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俺が斬ったの、隣国の王女様らしい……

矢追 参

魔法理論と適性

 ☆☆☆


 魔法とは、究極的に個人が持つ願いを世界の法則に干渉させる行為のことを言う。つまり、願いを叶える……それが魔法という法則性を持った自称だ。

 魔法使いの中にある魔力という不可視の力を媒体に、それらを消費することで人間は世界の法則だとか因果に干渉し、自分にとって都合の良いように現実を上書きする。

『攻撃魔法』
『防御魔法』
『付与魔法』
『創造魔法』
『無効魔法』

 これらが基本の五つになり、さらにそれぞれ細かく分けることができる。

『攻撃魔法』は、一つは自分の肉体を強化する【ブースト】、二つ目は炎と氷と雷の三属性からなる基本魔法――【ファイア】等がある。

『防御魔法』は、自分の硬さそのものを強化する【ディフェンス】、それから自分の回復力――治癒力を高める【ヒール】等が挙げられる。

『付与魔法』は対象に魔法的効果を与える【エンチャント】。

『創造魔法』は刀などの物質を創造する【クリエイト】、環境そのものを創造する超常的な魔法がある。

『無効魔法』は、重力などを無効することで空を飛んだり、透明人間になったりすることができる。

 大体、一つの魔法は二つほどの種類に分けられるといった感じだ。これがこの世界での魔法の基本知識であり、魔法戦においてはどれも重要な要素となる。


 ☆☆☆


 午前中の講義を終えて、俺はお昼を食べようと学食のパンを買い、それを手にいつもの昼食スペースへ向かう。俺に友達がいないのは周知の事実であり、一人で食べているところを嘲笑されてたりするのは鬱陶しい……だから、自然と食べる場所は誰の目にも留まらなそうな人気のない場所に限られる。

 講義棟裏に広がる林の中……俺はその木の一本によじ登り、そこで何となく悦に浸りながらパンを食べる。こういう少し変わったところで食べている感覚は、何となく気分が良い。他者から見れば、「なにやってんだ?」「これだから平民は……」と非難されるような行為ではあるが……。

 しかし、誰もいない上に誰にも気付かれない場所で、好き勝手に一人で過ごせるというのは中々どうして気分が良い。などと、俺が考えていた折にそれをぶち破る形で声が聞こえた。

「おーい。りゅーうずくん!おーひるたーべーよー」
「…………」

 フィーラ・ケイネス・アグレシオが無遠慮に、俺の名前を呼んでいた。こうして叫んでいるということは、まだ俺の所在を把握していないということだろう。『無効魔法』には【サーチ】という他者の気配を探知する魔法がある。俺はそうされる前に、『無効魔法』の【インビジブル】で透明人間となってその場から消えた。

 ただ、フィーラは野生の勘が鋭い。透明人間になって如何に気配を殺しても気付かれる。俺はフィーラの様子を見るために、木から降りてこっそり茂みの中からフィーラを見てみると……案の定フィーラの後ろには、フィーラの金魚の糞となっている男子生徒がワラワラと群がっており、さらには隣国王女と顔つなぎしておきたいという貴族令嬢までもが仕切無しにフィーラへと昼食の誘いをしていた。

 よかったー隠れておいて……。

 今のフィーラの前にでも出てみろ……針の筵である。冗談ではない。

 俺は早急にこの場から離れようとしたところで……ふと、何やらフィーラ率いる集団で俺の話題が出てきた。

「フィーラ様……あのような平民などと食事など、フィーラ様が穢れてしまいます。どうでしょう、私と食事を……」
「その通りです。低俗な平民よりも私と!」
「いえいえ、私と……」

 と……。

 ほぉほぉ……親の名前を借りているだけで個人としては大した功績を持たない所詮は貴族の子息令嬢の畜生共が……ほぉ、俺に喧嘩を売ると?

 俺はコメカミに青筋を立てながらも、さすがにここで全員泣かせると問題になると深呼吸して落ち着き……さて、ここから離れようとしたところでフィーラの凛とした声音が轟いた。

「彼のこと、悪く言わないで」

 淡水の中で騒いでいた金魚共は、いきなり海水に水槽の中身を入れ替えられたが如く大人しくなる。淡水魚である彼らにとって、あまりにも信じ難いことだったのだろう。貴族の頂点に達している王族が、まさか平民の擁護をしようとは。

 それでもなお、フィーラは我慢ならないと口をポカーンと開けて呆けている集団に向けて口を開く。

「彼はたしかに平民だし、フェルディナン王国が身分制度の下に成り立っていることは知ってる。でも、だからって……平民って理由だけで彼を嘲笑し、貶すことは私が許さない。成績は学年主席で、魔法実技の講義を平民という理由だけで受けられないのに進級試験の実技は満点評価……アナタ達、恥ずかしくないの?」
「「…………」」

 集団は打ちひしがれたように押し黙った。

 普段は温厚で、フィーラ・ケイネス・アグレシオは誰にでも分け隔てなく接する。人当たり良く、愛想が良く……万人に愛される才能を持っている。だから、そんな彼女に言われたことがショックなのだろう。誰もが口を閉ざして顔を伏せていたのだが……やがて、ふとみんながみんな顔を上げると、口々に瞳を輝かせながら声を上げた。

「さ、さすがは、アグレシオ公国の王女殿下……平民風情を相手にしている暇があれば、己を磨けということですね!」
「……え」
「なるほど!さすがですわ!」
「えぇ……」

 と、フィーラはどこか釈然としていなさそうだが……まあ、そう捉えることもできる発言でもあっただろう。俺はもはや用はないと、ようやくその場から離れたのだった。


 ☆☆☆


「もう!お昼どこに行ってたのよ!すっごく探したんだから!」
「飯食ってた」
「だ・か・ら!一緒にお昼食べるために探してたのにっ!…………私が編入してからもう一ヶ月経つけど、結局リューズくんとお昼食べてない……」
「ドンマイ」
「他人事じゃないですけどー?」

 フィーラはバシバシと俺の隣の席に座り、俺の背中を恨みがましそうに叩いてくる。鬱陶しい……。

「ねぇ、ひょっとして私のこと……嫌い?」
「苦手」
「に、苦手……?それって、同じ意味じゃない!もう!意地悪!馬鹿!変態!」
「おい、意地悪は認めるけど俺は馬鹿でも変態でもない!」
「じゃあ、ムッツリ!」
「まあ、それならいいか……」
「いいんだ……」

 フィーラは納得いかない表情をしているが、別にフィーラに納得される必要もない。納得させる理由もない。俺は午後の講義に使う教科書を鞄から取り出して机に置く。それを真似るようにフィーラも教科書を机に置いた。

「次は魔法応用だね。そういえば、リューズくんの魔法適性って何?」

 魔法適性は、魔法を大枠に分けた五つの内自分が得意なものや不得意なものを数値としてグラフに表したものだ。まあ……いつも持ち歩いているわけではないが、今日は鞄にそれが記された紙を持っていたので、仕方なくフィーラにそれを渡した。

 フィーラはウキウキ顔でその紙を見た。

 紙には、たしかこう書かれていたか……。

 〈リューズ・ディアー〉
 年齢:17歳
 性別:男
 種別:王立魔法学院二年
 身分:平民

『攻撃魔法』適性
 〈強化〉A
 〈三属〉(炎・氷・雷)B

『防御魔法』適性
 〈防御〉A
 〈回復〉E

『付与魔法』適性
 〈付与〉A
 〈転写〉E

『創造魔法』適性
 〈物質〉A
 〈環境〉B

『無効魔法』適性
 〈解除〉B
 〈消滅〉B

 評価はE〜A
 特別枠としてS評価有り。

 と……たしかこんな感じだったと思い出しているとフィーラが俺の適性を見ながら苦笑いしていた。

「基本的には高水準で収まってるけど……落ち幅が酷いよね。『付与魔法』は魔法戦では、そこまで重要じゃないけど……魔法戦で必須な〈回復〉系の魔法適性が最低評価……だね」
「まあな。それ以外は、お前の言う通り悪くないんだけどな……どうにも、俺にはそっちの才能がないらしい。殴るか、炎ぶっ放すか……もしくは刀で斬るか。攻撃は避けるか、何とか耐えるしかないんだよ。俺は」

 ちなみに、これらの魔法は同時に扱えない。正確には同時使用できるが、難易度が高いというか……。それを階級として分けたものがある。

 魔法を一つしか使えないのを初級、同時に二つで中級、三つで上級と……まあ、分かりやすい。無論、階級が上がるごとに魔法使いとしては格上だ。

 例えば、同時に二つの魔法を使える中級魔法使いだとする。『防御魔法』と『攻撃魔法』を同時に使えば、守りながら攻められる。『攻撃魔法』と『無効魔法』を同時に使えば、相手の『防御魔法』を無効化することで『攻撃魔法』のダメージがより入る。

 といった具合に、戦闘の幅が広がる。ちなみに、俺は同時に二つ……つまり、中級魔法使いだ。しかし、厳密にはまだ学生であり、魔法使いではない。




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