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俺が斬ったの、隣国の王女様らしい……

矢追 参

準決勝――エリーザ

☆☆☆


 ウィリアムが去った後、俺は大きく溜息を吐き、椅子の背もたれに体重を預ける。

「……はあ。思いの外、疲れるな」

「リューズは、口よりも先に手が出るからなあ。交渉事には向かない性格だよな〜」

「…………」

 自分で分かっているが、ミラに言われるのは釈然としない。
 ミラはガサツそうに見えて、繊細だというのは俺が一番よく知っている訳だが。

 それにしたって、ミラは元々臆病な性格で、しかも人見知りが激しい。そのミラに、交渉云々で指摘を受けるとは……。

「な、なんだよ……? その目は。まるで、あたしに言われるのは納得できないみたいな」

「みたいなじゃなくて、納得できない。昔のミラは、俺の歳上の癖に、いつも俺の後ろにちょこちょこくっ付いて、可愛げがあったというのに……」

「ちょ、昔は昔だろ!?」

 俺は横で騒いでいるミラを無視し、今は亡き昔のミラに想いを馳せる。
 あの頃は、可愛かったな。本当に。

 いつも、今日フィーラにファミリーの関係者だとバレた時みたく泣きじゃくっていた。

「さて、寝るか」

「おい! あたしを無視するなあああ!」

「……俺は明日、準決勝なんだ。今日は沢山戦った上に、慣れない事もしたから疲れてんだ。早く休ませてくれ」

 俺は欠伸をしながらミラに訴えかける。
 ミラは口を引き結び、納得してない表情で不貞腐れた様に頬を膨らませているが、結局文句は言わなかった。

「まあ、リューズがみんなのために頑張ってるのは知ってるからよ……。でも、選抜戦なんて出る必要あるのか? 結局、前々から動かしてた暴動計画を使うんだろ?」

「ん……ああ。選抜戦に意味が無い訳じゃない。元々、あれは世界的催しの大魔法祭に向けての前準備。選抜戦に出る意義は充分だ」

「だけど、お前、暴動起こすとして。そしたら、首謀者として名前が上がるよな? そんな奴が、選抜戦で勝ったとして、大魔法祭に出場できる者なのか? ほら、他国からしたら色々と……」

 俺はそこまで考えておらず、思わず頬を引き攣らせる。
 な、なるほど……。

「……なら、顔でも隠すか。適当な名前で、仮面を付けた謎の人物が暴動を起こした首謀者とでもしておけ。幸い、暴動計画に賛同している民衆で、俺の顔を知ってる人間はファミリー以外にはいない」

 この計画は、主にファミリーの連中に進めてもらった事だ。
 所詮、俺が魔法使いとして大成し、王国を内部から変えていくというのは、ただの代替案でしかない。本命は、この暴動計画にある。

「顔を隠すか……。何かカッコいいな! テロリスト……みたいな感じだな」

「というか、テロリストだろ……」

 我ながら、テロリストなど呆れてしまう。

「とにかく、俺は寝るから。決行日までに準備を整えておく様に。あと、ウィリアムとの話でもあったが。帝国の干渉・介入が予測される。対応できる様にな」

「おうとも〜」

 俺は全てミラに丸投げし、自分のやるべき事に専念するため、早めに就寝した。

 そして、案の定俺のベッドに入り込んできたミラを再び家の外に放った。


☆☆☆


『さあ! 本日は準決勝、そして決勝が行われます! 昨日のルーレットにより、五回戦第一試合は、我が学院の誰もが知る生徒会会長――エリーザ・カマンガ様と、その対戦となるのは! 選抜戦始まって以来の異端児――リューズ・ディアーだあああ!』

 既に、俺とエリーザは戦いの舞台に上がっており、司会兼実況の声が聞こえる中、俺達は対峙する。

「リューズさん。調子の方はどうでしょうか?」

 エリーザが、大歓声の中でもよく通る、透き通った声音で俺に訊ねてくる。

「問題ない。少し寝不足なくらいだ」

「ああ、それは大丈夫なのですか?」

「睡眠不足でパフォーマンスが低下する事はないさ」

 俺が言うまでもなく、それをエリーザが知らない筈も無く、エリーザは微笑みを浮かべて。

「睡眠不足は集中力を低下させます。気力は足りていますか? 余所見しながら躱せる程、私の攻撃は甘くはありませんよ?」

「理解しているつもりだ……」

 エリーザ・カマンガ……。
 選抜戦で少し実力を拝見したが、恐らく並みの上級魔法使いを大きく上回る実力がある。

 彼女の主武器は特徴的で、盾・だ。
 大盾と小盾を、それぞれ右手と左手に装備した、異色の二刀流使い。

 エリーザの身長は、一六十センチ半ば。
 その全身をすっぽりと覆い隠す大きさの大盾と、前腕に装着された円形状の小盾は、小回りが利く。

 全身を覆う大盾は鉄壁。
 その守りを崩すのは困難であり、高い防御技術の前に対戦相手は戦意を喪失するという。

 しかも、小回りの利く小盾が厄介で、痒い所にまで手が届き、大盾程では無いにしろ。
 エリーザの冴え渡るセンスは、的確に相手の攻撃を小盾で防ぐ。

 右の大盾と左の小盾をスイッチさせて戦う戦闘スタイル。
 大盾は完全防御体勢で、攻撃に転じる際に左の小盾にシフト。相手の攻撃を受け流しつつ、右の大盾からカウンターが飛んでくる。

 その破壊力は計り知れず、巨大な質量で吹き飛ばされた選手を何人も見た。

 自ら仕掛ける事無く、大盾の隙間からこちらをジッと伺う鋭い瞳。
 その圧迫感は、実際に対面しなければ分からない。

『それでは、場も温まってきたところで。準決勝――第一試合を始めます! 両選手は所定の位置について下さい!』

 指示通り、所定の位置に足を着く。
 そして、会場に沈黙が落ちた時。

『……始め!』

 鐘の音共に、俺とエリーザが動き出す。
 俺は『創造魔法』の【クリエイト・ウェポン】で、いつもの刀を手に駆け出す。

 エリーザもまた、【クリエイト・ウェポン】を使い、大盾と小盾を装備。

「すぅ……っ!」

 俺は息を吸い、腹に力を込め、気合い一閃。
 エリーザに両手で握った刃を振り下ろす。

 それに素早く反応し、大盾で防ぐエリーザ。
 大盾の後ろで、俺を覗き見ているエリーザは、出方を伺っている様子。

 俺は構わず、刃を盾の上で滑らせ、身体を一回転。勢いそのまま、横薙ぎに払う。
 すると、エリーザは大盾でそれを受けず、瞬時に小盾にシフトチェンジ。

 俺の刃に対し、斜に構えた小盾で衝撃を受け流し、俺の攻撃の反動を利用。大盾による鋭い突きが、目の前に飛んできた。

「っ!」

 正確さ、速さ、全ての技量が卓越しており、俺は目を見開く。
 大盾は十字架にも似た形状で、先が尖っている。
 そのため、首を少し大きく傾ければ避けられた。

 だが、エリーザの攻勢はそこで止まらない。
 カウンターが主であったエリーザだったが、今回は大盾を突いた後、引き戻す力で小楯を突き出してきた。

 俗に言う、シールドバッシュにも似た攻撃。

 俺は、上体を大きく仰け反らせるスエーバックで、エリーザのシールドバッシュを回避。
 同時に、そのまま地面に手をついて、大きくバク転。

 エリーザと距離を取ると、見計らった様にエリーザが魔法を唱え、追撃してくる。

「【ファイアボルト】」

 『攻撃魔法』〈三属〉【ファイアボルト】による追撃。
 速度が速く、避けられないと踏み、俺は『無効魔法』【キャンセル・エレメント】を、『付与魔法』【エンチャント・キャンセル】を併用して行使。

 右手に握る刀に『無効魔法』を付与し、エリーザの【ファイアボルト】を斬り払う。

 会場に炎が渦巻き、やがて、それが消えるとようやくエリーザの攻撃が止んだ。

 俺の視線の先には、平然と大盾を構えているエリーザが立っている。

「……これは、予想以上に強いな」

 俺の呟き声が聞こえたのか、盾の裏でエリーザが。

「ああ、お褒めのお言葉。ありがとうございます」

 と、謙虚に答えた。

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