貴方のためのカタストロフ
桃太郎 第1章 (6)
 黒く淀んだ闇の中で何かが蠢く。その様子は、子宮の中に抱かれる胎児にどこか似ている。
 何かを呟く声が聞こえる。
 何かを願う声が聞こえる。
 「これは……一体、何だ」
  ヌラリと、染み出す黒い影は、徐々に人間の形をとり始める。
「あははははっ! アハハハハッ! さぁ、こいッ! その女を喰らい尽くせ」
 闇に堕ちた桃太郎は狂ったように笑い続ける。
「何がそんなに楽しいのだ俺、何にも良くないじゃないか僕。」
 一人、ブツブツ呟き続ける桃太郎。
「哀れなものだな」
 最大限の哀れみを込めて緋鞠は言い放つが、哀れなのは桃太郎か、それとも緋鞠自身の事なのか自分でもわからない。
眼前から漂う腐臭、元人間だったであろう魑魅魍魎、これを今から相手にするのかと思うと辛いものがある。桃太郎を今は封じ込めれてはいるものの、呪術をいつまで保てるかはわからない… ああ、哀れだ。
 桃太郎の呪術により、顕現せし兵士を躊躇なく狩りにゆく。
 まず一匹。
────とりあえず狩れ、私。 そうしなければあの子は守れない。
 
 闇夜を駆け回り、軋む身体を機械的に動かすよう、自分に言い聞かせる。
 二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、七匹、八匹、九匹、十匹、十一匹………
 淡々と元人間を切り捨ててゆく。
「お姉さん、よくもそんなにポンポン切れるよね、凄い凄い」
 桃太郎の耳障りな声も溶けきらない内に元人間達は、恨めしげな声で叫ぶ。
「返セ、オレには妻も娘モ… アッ、アァァァァァ………」
「俺モだ… 返せッ! 返してくれェェェ………」
「────」
 嘆きも。
 痛みも。
 叫びも。
 訴えも。
 全てを飲み込み切り捨てる。
────私は唯、切り捨てるだけ、刀に身を任せて舞うだけで良い。
 他人の命の重みにすり潰される訳にはいかない。舞え、舞え、舞え、舞い続けろ。一瞬の痛みと永遠の安らぎを与えるために。
 そして私は殺した数を数えるのはやめた。
 痛む身体を引きずりながらも舞い続ける緋鞠。
                 
 大地に縫い付けられ取り残された桃太郎は緋鞠の姿を傀儡の様だと認識する。
 体に食い込むこの鎖は、徐々に緩んでゆく。
 ニィッと顔を歪め解術に取り掛かる。解術すると言っても物理的に壊すだけなのだが。
 無理くり動いてみるも、更に肉に食い込んで痛い。
 まぁ、解くのはもう少し後で良いか、手下の兵士を二匹、密かに呼び寄せ、傀儡の女性を愉悦に満ちた眼差しで見守る。
「御趣味ガ良い事デ御座いマスな」
「私メが、討ち取っテ参りましょうヵ?」
 主を呆れ顔で、見つめる鬼と、傀儡を│憤怒相で睨む鬼。
 どちらも強者だ。こいつらをよこせば、勝てるだろうが、それでは面白くない。こやつらの怨みをはらさなければ意味が無い。
 鬼を抑え再び傀儡に目を向ける。
 呪術の副作用の故か、全ての鬼の感情の波が押し寄せて来る。理性を吹き飛ばさせようと、鬼の血に従い欲を満たすまで暴れろと… 
 今、この血に身を任せて朝廷の人間を殺すのはどんなに気持ちが良いだろうか、あの日の栄光を取り戻した時に俺は笑っているのだろうか、相変わらず狂ったままなのか… 
火照る身体を押さえ込み傀儡を眺め続ける。
 何かを呟く声が聞こえる。
 何かを願う声が聞こえる。
 「これは……一体、何だ」
  ヌラリと、染み出す黒い影は、徐々に人間の形をとり始める。
「あははははっ! アハハハハッ! さぁ、こいッ! その女を喰らい尽くせ」
 闇に堕ちた桃太郎は狂ったように笑い続ける。
「何がそんなに楽しいのだ俺、何にも良くないじゃないか僕。」
 一人、ブツブツ呟き続ける桃太郎。
「哀れなものだな」
 最大限の哀れみを込めて緋鞠は言い放つが、哀れなのは桃太郎か、それとも緋鞠自身の事なのか自分でもわからない。
眼前から漂う腐臭、元人間だったであろう魑魅魍魎、これを今から相手にするのかと思うと辛いものがある。桃太郎を今は封じ込めれてはいるものの、呪術をいつまで保てるかはわからない… ああ、哀れだ。
 桃太郎の呪術により、顕現せし兵士を躊躇なく狩りにゆく。
 まず一匹。
────とりあえず狩れ、私。 そうしなければあの子は守れない。
 
 闇夜を駆け回り、軋む身体を機械的に動かすよう、自分に言い聞かせる。
 二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、七匹、八匹、九匹、十匹、十一匹………
 淡々と元人間を切り捨ててゆく。
「お姉さん、よくもそんなにポンポン切れるよね、凄い凄い」
 桃太郎の耳障りな声も溶けきらない内に元人間達は、恨めしげな声で叫ぶ。
「返セ、オレには妻も娘モ… アッ、アァァァァァ………」
「俺モだ… 返せッ! 返してくれェェェ………」
「────」
 嘆きも。
 痛みも。
 叫びも。
 訴えも。
 全てを飲み込み切り捨てる。
────私は唯、切り捨てるだけ、刀に身を任せて舞うだけで良い。
 他人の命の重みにすり潰される訳にはいかない。舞え、舞え、舞え、舞い続けろ。一瞬の痛みと永遠の安らぎを与えるために。
 そして私は殺した数を数えるのはやめた。
 痛む身体を引きずりながらも舞い続ける緋鞠。
                 
 大地に縫い付けられ取り残された桃太郎は緋鞠の姿を傀儡の様だと認識する。
 体に食い込むこの鎖は、徐々に緩んでゆく。
 ニィッと顔を歪め解術に取り掛かる。解術すると言っても物理的に壊すだけなのだが。
 無理くり動いてみるも、更に肉に食い込んで痛い。
 まぁ、解くのはもう少し後で良いか、手下の兵士を二匹、密かに呼び寄せ、傀儡の女性を愉悦に満ちた眼差しで見守る。
「御趣味ガ良い事デ御座いマスな」
「私メが、討ち取っテ参りましょうヵ?」
 主を呆れ顔で、見つめる鬼と、傀儡を│憤怒相で睨む鬼。
 どちらも強者だ。こいつらをよこせば、勝てるだろうが、それでは面白くない。こやつらの怨みをはらさなければ意味が無い。
 鬼を抑え再び傀儡に目を向ける。
 呪術の副作用の故か、全ての鬼の感情の波が押し寄せて来る。理性を吹き飛ばさせようと、鬼の血に従い欲を満たすまで暴れろと… 
 今、この血に身を任せて朝廷の人間を殺すのはどんなに気持ちが良いだろうか、あの日の栄光を取り戻した時に俺は笑っているのだろうか、相変わらず狂ったままなのか… 
火照る身体を押さえ込み傀儡を眺め続ける。
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