「てーせうす……」
 俺は走ってアステリオスと抱き合った。
 久しぶりに会えた我が友よ。よくぞ生き延びてくれた……
 俺たちが感動の再会をしている間に最悪なことが起こった。
「テーセウス、ミノタウロス。お前たちにはこれから殺し合いをしてもらう」
 その一言はとても衝撃的だった。
 何故……何故俺たちが殺し合わなければいけないのだ……?
「どちらかが生き残ったほうだけが牢から出られる。ただし、二人とも戦意が無ければ、二人とも死んでもらう。これは冗談ではない。本気の試合だ」
 父上はそう言うと一番高い、特別な席に座った。
 その言葉を聞いた俺は汗が過剰に分泌されていた。
 殺さなければ二人とも殺される。でも、俺にはこいつを殺すことなんて出来ない……だとしたら残された道は……
「てーせうす」
 アステリオスは下を向いて俺を見ると。
「ぼくをころして」
 笑顔でそう言った。
 何言ってやがるこの馬鹿野郎。ここまで来て他人の心配なんかしてるんじゃねえよ。お前の体はもうボロボロじゃねえか。さっさと俺を殺してここから出て自由になれよ。
 二人とも何も出来ずにそのまま固まっていた。
 そのことに不満を持ったのか、王は立ち上がった。
「最後の言葉だ。殺し合え。でなければお前たち二人は死ぬのだぞ?」
 その言葉の返答はもう決まっている。だから俺は父上に向かってこう言う。
「アステリオスと共に死ねるのなら本望!アステリオスは俺を殺さないし、俺はアステリオスを殺さない。二人とも戦意はない。これでどうですか、父上?」
「てーせうす……」
「ふむ……」
 しばらく考えているようだ。自分の息子を怪物と一緒に殺すのだから。
 ああ、でもこいつと死ねるのなら本当に良い。あの世なんて信じちゃいないが、もしあるのなら今度こそこいつが嫌われない世界でありますように。そう願った。
 考えが終わったのか王はこちらを向いた。
「二人とも、その絆は確かに真のものであったと今証明された。今をもって二人を解放しろ!十分な食事、水、睡眠をとらせろ!」
 俺は最初、何を言っているのか理解できなかった。二人とも戦意が無ければ殺すと言ったのは他の誰でもない、父上だ。その父上が俺たちに……アステリオスに食事と睡眠をとらせてくれるなんて……
「これはお前たちを試す試練だった。テーセウス、お前の覚悟確かに見届けた。そしてミノタウロス……いや、アステリオスよ。すまなかった。あとで十分休息をとるが良い」
 そう言って父上は消えてしまった。
 周りにいた国民たちから歓声があがった。
 俺たちは……最初から騙されていたのか……?ここにいる国民たちもそれを理解して……?
 何が何だかわからないが、俺たちは助かったのか……?
「てーせうす、なにがおこったの?」
「俺にもよくわからん。でも、助かったらしいぞ」
 走って来た衛兵の肩を借り、俺とアステリオスはよろめきながらも闘技場を去った。
 案内された場所は客人に料理を振る舞う食堂だった。食堂には大量の飯と水が用意されていた。
 俺は一つ、手に取ってアステリオスに渡した。
「お前の方が腹減ってるだろ?食え」
 うん、と言ってアステリオスは少しずつ食べ始めた。俺も横で少しずつだが食べていた。
 急に胃に食べ物を与えると体に良くないと聞いたのだ。
 ゆっくり、ゆっくり。横にいる友と目を合わせて笑って食事をする。これほど幸せなことがあるだろうか。
 食べている途中で父上がやって来た。
「父上……」
「二人とも、己を犠牲にして友を助けるその精神、見事だった。アステリオスよ、今までの行い、許してくれとは言わん。だが、代わりにこの国の国民だけは襲わないでくれ。襲うならわしだけだ」
「おそうっていっても、ぼくひとをおそったことはないよ?」
「父上、最初からずっとそう言っていたじゃないですか。アステリオスは人を襲ったことがないと」
「確かに、あれを見れば納得した。アステリオスは人は襲わない。襲うつもりなら最初から牢を破っているだろう。詳しい話は後日しよう。今は食事を楽しめ。あとで給仕に部屋を用意させる。そこで気の済むまで寝るといい」
 そう言って父上は食堂を出て行った。
 俺たちは食事を再開した。
 全部の飯を平らげるとアステリオスの腹は珍しくポンポンに膨れていた。
 そして言われた部屋に行くとそこにはアステリオス用のベッドと俺のベッドがあった。
「これ……べっど?っていうんだよね?」
「ああ。こうやって寝転がって寝るんだ」
 ベッドの上で寝転がって腕を頭の後ろで組んでお手本を見せてやった。
 それを真似してアステリオスも同じ様に頭の後ろに手を組んだ。
「じめんより、きもちいいね」
「だろ?父上から許可は貰っているからもう寝ような。思う存分寝るぞ。おやすみな」
「おやすみ」
 俺は目を閉じて眠りについた。

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