貴方のためのカタストロフ
桃太郎 序章
 「お願いです、お願いですから、僕を、僕達という物語を消して下さい。お願いです… 貴方が物語消しの君なのでしょう?」
  嗚咽が混じり、苦しげに顔を歪めた黒髪の少年の声は、何処か懐かしく私の胸を締めつける。
 ────私はこの子を消さねばならぬ、この子も又、罪深き物語… だが、余りにも幼過ぎやしないか。
  私の使命は物語の消却。 私達、物語は人々に忘れ去られない限り、この世をさ迷い続ける。
  私達には、俗に言う、[死]と言う概念が存在しない。 一応、肉体は滅ぶが、私達は新しい肉体を与えられ、多少記憶は失うが、この世にまた縛り付けられる。
  私達は決して消えることのできない、過去の産物であり人間の紛い物だった。
  だが今は違う! あの御方は私達に確かに死を下さった! もう迷いはない。硬く拳を握りしめ、私達は誓う。
 「君に死を与えよう。恐がらなくて良い、苦しまなくて良い、君を縛り、苦しめる物語と言う名の鎖を断ち切ってやる。泣かないで。 死は、今まで苦しんだ君への、神様からのご褒美なんだから。」
  何度も何度も何度も頷き。この紅と黒で彩られた地獄の様な禍々しい雰囲気の部屋の隅で、確かに少年は笑っていた。
  頬に涙を伝わせながら、幸せそうに笑っていた。
  そこから私の作業は速やかに行われた。
  1ヶ月後、この黒髪の美しい少年の物語は人々に忘れ去られるだろう。
  この少年に、神の御加護のあらんことを。
  嗚咽が混じり、苦しげに顔を歪めた黒髪の少年の声は、何処か懐かしく私の胸を締めつける。
 ────私はこの子を消さねばならぬ、この子も又、罪深き物語… だが、余りにも幼過ぎやしないか。
  私の使命は物語の消却。 私達、物語は人々に忘れ去られない限り、この世をさ迷い続ける。
  私達には、俗に言う、[死]と言う概念が存在しない。 一応、肉体は滅ぶが、私達は新しい肉体を与えられ、多少記憶は失うが、この世にまた縛り付けられる。
  私達は決して消えることのできない、過去の産物であり人間の紛い物だった。
  だが今は違う! あの御方は私達に確かに死を下さった! もう迷いはない。硬く拳を握りしめ、私達は誓う。
 「君に死を与えよう。恐がらなくて良い、苦しまなくて良い、君を縛り、苦しめる物語と言う名の鎖を断ち切ってやる。泣かないで。 死は、今まで苦しんだ君への、神様からのご褒美なんだから。」
  何度も何度も何度も頷き。この紅と黒で彩られた地獄の様な禍々しい雰囲気の部屋の隅で、確かに少年は笑っていた。
  頬に涙を伝わせながら、幸せそうに笑っていた。
  そこから私の作業は速やかに行われた。
  1ヶ月後、この黒髪の美しい少年の物語は人々に忘れ去られるだろう。
  この少年に、神の御加護のあらんことを。
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