転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。

深谷シロ

14ページ目「されど僕は気配を辿る」

僕達は盗賊のアジトにいる。


「エレナそっちー。」
「分かった。」


エレナが横から襲ってきた盗賊の男を魔法で吹き飛ばした。


僕達は今、何をしているのか。簡単な話だ。野宿をしている時に盗賊が襲って来た。その全員を返り討ちにして、アジトへ連れて行かせた。その後、アジトにいる盗賊全員を倒している。


何故、こんな面倒な事をするのか。保有地として得るためだ。この世界では建物の1つ1つが保有地の扱いをされる。よって、保有権利を奪い、保有者となれば、盗賊のアジトに盗賊が入れないようにすることも可能なのだ。それが狙いである。


「複数人で囲め!!」
「「おう!」」


この盗賊達は意外と賢い。質より量作戦か。だけどそれぐらいの脳しかないのかな?ガッカリだよ。


「【暴風ストーム】。」


僕とリルとエレナを囲うようにして、魔法を展開した。これで相手からの攻撃は一切当たらないし、ましてや近づくことすらできない。さらにこちらは、暴風を使った攻撃をする事ができる。量より質作戦が勝ったようだ。残念だったね。


あらかた盗賊を片付けた所で〈万能〉スキルが発動した。


『この建物を保有しますか?』


すぐさま『YES』を選択。その後に〈保有地管理〉スキルを使って、盗賊を建物外に追い出す。そして、盗賊が入れないようにしておく。これで安心だ。もうこの建物に用はない。サラバ!


このアジトで既に5つ目。僕は新たに保有地を5つ得たことになる。どれも要らないが。そろそろ盗賊が根絶やしにされないかな。もう、ウンザリだよ。


『〈スキル:保有地管理〉のスキルレベルが上昇しました。スキルレベルが6から7になりました。』


だそうだ。使い続けたからだろうね。〈収納〉スキルももう少しでスキルレベルが10だし、これも10になるまではそう遠くないだろう。

「じゃあ、帰ろうか。」


帰りがけに盗賊達の武器や道具などを全て奪う。再び襲いに来るのを危惧しての事だ。襲ってきてもまた、返り討ちにするだけだけど。



僕達は野宿場所へ帰った。因みに未だに1日目の野宿地点から移動していない。立て続けに盗賊が襲ってきているのだ。もしかしたら、ここらの盗賊は何らかのネットワークを構築しているのかもしれない。次にあった盗賊に聞いてみるのも良いかもね。


そろそろ次の地点に移ろうとして、リルとエレナに話し掛けようとした時。新たなだ。有難迷惑だけど。


「おらおら!金出せ!道具寄越せ!」
「良いですよ」
「じゃあ、さっさと出せや!」
「────と、言うとでも思ったか盗賊。【苦痛地獄ペインフェスティバル】。」


苦痛地獄ペインフェスティバル】。日本語と英語の意味が全く一致していない〈精神魔法〉だ。勿論〈闇属性〉である。僕は〈闇属性強化〉レベル10を持っているため、僕の使う〈闇属性〉の魔法は効果が倍以上に上がる。盗賊達は苦痛に涙していた。


「タクト残酷……。」
「何か言った?」
「……いや、何も。」


僕はリルが残酷と言ったことなんて聞いてないさ。そう、聞いてないんだ。


「死にたくなければ、アジトまで案内しろ。」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
「血祭りにされたいか?」
「……はぁ、はぁ、分か、った。あ、んない……する。そ、こに、ボス、が、いる……から。」
「分かった。【解除キャンセル】。」


苦痛地獄ペインフェスティバル】を解除した。盗賊達は苦痛に顔を顰めていた。但し、今は痛みがある訳ではない。痛みがあった感覚・・・・・・・・に体が苦痛を覚えているのだ。この魔法は解除後にも多大な効果を与える。危険な魔法であるが、それだけの事をしている盗賊が悪い。


盗賊達は自分の体を抱えるようにして、歩き出した。別に遅いなどと言って、また魔法を発動させたりするほど僕も鬼ではない。


『〈称号:鬼神の素質を持つ者〉を得ました。よって〈スキル:身体強化〉を得ました。スキルレベルが10になりました。』


……うるさい。まさか神様にそう認められるとは。鬼神って神様もいるんだな。世界って広いね。世界樹の頂点で神様と対面できるかな。まあ、スキルは嬉しいけどね。身体強化か……。敏捷性を高めたいな。攻撃が当てやすくなるし。


「こ、ここだ。」
「ご苦労さま。」
「じゃ、じゃあ……」
「……【焼失バーニング】。」
「「ギャァァァァァアァ!!!」」
「【無音サイレント】。」
「「……」」


盗賊達を〈炎属性〉の【焼失バーニング】で燃やした。声も煩かったので〈風属性〉の【無音サイレント】を使った。二人の白けた目線が痛い。


「じゃ、じゃあ行こうか。」
「……最近、タクトの事が怖くなってきた。」
「慎みます。」
「宜しい。」


僕も思うよ。最近、リルが怖くなってきたよ。尻に敷かれるってこういう事かな?反論も出来ずに即答だったよ。


僕達3人はアジト内に入った。……なんか変だ。


「……人がいない?」


そうだ。人が全くいない。声も聞こえないし、足音も聞こえない。気配すらも。アジトがもぬけの殻だ。だが、盗賊の1人がボスの事を言っていたぞ。嘘はないだろう。聞き直そうかと思ったけど……。まあ、しょうがない。これからは人徳的に生きよう。僕も罪悪感が残るからね。


「……いや、奥に人がいる?」


僕は微かな気配を察知した。近くではないが、遠くもない。だが、明らかに気配を殺している。手練だろう。


「こちらも気配を殺していこう。」


この3人で最も弱いのは僕だ。僕が気配を殺せる、という事は他の2人は勿論、気配を殺せる。男として恥ずかしいよ。


アジトの通路は長く、薄暗かった。物音1つしない暗い通路を歩く度に心が沈むのような感じがする。何なんだ……この感じ。気分は良くない。我慢するしかないか。


「……ここだ。」


通路を奥まで進むと1つの部屋があった。他に部屋がある訳では無い。ここだけだ。怪しい雰囲気が漂っている。


「入るよ……。」
「うん。」「ええ。」


僕は扉を勢いよく開いた。と、同時に僕達は中へ押し入った。追い出されるのを危惧してだ。相手に有利となる条件を作り出してはいけない。冒険者の鉄則だ。


僕達の前には一つの机と椅子が。そして、1人の人が座っていた。しかし、目の前にいたのは単位は『人』なのか。ましてや、人なのかすら疑わしい存在であった。


……殺戮骸骨ジェノサイドスケルトン。それが目の前にいた。冒険者ギルド内、レートSSの危険指定魔物。最悪の敵が……僕らを待っていたかのように目の前の席に座っていた。

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