転移してのんびり異世界ライフを楽しみます。
11ページ目「ゆえに僕は達成した」
ハーメリアルの郊外にある森。その森は『深森』と呼ばれ、その森の奥には屋敷があるという。
これだけを聞けば、森自体が誰かの所有地だからだと思うだろう。確かにその可能性もあるが、この屋敷はそれだけではないのだ。屋敷にはある1つの噂がある。その噂とは……
『深森の屋敷には幽霊が出る』
深森の奥のその屋敷に入った者は、二度と帰ってこないと言うのだ。実際、ハーメリアルのギルドの依頼にてその屋敷の捜索依頼が何年も出ている。しかし、その依頼の達成者はゼロだった。依頼を諦めた冒険者もゼロだった。要するに依頼を受けた冒険者は本当に1人も帰ってきてないのだ。
そんな依頼を僕とリルは受けることにした。僕とリルは今、その屋敷にいる。
「君は……『森姫』エレナ?」
「そうよ。私はこの森を守る姫のエレナ。」
エレナを名乗る女性は森人族であった。本来、エルフは森の主である。このエルフもその1人だ。話をつけるとするか。
「僕はギルドの依頼でここにいるんだ。この屋敷の調査だね。」
「……そうなの。」
「君はここの保有者だね?」
「……え、ええ。」
何故、その情報を知っているのかと聞きたいのだろう。だけど教えてあげる義理はない。
「そして、君が幽霊の正体だね。」
「……違うわ。」
「……そう、か。それだったら早く逃げるんだ。この森の幽霊討伐依頼が発注されている。近々、大魔法使いの1人がここに来る予定だよ。森ごと破壊するつもりだよ。幽霊もろとも、ね。」
「……!?」
カマかけは成功したようだ。わざわざ幽霊の真似事をしてまで、冒険者を近づけたくないという事は、ここに何かがあるのだろう。まあ、森ごと破壊するとか言われたら誰でも驚くかもしれないけど。
「どうしたの?焦っているみたいだけど。」
「……な、何のこと。」
「もう少し、声を落ち着かせないと。」
だがまだ犯人だと決まった訳では無い。こちらの面子もあるため、濡れ衣を被せることはしてはいけない。まあ、魔法を使えば一発だからそれを使うけど。
「【暴露】。」
「……クッ。」
抵抗しているのだろう。極一部の魔法を除いて、大抵の魔法は抵抗することが出来る。正確には心体に影響する魔法のみだが。【暴露】は〈無属性〉の〈干渉魔法〉に位置する。だから抵抗が可能なのだ。……しかし、レベル差が開きすぎていた。タクトのレベルは85。勝てる筈がなかった。
「君は幽霊の正体だね。」
「……ええ。」
【暴露】の効果は確かなようだ。あまり使いたくない魔法だけど今回は仕方がない。使わせてもらおう。
「どうして幽霊の真似事なんてしたんだ?」
「……この屋敷にあるあれを守るため。」
「それはどんな物なんだい?」
「……『神の祝福』。」
『神の祝福』。使用した者に無条件でスキルを与える神器の1つ。……と〈情報〉スキルに載っていた。与えられるスキルはランダムらしい。それは残念な事だ。スキルが被る可能性が……あ、いや無いのか。すかさず情報を教えてくれる〈情報〉スキルは凄いね。
「そうなのか……。僕は別に要らないんだけど……リルはいる?」
「いらないよ?」
「……と、言うことだ。【暴露】も解除した。君はどうする?」
「私は……。」
そう言われても思い付かないだろう。取り敢えずギルドに嘘の報告だけはしておくか。
「まあ、いいや。ギルドには嘘の報告をしておくよ。魔物が住んでいたってね。」
「……何でそんな事してくれるの。」
「不服だった。」
「違うけど。普通だったら倒そうとしてもおかしくないのに。」
「見るからに怪しいからね。」
エレナはフードを深く被っている。第一印象は怪しい森人族だろう。倒そうとする人もいるかもね。
「別にそんなことしたって意味無いじゃないか。」
「……」
「じゃあ、リル帰ろっか。」
「うん。」
僕とリルはエレナに背を向けた。嘘のつもりは無い。本当に帰る。そして、今後も近寄らないだろう。その存在を悟られないためにも。
「待って!」
「……どうしたの?」
危害を加えないから止めるようもないはずだ。どうしたというのだろう。
「……私はこんな寂しい屋敷で1人で暮らしたくない。」
どうやらエレナは話を始めるらしい。僕はそちらを向き直った。それを目で確認したエレナはポツリポツリと語っていった。自分のこと。この屋敷のこと。神器のこと。ここでの暮らしのこと。静かに自分の事を話してくれた。
エレナは森人族の1つの部族の長の娘であるそうだ。母親はハイエルフらしい。現在は130歳。地球での年齢に直すと260歳だ。エルフが大人になるのは300歳を超える必要があるらしい。要するにこちらの世界での150歳を超えれば良い。
エレナはとある事件があって、部族が住んでいた村を出たらしい。旅を始めたそうだ。色んな国を回って20年。この地に着いたらしい。定住地を見つけていたエレナはここに住むことを即決したらしい。そして、保有者になったのだ。
神器を見つけたのは偶然らしい。ここに住んでいた時にある人間がここで息絶えた時に貰ったそうだ。あまりの代物に使うことも出来ず、取られるわけにもいかない代物のため、守る事に決めたらしい。
「……ということなの。」
「それで?」
「え……?」
「君は……どうしたいんだ?」
これは僕から提案することでは無い。自分で決めなくては意味が無いだろう。エレナは悩んでいた。恐らく神器の事があるのだろう。それにこの屋敷の事も。仕方がない。1つ提案をするか。
「……因みに僕には〈収納〉スキルがあって、神器を誰にも奪われずに保管しておくことが出来るよ。」
横でリルがヒューと口笛を吹いた。僕の意図することが分かったのだろう。流石、竜族だ。
「……一緒に旅がしたいです。」
「なんて言ったの?」
「タクト、聞こえなかったとか言うの?サイテー。」
「いや、ごめん。普通に聞こえなかったんだ。」
「あ……はい。一緒に旅をしたいです。」
「うん、いいよ。」
僕は頷いた。先程聞こえなかったのは断じて嘘ではない。本当なのだ。考え事をしていたのが不幸した。
僕の返事を受けたエレナはフードを脱いだ。そして、その下に隠されていた美貌が顕になった。その美貌に思わず僕とリルは息を呑んでいた。
「綺麗……。」
「?そうでしょうか。私の部族には私とあまり変わらない顔のエルフもいますよ?」
「あぁ……森人族自体が綺麗な外見をしているんだね。」
本当にこんな美人と旅をしていいのだろうか。既に美少女のリルもいるけど。まあ……いいか。どうにでもなれ!
「じゃあ、帰ろうか。」
「「はい!」」
エレナが新しい仲間として加わった僕達は、宿へと帰った。ギルドへは魔物の仕業だったと報告。疑われていたが青色冒険者の言うことだったからか信用してもらえた。有難いことだ。
「改めてよろしく、タクト。」
「よろしく、エレナ。」
僕達の旅はさらに楽しくなりそうだ。
これだけを聞けば、森自体が誰かの所有地だからだと思うだろう。確かにその可能性もあるが、この屋敷はそれだけではないのだ。屋敷にはある1つの噂がある。その噂とは……
『深森の屋敷には幽霊が出る』
深森の奥のその屋敷に入った者は、二度と帰ってこないと言うのだ。実際、ハーメリアルのギルドの依頼にてその屋敷の捜索依頼が何年も出ている。しかし、その依頼の達成者はゼロだった。依頼を諦めた冒険者もゼロだった。要するに依頼を受けた冒険者は本当に1人も帰ってきてないのだ。
そんな依頼を僕とリルは受けることにした。僕とリルは今、その屋敷にいる。
「君は……『森姫』エレナ?」
「そうよ。私はこの森を守る姫のエレナ。」
エレナを名乗る女性は森人族であった。本来、エルフは森の主である。このエルフもその1人だ。話をつけるとするか。
「僕はギルドの依頼でここにいるんだ。この屋敷の調査だね。」
「……そうなの。」
「君はここの保有者だね?」
「……え、ええ。」
何故、その情報を知っているのかと聞きたいのだろう。だけど教えてあげる義理はない。
「そして、君が幽霊の正体だね。」
「……違うわ。」
「……そう、か。それだったら早く逃げるんだ。この森の幽霊討伐依頼が発注されている。近々、大魔法使いの1人がここに来る予定だよ。森ごと破壊するつもりだよ。幽霊もろとも、ね。」
「……!?」
カマかけは成功したようだ。わざわざ幽霊の真似事をしてまで、冒険者を近づけたくないという事は、ここに何かがあるのだろう。まあ、森ごと破壊するとか言われたら誰でも驚くかもしれないけど。
「どうしたの?焦っているみたいだけど。」
「……な、何のこと。」
「もう少し、声を落ち着かせないと。」
だがまだ犯人だと決まった訳では無い。こちらの面子もあるため、濡れ衣を被せることはしてはいけない。まあ、魔法を使えば一発だからそれを使うけど。
「【暴露】。」
「……クッ。」
抵抗しているのだろう。極一部の魔法を除いて、大抵の魔法は抵抗することが出来る。正確には心体に影響する魔法のみだが。【暴露】は〈無属性〉の〈干渉魔法〉に位置する。だから抵抗が可能なのだ。……しかし、レベル差が開きすぎていた。タクトのレベルは85。勝てる筈がなかった。
「君は幽霊の正体だね。」
「……ええ。」
【暴露】の効果は確かなようだ。あまり使いたくない魔法だけど今回は仕方がない。使わせてもらおう。
「どうして幽霊の真似事なんてしたんだ?」
「……この屋敷にあるあれを守るため。」
「それはどんな物なんだい?」
「……『神の祝福』。」
『神の祝福』。使用した者に無条件でスキルを与える神器の1つ。……と〈情報〉スキルに載っていた。与えられるスキルはランダムらしい。それは残念な事だ。スキルが被る可能性が……あ、いや無いのか。すかさず情報を教えてくれる〈情報〉スキルは凄いね。
「そうなのか……。僕は別に要らないんだけど……リルはいる?」
「いらないよ?」
「……と、言うことだ。【暴露】も解除した。君はどうする?」
「私は……。」
そう言われても思い付かないだろう。取り敢えずギルドに嘘の報告だけはしておくか。
「まあ、いいや。ギルドには嘘の報告をしておくよ。魔物が住んでいたってね。」
「……何でそんな事してくれるの。」
「不服だった。」
「違うけど。普通だったら倒そうとしてもおかしくないのに。」
「見るからに怪しいからね。」
エレナはフードを深く被っている。第一印象は怪しい森人族だろう。倒そうとする人もいるかもね。
「別にそんなことしたって意味無いじゃないか。」
「……」
「じゃあ、リル帰ろっか。」
「うん。」
僕とリルはエレナに背を向けた。嘘のつもりは無い。本当に帰る。そして、今後も近寄らないだろう。その存在を悟られないためにも。
「待って!」
「……どうしたの?」
危害を加えないから止めるようもないはずだ。どうしたというのだろう。
「……私はこんな寂しい屋敷で1人で暮らしたくない。」
どうやらエレナは話を始めるらしい。僕はそちらを向き直った。それを目で確認したエレナはポツリポツリと語っていった。自分のこと。この屋敷のこと。神器のこと。ここでの暮らしのこと。静かに自分の事を話してくれた。
エレナは森人族の1つの部族の長の娘であるそうだ。母親はハイエルフらしい。現在は130歳。地球での年齢に直すと260歳だ。エルフが大人になるのは300歳を超える必要があるらしい。要するにこちらの世界での150歳を超えれば良い。
エレナはとある事件があって、部族が住んでいた村を出たらしい。旅を始めたそうだ。色んな国を回って20年。この地に着いたらしい。定住地を見つけていたエレナはここに住むことを即決したらしい。そして、保有者になったのだ。
神器を見つけたのは偶然らしい。ここに住んでいた時にある人間がここで息絶えた時に貰ったそうだ。あまりの代物に使うことも出来ず、取られるわけにもいかない代物のため、守る事に決めたらしい。
「……ということなの。」
「それで?」
「え……?」
「君は……どうしたいんだ?」
これは僕から提案することでは無い。自分で決めなくては意味が無いだろう。エレナは悩んでいた。恐らく神器の事があるのだろう。それにこの屋敷の事も。仕方がない。1つ提案をするか。
「……因みに僕には〈収納〉スキルがあって、神器を誰にも奪われずに保管しておくことが出来るよ。」
横でリルがヒューと口笛を吹いた。僕の意図することが分かったのだろう。流石、竜族だ。
「……一緒に旅がしたいです。」
「なんて言ったの?」
「タクト、聞こえなかったとか言うの?サイテー。」
「いや、ごめん。普通に聞こえなかったんだ。」
「あ……はい。一緒に旅をしたいです。」
「うん、いいよ。」
僕は頷いた。先程聞こえなかったのは断じて嘘ではない。本当なのだ。考え事をしていたのが不幸した。
僕の返事を受けたエレナはフードを脱いだ。そして、その下に隠されていた美貌が顕になった。その美貌に思わず僕とリルは息を呑んでいた。
「綺麗……。」
「?そうでしょうか。私の部族には私とあまり変わらない顔のエルフもいますよ?」
「あぁ……森人族自体が綺麗な外見をしているんだね。」
本当にこんな美人と旅をしていいのだろうか。既に美少女のリルもいるけど。まあ……いいか。どうにでもなれ!
「じゃあ、帰ろうか。」
「「はい!」」
エレナが新しい仲間として加わった僕達は、宿へと帰った。ギルドへは魔物の仕業だったと報告。疑われていたが青色冒険者の言うことだったからか信用してもらえた。有難いことだ。
「改めてよろしく、タクト。」
「よろしく、エレナ。」
僕達の旅はさらに楽しくなりそうだ。
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