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英雄アステリオス

しげぞうじいさん

第4話 慣れ

 アステリオスの体から流れる血を止めようとして俺は服を少しちぎって出血しているところを抑えようとしたが、それはいい、と言うので俺は止めた。見ると、自分の筋肉を膨張させて自分で出血を止めたのだ。人間技ではないことをこいつは簡単にする。
 もしかするとこいつは俺以上の英雄になるのではないだろうか。その前にまず王を説得することから始めないとな。
「アステリオス、俺についてこい。お前に人間と言うものを慣れさせないとな」
「わかった」
 素直に俺の後ろにピッタリとついてくる。
 この巨人を生贄たちが見たらどんな反応をするのだろうか。もしアステリオスの機嫌を損ねたら皆殺しにされる……なんてことはこいつに限ってはないか。
 来た道を戻って俺たちはラビリンスの入り口まで来た。
 遠くから見えていたのだろうか、生贄たちは土下座するように命乞いしている。
「これは……なにしているの?」
「気にするな。お前が怖いだけさ」
 こわい、とその言葉を反復して言っている。
 俺は生贄たちにアステリオスは自分たちを殺さない、無害な生き物だと告げると生贄たちは生き返ったようにはしゃいでいる。それどころか、アステリオスに握手まで求めてくる奴も出てきた。
 急に反応が変わったので驚いている。こういう反応すると面白いな。俺は笑みを浮かべた。
 もう街にまで帰るのも時間が遅いので俺たちはラビリンスの入り口で夜を明かすことにした。
 月明かりが俺たちを照らす。
「このひかりは……なんていうの?」
「これは月って言ってな。昼間見た太陽が隠れると出てくる不思議なものなんだ。なんで太陽が隠れると月が出てくるのか、誰もわからない。お前が最初に理解出来る奴になるかもな」
「つきと……たいよう」
 新しい単語を覚えるように何度も何度もその言葉を繰り返していた。
 生贄たちは緊張から抜けて疲れたのか、アステリオスの周りを囲って眠っている。さっきまでの人生を諦めたような顔はどうしたことか、皆幸せそうに眠っている。
 俺はアステリオスに色々なことを教えた。今見ているのは月以外にも星、そして夜空。疑問に思っていたことは全部教えた。
 そして夜が明けた。
 説明するのに夢中で俺は一睡もしていない。流石に眠いな。
 でも、今日はアステリオスを王に見せる記念すべき日だ。アステリオスが怪物ではなく、人間として人生を歩む、最初の日だ。
 俺が先頭に立ち、後ろに生贄たち、そしてアステリオスの順番で街まで戻った。
 街が近づくにつれてアステリオスは疑問に思っていることを言った。
「あれはなに?」
「あれは街だ。俺たちみたいな人間が大勢暮らしているところだ。お前を見たらきっと皆びっくりするぞ」
「あれはなに?」
「あれは川だ。俺たちが生きるのに欠かせない水が流れるところだ。お前もあの水を飲むことになるぞ」
 街の入り口に行くと、その近くにいた住人が大声を出して逃げて行った。
 俺はそんなことを構わずに街の中に進んでいった。
 街の人が家の中に隠れたり、物陰に隠れたりして身を守っている。アステリオスが怖くて怯えているのだろう。
 街の中心に行くと武装した兵がやって来た。
「我が名はテーセウス!怪物ミノタウロスを連れて戻って来た!生贄たちは無事だ!王に会わせろ!」
 兵たちがザワザワしている。
「てーせうす、だいじょうぶだよね?みんな、あのいたいものもっているけどだいじょうぶだよね?」
「心配するな。俺がお前を守ってやる」
 しばらくすると王が直々に街に下りてきて俺たちの前に現れた。
「……余はミノタウロスに殺されたと思っていたが、まさか味方につけるとはさすがは英雄テーセウスと言ったところか。街のものどももミノタウロスを見て怯えておる。ひとまず我が宮殿へ来い」
 そう言って王は宮殿へ帰って行った。
 兵たちはどうしたらいいのかわからず、戸惑っていた。
 兵たちをどかして、俺たちは王に付いて行った。
 宮殿に入る前に生贄たちは別の部屋を用意しているとかで別れた。
 門をくぐる時、アステリオスの顔が門に当たり、痛そうにしているところ笑うと少しむかついたのか顔を膨らませた。
 王の前に膝をつき、アステリオスも同じ様にするように言った。
「さて……ミノタウロス。いや、名前があるのだったな。名は?」
 アステリオスが自分を指さし、自分のことかと俺に尋ねてくる。俺は名乗るように言った。
「ぼくは……あすてりおすだよ」
「……そうか、アステリオス。お前はテーセウスの力に負け、従った……そう言うことでよいのか?」
「違います!アステリオスと俺は友人関係です!決して主従関係ではありません!そしてアステリオスは誰も殺していません!誰一人として!」
 ミーノース王はしばらく頭を抱えて考え始めた。俺たちは王の言葉が出てくるのを待っていた。
「誰一人……か。英雄の言葉なら本当だろう。そして主従関係ではなく友人……か。中々良い友を持ったな。わかった。アステリオスを我が国民として認めよう。衛兵、アステリオスとテーセウスい馳走を用意せよ。それと専用の部屋もだ。丁重に扱え」
 王はアステリオスを国民として認めてくれた。それはアステリオスに人生を与えると言ったも当然の言葉だ。
 俺は王に感謝の言葉を言い、衛兵に案内された部屋に行った。
「……まさか、あそこまで成長しているとは。いや、成長はおかしいか、精神は子供のままだな、アステリオス。我が息子よ」

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