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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第9話 帰還の準備

 翌日、目を覚ますと横にいたはずのアステリオスがいなくなっていた。
 俺は急いで探した。
 宮殿内にはいなかった。アステリオスがいなくなったことを悟られないように注意し、探した。
 街に出た。すると、アステリオスは子供たちと遊んでいた。
 良かった、無事で。
「アステリオス」
「あ、てーせうす」
 アステリオスは子供たちから離れると俺に申し訳なさそうに近づいて来た。指をくっつけたり離したりして。
「ごめん。あそびたくてここまできちゃった。てーせうすはねていたからおこしたらだめかなっておもって」
 遊びたいから勝手に宮殿を出ただと?そんな理由じゃ怒りたくても怒れない。
 俺は頭を抱えてため息を吐いた。
「……宮殿に戻るぞ。また今度遊べる時間を作ってやる」
 俺はアステリオスを連れて宮殿に帰った。帰る時にアステリオスは子供たちに手を振っていた。
 幸い、俺たちが宮殿を抜け出したことはバレていなかった。まるで泥棒のように部屋に戻り、毛布を被って寝ているように誤魔化した。
 給仕が朝飯を持って来た時には俺たちは話し合っているように見せた。
 今日の朝飯は小麦粉をこねた焼き物か。俺はあまり好きではないのだが、背に腹は代えられん。食うとしよう。
 アステリオスは一口でそれを食べると不満そうな顔をした。
「これ、おいしくない」
 そうだな、と言って俺はゆっくりとそれを食べた。
 衛兵に呼ばれて俺たちはまた王の前に行った。
 王は随分と早起きのようだ。俺の父上とは大違いだ。
「お前たちをこの国に置いておくのもいいがテーセウス、お前の父はお前のことを心配しているようだ。帰って顔を見せに行け」
「いいのですか?アステリオスは?」
「一緒に連れて帰れ。友人が出来たと正直に言えば誰も疑わないだろう。何せ遥か彼方の国ではアステリオスより大きい人間が存在したと聞く。それに比べればアステリオスほど無害な人間も可愛く見えよう。他の生贄たちと一緒に船に乗れ。船は太陽が頂点に来た時に出航する予定だ。それまで、街の子供と遊んでいけ」
「かしこましました」
 王に頭を下げ、アステリオスを連れて部屋から出て行った。
 部屋から出て行く際に衛兵の一人が王に向かって何かを話していたが俺はそれが聞こえなかったので無視した。
「……よろしいのですか、国王」
「構わん。テーセウスの父が発狂して反乱を起こすよりマシだ。それより、そっちの方はどうなっておる?」
「はっ、ただいま……」

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