転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。

深谷シロ

20ページ目「されど僕は驚愕する」

「奥が見えたわ!」


飛んでいるエレナが伝えた。ここまでの道のりが長かった。ここまで1週間が経過している。


薙ぎ倒しつつ走っては休み、また薙ぎ倒しつつ走っては休む────の連続だ。精神的にも限界が近い。


この報告に僕達は皆、安堵のあまり溜息が漏れた。


「あと、どれくらいの距離?」
「約100m。目の前よ。」


いつの間にか奥が見えていたとは……。周囲はスケルトンだらけで地上を走る、僕やリルには奥までの距離が分からない。


飛んでいるエレナや身体が大きいガリメデルスを確認できるのみだ。


思い返すと1週間大変だった。


序盤のスケルトン&骸骨兵士スケルトンソルジャーは、出発して10kmほど出現し続けた。


10kmを超えると骸骨系モンスターの骸骨兵士スケルトンソルジャーの派生種である骸骨軍隊スケルトンアーミーが出現した。


このスケルトンは1回の召喚で約100体の骸骨兵士スケルトンソルジャーが出現する。


それが数万回召喚されたから……数百万体と戦ったわけだ。


しかし、召喚コストが高かったのだろう。途中から骸骨軍団スケルトンアーミーは、全く出現しなくなった。


次に出現を始めたのが、骸骨将軍スケルトンジェネラルだ。骸骨兵士スケルトンソルジャーの数倍の知能を持ち、的確な攻撃、回避をする。さらに攻撃力、耐久力も急上昇し、手強くなった。


────〈光属性〉で一瞬だけど。


その後は骸骨兵士スケルトンソルジャー骸骨将軍スケルトンジェネラルで構成された本当の軍隊が幾重も連なっていた。勿論、僕達が進む方向に、だ。


統率の取れた軍隊に度々、足止めされたが、お返しとばかりにこちらもチームワークで乗り切った。さほど疲れてはいない。


そして、他にもバリエーションは沢山あった。


……巨大骸骨ジャイアントスケルトン餓者髑髏がしゃどくろ骸骨騎士スケルトンナイト鳥型骸骨バードスケルトン猛毒骸骨ポイズンスケルトンetc……


もう、騒然を通り越してまさに混沌カオスだった。


思い返してみると苦笑いが出てくるな……ハハハ。


「変な顔して、タクトどうしたの?」
「あ、いや、何でもないよ?」
「ふーん。」


信じてない顔だ。いや、僕も嘘だけどさ。


「まあ、奥が見えたし、急ごうか。さっさとあのガイコツ殺戮骸骨倒したいし。」
「分かった。」


あ、リルの歩みが早くなった。リルなんてまだ力の10%も出していないんだろうな……。僕も強くなりたいよ。


「よーし、ラストスパート頑張るぞー!」


「「オー!」」と返事が返ってくる。うむ、良い返事だ。


光槍ライトジャベリン】×100で僕も頑張ろう。【飛剣燦爛ブライトビット】は、影ができたからな……。影が出来ない魔法を思い出すのに何日か掛かったよ……。


だけど、考えた分だけ成果は大きい。意外とこちらの方が使い易かったりする。もっと早く見つければ良かった。


「【光槍ライトジャベリンよ、光を纏え】。」


この詠唱によって、【光槍ライトジャベリン】に〈光属性〉補正が付いた。魔法は意外と作れるのか?


「……その魔法ナニ?」


リルが語尾を強めて聞いてきた。正直に答える。


「なんとなーく改造してみた。」


リルの呆れ顔が目に入る。もしや、この世界では珍しい事象なのか?まあ、いいや。


「【光纏いし光槍ライトジャベリンよ、敵を殲滅せよ】。」


完成していない魔法には詠唱が必要のようだ。ハーメリアルで僕が買った中に『魔法原理』という本があった。


この本で僕は魔法の原理について学んだのだ。魔法は魔素を魔法エネルギーに変換することで発動するが、その過程を精霊が担っていると言われている。


魔法研究家らが考えるには、魔法詠唱とは精霊に呼び掛けるものであるそうだ。よって精霊に呼び掛ければ、如何なる魔法詠唱であっても良いのではないか?僕はそう思ったのだ。


そこで今、試した訳だ。


『魔導神より〈称号:魔法発明家〉、〈スキル:魔法開発〉、〈スキル:魔法改造〉を手に入れました。』


〈万能〉スキルさんである。どうやら魔導神様が授けて下さったようだ。


「……【光槍+ライトジャベリンプラス】。」


ネーミングセンスについては無視して頂きたい。光マシマシの【光槍】だ。勿論、光が出現している。意味なかった……。


「………………オラァ!」


苦し紛れに全力で放った。スケルトンらがカタカタと骨を鳴らしつつ成仏した────あれ?


「「あれ?」」


決して僕の魔法のせいではないのだが、スケルトンが出現しなくなった。スケルトンだけではない。他の骸骨兵士スケルトンソルジャー骸骨将軍スケルトンジェネラルなどもだ。


何が起こったのだろうか。


「タクト、とにかくガイコツ殺戮骸骨を見つけない?」
「そうだね、エレナ先に行って見てきてくれる?」
「分かったわ。」


エレナが引き続き飛んで行った。そして、すぐに戻ってきた。


ガイコツ殺戮骸骨がいないわ!」
「「は?」」


まさか……


ガイコツ殺戮骸骨がいなくなったから……スケルトンが召喚されなくなった……?」
「じゃあ、ガイコツ殺戮骸骨はどこに?」
「……多分、僕達が寝ていた時だ。それ以外考えられない。」


ガイコツ殺戮骸骨がいなくなったら僕達はどうするんだ?


「……そして、もう1つ報告があるわ。」
「これ以上、悪いことがあるのか?」
「……ええ。この空間は拡張し続けているわ。」


その通りであった。この空間……〈死者の花園〉は、巨大な地下空間であり、永遠に広がる空間であった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品